吉田美保子の some ori ノート

いずさま、着姿

2015.11.22

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先日のこと、いずさまの「限りなく無地に近いピンク」の着姿のお写真、いただきました。写真拝見して、心底ほっとした。肩の力が抜けて溶けだした。
「毎年10月に開催される、秦勝寺でのお茶会で、苔むしたお庭に佇みたい。」というのが、この only only のそもそもの大命題だったのだ。どうお応えするかに、苦しみ、楽しみながら、まい進してきました。その答えが今でたわけです。
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いい笑顔してらっしゃって、うれしいなあ。
「本当に真摯に取り組んでくださって、こんなに幸福感に包まれる着物はありません。」と書いてくださいました。
「とても評判よかったよ」と。「写真より肉眼はピンクが立ってるよ」と。あと、「お仕立てをしてくださった方が、惚れ込んでいて、鼻たかだかだった」と。
本当にありがとうございました。仕事させていただくことで、育てていただいてます。織り続けることで、恩返しせねばと思っています。
*いずさまストーリーは、ブログのカテゴリー、「only only のいずさま」にまとまっています。時間をさかのぼって、お読みいただければ幸いです。

限りなく無地に近いピンク

2015.07.27

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いずさまの only only のお着物、「限りなく無地に近いピンク」と名付けさせていただきました。
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湯のしから戻ってきて、検反したあと、床に置いたままじゃホントのところは分からんわと思って、立ててみたくて、ふわっと和装ボディに掛けてみました。
わわわ、、、いいじゃん。無地なのに、豊かな感じ。
そして写真を撮りました。
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タイトルの「限りなく無地に近いピンク」は、いずさまとのやり取りを思い出しつつ付けました。今回のご注文で、一番大切だったことは、やはりこれかなと。
強い主張のない中の、抑えた存在感。押し出るんじゃまったく無く。極薄ではかなげなんだけど、しっかり立ってる感じ。遊び心もこっそりあるのよ。緯糸17色と経糸8種類が混ざり合う、豊かなピンク。
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いずさま、このお着物が到着後すぐにメッセージくださいました。
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「お茶会に着ていきます。きっと、苔むした秦勝寺に映える事と思います。涙が出そう。」
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うう、私も泣く、、、
そうなの、そうなの。お寺の苔のお庭に立ちたいってのが隠しテーマだった。
それが、どうにかこうにか、やっとやっと、いずさまや、いろんな関わって下さった方々のおかげさまで、作ることが出来ました。そして生まれでたのが、「限りなく無地に近いピンク」。
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いずさまのメイキングストーリーは、これにて中締めです。この秋、秦勝寺の苔の緑に映えるお姿、拝見できるかな。楽しみです。

いずさま、お納め

2015.07.26

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さあ、湯のしから帰ってきましたよ。お納めです。
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糸見本を作りました。緯糸17種類、経糸8種類です。砂糖菓子みたいでしょ。
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お手紙も書きました。今回、いずさまのお着物を織らせていただいて、ほんとーーーに、勉強になりました。着物のことのみならず、お茶のこと、お客様のお気持ち、作り手同士の繋がり、求めればつながれて、アドバイスもらえ、助けてもらえる。次は私が助けるよ。そうなれるよう、力つけるよ。
仕事が私を育ててくれる。ありがたい、ありがたい、only only でした。着物のアップやタイトルは次に載せますね。

湯通しと伸子張り

2015.07.20

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いずさまの着尺、仕上げてます。
気持ちよさそうに、お風呂に入ってます。糸が、座繰り糸と真綿糸で、毛羽立つタイプでしたので、糊、強めなんです。さっぱり落としてしまいますよ〜。
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湯通しが終われば、伸子張りです。着尺は、長ーいですので、我が仕事場で張るには、1回Uターンするんです。着物は約13mですので、1辺13m以上の部屋なら、ターンしなくていいんですけどね。
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Uターンには、ステンレスのポールを使ってます。便利です。
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ぬれた状態だったのが、だんだん乾いて、表情かわってきます。
完全に乾かない前に、伸子は取ります。跡がつくからね。カラカラにする必要もないのよ。これから湯のしだしね。

できた!

