吉田美保子の some ori ノート

ななさま物語 4

2024.07.15

ONLY ONLY ななさまの半幅帯、経糸の準備ができたら、ブラッシングカラーに向けて、染料を調合します。これが、大事。納得いくまで何度も。

ななさまの好きな茄子の色。静と動。寒色と暖色。変化上等。ラッキーセブン。白も含め7色。柄は7回繰り返す。

緯糸の準備も並行して。その時点で試し織りをして、得心がいったら、経糸をもう一度、伸ばします。そして、あたりをつけて、いよいよ、本番のブラッシングカラーズです。

その時点で、ななさまと記録の伴奏をしてくださってるトシさんがお越しくださいました。レフ板持って、撮影助手もしてくださるななさま。

 

試し織り部分をあててみるななさま。

ここに挙げている写真は全てトシさん撮影です。(一枚だけ例外) 創作に寄り添ってくださって、今回は3人で作っている気がします。それはとても幸せなこと。

 

ななさまとトシさん、お越しくださったのブラッシングカラーズをしている日に合わせてですので、工程全てを細かに追ったわけではないのですが、おおらかに全体を分かってくださって、私一人の作業部分も理解してくださって、いつも一緒に作ったような気がしています。

下の写真、ジャーン、ななさま撮影の撮影中のトシさん。

ななさま物語 3

2024.07.12

ななさまの半幅帯、全体像をつかんだら、糸の準備です。

ななさまは、光沢感のあるキラキラしたものも似合われるので、その路線上にある糸を選ぶことにしました。浴衣に合わせるのが目的なので、ドレッシーすぎない、綺麗めカジュアル。締めやすく、ツヤがあり、花がある。そして、合言葉は「変化上等!」。

さあ、それを実現するためには、糸をどう選び、どう組み合わせれば最適なのか?そのために私ができることは何なのか?

経糸に使う糸は、長野県岡谷市の宮坂製糸さんに特別に引いてもらった銀河シルクと、ぐんま200というお蚕さんの繭から引いた甘よりの糸にしました。どちらも貴重で希少な、国産の絹です。
緯糸は、太めのやはり光沢のある絹にしました。

半幅帯は、両面を使うことができるので、表は経糸が見えて、裏は緯糸が見えるしずはた織りという綾織にして、表情の違いを楽しめるようにしよう。

大きな綛は、まず、扱いやすくするために、回数をそろえて、巻き直します。

  

そして、染めます。白に見えるけど、ごくごく少量の染料で染めています。絹は、そのまま使うことはしません。

 

染まったら、ブラッシングカラーズに備えて地入れ液と糊をつけて、整経に備えて計算して、その通りに大管に巻いていきます。

整経と巻取りは、今回は自宅工房ではなくて、特にお願いして、やらせていただきに上がりました。今までと違った方法でチャレンジしたくて。

受け入れていただけることに感謝。可能性を広げていけることに感謝。ものづくりは一人でできるものではないのだなあ。

ななさま物語 2

2024.07.03

ななさまの半幅帯とタブローを制作する今回のONLY ONLY。

ななさまが求めていらっしゃるのは、以下の5つ。

・変化上等
・静と動
・寒色と暖色
・浴衣生地の茄子紺色に映える
・ラッキーナンバー7 

なるほど、これを同時に表現するのが私のミッションなのだな。承知。それぞれじっくり考える。

「変化上等」ななさまのキャッチフレーズ。変化って望んでなくても、ある日突然あらわれる。押し寄せる。人はそれを拒否することはできない。流される。しかし、それを「変化上等」と捉えるななさま。受け入れるのも、流されるのも強さなのだ。

「静と動」これは、ななさまそのものと思う。ななさま、静謐な面影を持った品の良い方なのだ。同時に情熱的でもある。フラメンコを踊るとおっしゃってたな。両方持っている方。
普段のオシャレは、どちらかというとコンサバティブなエレガント系と拝察したが、どっこいその反対も似合われると踏んだ。しかし、いつもと違いすぎるのを作ると、似合っても落ち着かないということになりかねない。その静と動を両方取り入れ、ギリギリのラインを狙わねば。ずらし技法を入れるか?

