吉田美保子の some ori ノート

「日下田正とエセル・メーレ」展に行った、3

2017.01.29

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日下田正さん、とてもお優しい紳士で、素晴らしい作家さんでした。遠くから自分の展示会を見に来た熱心な人、というだけのことで、見も知らぬ私のことを、ギャラリーに再度招き入れ、ソファーに促してださり、お茶も出してくださいました。
年譜拝見すると、御年77歳。はつらつと明るく、柔和で、かつ、第一線で作り続け、発表し続け、生き抜いて来た強さを感じます。
私はここぞとばかり、聞きたかったことを、いろいろ突っ込んで質問させていただきました。率直に何でも答えていただき、大感激でした。
私がこの日、益子に来たのは、展示会の図録を送っていただいて、それをみて感激したことと、青田五良を彷彿としたということが理由だということも、お話ししました。青田の名前はよくご存知でしが、「上賀茂織之概念」は未読とのこと。
他にも、私が織の中でも平織りを特にしているなど話すと、「それがいいです。やっぱり平織りです。」などとおっしゃったり。(日下田さんの綾織もすごい。)織の工程の話では、糊付けに難儀しますねとおっしゃられ、深く深くうなづいたり。。。手紡ぎの和綿を経糸にも使っておられるのに驚いていると、「経糸に行けるように作ればいいだけのことです」とおっしゃられ、それはそうだけど、それが普通はできないのよと思ったり。
展示作品の中では、栃木県の依頼で、正倉院所蔵の、調庸布の復元したのが、何より一番難しかったと話され、正倉院のものと同じにするために、砧打ちするか否かで、悩まれた話など、大変興味深かったです。
先ほど、松本の森島千冴子さんの話が出ていたのを聞かれ、懐かしそうに、話をつがれました。曰く、大昔、高校を卒業してすぐ、織の修行に東京の柳悦孝先生の内弟子に入られていた頃のこと、松本から森島さんが訪ねて来られたそうで、日下田さんもお会いされたそうです。その時、お土産にくださった、信州のりんごの味が忘れられないと。もう60年近く前の話です。
まあ、なんといい話。私、この話、師匠の高野久仁子さんにも伝えますね。
日下田藍染工房で、あっという間の3時間ほどの素晴らしい時間を過ごし、美術館にとって返し、もう一度、よくよく作品を観て、いただいたご恩をエクスパンドさせるぞっと、図録をたんと買いこみまして、帰りのバスに乗り込みました。ああ、昼ごはん食べ損ねたなあ。
*「日下田正とエセル・メーレ」展に行ったお話は、これにて中締めです。またご縁がつながって続きが書けるよう、私も日々がんばります。

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