吉田美保子の some ori ノート

いずさま、茶会と帯揚げ、樋口一葉

2015.06.12

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お正月の第2回ミーティングからもずっと、私は、いずさまのお着物のことを、つらつらと考えていた。どうしても気になる点がひとつだけあった。
それはいずさまが、お茶をなさると言うことだった。そしてこのonly only の着物を、泰勝寺でのお茶会に着ていかれたいという希望があることだった。
お茶会に淡い無地の紬でいいのだろうか?
一般論でいうと、お茶には柔らか物の着物と言うことになっている。フォーマルで華やかなのが求められてるってことでしょう。(私はお茶をしないので、ホントのところは分かりませんが。)
だから、織りの着物の場合は、柄をつけて絵羽にして、正式でゴージャスな感じを出した方がいいのではないか?
私は、あちこちで着物関係者に会うたび、聞いて回った。「ねえ、お茶会に無地の紬、どう思う?」
答えは千差万別。「立場による」、「どんな茶会かによる」、「先生の考え方次第」、「染めの方が無難じゃあるけど、無難もつまらんよね」など。柄を入れることを強く勧める人もあったし、気にしなくてよいという人もあった。
うーん、解決しないわ。では、いずさまに、直接お聞きしましょう。
それでメッセージ。薄く熨斗目とか、肩と裾にボカシなどの柄を入れるご提案も入れて。そういたしましたら、お返事がきて、
「無地っぽいけど、無地じゃない、というのが理想です。色は少し紫がかった薄い桃色。寂しいかなー? お茶会は控えめな方が良しとされる雰囲気があるので、大丈夫です」とのことだった。
なんか氷解した気分。腹が決まった。では、柄は入れずに、寂しくないお着物、作りましょう。
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このやり取りで、私は、やっと回路がつながった。いずさまは、作家ものが欲しいわけではないのだ。
最初のころ、メッセージで、『「女優きもの」という本を読んで、一番心ひかれたのは、焦茶色の「結城紬」だった。だけど今回は淡い色味が欲しいと見ていたら、ピンと来たのは、なんと帯揚げだった。』と書いてらしたのを思い出した。
結城紬も帯揚げも、作家名は明記されない。でもこの本、それ以外は、帯も着物も、作家さんの名前、バッチリ書かれてる。作品自体も、いかにもキャラが立った作家の力作である。これじゃないんだ。
もう一冊、いずさまが、SNSに面白かったと載せられていた本があって、それならと私も読んでみた。「一葉のきもの」という本。
何回か読むうち、ああ、これ、いずさまだっていうフレーズがあった。
「一葉は、常に美しさとは何か考察を重ね、自らの美の思想を、登場人物に反映させた。その美とは容姿でもあり、心の清らかさでもあった。」

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