ONLY ONLY

ONLY ONLY とは、染織吉田の特徴である、
染めもONLY、織りもONLYの完全注文制作のことです。

ONLY ONLYと名前をつけたのは、2013年のことなのですが、
実はそのずっと前から、注文制作を受け続け、
いつしか私の得意技となりました。

その始まりは、染織吉田として独立して間もない2005年のことです。

「こんなきものが欲しいんだけど、ヨシダさん、作ってもらえない?」
「えっ?私に?」正直、そう思いました。

当時、私は、まだ染織家としてもペーペーで、お誂えを受けるなど夢にも思わず、方法論もありませんでした。しかし、これ、やりたいと思いました。

ではどうする?

とにかく真摯に向き合うしかない。
お客様のご希望を丁寧にお聞きして、それに応えるべく、全ての力を注ぎ込みました。まさに暗中模索。暗闇でほふく前進している感じで、ジリッジリッと完成に向けて、進んで行きました。

結果、思った以上の作品が出来て、最高の笑顔をいただきました。
何年もたった今でも、「私の宝物」と言ってくださいます。

ああよかった。やってよかった。

お客様の喜ぶお顔が、
その後の染織吉田を方向付けてくれたと言っても過言ではありません。

ONLY ONLY のすすめ方

教えてください

まずは、お客様のことを知ること。私にとってはお客様のことを教えてくいただくことから始まります。あなたのことを教えて下さい。パッとひらめいたことでも何でもいいんです。きものまわりのこともですが、それ以外のお好きなものも教えて下さい。例えば、「シスレーの絵の水の感じ」とか。「シャンパンの色」とか。「雨上がりの匂い」とか。
具体的でもいいですよ。「この色からこの色までのグラデーションのきものがほしい」と見本をくださるなどでもOKです。できるだけたくさんのヒントを教えて下さい。
ここで私は、シスレーの画集を購入して、ザーッと見たり、じっくり1ページ1ページゆっくり見たりします。インターネットで調べてみたり、美術館がシスレーを持っていれば出かけます。
がんばってシャンパンを買って、遠くから眺めたり。ベランダに持って行ったり。グラスに注ぐ音に耳を澄ましたり。鼻を近づけたり。そして飲んでみたり。
雨上がり、太陽が出たら散歩したり、草むらにしゃがみ込んで匂いをかいだり。 そしてそれを何日も何回もやってみます。

ちょっと具体的に教えてください

どんなきもの・帯をご希望なのか、どんなシーンでお召しになるのか、単衣か袷かはもちろん、季節は特定するのか、テクスチャーの表情はどんな感じをお望みか、などなどの具体的なご希望を教えてください。
ここで糸の選択も考慮に入れます。糸が違えば、「どんな」きもの・帯になるかはガラッと違います。
ここでもたくさんのシュミレーションをします。

対話しましょう

そのやり取りから、デッサンを作り、見ていただきます。
(お会いできれば最高ですが、メールや手紙も駆使します)
こんな感じ。あんな感じ。お客様と対話を繰り返します。
デッサンは数点描きます。その中で、悩みながら、苦しみながら、楽しみながらひとつ選びます。
こうしてデザインが決まります。

設計図

デザインが決まったら、設計図を作ります。設計図は、紙で作るきものや帯のミニチュア・シュミレーションです。約1/8の設計図に、色鉛筆やコンピューターを使用して、どこにどの色、どんな柄、どんな風景が来るのかを表現します。(基本的にはこの設計図を元に作りますが、実際には染めや織りの過程で、新たに生まれたインスピレーションを加えて修正しつつ作業を進めます。)

もう一度対話しましょう

デザインや設計図を見て、お客様も私も「やっぱりこうしたい」という気持ちが出てくるものです。ここでもう一度、オープンな対話をさせて下さい。
ご希望をお聞きしている早い段階では、多くのお客様が「吉田さんにお任せです」と言われます。ですが、少しずつお話が始まると、いろんな好きなものが表に現れてくるようです。それを感じとるのも私の喜びです。

いよいよ糸です

糸を用意します。
この特別なきものの雰囲気に合う特別な糸を、絹に精通する糸屋さんと相談して、見つけます。例えば、お客様のご希望がもし「ほっこり」したきものなら、経糸にも緯糸にも、真綿紬糸を多用します。もし「つるつる」したきものをご希望なら、座繰り糸や玉糸を選びます。もちろん、それらをまぜて使うことも考えます。「ざっくり」した帯をご希望であれば、きびそ糸という、繭の外側から取る絹糸を未精練で使うことも考えます。

