吉田美保子の some ori ノート

「Sky Grey Bumpy(スカイグレイバンピイ)」

2016.02.26

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もまさまのonly only 完成しました。出来上がって、自分としてはとてもしっくりときました。もまさまが望まれていることと、私の思い、帯としての完成度、みっつのバランスがとてもよかったと思います。
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この帯を「Sky Grey Bumpy(スカイグレイバンピイ)」と名付けさせていただきました。
Bumpy バンピイっていうのは、でこぼこのことです。この帯のテクスチャーがでこぼこしてるでしょ。スカイグレイは、明るい曇りの日の空の色のようだと思って、名付けました。
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これ、もしかしたらシリーズ化するかも。バンピイシリーズに発展しそう。そしたら、もまさまの「Sky Grey Bumpy」は、記念すべき第一作となる。
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この帯は巡り合わせが大きかったなと思っています。ことの起こりは、しばらく以前に、勢いのある面白いキビソ糸と出会い、この糸を使いたいって強く思ったこと。そしてそのために、半ねりを試行錯誤でどうにかハンドルできるようになったこと。そんなおりに、もまさまがご注文くださったこと。そんなことが重なってできた帯なのだ。
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もまさまはスイッチを入れてくださる方だなあ。ありがたいことです。スカイグレイバンピイよ、もまさまに末永く可愛がられるのだよ。達者でな。

できた!

2016.02.23

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もまさまの帯、織り上げました。早速、検反して、糸の処理して、湯通しして、伸子張りしてます。
ちなみに写真の向かって左に青い糸がちろっとついている所が、前帯の中心です。締めたとき、おへその上にくるところです。写真に写ってない手前側におタイコ、もっと手前にタレにあたる部分があります。写真のずっと奥が手先です。
一見、無地っぽく見えるもまさまのこの帯ですが、タイコと、お腹、タレ、手先と見える部分は特に意識して織ってます。太いキビソ糸を集中させてます。緩急のある帯です。太い糸を全体に入れてしまうと重くなるってのもあります。
どうですかね?この段階になると、もう何もできないから、かえって、心臓に悪いです。このあと湯のしに出して、完成です。

もまさま、織ってます。

2016.02.21

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もまさまの帯、本番、織ってます。太めのキビソ糸が、いい感じに効いていると思う。
普段からめざしている世界のひとつに、うるさくなく、単調じゃない。ワイルドかつ、気品がある。そんなの、あります。もまさまがご注文くださったおかげで、その世界に一歩近づけたか???
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織ってて思うけど、これ、便利な帯になりそうね。いろんな着物に乗りそう。いろんな場所に締めて行ってもらえそう。うふふ。きっともまさま、お似合いになると思う。さあ、もうひとがんばり!

本番、行きます!

2016.02.20

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もまさまの帯、緯糸も全て染め揃いました。今回は、小管巻きをあらかじめ全てしてしまうことにしました。キビソ糸って、長さも太さも、何も明示されないまま売ってるんです。これ、大変に困ったことなのだ。国産糸なのになあ、、、そんなもんなのかな、、、、
このままでは不安で不安で織れません。だから、まず重さを量ります。巻くことで長さを計ります。緯密度と織り幅から、必要緯糸量を割り出して、足りるってことを証明します。もちろん、この段階でデニールを割り出し、次への資料とします。
この工程は、手伝いに来てくれたasakoさんに、すっかりお任せしてしまいました。私がするよりずっと正確に素早くやってくださいます。
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今回のメインになるキビソ糸、同じ種類で、同じ精練、同じ染めでも、練り減り率が違うのだよなあ。綛ごとに巻き分けて、織るときに混ぜたり、または、固い糸が欲しいところに練りが浅い糸、柔らかくしたいところによく練れている糸を使う。
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だから、糸のカテゴリーは3種類だけど、杼は五丁。さあさ、織りますわよ。

試し織り第2弾のお返事

2016.02.18

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試し織り第2弾をご覧になったもまさまから、ご返信あり。「グレーがもう少し薄い方がよいと思います」とのことだった。
慎重になってる私は、「えっと、これは、本番もだいたいこの試しのようでよく、ポストイットのついている、濃いグレーをもう少し薄いグレーに変えるということですね?濃いグレーは全く要らないってことではなく、地の薄いグレーよりは少々濃いグレーがところどころに欲しいけど、現行は濃すぎるってことですね?
上記のようでしたら、現行の濃いグレーと、地の薄いグレーの間くらいのグレーを新たに染めて、本番に取りかかります。全体の感じは現行のままでいいですね?」
と返信し、すぐに「そういうことです」とお返事いただいた。よっしゃー!やったーー!
では早速もとめるグレーを染めましょう。この「中間の色」を染めるっての、とても微妙で難しいんですけどね。地の色と差がなさ過ぎると溶け込んじゃうし、あると現行と変らんのよね。微妙なのよ。完全に乾かないと判断できんしね。しまっていこー!