   

「寒色と暖色」これは、そうしておいた方が、帯としての使い勝手も増す。浴衣には涼しげな寒色が素敵だし、凛としたななさまに合う。暖色でチャーミングさを出したい。

 

「浴衣生地の茄子紺色に映える」浴衣は、おあつらえになるとのことだったので、一緒に懇意のギャラリー「イトノサキ」さんに行って選んだ。茄子紺のおしゃれな生地がとても似合われた。その端切れをいただいて来た。着る人と長着が決まっている状態なので、私としては一点集中して臨めて大変ありがたい。

「ラッキーナンバー7 」ななさまのななは数字の「7」。7を織り込もう。そのやり方はいくらでもある。7つにずらす。7色に染め分ける。柄を7回繰り返す。

出来上がってしまえば「7」は目立たなくなるだろう。しかし、そこに「7」がある。そのことはとても大事なのだ。

普段は、私一人で粛々と進める作業だが、ななさまが打ち合わせに来てくれた。伴奏してくださるトシさんと一緒に。それで、一挙に楽しくなった。

*写真提供はトシさん(1,2枚目)、ななさま(5,7枚目)、私(3,4,6枚目)

126通目のメルマガ【ななさまスタート号】

2024.07.01

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*写真は、同じコミュニティの「トシさん」と「よかさん」撮影のものをお借りしました。

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おはようございます。本州は雨の季節ですね。お住まいのあたりはいかがでしょうか?

今日から7月。

昨日は夏越の祓(なごしのはらえ)で、「水無月」を近くの和菓子店で求めていただきました。三角形のとんがりが、キッと邪を祓ってくれそうで、美味しくいただきました。

雨から暑さの季節へと続きます。お身体大事に、お元気にお過ごしください。

《 目次 》

1.   ななさまスタート

2.   コミュニティ

3.   いちょう団地

4.   タンハー

 

1.   ななさまスタート

 

新しいONLY ONLY をスタートさせました。ヒロインは「ななさま」。

ななさまの「なな」は数字の「七」。七月に相応しいとなんとなく嬉しくなってしまいます。

今回のONLY ONLYは、いつもと違う点がいくつかあります。

・半幅帯とタブローを同時にご注文くださったこと。二つのことを考えながら、まずは締切のある半幅帯から取り組んでます。

・ななさまと私の出会いが、あるコミュニティを通してであること。

・そのコミュニティの仲間の「トシさん」が制作工程の取材に入ってくださっていること。

どの点もが、これまでより幅を広げてくれそうで、とてもありがたいのです。

ブログにはトシさんが撮ってくれた写真も多数載せてますので、ぜひご覧ください。

https://www.someoriyoshida.com/category/only-only-注文制作/ななさま

 

2.   コミュニティ

 

そのコミュニティは、50代60代の人たちの集まりで、主にネットで繋がっているのですが、思っていたよりずっとオープンな交流ができ、深く繋がれて、面白いもんだなあって結構のめり込んで参加してます。

私はずっと独立独歩でやってきて、コミュニティらしいものに属せずきたので、一挙に知人友人が増えてありがたく、みなさん大人で節度があって、居心地がいいのです。

いい人生とは、人とのつながりにあるそうです。コミュニティも一つだけでなく、いくつも首を突っ込んで、あちこちで繋がっておくことがセイフティネットにもなると。

ほんと、そうだなあと思うこの頃です。

自分でも主宰したいなあと思いつつ、このメルマガがゆるいつながりのコミュニティの一つになれればいいのだけど、どう発展させて行ったらいいのかわかりません。

もし、よいアイディアがあれば、このメルマガに返信する形で、ぜひ教えてください。

 

3.   いちょう団地

 