2015.07.18

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織り上がったよ、いずさまの only only!
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生まれたてほやほや。湯気でそうね。
これは、まだ機にくっついているところ。女巻き(めまき)の方を外して、巻いてある布をカラカラと出したところ。
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切れた糸などを処理して(たくさんあったよ〜)、屏風だたみにしたところ。
さあ、仕上げるよ。

いずさま、すすんでます。4

2015.07.15

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いずさまの only only、佳境です。
織ってる裏はこんな風になってます。伸子を張って、織り幅を整え、織りやすくしてます。この伸子、すっごくいいよ〜。影山工房さんから分けていただきました。私は、織り裏派なんです。
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この写真は数日前。
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この写真は、今、現在。太巻きになったのがお分かりいただけますでしょうか?
もうすぐ!

いずさま、進んでます。3

2015.07.13

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いずさまの only only、織機に上がっている姿、なかなかいいね。カッコいいじゃん。
経糸、白すぎたかと思ったこともあったけど、こうして見ると、うっすらピンクね。そうしたいと願って、そう仕事した結果が出てる。当たり前だけど、よかった。
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よく言われることだけど、「織りの仕事は織機に上げるまでが9割。織るのは仕上げ。」それに異存はないけど、その1割がヘビーなのよ。気力と体力とバランス感覚を保つのに必死。
ふらふらよーん。
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これをやり切ったときに、泉鏡花の世界に対面できると信じて。
がんばりまーす!

いずさま、すすんでます。2

2015.07.12

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いずさまの、only only、進んできましたよ。これは、2分メガネで覗いたところ。
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2分メガネって、鯨尺の2分(=7.56mm)に、緯糸が何本打ち込まれたか、確認する道具です。一日に数度、これを覗いて、本数を数えます。
均整とれた、安定した織物にするために。糸の太い細いは、もちろんあるので、まったく一緒じゃないけど、ある一定の枠から外れないように。
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ちょっとひくとこんな感じ。
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全体像はこんな感じ。
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この右側に写ってるやつ。ちっちゃいのよ〜。左はもう少々広範囲を見るためのもの。
さあ、今日もがんばりましょう!

いずさま、すすんでます。

2015.07.10

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いずさまの only only、進んでます。経糸。いい感じです。
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経糸は、座繰り糸と、真綿紬糸。この2種を、8種類に染め分けました。
(この写真は、手前がのっぺり写っちゃいましたね。実物はのっぺりじゃぜんぜんないよ。経糸の節は写ってますな〜。けっこう難儀してます。切れて切れて、、)
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実は経糸を経てたあと、「もうちょっと染めの違いを際立たせればよかったかもんな」って思いました。ちょっと染め分けがおとなし過ぎたか、、、、目に見えづらいな、、、、と。
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でも織りはじめて数日たった今、ああ、このくらいの違いでよかったよ、いい感じのオブラートだって思います。やり過ぎずによかった。やり過ぎ注意。これ大事だなあ〜。
ぱっと見は無地だけど、よく見るといろんな表情が、豊かに豊かにあります。
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さあ、もうひとがんばりだよ〜〜

いずさま、織ってます。

2015.07.07

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いずさまの only only、織ってますよ。薄ピンク具合が、絶妙かな。
手前に写ってるテープはガイドです。長さをはかるのと、4つに分けた、色と疎密の、繰り返しを見るためのもの。ガイドの中では、自由に、ランダムに。
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本日、七夕ですからね、巻いていきますよ。


