吉田美保子の some ori ノート

Pure heart Michi、全容あらわる。

2014.08.10

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昨年の今ごろは、アトリエ森繍さまからご依頼の ONLY ONLY に、一生懸命とりくんでました。日本刺繍の大家からのご注文に身震いしながら挑んだものです。鍛えていただいた、育てていただいたと、なつかしくうれしく、思い出しています。
そうしておりましたら、なんと、お写真をお送りいただきました!!!ひゃーー、感動!!!
これは、仮絵羽仕立てもせずにお納めしたので、形になったのを初めて見ました。うっわー!
この写真、撮るの相当お手間だったと思います。どんなに時間とエネルギーが掛かったか、、、、想像するとクラクラします。Pure heart Michi よ、よかったね、こんなに大事にしてもらって、、、生みの親の私はとてもうれしいよ。
しかしながら、これで良かったのか、もっと出来なかったのか、、、と問わずにはおられません。持てる力を全て出し切ったとは言い切れますが、もともとの力が極少なので、、、。
もしよかったら、このお着物のメイキングも、読んでみて下さい。時間をさかのぼっていただけると読みやすいと思います。こちらです→
作品ギャラリーにも載せてます。こちらもぜひ→
あらためまして、アトリエ森繍の森康次先生、佐藤未知さん、本当にどうもありがとうございました。おかげさまでなんとか、織り続けています。

作品ギャラリーに、Pure heart Michi 登場!

2013.09.14

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作品ギャラリーに、最新作、Pure heart Michi、 登場です!
どうかご覧下さい。こちらです。
これにて、アトリエ森繍さまから、いただいた ONLY ONLY のお仕事、ひとまず完結です。森先生、佐藤さん、このブログを見て応援して下さってた皆様、本当にどうもありがとうございました。
さあ、次です!!!! 

Pure heart Michi,  生まれでる

2013.09.13

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こちらが、アトリエ森繍の森康次先生からご注文いただきまして織らせていただいたお着物です。お弟子さまの佐藤未知さまがお召しになります。
僭越ながら、私、命名させていただきました。その名は、、、
ジャーン!
「Pure heart Michi」です!
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Pure heart Michi にさせていだいたのは、一度だけお会いした佐藤さんが、一途で真っ直ぐな印象を私にくっきり残してくれたこと。
このお着物を、染め進むたびに、織り込むごとに、布は透明感やストレートさをどんどん現していきました。まるで佐藤さんとお会いしているようでした。
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白は、森先生がフォーマットされた pure white で、凛とした基礎。
黄は、苦しみや辛さがあっても、必ずやって来てくれる太陽の色。
みどりは、小さな小さな新芽が、みずみずしく、ぷるぷると手を伸ばす様を。
そんなお着物です。

森繍さま、総仕上げです

2013.09.12

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、湯のし屋さんから、ツヤツヤふっくらになって戻ってきました。さあ、最終の検反と墨打ち(印付け)です。これ、けっこう大変。肩山を決め、長さを揃え、衽と身頃の関係を決定します。いえね、これ、織りながら、印つけているのです。だから、本当はそのままでいいはずなのだけど、そうは問屋が卸しません。
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お着物には、名前を付けて、お手紙を書いて、糸見本をつけて、お手元に向かわせます。
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大切に、大切に。大切な人を守るお着物だからね。
お着物の写真は、また後日!

織り上げて、仕上げ

2013.09.11

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、織り上がり、仕上げをしている様子です。
これは、湯通し。糸につけた糊を落とし、布目を整えます。この瞬間は、感動的です。ガチガチに緊張してたものが、ちゅるんと緩んで、息をする。
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その後、張り手で張って、乾かします。
それから、湯のしに出して、蒸気をあてて、布はますます輝きます。
って、実はこの写真、数日前のもので、お着物はすでに森繍さまの元に向かいました。
織り上がったものは、やはり森先生と佐藤さんに一等はじめにみていただきたいですからね。
ブログを見てて下さってる方、ごめんなさい。

