吉田美保子の some ori ノート

きいさま、降臨!

2017.12.09

じゃーん!こちら、きいさまです。輝いてらっしゃいます!

今年の春に、ONLY ONLY で作らせていただいた「八寸帯 Let’s go to Opera」を締めてくださってます。お召しになっているのは、笠原博司さん作のお着物。そもそもONLY ONLY のお話いただいたのは、この着物に合わせる帯を作りたいってことが大きな要因でしたので、こちら、完成系です。

強さがあって、曖昧模糊としていて、工芸系で、白場が少しだけある。そんな帯、ご希望でした。

白場の利かせ方は、特に話し合いを重ねて、ご要望をしっかりくみ取って、のぞみました。一筋の金糸もよかったよね。入れる場所とか、二人でよくよく考えた。図面、何回も描き直した。

これは、きいさまと二人だったからできた帯です。一人では決して作れなかった。そんな帯を織れたことは、なによりありがたいです。本当にどうもありがとうございました。

ONLY ONLY はつくづく二人三脚だなあ。織ったのは一人だけど、作ったのは二人。締めるのは一人。見て楽しむ人はたくさん。面白いね。

じざいやさん、ありがとう

2017.12.03

本日で、じざいやさんでの展示会を終わりました。お越し下さった皆さま、本当にどうもありがとうございました。昨日も今日も、とっても充実していました。上の写真は、今日のベストショット。帯にご注目。うふふ、きいさまですよ。「Let’s go to Opera」締めてくださってます。

今日はなんと、青森県からのお客様もいらっしゃったんですよ。それも私の織った着物を着て。びっくりしたなあ。お求めくださってたの知らなかったから、心底驚きました。とても似合ってらして、輝いてらして、うれしかったです。

じざいやさんにいらっしゃるお客様がたは、みなさん、本当にきものが好きで、楽しんでらして、いいなあって思いました。じざいやさんは、そういうきもの好きな方々のたまり場なんだな。

作品たちは、引き続き、じざいやさんにてご覧いただけます。まだまだいいのありますからね、ぜひ、見に行ってくださいね。

 

きいさま、Let’s go to Opera.

2017.06.07

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きいさまのonly only 完成しました。
ちんまりしない。見たこともない帯。のびのびと思い切りよく。ファッションではなく、工芸。
そんなきいさまとの、二人三脚。やっとこやっとこ、走ってきました。二人でゴールを切りましたよ。
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名前をね、「Let’s go to Opera」とつけさせていただきました。華やかなきいさまにお供して、いろんな場所に締めていっていただきたい。そんな思いを込めて。
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上の3枚の写真を見てくだいね。おタイコの締め方で、表情がこんなに変わります。遊べる帯よ。
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きいさまね、先日、完成したこの子に会いに、我が家にお越しくださいました。見るなり、パチパチパチと拍手してくださった!ミホコさん、やったねって!
ブラボー!
私もとても感激しました。うれしかった。ありがとうございます。
きいさま、作り手に精一杯仕事させてくださいます。優しい、度量が深い方です。そうじゃなきゃ、「見たこともない帯」ってご注文されないよね。見かけが穏やかで、きれいな方だから、その肝の座った感じがちょっとギャップで、萌えました(笑)。
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この帯は、きいさまのライフでもあります。手先で静かに始まって、だんだん活動的になり、お腹とタイコで賑やかな時間を過ごし、また静かになってきて、タレの部分では静かな時を迎えてる、、、、そんな人生を表現しています。
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静かな時に戻るには、まだまだゆっくり時間がありますね、きいさま、ますますいい人生を!