やっと染料まで来ました

こんどは、染料です。
この糸でこのテイストを出すためにはどの染料を使うのか、植物染料にするのか、酸性染料の方が合うのか、などなど考えます。試し染めを繰り返します。
例えば、「ピンク」を染めるにせよ、ピンクはいろいろです。青みのピンクにするか、黄みのピンクにするか。春を感じるピンクか、秋を感じるピンクか。冬のピンクか、夏のピンクか。朝焼けの空か、夕焼けの空か。どのくらいの強さ、優しさ、機敏さを込めるか。それらはすべて「どんな」きもの・帯にするかによります。
(その後のたくさんの実作業行程は、はしょります。)

さあ、織ります

織りは孤独な作業です。ここまでくると対話の相手は、あなたから目の前の糸と布に移ります。設計図通りに織るのですが、時折やってくる即興への誘いは、きっとあなたが送ってくれたインスピレーションなんでしょう

こうして、あなたと私の共同作業で、きもの・帯は出来上がります。しかしまだ完成ではありません。完成するのは、仕立てられて、お召しいただき、あなたが一歩踏み出した時。そう、あなたの希望がかなった時です。

過去の作品例・お客様からの声

お二方、いただいたメールと共にご紹介させていただきます。

「西方の天女」(絵羽)

2011年に、ONLY ONLY でご注文いただいて織ったきものです。遠方の方でお会いすることはかなわず、何度も何度もメールを交換して、この方の望みは何だってことと、この方をより輝かせるのはどういうきものかってことに、向き合ってきました。色見本や試し織りやスケッチ画をお送りして、ご意見いただいたり、、、、
一度お会いできそうだったのですが、東日本大震災が起き、実現しませんでした。お会いするチャンスは逃しましたが、私が震災後の時期をどうにか乗り切れたのは、この仕事が目の前にあったからです。毎日、機に向かうことでどんなに助けられたか、、、その点でも私にとって大切な作品です。
メールのやり取りの当初から、「水」というキーワードがよく出てきました。それからお顔映りのいいきものがお望みでした。全体は落ち着いていて、お顔の近くにくるところを、明るく元気な色味にしました。使った糸は、座繰り糸と真綿紬糸。植物染料と酸性染料の併用。ブラッシングカラーズ。
以下、いただいた二通のメールを許可いただきましたのでご紹介させていただきます。とても光栄です。

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title: 涙が出ました
こんばんは。先ほど着物が届きました。余りに美しい織物に涙が出ました。
川平湾の水の青、敦煌壁画の天女の青などと想像のおもむくままに注文したのですが、実際にどのようなきものになりえるのか、全く想像できなかったのです。羽織った瞬間、水の匂いがしました。ほんとうに水の織物でした。
試し織をして下さった時から、どう転んでも素敵な着物になる!と吉田さんを完全に信頼するようになっていましたが、本当に素敵な織物にして下さいました。全体としては水なのに、どこか敦煌の砂漠の土の気配もするのです。
羽織ってみると、青なのに暖かく、顔映りが非常によく、私をきれいに見せてくれ、かつ暖かい何かに包まれたような感じがとてもします。吉田さんが私の為に心血を注いで織って下さった、その思いに包まれるのですね。自分だけの為に織られた着物、誂えの醍醐味ですね。
よく見ると随所に心配りが感じられ、楽しい秘密がいっぱい詰まっていますね。また糸ががとても上質で細くて光っていて、普通の紬の概念が当てはまりません。
前身頃の柄もピンクがかわいく、青は川平湾の水のように深く、位置がちょうどいいので、背が高く、細く見せてくれました。
やっぱりカジュアルよりコンサバに作っていただいて成功だったと感じています。観劇でも結婚式でも踊りでもいける、包容力のある着物ですね。9月末に◯の会があるので、絶対着ようと思います。
お値段なのですが、とても面倒な柄付けをして下さったのに…。これでよろしいでしょうか。豪華な訪問着にしていただいてしまったのに。
長くなりましたが、本当に嬉しかったのです。有難うございました。この着物に見合う人にならなあかんね~!
いつか着物を着て会いに行きますね!