織りはレムニスケート曲線なのだなあ。

2013.09.02

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、毎日せっせと進んでいます。
ここは、衿の部分。無地場です。
織っていて、この前教えてもらった、「レムニスケート曲線」を思った。
レムニスケートって、ふたつの曲線が、同じ大きさでバランスを保っているっていうのが、たぶん大事なんだと思う。
今、目の前で、現れてくるこの布のレムニスケートとは?
森先生の思いと、佐藤さんの思い。
森先生の思いと、私の思い。
佐藤さんの思いと、私の思い。
佐藤さんを輝かせる着物であるということと、着物としての完成度。
蚕が吐いてくれた絹糸を生かすということと、素材を制御して目標に近づけるということ。
計画通りに進めるということと、インスピレーションに身を委ねるってこと。
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そんなことを思いながら織ってます。

まだまだー!

2013.08.29

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アトリエ森繍さまの佐藤さんのお着物、ジリッジリッと進んでおります。毎日毎日、目標を決めて。
「今日は何尺進もう」「この柄終えよう」「小管(こくだ)何本空けよう」「機草(はたくさ)何枚落とそう」とかとか。目標達成が日々の支えです。くじけないわっ!
ちなみに写真は、右の後ろ身頃の裾に近いところを織ってます。
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織りたての布に小管に巻かれた緯糸を乗せてみる。経糸が白いから、緯糸の染めは結構しっかり強めです。
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経糸と綜絖はこんな感じ。

織ってます

2013.08.21

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アトリエ森繍さまの佐藤さんのお着物、佳境を迎えております。写真は、上前の裾から一尺あたり。ひざのちょっと下。
上前の裾から二尺くらいまでは、とても目立つ部分です。緊張しつつも、伸びやかに行こう!
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計画通りに織るのですか、24丁の杼のうちどれを選ぶかは、ちょっとしたアイディアや即興や気持ちによります。
例えば、地の黄色を織っていても、それが目立つ場所か、あるいは目立たせたくない場所か。
裾の方からご説明いたしますと、裾を織るとき選ぶ糸は、ズバリ軽く薄めの糸です。って同じ地の黄色の中からチョイスするのだから、ほとんど変わらないのだけど、でもやっぱり違うのです。気持ちの違いかもしれないけど、それは着物になったときの着姿に影響すると思っている。
例えば、裾には、節はなるべく入れないようにしています。そこに人の目を集めたくない。重力のない印象にしたいのです。ボテッとしないは、大事と思ってます。
裾の上に目を移しますと、そこは見せ場と言われる部分。上前の身頃、衽には、特に力をこめます。他の部分を織ってても、緯糸にいい節が出てくると取って置いて使ったり。バランスの比重を大きく、大きく。
その上は、お尻ですので、目立たせません。でも、丈夫さは一番必要。後ろ身頃の話だけど。それで、糸も少々太目を詰めて入れ、しっかりしっかり、一越一越。
その上は、おはしょりと揚げ、何より帯の下だし、何重にもなるところ。じゃまにならないよう、すっきり淡々と。でも、ここは、佐藤さんの体のど真ん中です。大切に大切に包み守る。見えない所だけど、大事なのです。
その上は、前身頃の話だけど、胸のあたりで、これまた見せ場。お顔の近くだから、特にきれいに。衿もそうね。輝く糸を意識して入れる。お顔がパーッと輝くように。
「なんだか、元気になるのよね。自信も持てるし。この着物、着てるとね。」って、いつか、佐藤さんが思ってくれたら本望だ。