ラジオ深夜便で笠原博司さん

2017.06.01

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いつも布団に入って寝入りばな、ラジオを聞いています。NHKのラジオ深夜便って老人に人気の番組。妙に好きなのよね。
昨晩聞いていたら、「4時からのインタビューは染織家の笠原博司さん」と言うではないですか! 笠原さんって、今、取り組んでいるきいさまの帯の合わせる着物の作家さんです。まあなんと言うご縁。
これは聞かなくちゃと思うも、午前4時の放送では、とてもとても。。
そう思いながら寝ちゃったのだけど、今は便利なサービスができてて、昨晩のラジオが1週間聞けるのね。今日、仕事しながら繰り返し聞いてました。
笠原博司さん、丁寧な、率直な語り口で、ラジオの向こうの宮城県の自然の中の工房でお話しされてる姿が目に見えるような感じしました。若い頃の本郷さんの工房での修行時代の話も、今、東北で後進の方に道を作ってらっしゃる話も、引き込まれて聞きました。ああ、この人の織ったものは、気持ちのよい、いい織物になるわけだなあと思いました。
今からでも聞けますよ。こちらのページの、一番下の「4時台」ってとこをクリックしてください。6月8日の午後6時まで聞けるそうです。
*写真は、きいさまの only onlyの帯、水元している様子。この帯がね、笠原博司さんのお着物に合わせて、締めていただくんだよ!

きいさま、織ってます

2017.05.30

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さあ、きいさま、本番織ってます。あとはもう決めたことを完遂するだけ。
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緯糸の地の部分は和紙の糸です。
メインのところは、「カンボウジュ」。カンボジアにいる野生に近いお蚕さんの吐いた絹です。それから、「キビソ」。繭の外側のシェルターになる硬い部分を糸にしたもの。
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染めにはちょっとだけ秘密があります。それは染料に「オペラ」をほんのちょっぴり加えたってこと。色で言うところの「オペラ」って、とても華やかな濃いピンク。ちょっと派手すぎるくらいの色。
きいさま、そそとした華やかさをお持ちになのです。そして、オペラを愛してらっしゃる。だから、「オペラ」の華やかさのエッセンスをこっそり加えました。ごくごくちょっぴり。魔法をかけるつもりでね。

ブラッシングカラーズ

2017.05.23

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きいさまのonly only、いよいよブラッシングカラーズです。
テーマは、ライフ。
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それも生まれる前から、
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土に帰った後まで。
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静かに始まり、活動し、静かに帰る。
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そんな一生を帯に表現する。
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きいさまのおのぞみは、「ちんまりしないこと」。
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のびのびと、きいさまの一生を表現します。

色をつくる

2017.05.23

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さあ、きいさま、デザインは決まりましたので、色をつくります。ここは踏ん張りどころです。妥協なく、ある一点を見つける感じで、合わせて行きます。
試し織りの時のデータはあるけど、その通りにはいかないのが泣きどころ。がんばります。
ひとつ、きいさまと話していて面白かったのは、私が「ブルー」のカテゴリーのつもりで染めている部分を、「グリーン」とおっしゃいます。このグリーンがいいと。え?これ、緑に見えます?え?え?
私は舌を巻きました。確かに、その部分、青い染料に、黄色の染料を相当量混ぜています。だから、緑成分はあるのです。しかし、ぱっと見には分からないと思うのだけどな。色に敏感な方だな、きいさま。
私の方に、これは青だって思い込みがあるのもあるだろな。思い込みはいかんぜよ。本番にも黄色成分、こっそりしっかり入れますよ。

5回目の打ち合わせ

2017.05.21

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*お詫び 申し訳ございません。きいさまストーリー、ページが前後しており、時間軸が狂っておりました。話が通じなくて、読みづらかったと思います。申し訳ありませんでした。理由は、保存しておいた原稿を、時間軸を合わせないまま、アップしたことによります。すでに差し直しましたが、きいさま、お読みくださっている方々、ご迷惑をおかけいたしました。以後気をつけます。ごめんなさい。
では、気を取り直して、青い銀糸に「待った」が掛かったのちの話から再開しましょう。
青い銀糸が却下になった数日後、きいさま、5回目の打ち合わせにお越しくださいました。「お忙しい中、ミホコさんの手を止めて申し訳なかった」と急いでくださったようで、こちらも恐縮。
構いません、構いませんよ。お互いに納得したものを作りましょう。なんでもおっしゃってください。
この日は、デザイン的に大どんでん返しがありました。最後の最後にひっくり返りました。
まず、くだんの青銀はやめて、ブラッシングの入れ方も変えて、タイコに切り替えが2回入ります。タレの茶色のグラデーションもなくし、タレと手先は同じ色にします。お腹の柄もだいたい同じです。
うん、決まったね。
きいさまと、いろいろと腹を割った感じで、お話ができよかったです。
きいさま、「ちまちましないでくれ」と何度もおっしゃいます。「世の中、ちまちましたものばかり。思い切りよくやってほしい」と。
私、「そうは言っても、、、」「話し合ったことを、全部指定された通りに入れるとなると、どうしても狙ってやりますよ。実は狙いすぎになるのを私も警戒しています。ちまちまは私も嫌いだけど、思い切りよくすると外れる可能性も出て来ます」
きいさま、「それは、この帯をミホコさんに頼んだ時点で、責任の半分は私にあると思っている。だから思い切りよくやってほしい。」
わー、そういわれると、ますますがんばります。きいさま、かっこいいなあ。きれいで優しげでふんわりした印象の、いいところの奥様って感じのきいさまですが、漢の部分もお持ちだわ〜〜。ギャップに萌えます。
*写真は何度も描き直している図面たち。