動画も撮ったよ。

いずさま、17丁杼

2015.07.04

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いずさまのonly only、さあ本番です。緯糸は、結局、17種類使うことにしました。それを4つのパーツで使い分けます。
例えば、上の写真は、紫を密にしたい部分のラインナップです。
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17種類と言っても、メインは6種類。あとは、ニュアンスを入れるため、陰影を付けるため、いい感じにもってくためのものです。
いずさまのお望みは、「無地っぽいけど、無地じゃなく、疎密があって、ランダムで、統一感があること。はかなげで芯があること。寂しくならないこと。」
これらをクリアするのに、17丁杼が必要だ。
ちなみに上の写真は、地のピンクの部分のラインナップ。
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糸によっては、全体で20越くらいしか入れないのもある。(全体っていうのは、28000越くらいですので、20越なら0.07%かな。まあ、そのくらいです)
上の写真の右から2番目の黄色のシールを貼った13番の杼がそれ。全体で20越の糸です。ほとんど気付かれないくらいの入れ方だけど、こっそり明るさを加える、おまじない糸と申せましょう。
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そして上の写真のラインナップが、白を多めの部分。写ってる8丁が基本だけど、こっそり、紫の糸を1〜3本入れましょう。動きが出るしね。
さあ、がんばろー!

緯糸、準備万端

2015.07.01

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いずさまの緯糸、全てが染め上がりました。写真の手前右が、新しく染めた分。ごくごく薄い紫。いいんじゃないか。表現に幅がでる。いずさまのご意見のおかげです。
さあ、糊を付けて、小管巻きです。
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糸巻きしながらも、耳は、泉鏡花を聞いています。小説、なかなか読み進まず、ギブアップ。ニコニコ動画で朗読サイトを見つけました。佐藤慶さん朗読の、高野聖を繰り返し聞きながら、静かに糸を巻きます。
いずさまのお着物は、泉鏡花の世界観。お話いただいて、もうすぐ一年になります。泉鏡花を分かろうとそれなりにがんばったけど、まだまだ分からない。到達はできてないのだけど、真摯に仕事を重ねれば、その先にきっとあると信じて、今日も仕事を進めます。

試し織りが、行って帰ってくる

2015.06.29

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いずさまの3枚目の試し織ができました。早速、発送。お手紙を添えて。
いずさま、どう反応されるかしらん。ここまでくると、もう大変わりはできませんが、ニュアンスを変えることはできます。もうちょっとピンクにとか、あとちょっとだけ白に寄せてとか、もう少しホッコリした風合いに、、、などなど。
自分ではだいたい良いと思ってるんだけどね。着物として、しっくりするところまでは持って行けたと思ってる。変更するならどこだろう?
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ほどなく、いずさまから、ご返信がありました。すてきなお手紙そえてありました。
「こんなにすてきな色と質感に作り上げてくれて、ありがとうございます。とってもとっても楽しみです。」
わー!よかった!
あと、濃い部分に、もう少しだけ薄い紫があってもいいかなあってコメントがあった。
よっしゃ、早速、紫、染めよう!薄い、透明度のある、花びらの重なりのような紫。
勢いつけて、行きますよ!!

いずさま、3枚目の試し

2015.06.27

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いずさまの緯糸、染まりました。
いい色でしょ。これこれーー、この色なのよーー!ってドキドキしながら染めました。写真の手前に写っているのが真綿紬糸、奥に写っているのが座繰り糸です。
それから、すでにセットしてる筬を一旦抜いて、経糸を入れ直しました。1回目の試しの時は、鯨寸間56羽でしたが58羽へ。(一寸間に112本から、116本になります)密度をあげて、丈夫にします。
糸の太さから考えた密度では、56羽で十分と思っていたけど、実際織ってみて、もうちょっと上げたいって思いました。ただ上げすぎると、固い布になって、布が呼吸しない感じになる。色気がない。ふんわりした絹らしさを残しつつ、ギリギリまで密度をアップしたい。
いずさま、お茶をなさる方だから、丈夫な布にするっていうこと、特に気をつけてます。お茶は静かなイメージだけど、実は、立ったり、座ったり、正座したり、にじったり、、、、。動くのよね。それで、布に力が掛かるんです。ですから、着物は、最大限丈夫に、かつ、前幅もたっぷりになるように。
試行錯誤しながらの、3枚目の試し織りです。