緯糸のこと

2013.08.18

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今回のアトリエ森繍さまのお着物の、緯糸(よこいと)について、少々ご説明。
緯糸は、全部で、24種類です。24丁杼で織ってます。
色別に列挙してみますね。上の写真が黄色系。13種類。面積が多いですからね。単調にならないように、濃淡、太細、つるつるホッコリ、いろいろです。
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白は5種類。効かせ色だし、あくまで白く。一種類だけ、ほんの少々、青みがかってます。(←これが真っ白に見えるキモ!)
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緑は6種類。グラデーションをきれいに見せるのに、緑に特に気を使いました。色別は以上です。
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それから、糸の種類別に列挙いたしますと、上の写真が、メインに使った、ぐんま200の生繭座繰り糸です。10種類に染め分けています。緯糸全体の80%以上はこれらの糸になりますなあ。ツルツルピカピカで、とてもきれいな、ふっくらした糸です。
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この14種類の糸が、それ以外の糸です。糸の種類は、生繭座繰り糸の少々太目や、細目の真綿紬糸など。布に表情がでますし、何より丈夫にもなります。
以上、24のチョイス。目の前で、自分の手で糸が布になって行く。

さあ、いよいよ!

2013.08.15

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昨晩、糊をつけた糸を巻きまして、さあいよいよ織りますよ。
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どの杼にどの糸を入れるかも周到に考えます。メインで使う糸は同じ種類の杼にいれて、見なくても触るだけで分かるようにしています。糸量の計算ももう一度。慎重に、慎重に。(算数苦手です)
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袖の部分を織ってます。
12時に手をとめ黙祷。

最終の準備段階にかかってます

2013.08.14

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森繍さまのお着物、最終の準備に掛かってます。準備完了してしまうと、もう変えられないこと多いから、今が本当に腸捻転になるくらいの悩みどころ。
写真は筬を入れ替えているところ。試し織りの時は鯨尺53羽でしたが、52羽に入れ替えています。実作業をしてるのは、手伝いにきてくれた shizu さん。
実はこの後、織ってみて、もっと良くしたいと13ヨミって筬に入れ替えたのです。そしたら良くはならなかった。それでまた52羽に入れ替え。(暑い夜の夜なべ作業、ちょっと自虐的で酔い痴れる)
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地の黄色を、少し濃い色で変化をつけたいと、黄色を新たに一綛染めました。すでに用意した濃い目の黄色を多用して変化をつけようかとも思ったけど、それではきれいな布目にならないと判断。さらに一部の黄色、綛に戻して染め足しました。おとなし過ぎないように。白っぽいイメージにならないように。目指すは、きれいな黄色の着物です。
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黄色を染めたら、緑も染めなきゃ。緑が弱いと全体に弱くなりそうで嫌だった。ホンの少々しか使わないけど。
控えめでありながら、ちゃんと主張がある着物を織りたい。きっと佐藤さんはそんな人だと思う。
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うぃー、やるだけやったぜ。やるだけやれば、心は自由。

試し織りをみていただく

2013.08.12

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、試し織りができましたので、京都に郵送して観ていただきました。
試し織りは、地の黄色から始まって、白になり、緑になり、白に戻って、黄色のグラデーション、、、、を2回繰り返しました。その都度、色や質を吟味して。テクスチャーのツルツル具合ホッコリ具合も変えてます。
色味は、違うと思ったらすぐ染め直すので、時間はかかるけど、その変化が目の当たりで面白い。森先生と佐藤さんが望まれているのは、果たしてどの程度の色味や風合いなのか、、、、探りながらすすめます。
試し織りには、紙をつけて、「この部分はどの糸で、どの位の濃さで織りました」などとメモし、お伝えしました。
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こちらは、同封してみていただいた、織物の設計図。実際に織る時に、この通りに織って行きます。ニュアンスをつける所、見せ場、なども設計段階で書き込みますし、また織りながら即興で付け加えたことも、書き込みます。そうやって全体のバランスを整えます。
速達でお送りしたら、到着してすぐ、森先生直々にお電話いただきました。
開口一番、「きれいですなぁ」とおっしゃっていただいき、うれしかったぁ〜〜。心の底から安堵しました。いろいろお話でもでき、光栄でした。
試し織りは、丁寧なお手紙をつけていただき、次の日には、手元に戻ってきました。
さあ、本番が始まります。