ペンディング

2017.05.15

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4回目の打ち合わせの2日後、きいさまからメールが入った。恐縮しつつといった感じで、、、、
読んでびっくり。なんと!
「撮ってきた画像を見ていて思ったのですが、おタイコに入れるブルーグレーの横線ですが、色を変更してみたいと思うのですが、間に合いますか?
写メを見ると、すごく沈んだ感じなのです。そこでなぜか三本の金色の横線を入れたらどうかなと思い立ちました。三本の太さは変えるのです。ミホコさんはどう思われますか?」
おー!ペンディングですね。ギリギリですが間に合います。とにかく一旦中止します。セーフです、
しかし、金色の横線となるとどうだろうな。ミホコさんはどう思うかって問いにはどう答えるか、、、、
うーん、そうだなあ。どんな金にもよるけど、案外、変化に乏しくなるかもな。うーむ。あと、まとまりという点ではどうだろうなあ。バラバラすぎないか?
まあとにかく、作業は一旦止めて、きいさまからの次のご連絡を待ちましょう。お互いに納得できる着地点を探りましょう。
*写真は却下になったブルーの銀糸。出番がなくてがっかりという面持ちか。

きいさま、4回目の打ち合わせ

2017.05.14

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きいさまとの4回目の打ち合わせは、3回目の3日後。連休初日。私は、くだんの青緑の糸を織り込んだ4枚目の試し織りを間に合わせました。今回の試し織りは、短いのでブラッシングカラーズは大変やりにくく、本番のような刷毛目は出ません。しかし染料や糸は本番と同じですから、色味はわかるはず。
この日、我が家は人の出入りが多い日で、朝からワタワタしておりました。(前の晩にiphoneが壊れるという衝撃を引きずっていたこともあり、、、いつも鳴らない電話がバンバンということもあり)きいさまは、いつもと同じ、にこやかで涼やかな感じで登場されました。
4枚目の試し織りをお見せすると、これは違うとハッキリ。こんなにパッキリさせたいのではなく、音楽で言えば、ちょっと変調したいだけだと。ガラッと違う曲にするのではないのよと。
なるほど、そうか。やりすぎた。
ではどうしましょう。
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私はふと、青い銀糸を入れたらどうかと思いついた。おさえた色味の細い青銀なので、紬の織物にも合う。糸棚から出して試し織りの上に置いてみた。お?
きいさまも乗り気なご様子。ほっとされた表情になられます。奏でる音楽の調子、いい感じで変わるかな?これ、普通の絹糸と一本置きに入れましょうか?テンションが合いますしね。
金糸や銀糸をちょっと入れると、表情変わるし、角度によってキラリと光って華やかになる。きいさまは劇場にも締めて出かけたいとのご希望なので、華やかさはウェルカムだ。
よしよし。いいぞ。ではこれで決定ですね。
きいさまは、写メして帰られました。

きいさま、糸を染め直す

2017.05.13

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きいさまのonly only、染め直すことになった色の目標はこの色。打ち合わせの最中に、二人で決めて切り取って貼った。ピンポイントでめざすのだ。青とも緑ともつかないきれいな色。
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その日、きいさまお帰りになった後、さっそく染めたよ。うーん、ちょっと鮮やかすぎかな?強すぎたか?タイコや前柄に、一本、目立つ色が入るのはいいと思うのだけど。それに経糸に消される分もあるし。やってみらんと分からんわ。織るっきゃないね。もうそんなに経糸使えないけど、ちょっと織ってみよう。