いずさま、緯糸の染め

2015.06.26

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いずさまの only only、本番の緯糸の染めです。
送り返されてきた1回目の試し織りと、いずさまが添えてくださった、その短くも的確な感想をよく見て(←心の眼で!)、その先にあるまだ到達できぬ「泉鏡花の世界」に、どう添うか。ここ、正念場だー。
うん、試し織りの時より、色の純度をあげよう。酸性染料で行きましょう。ご希望、思ったより白い。2枚の試し織りの白い部分がお好みだった。ただ、「白い」着物を織る訳じゃない。しっかり染まった、薄い紫ピンクの着物なんだ。
糸は、やはり座繰り糸がメインね。いいツヤしてるもんね。お茶をなさる方だから、正座してもしわになりにくいことも大事だ。真綿も適宜いれましょう。ホッコリするしね。
(上の写真は、国産座繰り糸。いい糸でしょーー!どの綛を使うか思案しているところです。重さを計って、だいたい同じのをチョイス。均整のとれた着物にしたい。)
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色は、染井吉野の色を目指します。グラデーションにする訳ではないのだけど、濃淡で染め分けて、桜の花の重なりを表現できたら。
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座繰り糸、4色。真綿糸、4色。染料を足しながら、ちまちまちまちま、染めて行きます。

いずさま、試し織り2枚

2015.06.20

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いずさまのonly only、試し織りを2枚織りました。いずさまに郵送して、ご意見とともに返送してもらい、それを元にあらためて準備し直す段取りです。
さあ、まず1枚目。あまり深く考えず、気の向くまま、美しいと思った糸を選んで入れて行きます。
2枚目は、今までのいずさまとのやり取りや、こっそり私の提案や、こうした方が着てて心地いいのでは?などなど、切り口を変えて、織り込んで行きます。
無地に近い、紫がかった極うすピンク、、、
加減をみるための試し織りとは言え、難しいもんだ。どこまで白くするかは思案どころです。着物の印象が変わってくると思う。
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織り上がった試し織り2枚を、お湯通しして糊を抜き、軽く乾かして、スチームアイロンをかけます。これでだいたい本番と同じ条件。
さあ発送。だけどどこまで説明を書くかで悩んでしまい、結果、必要最小限のご説明だけで発送してしまった。
あまり、私の意図など書くと、率直なご感想など言いづらくなるかもと思い。私も織ってしまうと、意図とかなくなるのよね。きれいかどうか?いずさまに好んでいただけるかどうか?それだけ。
*写真は、2枚の試し織り。バックに写っている紙には、私の説明と、いずさまのご感想、ご意見が書き加えてある。ほどなく返送されてきたところ撮りました。
書いていただいたご意見は、とても伝わってくるものでした。読み込むほどに、ああ、なるほどーって、私の思いをどんどんクリアにしてくれました。
いずさま、お手紙を添えてくださいました。試し織りの布片を、外で見たり、室内で見たり、朝日、夕日、お仕事場にも持って行かれて眺められたそうです。そしてやっと心が決まったと。
ああ、ご苦労かけてしまったなあ。
*only only は必ずしも、このやり取りが必要な訳ではありません。はじめにご希望お伝えくださり、「あとは任せた」とおっしゃる方もおいでです。もちろんどちらもウェルカムです。

いずさま、機上げ、試し織り

2015.06.19

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さあ、話しを進めましょう。いずさまの ONLY ONLY 経糸が出来て、機上げです。写真はムカデとよばれる道具に、経糸をセットしているところ。これでテンションが合うんです。実作業をやっているのは、手伝いにきてくれたmiwa さんです。
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私は、せっせと緯糸の準備。まずは試し織り用。使えるかどうかは未知数。候補生大集合。
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この辺りのラインナップか、、とにかく織ってみる。機の調子を整える。布の表情に出会う。話しはそれからだ。