きれいな色

2013.08.08

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アトリエ森繍さんの佐藤さんのお着物、一度目の試し織りをしてまず思ったのが、「きれいさが足りない」。もっと「きれい」を追求しないと。
それで染め直し。
森先生や佐藤さんとのやり取りの記録を再読する。「きれい」という単語が何回もでてくる。「きれいで、明るく、きちんとしている」。求められているものは、明示されている。
よく読め、私よ。
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試し織りの黄色部分に使った杼です。試しの時にはいろいろやってみて、本番の時に、もう少し整理します。
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こちらは緑の方。緑は結局、大幅にチェンジしました。「きれい」は緑の方がむずかしい。

試し織り、はじまる

2013.08.07

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、試し織りが始まりました。
佐藤さんからいただいている色見本と見比べる。
うむ、ちょっと違う。色が薄すぎる。佐藤さんが望まれているのは、もっときれいな黄色だ。
それに、テクスチャーもつまらない。こちらはきれい過ぎ。力強さと面白みに欠ける。
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それで早速、あと黄色7色、緑1色、白1色、染めました。どんどん染める。いいぞ!いいぞ!
今度は、植物染料も使って染めよう。生繭座繰り糸も太い方、細い方、両方染める。真綿紬糸もエッセンス的に使おう。濃淡も染め分けて。
植物染料は、福木と茜を染め重ねることにしました。(福木も茜も、女の人を守ってくれる色だと思ってるし)
酸性染料で染めた糸をメインで使うとしても、植物染料で染めた糸をまぜて使うのは好きです。あえて、ひとつ抜くというか、、、、その方が、着るものとして、肩の力が入らず、着てて楽ではないかと思うのだ。
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黄色の色数を増やしたら、緑の方の迫力が落ちた。緑に力を吹き込むために、また染める。

試し織りの糸が染まりました

2013.08.03

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物の、試し織り用の基本の緯糸が染まりました。これは、ぐんま200の生繭座繰り糸です。これを基準にどういう風に、他の種類の糸をまぜるか?色をまぜるか?
絹糸は同じように見えても、ふっくら加減とか、すべりとか、微妙な色の濃淡とか、違うのです。さあ、悩め、悩め、私よ。
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これなーに?
答えは、糸につける布糊(ふのり)を煮て、漉しているところ。
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漉すとこうなります。
糊の作り方は人それぞれと思うけど、私は毎回、布糊28gにつき、水1.6リットルで作ります。どうしてこの量かと申しますと、これ以上作っちゃうと冷蔵庫に入らないというスペースの事情。以前は多く作りすぎ、冷蔵庫が布糊だらけになったこともありましたっけ。長くやってると、こういうことが上手くなるなあ、、、(←他のことはどうなんだ!)

森繍さま、進む

2013.08.01

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アトリエ森繍さまからの、ご注文、ジリッジリッと進んでいます。
上の写真は、綜絖通しをしているところ。さすが、きれいな糸だなあ。色もニュートラルな白。よかったと思う。
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緯糸にする糸もやってきました。こちらも、国産蚕の生繭座繰り糸です。少々太目。緯を目立たさせるためと、しっかり打ち込むために頼りがいのある糸を選びました。
この糸と、経糸と同じ、ぐんま200の生繭座繰り糸(少々縒りが甘め)(こちらは細いです)をまぜて使いたいと計画してます。場合によっては、真綿紬の細目に生糸が絡んだ糸も少々まぜるか?
きれいな布を織りたいのだけど、風合いの良さ、気持ちよさ、丈夫さ、、、、
試し織りまでいかないと決定できません。
森康次先生から、着るものは「美しく力強いもの」でなくてはと、お言葉いただいてます。
着る人を守る鎧であること。御意です。肝に銘じます。
佐藤さんを、外側からも、内側からも守る着物。そうありたいなあ。
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緯糸の染めの試しです。まず絹の布でやってみます。いきなり糸だと怖いです。
とは言っても、布と糸も違うし、見本の色を染めるのでなく、織り上がり、お召しになった時にその色になるようにってのがミソなので、考えつつ悩みつつ、進めます。
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こちらは緑の方。うーむ、悩みは深いわ。