きいさま、3回目の打ち合わせ

2017.05.12

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きいさまとの3回目の打ち合わせに向けて、私は3枚目の試し織りをした。2回目の打ち合わせで決まったことと、先日いただいたメールを鑑みて、本番に使う染料も糸も全て入れ込んで、ぎゅっと圧縮して織って見た。こんな感じだよな。
さあ、準備オッケーだ。
4月後半のゴールデンウィークの直前に、きいさま、3回目の打ち合わせにお越し下さった。この日もお着物で。すっきり美しい着姿で、とてもお似合いです。きいさま、とてもきれいな方です。
さっそく試し織りを見ていただく。タイコの形にして、体にあてて鏡に映すきいさま。タイコを少しずらしたり。だいたいは良いようだが、さらに詳しく検証。
私としては、タレ先からの茶色のグラデーションが気がかり。たった2寸(8cm)のところにグラデーションを入れたいとのことなのだが、これって怖いのよ。織り縮みの計算がちょっとでも狂うとずれるから。
「これ、リスクです〜。」ということは、もちろんお伝えする。その上でやるならやります。
きいさま、タイコのところに入れている、青い緯糸を見て、「この色が違う気がする」とのこと。
おお、そうか!そうですね。この色は2枚目の試し織りの時、きいさま用でない部分に使った糸です。流れでそのまま使ってました。染め直しましょうか?タイコの中心ですものね。要となるので、しっかり納得した色でないとね。

きいさま、帯のストーリー

2017.05.11

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2回めの打ち合わせからしばらくたった頃、きいさまからメールをちょうだいしました。
帯について、いろいろイメージが浮かんで、それがまとまってきたから、伝えたいとのこと。
曰く、、
「帯に一つのストーリー性をもたせたらどうかなと思っています。
手先は人の出発点で水のイメージ(まあ、羊水です)。ブルーグレーで静かに始まり、人が成長して活動的になると、緯糸に和紙やカンボウジュを使って変化を持たせ、タレ(人生の終末)に近づくと再び静かになり、最後は水と土のイメージで終わる。それが先日も希望したブルーグレーと茶のグラデーションです。まあ、土に帰るという感じかな。
なので、手先とタレの質感は静かで端正なイメージ。おタイコと前帯は、緯糸の種類や織り方を変えてテイストを変えたり、横線を入れたりして変化を持たせるというのが、今、浮かんでいるイメージです。」
なるほど、なるほど。
では、このきいさまのイメージと、2回めの打ち合わせで決まったことを踏まえて、もう一度整理しましょう。
まずは図面に落とし込もう。タイコや前帯部分の実物大と、全体像の縮小版と2種類。(写真は小さい方の図面です)
作りながら私は思いました。
なんで手先が生まれた方なの?返しの部分から始まって、タレくらいから活動的になって、タイコが大輪で、いろいろあって、前帯でもう一花咲かせて、だんだん静かになるって方が、自然じゃん?
と思ったのだけど、ハッとした。
そっか、作る方からしたら、タレの方から始まって手先がラストだけど、お召しになる方からすれば、まず、手先の方から締め始めるよね。お腹にも近いから、まさに身を守るしね。
手先をちょいと置いといて、一巻き、二巻き、お腹を決めて、ぎゅっと締めて、タイコを背負って、タレを整えて。
そっか。帯の一生は手先からだわな。私、作り手目線に凝り固まってたな。締める方に寄り添おう。着付け下手だけど、着物きててよかったな。じゃなきゃ気づけなかったと思う。
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*今日のブログ、お着物をお召しでない方には分かり難かったかもしれません。ごめんなさい。
何が言いたいかというと、帯というのは、一枚の布でできていまして、それが、それが、織り手は(私はと言った方がいいか)、タレ→タイコ→前帯→手先の順に織り進むのですが、締めるときは逆で、お腹の側から、手先→前帯→タイコ→タレの順に締めていくということです。