それで、先日のこと、ベトナム料理を食べに行こうと言うことになり、そのコミュニティの有志と、うちからそう遠くない「いちょう団地」を目指したのです。

いちょう団地とは、神奈川県大和市と横浜市泉区にまたがる巨大団地で、多国籍の外国人の方々が多く住んでおられます。

なぜそんなに多くの外国人が住んでいるかというと、特に、我々世代の人間からすると考えざるを得ないような、深い理由やさまざまな事情があるのです。

その敷地の中に、本格的なベトナム料理の店が複数あって、日本では他で食べられない味で絶品だと。これは行かねばと。

 
4.   タンハー

 

それで、我々5名、小田急江ノ島線の高座渋谷駅で落ち合って、いざ、いちょう団地へ。
途中、ここは新宿まで小1時間の首都圏なのかと言うような、鎮守の森や畑や土手を通ります。

やっとこさで「タンハー」というベトナム食材屋さん兼食堂についたのですが、そこが居心地良くて、美味しくて楽しくて、居着いてしまいそうになりました。

一挙に氷解。今が幸せなら、それでいいじゃん。

コミュニティのみなさんの探究心、知識欲、好奇心もすごい。みんな、遠くからのご参加です。群馬県、千葉県、東京都、新潟県。わわわ〜、地元神奈川県は私だけ〜。

タンハーの夜は更けていきます。

 

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染織吉田のメルマガ、《 some ori 通信 》126通目のメルマガ【ななさまスタート号】をお読みいただき、どうもありがとうございました。

ご感想、ご意見ございましたら、このメールに返信する形でお送りください。

これからも、some ori や、きものや、モノ作りを通して、あなたさまとご縁を育んでいきたいと思っております。

どうかよろしくお願いします。

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きものと帯の注文制作

染織吉田 吉田美保子

メルマガ

ななさま物語 1

2024.06.21

今日は夏至、梅雨入り直前のしっとり雨の1日です。新しい物語を語り出すのにうってつけの日のように思います。

今回のヒロインは「ななさま」。

ななさまと私は、とあるコミュニティで知り合いました。そのコミュニティ上のブログで、美しくも悲しい、そして強い日記を書き連ねていらっしゃったのがななさまで、私は目が離せず、惹きつけられて毎回読んでいました。圧倒され、コメントはできませんでしたが。

私の方にも色々あって、理不尽なことが起こっても、それを飲み込みつつ、自分らしさを探しつつ、誠実に、一生懸命生きていらっしゃるななさまの姿に憧れのようなものを覚えていました。

程なく、ななさま、そのコミュニティで知り合った方と我が家に見学にお越しくださり、ちょっと糸紡ぎの体験もして、だんだんと仲良くなっていきました。

 

そして、ご自分のマンションに飾るタブローを私に注文してくださったのです。

これは大変。思いがたくさん詰まった「変化上等」というななさまのキャッチフレーズにいかに応えるか、、、。

連休明けには、ななさまのマンションに伺って、ななさまが大切にされている空間に身を置かせていただきました。

時を同じくして、そのコミュニティ内のグループで、この夏、浴衣でクルーズしようという企画が持ち上がり(幹事は私です)、ななさまも申し込まれ、、、

 

若い頃にお茶をされていて、着物には馴染みがあるとのことですが、浴衣ははじめて。帯もないということで、浴衣用の帯も注文いただきました。

  

*写真は全て、このコミュニティで知り合った「トシさん」が撮ってくださったもの。今回、ななさまとの物語に伴走していただけることになりました。トシさんは音楽の方なので、伴走でなくて伴奏かな?このトシさんの物語も、深くて面白いのです。

たたさま物語8

2024.05.20

「たたさまの吉澤暁子先生を想う帯 吉澤先生と一緒!」の全景を載せておきます。

吉澤暁子さんを表すロイヤルブルー、まわりをたたさまや着物仲間の方々を表すイエローやグリーンが楽しげに囲みます。吉澤さんのロイヤルブルーはおタイコから前帯までスクッと貫き、みんなと楽しく語らったり、励ましたりしてくださったり。きっと守ってもくださるでしょう。