いずさま、経糸の準備

2015.06.14

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さあ、いずさま用の経糸を用意しましょう。
今回は、単衣の着物であること、ツヤとホッコリを同居させたいこと、質実な織物にしたいことなどから、座繰り糸と真綿糸を両方入れることにした。割合は、座繰りが2、真綿が1でいくか。
きちんとした正しい織物にしたい。いずさまのイメージもそうだしね。だったら、並び方は単調にしよう。そのかわり、染めにはこだわろう。全体を8つに染め分けよう。オブラートの表情を求めるからね、僅差で染め分けないと。
上の写真は、座繰り糸。国産のいい糸です。
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そしてこれが真綿糸。ほっこり感はこれで出ます。空気を含むので、しわにもなりにくい。これもとてもいい糸。いい糸さわると、幸せね!
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染める前に、汚れなどを落とすために、湯練りします。それから下染め。
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三つ編みにして染めて、染まるところと染まらないところを作ります。分かるか分からないほどの僅少の差だけど。でもやっぱ、やっただけのことはあると信じたい。これで、無地といっても無表情ではなくなるよ。
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一度染めたら、三つ編みをほどいて、洗って、また三つ編みをし直して、ほんの少々染料を変えて染めます。これを繰り返す。何度も。
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ちょっと広げてみましょう。どうかな?あとどんだけ、染め重ねるかな?
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三つ編みだけだと、染まるところのスパンが短いし、偶然に頼りすぎて心もとない。それで、このように一部をくくって、染まるところと、染まらないところをしっかり分けて染めます。これを整経のとき、ばらけて入れるわけですよ。そうすると、すーっと染まった部分がところどころに入るわけです。
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さあ、そろそろいいかな?うん、いい感じ。
*ブログに書くと一日ですが、これ、何日も何日もかかってまぁーす。

いずさま、茶会と帯揚げ、樋口一葉

2015.06.12

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お正月の第2回ミーティングからもずっと、私は、いずさまのお着物のことを、つらつらと考えていた。どうしても気になる点がひとつだけあった。
それはいずさまが、お茶をなさると言うことだった。そしてこのonly only の着物を、泰勝寺でのお茶会に着ていかれたいという希望があることだった。
お茶会に淡い無地の紬でいいのだろうか?
一般論でいうと、お茶には柔らか物の着物と言うことになっている。フォーマルで華やかなのが求められてるってことでしょう。(私はお茶をしないので、ホントのところは分かりませんが。)
だから、織りの着物の場合は、柄をつけて絵羽にして、正式でゴージャスな感じを出した方がいいのではないか?
私は、あちこちで着物関係者に会うたび、聞いて回った。「ねえ、お茶会に無地の紬、どう思う?」
答えは千差万別。「立場による」、「どんな茶会かによる」、「先生の考え方次第」、「染めの方が無難じゃあるけど、無難もつまらんよね」など。柄を入れることを強く勧める人もあったし、気にしなくてよいという人もあった。
うーん、解決しないわ。では、いずさまに、直接お聞きしましょう。
それでメッセージ。薄く熨斗目とか、肩と裾にボカシなどの柄を入れるご提案も入れて。そういたしましたら、お返事がきて、
「無地っぽいけど、無地じゃない、というのが理想です。色は少し紫がかった薄い桃色。寂しいかなー? お茶会は控えめな方が良しとされる雰囲気があるので、大丈夫です」とのことだった。
なんか氷解した気分。腹が決まった。では、柄は入れずに、寂しくないお着物、作りましょう。
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このやり取りで、私は、やっと回路がつながった。いずさまは、作家ものが欲しいわけではないのだ。
最初のころ、メッセージで、『「女優きもの」という本を読んで、一番心ひかれたのは、焦茶色の「結城紬」だった。だけど今回は淡い色味が欲しいと見ていたら、ピンと来たのは、なんと帯揚げだった。』と書いてらしたのを思い出した。
結城紬も帯揚げも、作家名は明記されない。でもこの本、それ以外は、帯も着物も、作家さんの名前、バッチリ書かれてる。作品自体も、いかにもキャラが立った作家の力作である。これじゃないんだ。
もう一冊、いずさまが、SNSに面白かったと載せられていた本があって、それならと私も読んでみた。「一葉のきもの」という本。
何回か読むうち、ああ、これ、いずさまだっていうフレーズがあった。
「一葉は、常に美しさとは何か考察を重ね、自らの美の思想を、登場人物に反映させた。その美とは容姿でもあり、心の清らかさでもあった。」