きいさま、2回目の打ち合わせ

2017.05.08

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4月の半ばのある日、爽やかな青空の日、きいさまと2回目の打ち合わせをしました。第一回目からは2ヶ月以上たっています。この日は、きいさまのご友人で、私も仲良くしていただいている神奈川絵美さまもご一緒くださいました。(こちらに書いてくださってます!→
いらっしゃい!
きいさまも絵美さまも、さすがの着こなしのお着物姿。春まっさかりといった感じで、こちらまでウキウキと明るくなります。一方、私はねずみ色の作業着〜〜。
きいさまは、これから作る帯に合わせるおつもりのお着物をお召しです。とても素敵な、パープルベースの白い花咲く帯を締めて。春にはこの帯があるけど、秋の帯がないというのが、今回のご注文の大きな要因です。
試し織りは、先日ブログに載せた、丸々一本織ったあと、経糸を掛け替えて、またある程度の分量の試し織りをしました。とにかく織ってみたい。織って見ないと自分でも自信を持ってはわからないし、勧められない。
で、実は、きいさま用に織った試しに続けて、他で使えるかなと別の試しも、合体させて織りました。その方が長くなって、帯となった時を想像しやすいから。
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お見せしたとたん、きいさまのお顔がパーっと明るく、なったのを見逃しません。素敵素敵と。よかった。ツボだ。
で、驚くことには!
きいさま、きいさま用の試しと、別の試しを合体させたいと。ここがおタイコね。って、二つの試しの境目をさしておっしゃる。
えっ!はぁ?くっつけるの??染料も糸も全く違うんだけど。一本の帯に、両方入れちゃうの???それもど真ん中に?え?え?え?
私、そんなのやったことないけど、オモシローーイ!
only only はいつもエキサイティング。何が起こるか分かりません。

試し織り以前

2017.05.02

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きいさまの帯に取り組みはじめた頃、私は新しい絹糸を仕入れた。これはすぐにでも使ってみたい。やってみたい。織りって糸でぜんぜん違うのだけど、すごくいい予感がする。
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八寸帯の糸使いは、毎回、微妙に変えて、調整している。いつも挑戦だ。思い切って仕入れたこの糸、使いたい。しかし、使ったことない糸をいきなりonly only の本番にするのは、チャレンジングすぎる。まず自分の勝手で織って見よう。その上で、きいさまの帯に使えるか検証しよう。
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ま、やってみないと分からんというのが本音。ちょっぴりの試し織りだけじゃ、帯としての良し悪しは分からないから。ここは丸っと織って見るか。
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で、素材や染料などの条件は違うけど「ブラックパープル」をもう一度作る気持ちでやって見た。
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実は、拙作「ブラックパープル」、自分ではその良さがイマイチ分かっていない。織りたいからとにかく織るぞってその気持ちだけで織った。きいさまのお目に留まったのも実は意外。それに、その後すぐに売れてるのよね。あっという間に羽ばたく力があったのに、その力が、作者の私に全然見えてなかった。
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んじゃ、また、織って見るっきゃないじゃん。求められるには理由があるんだ。その理由をつかまねば。
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それで織ってみたのが、ここで使ってる画像です。ど迫力の帯となりました。上の6枚の写真と、下の6枚の写真、実は同じ帯の裏表です。リバーシブルという訳ではありません。仕立てる時に、どちらを表にするかは決める必要があります。
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ブラッシングに使った染料は、「ブラックパープル」と極力似た色味の酸性染料にした。ブラックパープルは、植物染料なのだ。
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緯糸は、大麻の草木染め。ブラックパープルはカンボウジュだが、その存在感と強さでは、勝るとも劣らないものがある。
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種明かしすると、上の6枚の写真は、経糸が見えていて、下の6枚の写真は緯糸が見えているというわけです。こんな風になるとは自分でも思っていなかった。想定を超えた、大変面白い帯となりました。
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きいさまにお目に留めていただいた「ブラックパープル」とは、全く別物になりました。さあ、きいさまの帯は、これをどう発展させましょう。
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こちらの帯、もしご興味おありの方、おられましたら、説明させていただきたく思いますので、どうかお気軽にお問い合わせください。