では染めます。

2013.07.25

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アトリエ森繍の佐藤さんのお着物、いよいよ染めます。
まずは経糸のみ。私は、経糸をすっかり準備してしまってから、緯糸を染めることにしています。その方が、焦点を絞りやすいのです。私的には、ってことですけど。
で、今回、経糸は「白」です。アイボリーでも、グレーを含んだ白でもなく、ジャスト「白」。もちろん、ここでいう「白」は、佐藤さんのお着物として完成したとき、白場をきれいな白に見せ、黄色と緑をきれいに見せるための「白」、佐藤さんを輝かせるための「白」です。
絹の元々の色は一般的には白ですが、白と言ってもいろいろで、少々黄色みがかっていたりします。ですが今回使う、ぐんま200の生繭座繰り糸は、他の糸に比べて、相当白いです。真っ白と言っていいほどだけど、先々黄変することも考えて、白を白くするために染めます。
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上の写真。こんな感じに染めてます。
下の写真は、酸性染料を調合しているところ。今回のような微妙な色をピンポイントで狙うには、植物染料より酸性染料の方が適していると思ってます。

糸を決めた。

2013.07.22

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森先生との電話を切ってから、糸決定に至る少し詳しいお話です。
糸選びは何より大事と思ってる。糸によって、まったく違う布になるから、「どんな着物」にしたいのかが見えて来ないと、糸は決められない。同時に、糸を選んで布を作ることこそ、織りをやる人間だけの特権。染めの作家さん、刺繍の作家さん、ごめんなさいね、おほほ。
その都度、その都度、織りたい布に合う糸を正しく選ぶ。糸の入手は、キモだと思ってる。自分の非力はよくよく分かっているので、頼りになる糸屋さんを味方に付けて、教えてもらったり、融通してもらったり。でも絹糸業界、すでに風前の灯火で、とても難しい点なんです。
今回の、アトリエ森繍の佐藤さんのお着物は、「白をきれいに見せること、明るく、きれいで、きちんとしていること」。さて、その糸は?
このご注文にピッタリ合う特別な糸が手元にちょうどありました。
一年ほど前に、懇意にしている前橋の糸屋さんに、「吉田さん、悪いこと言わないから、買っておきなさい。こんな糸、もう二度とでないよ」と勧められ、無理して買った、ぐんま200の生繭座繰り糸。
実はこの糸、太さ違いで、2種類譲り受けています。どちらにするかで筬目も決まるし、布の表情も違ってくる。佐藤さんは、袷になさるから、糸がのびのび呼吸するような感じで行きたい。(これは私の感覚の「のびのび」。単衣だと、丈夫さ重視で目を詰ませるから「のびのび」と言うより、キッチリ)それだったら太い方だね。(太いと言っても細いよ。240デニールくらい)
いよいよ満を持して、この糸の出番だね。
今回使う糸は、左の上から2番目に写ってます。

森先生とお電話で。

2013.07.20

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柔らかなイントネーションで、「京都の森です」って電話口で。うわわわー。びっくり&恐縮。あわわとなる私に、森先生はどこまでもお優しいのだった。
この降って湧いたヒアリングで、ご注文の全貌をつかみ取りたい私。必死です。
で、目から鱗でした。
先生がおっしゃるには、「今回ね、白をきれいに見せたいんよ。」
おお!そういう風には思ってなかった。
黄色ベースのお着物だから、黄色と柄に入る緑にばかり注目してた。それで、お出ししたメールでは、うす黄色から白のグラデーションでは、白は効果的に出ないかもですってことをお書きしたばかりだった。そっか、白だったのか、、(サスペンスで重大な秘密を知ってしまった主人公の気持ちです)
(自分の弁護のために書きますが、今回のお着物のデザインで、白の分量はほんのちょっぴり。でもこれがキーカラーで効かせ色だったとは、、、、)
(吉田、察し取る力、まだまだです。精進します)
それで、「経糸を白にしたら」とのこと。そうすることで、「白をきれいに見せて、また黄色も緑もきれいに見せたい」とのこと。
これまた、おお!そっっかっ!その手を選ぶかっ!
経糸を白にすることで、真っ白な場が生まれる。うわー!この電話がなかったら、地色のうす黄色のほうに重きをおいていたかも。そうしたら、白は薄ぼんやりした白にしかならなかったよ。
というわけで、感動のうちに受話器を置いたのでした。
森先生、どうもありがとうございました。
ベクトルの向け先ははっきり決まった。今回、やはり、糸は思い切って、ぐんま200の生繭座繰り糸にしよう。つやが最高にいいのだ。白がきれいに出る。
で、筬目をひとつ落として、経密度を下げて、緯糸の色を出るようにする。そうすると、地色の黄色も柄の緑もきれいに出る。
ここまでくれば具体化していくのみ。
写真は散歩の途中。電話機の写真撮っても、意味ないしね♪