感謝とともに。
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二通目
title: また涙が
お返事いただいて、また涙が出ました。ほんとです。
今日帰宅してから早速明るい光のもとで布を見ましたがほんとうにきれいなきれいな織物、天女の羽衣のように軽くて、私のために作られたのが奇跡だと思います。
「水が大地を潤し、人を潤し、天に昇華する、その循環の様子」お願いしておきながら私自身も分からなかった、「水の意味」ですね。そして川平湾と敦煌壁画が重なるんですね。
それでもこの二つの魅力が一つの織物に表現されているのが不思議でなりませんが…。
水の匂い、土の香り、砂漠の黄色い土、朝焼けの海、ピンクの花、紺青の海の底知れなさ、砂漠のオアシスの命の水…、
色々なイメージがはっきりと表現されていながら、さらにそれぞれが重なり合って響くのですね。吉田さんのお仕事はすごいわ~。
見ているだけでも美しい布ですが、またできれば美しい女優さんに着てもらいたいところでもありますが、不肖私が何度も着させていただきますね。踊りの先輩の舞台鑑賞や、南座の顔見世や、文楽や、どこにでも沿ってくれる着物ですね。
八掛、帯に関しては信頼している呉服屋さんに頼んでみます。八掛をきれいな色に染めてくれると思います。早めにお願いに行きますね。
自分をよく分かっている自立した女性でないとお誂えは難しいかも、と不安でした。イメージが定まらないため、吉田さんを悩ませたことと申し訳なく思います。でも今になってみると、これほど魅力的な織物を織っていただけた事が嬉しくてなりません。美しい光に包まれたようで、どのように着ても自然と私を輝かせてくれるに間違いありません。着物の力ですね。
また長くなりました。
これからも応援しています。
根を詰め過ぎないよう、自分もいたわって下さいね。

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「colored wind」(きもの)

ONLY ONLY で作らせていただいたきものです。ご注文主さまを「めと」さまという愛称で呼ばせていただき、何回も何回も、対話を重ね、頭を悩ませ、風を感じ、三歩進んでは二歩下がり、じっくりじっくり作りました。

やり取りの様子は、ブログのカテゴリー「めとさま」にまとまってます。どんなきものにするかのはじめのご希望は、「袷にすること」「時期も長く、年代も長く着られること」というふたつのみでした。ほとんど真っ白の状態から、どうやってこのきものを生み出して行ったか書き綴ってますので、時系列をさかのぼってお読みいただければ、幸いです。→こちらです

仕立て上がってからにめとさまが、「もう何も要らなくなりました。やり切った感もあるし、これ以上に求めるものなんてあり得ません。」とメール下さいました。

もうひとつ、思い出深いのは、めとさまが、このきものに取り組んでらっしゃる最中に、人生の大きな決断をされたことです。私が何か出来た訳じゃないけど、その大事な時期に近しくさせていただいていたことは、私としてもうれしく、身の引き締まる思いがしました。私も、めとさまに恥じぬ人生を送ろう。

colored wind をお納めしたあと、丁寧なお手紙いただきました。一部割愛して、ここに掲載させていただきます。
めとさま、本当にありがとうございました!

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吉田美保子 様

今朝、無事に受け取りました!

明らかにピンクと分かりつつ、決して主張し過ぎないピンク。こっくりと色付き始めた紅葉の朱と黄色。所々に見え隠れする、匂い立つ紅。

デザインや濃淡など、全ては真っ白なところから始まって「自由」だったのに、それぞれの色が、あるべき所に整然と納まっているようにさえ見えました。

あれだけ色々と悩んだのに、自然に、成るべくして成ったような、、、作り上げたというより、辿り着いたような心地です。
荒れるというわけではないですが、右へ左へ、ちょっと強まったり、停滞したり、小さく渦を巻いたりした風が、広い、明るい場所に
すーっと吹き抜けていったような。澄み切って舞い上がって行ったような。そんな気分です。
・・・要するに、清々しい、ってことでしょうか(笑)。(美保子さんのご尽力は、もちろん、「作り上げる」作業そのものですので、語弊があったらすみません。)

鏡の前で反物を当ててみて、自分で言うのも何ですが、似合ってる!と思いました。私らしい、と言った方がいいかもしれません。

4カ月半もの間、私のためにお力を注いでくださって、本当にありがとうございました!!美保子さんとのやりとりは、とても楽しく、心強いものでした。着物の件のみならず、進路の面でも、支えていただきました。colored windは大事に、ガンガン着させていただきます!

明日からは寒さも少し和らぐとのことで、どうかご自愛ください。ますますのご活躍をお祈りいたしております!

めと 拝

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お二方、身に余るご感想をいただき、本当にどうもありがとうございました。

 

 

・ONLY ONLY にご興味を持ってくださった方は、こちらから お気軽にお問い合わせください。

・2013年以降のONLY ONLY の制作過程は、お一人お一人、ブログのカテゴリー「ONLY ONLY」の愛称よる個別ページにまとまってますので、そちらもぜひご覧ください。