いずさまと2回目にお会いする

2015.06.10

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それから5ヶ月後のこの前のお正月、私は和の國さんでの「熊本ゆかりの染織家展」のために帰省した。会期二日目に、ギャラリートークをしたのだけど、そのとき、いずさま、お着物お召しで、トークを聞きにお出で下さった。
お久しぶりです!
お着物姿のいずさまは、洋服の時より、可憐な感じがした。前回は、お仕事帰りってこともあったのだろうけど、何か、着物を着ることで、大人の部分と、女学生くらい娘さんの部分が融合されて、ふんわり可憐な感じ、、、
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その日、お昼をご一緒できた。
熊本名物馬刺のランチコース(♡)をいただきながら、only only 2回目のミーティングとあいなった。
いろいろお話するうちに、泉鏡花の話しになった。私が、「飛行機の中で読むつもりで文庫を買ったけど、文語体に苦戦して、進んでないんです」なんてことを話したのがきっかけだったと思う。
泉鏡花は、いずさまとのメッセージのやり取りで、いっとうはじめに出て来たキーワード。なのに、ちっとも解けてない。なぜいずさまが、そうお望みなのか、泉鏡花のどこにひかれるのか。
豪華ランチをぱくぱくといただいていた箸がとまる。
いずさまは、泉鏡花の世界観がいいとおっしゃる。それは、誠実で、正義感があって、控えめだけど強い。たとえ不遇な目にあっても、正義を貫く。そこが好きだと。
ああ、私、今、とっても大事なことを伺ってる。これこそ、私が今回織るもの正体だ。
何を織ればいいのかは分かったが、それは余りにもハードルが高い。とにかくがんばろう。私にあるのは、根拠のない自信だけだ。

いずさまとお会いする

2015.06.09

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昨年の8月、いずさまとお会いすることができた。私が熊本に帰省したおりに、スケジュールを調整していただいたのだ。その日、いずさまは、お仕事の後で、きれいな色の車を運転して、私の親の家まで来て下さった。
はじめまして!
思っていた通り、すらっとした、知的美人のいずさま、お洋服も、すっきり系。自分の似合うものをよくご存知の方だ。
資料一式、持って帰っておいた。それを元に、いろいろとお話を。
それで新しく出て来たキーワードは、オブラート。オブラートかかった白、ピンク。あの感じ。ふむ。
大事なのは、淡く、はかなげで、芯があること。泉鏡花の世界。
遠目には無地。完全に無地でなくとも、無地っぽい。粗密があった方がよい。ランダムがよい。ランダムだけど、統一感があること。ペタッとしないこと。ふむ。
単衣だけど、つるっとするより、ホッコリした方がよい。春の単衣より、秋の単衣を念頭に。
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過去に織ったものも、ファイルと実物と両方もって帰った。その中で、いずさまが、一番、ピンとこられたのは、なんと、九寸帯「レッド・モンドリアン」の無地場だった。上の写真の、白いところ。黒線なしの。
ふむーー、いずさま、このくらいの無地さ加減をお望みなのか、、、、私にとってはこれ、完全無地の範疇。いや、いろいろ仕事はしてあるのだけど、仕事の後を残さないようにしたからさ。よかった、伺って。
すぐには取りかかれないので、その秋には間に合わないことをご了解いただき、一年後の納品を目標に進めて行くことにあいなったのである。