もまさま、試し織り第2弾

2016.02.17

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もまさまの帯、九寸仕様で、試しの第2弾を織りました。織りはじめたとたん、「あ。これ行けるわ」って思った。大丈夫。心配したけど行ける。経と緯のバランス取れてる。よかったわー。
八寸で織ろうとしていた時より、細目の緯糸を多めにして織ったのだけど、それがよかったかな。無理なく自然に経と緯が出会ってる感じ。
試し織り第一弾の時は、緯糸の入れ方を単調にしていた。それは、耳(布の端のことね)をきれいにするためだった。八寸帯だと、耳のきれいさは必要なんだ。しかし、九寸帯だとその制約はない。耳は折り曲げて仕立てますのでね。だから、使う杼の数を増やして耳で糸がワープしてても大丈夫。それは、布の表情を作っていくのに、とても有利。織りたいよう織れる。
ちょっと濃く染めた糸も織り込んでみよう。もまさま、お好きかな?無い方がいいかな??
さあ織れた。湯通ししてアイロン掛けて、耳の部分を折り曲げて、出来上がり幅と同じにする。郵送してもまさまに見ていただきましょう。

もまさま、緯の染め

2016.02.15

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さあ、緯糸を染めますよ。極薄グレーです。グレーって不思議で、黒を薄めた色ではないのです。いろんな色をまぜて作ります。赤、青、黄色を混ぜた色がグレー。だから、幅広いんです。
もまさまのグレーは、青味をもった銀鼠にしましょう。現代的でクールなもまさまのイメージです。あまり、うるさくしたくないので、極太キビソも、細目のキビソも、同じ色になるよう一緒に染めます。
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ほら染まったよ。では筬を入れ直して、試しの第二弾を織りましょう。

大変更

2016.02.11

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「今回は九寸でお願いできますか?」
そのメールにはこう書いてあった。ギクッとした。もう経糸は経てていて変えられない。拙作「ナチュラルアース」が希望とのことだったから、八寸だと思い込んでしまった。確認すべきだった。ちょっとしたスキだった。悔やまれる。
もまさまが、リピーターさまで、あまり語らず、さらっとした方なので、こちらもくどいメールにならないようにしていたのも災いした。
その上、最近は、八寸が流行りなのか、お問い合わせやご注文が八寸ばかりなのも、私の思い込みに拍車をかけた。実は、丸一年ほど九寸を織ってない。
ガーン、困った。八寸帯用の経糸を九寸帯用に変えられるか?それはケースバイケースなのだ。全く不可能のこともあるし、オッケーのこともある。
私は平静を装い、返信をした。
「今回の帯、九寸の方がよろしいのですね。糸の具合がどう出るか、ちょっとやってみますね。厚みが出過ぎたら、八寸の方がいいかもですが、その場合は相談させてください。いずれにせよ、また試し織りをしましたら、ご報告いたします。」
さあ、やってみるっきゃないぜよ。
*ここで、帯とか織物とかに、お詳しくない方のために、少々説明いたします。(しかしながら、人生なんの役にも立たない情報ですよ〜。)
まず、私の織る帯の種類。
八寸名古屋帯と、九寸名古屋帯があります。違いは、すばり名前のまま、幅が八寸か九寸かです。八寸帯は、布の幅が帯の幅とイコールです。九寸帯は、幅が3.8cmほど広く、帯にする時、布の耳は折り曲げて仕立てるのです。八寸の方がカジュアルと言われますけど、それはお好みですね。
では、八寸のつもりで準備した経糸を、九寸にするためにはどうしたらいいか?それは、密度を粗くすればいいことなので、作業的には簡単です。しかし、問題は、密度によっては経糸の本数が足りなくなるかもしれないってことと、そうすることによって、経糸と緯糸のバランスが、どうなるかってことです。経糸の密度によって、布味はガラッと変ります。
さあ、そこはクリアするのか!
まず本数ですが、電卓たたきまくって、セーフとアウトの境目を出す。候補の筬が手元にあるかどうか確認。よっしゃ、どうにかなりそうだ。現状よりはもちろん粗くなるが、もともときつすぎると思ってたし。その範疇だと言える。
心配の布味はやってみるしかないのだよ。この筬目で、この経緯のバランス。検証しましょう。試し織り第二弾の準備に掛かろう。
*写真は筬の引き出し。