二度目の対話

2013.07.18

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それで、私は、佐藤さんに向けて、2通目のメールを送りました。今度の内容は、色についてです。
佐藤さんからは、色見本とひな形をいただいていましたが、私はこの色や色彩構成をどこまで再現することを求められているのだろう、これはお聞きしてみないと分からないと言う気持ちがありました。
私はこれまでも、注文制作の機会をいただいてきましたが、はじめに提示されるお好みの色もイメージも、まだ焦点が絞ってなく、お客様と私で、一緒に対話しながら絞り込んで決めて行きました。
しかし、今回の発注元は、プロ中のプロ、「日本刺繍 アトリエ森繍」さまです。
それで、色見本の裏にかくれている真のご希望は(って読み取りに自信がなかったってのが真実ですね)、お聞きし確認するしかないと思い、頭の中のモヤモヤをそのまま書いたような回りくどいようなメールを差し上げたのです。
このメールを貼るのは差し控えます。(何と言ってもくどいのです!例えば、黄色の色味はレモン色成分はまったく入れなくていいのかとか、黄色と緑色の強さの関係とか、白は真っ白を目指すのか、アイボリーに寄せるか、薄いブルーを入れるかなどなど。えんえんと続きます)
長いメールを出しまして、少々すっきりした気分でおりましたら、なんとビックリ!京都の森先生ご自身から、お電話いただいたのです!
ということで、話しは次号に続きます。写真はうちの近所のスーパーの駐車場。夏の夕暮れ。

一度目の対話、その後

2013.07.17

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一度目のメールのやり取りをして、ずいぶん、頭がすっきりしてきた私です。今回のお着物に、何を求められているのかってことが、分かってきました。
それは、まっすぐに、刺繍やご自分に向き合って生きていらっしゃる佐藤さんそのもののような着物です。美しく凛として、きちんとしている。押しが強いとか、派手とか、そう言うのは一切ないけど、優しいまじめな主張があるような、、、そして、創作の根本に清らかさがあるような、、、、
そうねえ、、、
ひな形と色見本を見ながら、考えます。
そろそろ糸の手配をしなければなりません。それには、もうちょっと、突っ込んで、どういう着物にするかをすり合わせないと、決められません。糸によって、どういう着物になるかは大きく異なります。色の発色も違います。
次は色のことを対話したいと思いました。
写真は神奈川県の空。京都までつながってます。