いずさま 暗中模索する私

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いずさまからいただいたメッセージを必死に読み解く私。いずさま、ご自分の欲しい着物のイメージを、しっかりお持ちなんだなあ。この段階、私にとってはとても重要。暗中模索。一筋の光を、ただただ、求める。
いずさまも、お着物のイメージを、とてもまっすぐ伝えて下さる。曰く、
「桜の花びらに、ちょっと藤色が混ざったような、透明感のある色。」
「でも、無地は寂しい。」
「以前立ち寄った着物屋さんで、薄いピンク紫の紬を見せてもらってから、頭から離れない。ただ、その着物は無地だったので、ちょっと物足りなく感じた。」
「同じような色合いの江戸小紋をデパートの呉服売り場でみました。なかなか良かったです。でも、なぜか江戸小紋は少し息苦しい、、、」
「伊右衛門のCMで宮沢りえが着ているのもいい色だと思います。」
「熊本は暑いので単衣で考えています。」
「泰勝寺の緑に溶け込むような着物がいいなあ。」
「泰勝寺の大茶会は10月ですが、まだまだ緑です。」
ふむーー。さすが、ONLY ONLY をお望みだけあるなあ。どうお応えするか、、、、
(ちなみに泰勝寺というのは、肥後熊本藩、細川家のお寺です。)(りえちゃんも、すぐに検索。わかった、これだ。)
そっかぁーー、うーん、無地は寂しいとなれば、線が目立たない淡ーい、細かーい格子か、、、。お茶をなさるなら、格式も感じられるボカシか熨斗目(のしめ)か、、、、そんなことをご提案しましたら、次のメッセージいただいた。
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曰く、
「やせ形なので、縦も横もラインが入るのは、避けている」
「布の表情はツルツルよりほっこりしてる方が好き。ほっこりしてるのにツヤがある、なんて相反してますか?」
「今、『女優きもの』という本を眺めているが、一番心惹かれるのは、焦茶色の本場結城紬。でも、今度は淡い色の着物が欲しいので、、、一番ピンときたのは、なんと、帯揚げでした。なかなか具体化しませんが、、、」
「淡い、ツヤがある、ほっこり。」
そっか、では、『女優きもの』を取り寄せましょう。
あ、いずさまが一番心ひかれたという帯揚げ、わかった。これだ。
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まだお会いしたことない いずさまが、身近に感じられる。少しだけ、寄り添えたような、、
大丈夫、まだつかめてないけど、どうにかします。根拠のない自信というヤツです。それから、ツヤとほっこりは、同居できまっせ!

ONLY ONLY、いずさまです!

2015.06.03

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さあ、新しい完全注文制作 ONLY ONLY のストーリーをはじめましょう。今回のヒロインを「いずさま」と呼ばせていただきます。
いずさまと出会わせてくれたのは、同級生のKくんです。去年の6月だったか7月だったか、高校の東京同窓会の打ち上げの席で、Kくんに声をかけられ、お姉様がお着物をお召しで、私の織りに興味を持って下さっていると聞かされました。
まあ!
程なくいずさまと、フェイスブックでつながることができました。熊本在住のいずさまに、夏の帰省時に、お会いできることにもなりました。それに先立ち、ざっくりでいいので、どんな物をお望みなのか伺いました。まだ、ご希望がお着物とも帯とも未知数ですし、せっかくお会いできるのですから、事前にイメージをつかんで、出来るだけの準備をしたかったのです。
早速お返事いただきました。ご希望はお着物。イメージは、「泉鏡花」の世界観で、(でも大正ロマン風ではない)、はかなげな風情なのに、しっかりした感じがするもの、色は淡いピンク紫。
ほう、それはまた、、、、、
「泉鏡花」「淡いピンク紫の着物」、、、むむむ、、、私、それ、知ってるぞ。見たことあるぞ。ずーっと前、映画で見た。確か玉三郎が監督した、、、、うーうー何だっけと、頭を絞り、検索機能を駆使して、見つけました。
やった!これだ!!!イメージさえつかめたらこっちのもんだいっ!!
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「いず先輩、このイメージでしょう!」(いずさまも、同窓です)
メッセージするも、「もうちょっと薄い色かな。」というお返事。どうもまったく違うようだ、、、、がっっくし、、、
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*上の写真は、泉鏡花記念館からお借りしました。コードネーム「いずさま」は、泉鏡花からいただいてます。下のふたつは、ネットサーフィン中に見つけ拝借しました。

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