きいさま、一回めの打ち合わせ

2017.04.30

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きいさまからメールを受け取って4ヶ月たった今年の2月のはじめ、1回めの打ち合わせをすることになりました。
欲しい帯のイメージは、4、5年前にご覧になった八寸帯「ブラック・パープル」だということだったので、その資料を探しました。あった、あった。日付は2012/08/22だった。使った糸とブラッシングの色見本は取ってあるけど、実際の布は残っていない。きっとギリギリだったんだろう。
いろいろ思い出すなあ。この「ブラック・パープル」、決して狙って織ったんじゃないないんだよな。ちょっとやって見ようかくらいの気持ちで織った。だから、記録も精査した感じではとってない。ふむ、緯糸にはカンボウジュ種を使ってるな。カンボジアとタイの国境あたりにいる、原種に近い蚕だ。最近は手に入らなくなった糸だ。懐かしい。
この日、きいさま、我が家までお越し下さいました。明るい笑顔。お久しぶりです!
きいさま、これからお作りする帯に合わせるお着物の共布を持ってきてくださいました。ああ、以前お会いした時、お召しでしたね。このお着物の作者は、笠原博司さんですって。まあ、あお会いしたことはないけど、国展などで拝見しております。すばらしいお着物に合わせていただけるとは光栄です。帯もがんばります。
この日は、いろいろお話しをしました。きいさまがどんな着物ライフを送ってらっしゃるかなども。お小さい時のことなども。Aラインのコートを着た、可愛い女の子のことを想像して、楽しかった。
キーワードいろいろ。
・立体感が好き
・ピンクとパープルが好き
・白場は少なめに。でも全くないとベタになる。それはNG。
・強さは欲しい。
・曖昧模糊としているものが好き。
・優しい感じ。
・ファッションより工芸が好き。工芸色の強いものが好きだが、強すぎると自分が負ける感じがする。
・赤みの色彩。赤紫。こげ茶。
・グレーのバリエーション。ブルーみ、パープルみ、ピンクみのグレー。
・あれもこれもではなく。盛りだくさんでなく。
・金糸を入れたい。劇場にも着ていくので華やかさは欲しい。
・秋のイメージで。光がだんだん陰っていく感じ。
・件の着物に合う、秋の帯が欲しい。
さて、どうする?

only only きいさま、スタート!

2017.04.28

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さあ、新しいonly only ストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは、「きいさま」です。
きいさまとのお出会いは、いつだったでしょう?もう4、5年前かな?私がオープンハウスをした時に、お友達とご一緒にお越しくださいました。綺麗で、きちんとしていて、朗らかな優しい笑顔。周りをホッとさせてくれるタイプの方です。
お召し物は、素敵な織りのお着物。むむ、作家ものだな。大袈裟な感じは一切ないが確かな個性がある。それを楽に来こなしてらっしゃるのは流石だな。お人柄にもとても合ってる。私の織ったものを、とても熱心にご覧くださった。
二度目は、一昨年の個展「三角・吉田」に、お越し下さった。まあ、お久しぶりです。この時も、とても熱心にご覧くださった。(上の写真は、このとき撮っていただいたもの。左がきいさま、右は着物ブログで有名な神奈川絵美さま。拙作「シスレーがいる風景」をお召しです。おお、この時のこと書いてくださってる→
それが、2回目にお会いしてから一年が経とうとしていた昨年の10月のある日、サイトのお問い合わせページからメールを下さったのです。
そこには、
・4、5年前、我が家にお越し下さった時に見た八寸帯「ブラックパープル」がずっと頭に片隅にあること、
・そのとき着ていた多色の綾織の着物にあう帯をずっと探しているが、なかなか自分のイメージ通りのものに巡り合わないこと、
・「三角・吉田」で見た「パープル・トライアングルズ」も合っているようにも思ったが、何かが違うなという感覚があったこと、
・自分の持つイメージでは、「数色の色(多色ではない)で織られた、ムラのある、無地感覚の帯」。
・「ブラックパープル」はそれに近い感じがした。
・「パープル・トライアングルズ」は、白場の分量が多くて目の粗い感じが自分のイメージとは異なった。もう少し無地に近い感じが良い。
・色味の希望は、パープル、グレー、(黒?)を基調とした、パープルともグレーともつかない曖昧模糊とした色。
・パープルは、赤みが強い方がいいのか、青みが勝つ方がいいのか、わからない。
・時間がある時に相談したい。
などなど書かれていた。
私は、まずもって、きいさまが、私が過去に織った帯のことを、こんなにもつぶさに覚えてくださっていることに、感激した。こうやって、見ててくださる方があるんだなあ。ひとつひとつ一生懸命作ってきてよかったなあ。
私は、今は忙しいが、来年、時間ができたらよろこんで織らせていただきたい旨を返信した。

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