一度目の対話

2013.07.15

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ほどなくして、アトリエ森繍の佐藤未知さんから、封書が届きました。A4サイズがすっぽり入る大きな封筒です。中に、お手紙と、これから作るお着物のひな形と、色見本と、寸法が入っていました。どれも、とても丁寧で、佐藤さんのお人柄やお仕事に対するまっすぐな姿勢を偲ばせるものでした。
さあ、私はこれらから何を感じ、何を掬い取れるだろうか。お手紙の行間から、色見本の向こう側から、ひな形の色鉛筆のタッチから。
私はメールをお送りしました。
お聞きしたいことはつぎつぎ出てくるのですが、まずは概観を固定するというか、、、大きく見て方向性に間違いがないか確認するというか、、、そのためのメールでした。
2日おいて、佐藤さんはまたまた丁寧なお返事を下さいました。この返信のおかげで、ピントが合ってきたと実感。もうちょっとフォーカス絞り込みたいですが、まずはここまでで、頭の中を整理整頓です。
下に、私がお送りしたメールを貼付けます。いただいたお返事は内緒です♡
_____________
佐藤未知さま
こんにちは。
夏至の頃、いかがお過ごしですか。
こちらは今日は一日中雨のようです。
佐藤さん、今日は、お着物の件で、少し詳しく伺いたいと思い、メールさせていただきます。
ゆっくり読んでいただいて、佐藤さんがお時間ある時に、ご返信いただければと思います。
どうかよろしくお願いします。
佐藤未知さん
1、以前にもとじさんでお会いした時、私が受けた印象は、「すらっと、明るい、まっすぐ」ですが、佐藤さんのお着物を織る時に、私が頭に持っておくイメージはこんな感じでいいですか?
もしかして、もっと「はんなり」などをイメージとしてお持ちですか?
2、大変、失礼ながら、画像検索させていただきました。
この写真の表情、生き生きして、とてもすてきです。
http://◯◯◯
もう一枚ありました。こちらはちょっと以前のもののようです。こちらは色がきちんと出てます。
http://◯◯◯
私が、佐藤さんのお顔や印象などを思う時、この2枚の写真を頼りにしていいですか?
もし、この写真はイメージと違うなどあれば、大変お手数ですが、写メでもいいので、一枚お送りいただけませんか?
3、またまた大変失礼ながら、お年を伺っていいですか?(ちなみに私は1968年生まれ、申年、45歳です)
また、もしも、今回の着物に関して、年より若いイメージでとか、大人っぽいイメージでなどあれば教えて下さい。
4、それから、今回のお着物は、お召しでお出かけになる場所など、ある程度でも決めてらっしゃいますか?
どのくらい、フォーマル成分を入れるかってことを知りたいのです。正式な場所にもお召しになるものをお望みですか?
5、お送りいただいたひな形、色見本を拝見しますと、おとなし目に、遊び成分などは押さえ、きれいに作るって風に感じますが、その認識に間違いありませんか?
6、佐藤さんは刺繍の作家さんなので、もしかしたら、この着物に刺繍をなさるのかなと思いましたが、もしもその場合は、織り手が気をつけることなどあれば教えておいて下さい。
7、袷になさるか、お単衣かは、決めてらっしゃいますか?
8、もしも袷でしたら、布の風合いは、「ほっこり」に寄せるか「つるつる」に寄せるかは、どういたしましょう?
真綿紬糸を多用すると「ほっこり」成分が増し、座繰り糸、玉糸などで織ると「つるつる」します。
「ほっこり」ですと、いわゆる「紬」になります。(紬糸で織った着物という意味で)
冬にお召しでしたら、「ほっこり」もいいですね。
最近の流行は、「つるつる」目で、軽いというのみたいです。
あと、もしも正式な場所にもということでしたら、「つるつる」目の方が、よりフォーマル感が出るかもしれません。
真綿紬糸と玉糸、座繰り糸をまぜて使うのもいいですし、私も好きですが、まぜるとカジュアル感が出るので、場合によっては押さえますね。
お単衣でしたら、さらっとがいいかと思います。
(後略)

