吉田美保子の some ori ノート

「きもの簞笥」を読んだ

2016.02.16

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図書館で借りた本の一冊がとても心に残った。「きもの簞笥」澤地久枝著。読んでいて、澤地久枝さんの行動力、決断力、悲喜こもごもなど、小気味いい短めの文章からバシバシ伝わってきて、引き込まれた。好き嫌いも、天と地ほどハッキリしていて、胸がすく思いがする。
澤地さんも、着物の注文制作をよくなさってたようで、そのやり取りも面白く読んだ。
ある着物の注文したときは、「たのしい夢のある着物。あとはまかせる」というオーダーだったようだ。澤地氏自身もそう書かれているが、「作者にとっては自由なようで、じつは難儀な」注文だよねー。
注文を受けたのは、型染め作家の駒田佐久子さん。画像も載っているが、オーダー内容を、しっかり受け止め、しっかり打ち返した、すばらしいお着物だ。澤地さんの、その後の人生の時々を、おおいに彩ったことだろう。
澤地氏の文章の吸引力は、いいことばかり書かず、マイナスの事柄も、直球でビシバシ書かること。とある刺繍の帯の注文は、ガッカリされたらしい。自戒の念をこめて、書き写しておく。
「(前略)これは、特別に注文し、わが夢を託して作ってもらった。でも、二、三回締めたきりで、愛着をもてない。作り手たちの志の低さを感じてしまう。(中略)豊富な色も模様も、刺繍の技に魅力のない弱さばかりが目につくのだ。」

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