吉田美保子の some ori ノート

絹糸の精練

2016.01.16

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ここんとこ、帯の緯糸の精練をしている。精練というのは、蚕が糸を吐く時に繊維と一緒に吐くタンパク質を、取り除くこと。これがついたままだと、絹と言っても、固くてバリバリしているのだ。
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実は精練、去年から再開して、いまだ試行錯誤しつつやっているのだ。
昔、着尺を織りはじめてからずいぶん長い間は、必ず自分でしていた。なんでも自分でやることが是だと信じていた。精練、難しいんです。特に灰汁でするとデータが取りづらく、安定しないから。それでも、頑固に自分でしてた。だって、そういうもんでしょう。
しかし、あるとき、お世話になってる糸屋さんに、いつもの通り、未精練の絹糸を注文しようとしたとき、
「ヨシダさん、精練、一度オレにやらせてみな。オレさ、絶対ヨシダさんよりうまいから。」
「う、、、、」と思った。灰汁ではないというし(自然派だったのだ、私)。しかし、思う所あり「お願いします」と即答した。
で、結果は上々だった。精練の具合も理想的だし、綛の乱れもなく、その後の仕事も支障なく進んだ。お支払いした精練代も納得できる金額だった。これはいい。今まで精練に費やしていた時間とエネルギーはなんだったんだ。私の仕事はいいものを作ることであって、全てを自分でやるってのは、かえって自己満足なんだなあって思った。
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で、昨年から、八寸帯を積極的に織っているのだが、これに使う緯糸は、自分で精練するしかないのだ。半練りという、セリシンを半分残すのやってるのだが、こういうのは外注できないのだ。暴れん坊で、個体差が大きく、気分屋の糸は。
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で、秤と計算機を座右に(というか、机上に)、せっせと作業中だ。
しかし、精練は絹織物の醍醐味とも言える。自分の制御によって、布味が七変化なのだ。これを自由自在に使いこなしてこそ、織りの真髄だな。がんばろう。
*一番上の写真は、大きなタンクを入れ子にして、湯煎しながら精練しているところです。今は酵素で精練しているため、湯温を55℃位にキープしなくちゃなので。精練終わると、内側のタンクはタンパク質が流れ出てグレーに白濁してますが、外側のお湯はきれいなままです。もちろん、このあと大洗濯〜。せっせと、バケツで汲み出して、洗濯機に運びます。お湯で洗うとさっぱりするねえ〜

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