もまさま、試し織り第一弾の返信

2016.02.10

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試し織りとその説明書きを送っていたもまさまから、メールが届いた。曰く「おっしゃるように、試し織の最後の部分がよいかと思います。」
あー、よかった。私のおすすめの部分を気にってくださった。
それで、早速、今後の構想を練る。試し織りをしたことで、見えたことある。それをこなして、本番としたい。
何をしたいかと言うと、ひとつは、緯糸のセリシンをもう少々落とすための、追加の精練。この理由は、糸をもう1段階やわらかくすることで、経糸と緯糸を噛みやすくし、しっかりした布にしたいから。
ふたつめは、緯糸をごくごく薄いグレーに染めたい。これにより、絹の黄変を防げるし、生成りのままより、落ち着つきと風格が出ると思う。
みっつめは、筬を入れ替えて、経糸の密度を少々ゆっくり目にしたい。そのほうが、経緯のバランスがいいと思う。今のところ、ちょっときゅうくつで、息ができてない感じするから。
この段階で、手間を惜しまず、もうひとふんばりすることで、すーっと気が通った完成度の高い帯になると思っている。
それで、試し織りそのままじゃ無いですよ、ご了解くださいってことを、もまさまにメールする。
もまさまからは、いつものように素早いご返信いただく。ご快諾でよかった。
そしたら、追伸のようにして、すぐにもう一通メールが送られて来た。読んだとたん、目が点になった。そこには衝撃の一文が!!!!
つづく。(ひっぱるね〜〜)(ヨシダ、大げさだって、、、)

もまさま、試し織り第一弾

2016.02.08

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もまさまのonly onlyの帯、試し織りです。あまり深く考えず、いろいろな可能性を探ります。目標となる拙作「ナチュラルアース」は、経糸が白っぽい色で、緯は淡いグレーに、濃いグレーと白がところどころに入ります。浦野理一さんの経節帯は、無地のものは、一色オンリーのものが多いように思います。さてさて、もまさまのはどうしましょう???
極薄ブラッシングカラーズもいいかもね。早速やってみましょう。ざっくりキビソの合間にキリッと筋を入れてみたら???ではでは、試してみましょう。経は白のままにして、緯のグレーを濃くしてみては????それもいいかも。うーん。ブラッシングはなくてもいいかな?うん、多種類の経糸が語ってくれるよね。だったら緯をちょっと染め足した方がなじむよね。緯を染め足すとなると、これはもまさまのご意見聞いてからだな。さてさて、、、
などなど、ぶつぶつ言いながら、ああでもない。こーでもない。
よし、これで、一度もまさまに観ていただきましょう。本番と条件を同じにするために、蒸しをして、水元をする。
もまさまにメールをすると、「ナチュラルアース」の織り見本もみたいとおっしゃるので、一緒にお送りすることにする。

もまさま、経糸

2016.02.05

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今回のもまさまの経糸、こんな感じ。分かりづらいと思うのだけどね、糸をいろいろ混ぜてますの。絹の種類や太さが微妙に違いますのよ。これ見よがしでない複雑さ、目指してますの。もまさまお望みの、浦野理一の世界もそうなんじゃないかな。
これね、いつもより、ほんの少々太め多めにしてみました。しっかりした、筋のいい糸中心で、暴れん坊は少なめです。ヨコを暴れさせますのでね。ヨコを支える土台です。
筬の密度は、とりあえずいつも通り。もしかしたら、もっと疎にした方が緯の良さが出るかもね。そしたら、筬を入れ替えましょう。
うふー、いい感じです。