そもそも

2013.07.12

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森先生のお弟子さんのお着物をお作りするお話のそもそもは、10周年のご挨拶状でした。
私はこの5月、設立10周年を迎えました。織りを始めてからは、20年です。そのご挨拶のお手紙をお付き合いいただいている方々へお送りしました。その手紙に応えて、ありがたい、あたたかいメッセージを送ってくださった方のお一人が、森先生だったのです!
こっそり引用しちゃいます。森先生、佐藤さん、勝手にごめんなさい。感動のお便りだったので、皆様と分かち合いたく、、、お願いします。
ーーーーーーー
吉田さん 10周年おめでとうございます。
そうですか、もう20年と10年ですか、モノ作りもなかなか大変で、それでいてこれほど楽しいことはなくて、つくづく幸せを感じる時もあるのです。
10年のご挨拶をいただき嬉しく思っています。
そこでお願いですが、着尺を1本織っていただけないでしょうか。
着る人は弟子の「佐藤未知」です。
希望の色があるのです。
「黄色」のベースに「白」と「綺麗な緑」で配色して欲しいのです。
この場合 好みの色を色見本としてそちらに送りたいのですが・・・・
こんな注文の仕方でもいいですか。
よろしくお願いいたします。
織りの道に入って20年、開業10周年、おめでとうございます。
これからも精力的にご活躍ください。
アトリエ 森 繍
森 康次
ーーーーーー
このメールを開けたときの、私のビックリ、口あんぐりを想像してみてください。わあ、森先生だ!メール下さっただけでも、感謝感激なのに、なんとご注文。え?え?えええっーーー!って感じです。
ちょっと落ち着いて、森先生のホームページをじっくり拝見しました。
例えば、この「質問や疑問に答えて」のページ。森先生のお人柄、創作に対する真摯な思い、次につなげよう、育てようと実践なさってること、すごく響きました。
ああ、森先生、刺繍やご自分のお弟子さんのみならず、着物世界全般や、溺れそうになりながらアップアップでやっている私などまで、お心を掛けてくださって、なんとありがたいことだろう。私、しっかりがんばれよと、心に誓いました。

糸はどうしようか。

2013.07.10

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森先生とお弟子さんの佐藤未知さんには、ちょっとだけお会いしたことがある。2012年の春、銀座もとじさんで、森先生が個展された時に、ギャラリートークをされる日に出かけた。糸で表現するってことでは、刺繍も織りも共通だけど、現れ方はまったく違うのを大変面白く拝見した。
で、その時に、すらっとした、明るい、まっすぐな感じの女の人に声をかけられた。「吉田さんですよね?」
初対面なんだけど、なんだか近しい感じがする。この方が森先生のお弟子さんの佐藤さんなのだった。
佐藤さんが森先生の元で修行されている経緯はこちらで見つけた。創作に対する森哲学も完結にまとめられていて分かりやすい。森先生、すごいなあ。
写真はこれから作る着物の糸を吟味しているところ。まだこれらの糸で行くとは決めていない。ぐんま200の生繭とか、いい糸なんだけどね。だからといって、今回に最適かどうかはこれから悩む。もし不適格だったら仕入れる。
ちなみに、刺繍の糸は無撚りだそうですが、織りの糸は私の場合ですが、あらかじめ縒ってある糸を求めてます。少なくても、経糸で1mにつき180回、緯糸でも100回は縒ったものでないと、織れないです。同じ絹でも違いますね〜。

新しい仕事に取りかかる

2013.07.08

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新しい制作に取り組んでます。まだまだ計画段階なので、いろいろ同時並行だけど。今回のお仕事も、とてもすてき、かつ責任重大。精一杯ぶつかって行こうと思ってます。
ご注文主さまに、快諾いただきましたので、制作過程をこのブログにアップしていきたいと思います。そのご注文主さまとは、何とこの業界の大御所。お話しいただいたとき、本当にビックリしました。
そのお方とは、刺繍の森康次先生です。すごい!お弟子さんの佐藤さんのお着物をお誂えになりたいと。うう、感激。感涙。森先生、お弟子さんのみならず、私まで育てていただいてるなあ。
写真は、今日の作業。送っていただいた色見本やひな形を元に設計図を作ろうとしているところ。
森先生、佐藤さんとの出会いや、話しの経緯などはまた今度書かせていただきますね。
アトリエ森繍のホームページ、とても丁寧で、大事なこと、たくさん書いてあって読み込んじゃいます。この糸箪笥、萌えました。私が扱う糸はここまで繊細では無いのだけど、お手本にしたいです。

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