もまさま、糸の準備

2016.02.03

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もまさま、糸の準備を進めよう。
経糸は、以前たてたものより、ほんのちょっと太くした組み合わせにする。本数は同じ。ほんの少々、しっかり目の布地にしたいのだ。手仕事はどこまで行っても、微改良の繰り返しだ。
緯糸は、例のゴツゴツした国産キビソ糸と、もう少しおとなし目のやはり国産のキビソ糸の二種類にしよう。ゴツゴツ糸だけだと、ボリュームが出過ぎて厚ぼったくなるし、重さも出てしまう。
早速、精練。酵素精練も何度もやって板について来た。酵素精練の問題点は、精練終わっての水洗いで、白濁した液がいつまでも出ることだ。溶け出たセリシンが落ちきれず、精練が進んで行く。その後染めると、また落ちる。だから、そこまで計算に入れて作業する。仕事は何でも先を見る目だなあ。はあ、算数の日々は続く。
*写真は、精練中の糸たち。50℃くらいのお風呂につかって、垢を落としてます。いい湯だな〜♪

もまさまの糸

2016.01.31

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もまさまの帯、キーワードが、拙作「ナチュラルアース」、「浦野理一」ときて、頭の中でピンと来たものがある。
「あの糸を使いたい」
昨年ゲットした糸で、大変面白いのがあるのだ。イキイキとしたすごいヤツ。見つけた時、狂喜乱舞して、飛びついて買った。使いこなすのは簡単ではない。どう使ってやろうか、手をこまねいて、その時を待っていた。
「今だ」
その糸が、上の写真。国産のキビソ糸。この存在感、すばらしい。しかし、この荒くれ具合、どう制御してやろうか。もちろんこのままでは織れないし、この糸のみでは織れない。織ったとしてもいい帯にはならない。さあ、どうやって、もまさまの帯として昇華させるか。
*ちなみに、この写真は、洗った後です。これでも少々は落ち着いたのだ。

もまさまと理一さん

2016.01.29

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もまさまからの、メールの返事は、すぐに来た。この素早さが、さすがなのだ。曰く、
「浦野理一さんの無地の帯をイメージしています。色については鈍感な方なので、、、、」
おーー、浦野理一さんか。浦野理一の帯と言えば、経節の紬。小津安二郎の世界、、、、なるほどなあ。
たしかに、「ナチュラルアース」は、浦野理一を彷彿とさせるかも。あの、何もない存在感みたいなのがいいのだな。では、その筋で考えましょう。
浦野さんの無地紬はまさに、見ても見ても見飽きない帯だと思う。我が「ナチュラルアース」もその列に並ばさせていただいていると自負しているのだけど、再チャレンジするのなら、もう一工夫したい。その上で、あの風合いは出せないだろうか。
浦野さんの特徴である経糸に大きな節のある糸を使うのは、今回見送って、別の切り口から、攻められないだろうか。なぜなら、そここそが、「ナチュラルアース」の反省点だからだ。軽さが出ないのだ。これ、大きな課題なのだ。
もまさま、色については鈍感なほうとおっしゃるが、これは自己申告だから話し半分だな。しかし、これは「ある程度任せる」ってことと理解していいだろう。白系の無地なんだけど、深さハンパないっての目指そう。
*写真は近所。散歩の途中。

もまさま2、はじまります!

2016.01.28

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次なるonly only は、リピーターのお方。「もまさま」、ふたたび、登場です!
もまさまには、2014年の暮れに、八寸帯「Brown & Brown」を織らせていただきました。(制作工程はこちらです→)また、この他にも、着物店でご購入された帯も持ってくださっています。わー、3本目だ。
もまさま、お会いしたことはないのですが、キリッとカッコいい系のイメージを持っています。クールだけど、温かい、、、。メールのみのお付き合いですので、想像するしかないのですが、確信に似たものがあります。
もまさまとのやり取りは、いつも突然で、ふっと短い直球のメールがきます。今回は、
『「ナチュラルアース」(八寸帯)が欲しいのですが、織っていただけますか?』
とのことだった。(ちなみに、「ナチュラルアース」というのは、2014年に私が織った八寸帯。ここをずーっとスクロールすると出てきます。)メールの返事は、ついリキが入って、長めになってしまう。要約すると、こんな感じ。
・ぜひ織らせていただきたい。
・ナチュラルアースそのままではなく、反省点をふまえ、自分なりにバージョンアップしたものにしたい。
・色は、もまさまのお好みで如何様にもする。微妙な表現もできるが、ご希望はいかがか?
こういう風に、新たなonly only がスタートしたのです。
*写真は、とある美術館の講堂。

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