たたさま、早速ご自身のインスタグラムに、この帯のことを書いてくださっています。吉澤暁子先生との思い出など、ほろりとします。このような大事な帯を織らせていただき、感謝しかありません。

たたさまのご了解を得て、一部抜粋でご紹介させていただきます。

「この帯は何だか私一人だけのものじゃない気がしていて、ずっと一緒に頑張って来た岡山教室のみんなの前で受け取りたいと大久保先生にお願いをしていました。」

「ずっと以前に美しいキモノに掲載されていた吉田さんの帯に心を撃ち抜かれ、いつの日かご縁がいただけたらいいなと、心の中でそっと願っていました。」

「2022年に吉澤先生の主宰されるサロン・ド・ラソワで吉田さんの個展をされるとお聞きし、地区の婦人会の会合と同じ日で行きたいけど行けないとお伝えすると、吉澤先生が、高田さんこんな機会は無いからzoomで参加したら?と言って下さり、(中略)

楽しくお話しさせていただき、思い切って一番最後でいいのでと帯をお願いすることにしました。ちょうど結婚30年になる年が少し先に控えていて、その記念にしようと思って。」

「先生は本当に繊細な方でした。すごくパワフルな方でしたが、それとは裏腹に私達生徒に駅まで迎えに来させてしまう事、送らせる事にも、ものすごく気を遣う方で、(後略)」

「帰りのホームに入られるといつも、たたさんは遠いんだから早よ帰り!!とおっしゃって、私ははーいと返事をして、いつも先生から見えない場所で、先生が駅員さんに車椅子を押して行かれるのを見ていました。」

「最後にレッスンに来られた日も、車椅子でじっと駅員さんを待たれていました。そしてやっと駅員さんに車椅子を押してもらって見えなくなった背中が、今も目に焼きついて離れません。」

「本当に最後の方のレッスンは、いつもニコニコと笑って女神様の様でした。」

「強くて美しくて繊細な、とても素敵な師匠でした。いつも矢面に立つ、そう決められていた人でした。」

「今日は、その素敵な師匠からご縁をいただいた、ずっと続く素敵な帯が届いた日でした。本当にありがとうございました。」

たたさま物語 7

2024.05.19

たたさまの帯、ずいぶん前に仕上げっていたのですが、本日、お手元に届けることができました。

たたさまにいの一番にご覧入れたくて、仕上げの様子などもここにアップするのを控えていました。

帯のタイトルは「吉澤先生と一緒!」。この帯は、まさにそういう帯なのです。

感激していただけたようで、よかった。

上にあげたのは、織り上がって、蒸しと湯のしに出し、戻ってきて、最終の検反をしているところの動画です。

この作業は祈りの時間としか言いようがありません。丁寧に気持ちを鎮めて、心を込めて、小さい糸屑も見逃さず、少しずつ少しずつ進んでいきます。全てが終わりましたら、反物を固くしっかりと巻いて、紙に包み、箱に収めます。そして、帯の仕様書と心を込めてお手紙を書きます。

これが、私のできる全てです。この後はもうたたさまにお任せするしかありません。どうかよろしくお願いしますと願いを込めながら淡々と作業していきます。

さとさま物語 10

2024.04.19

うれしいLINEが届きました。素敵な写真が三枚、添付されてます。

昨年のONLY ONLY「さとさま」から、お納めした八寸帯「ハッピーセレブレーション」(愛称・ハッピーちゃん)をお締めいただいたという、お知らせでした。
師匠の吉澤暁子さんのお教室の集まりで、吉澤さんを想うものを身に付けてというドレスコードの日の装いだそうです。

写真拝見して、深く感じ入りました。いやはや、素晴らしい。さとさま、すでにこの帯をしっかり我がものとして使いこなしていただいてます。

帯も、この方がご主人様だと信頼し、喜び、懐いているようです。良かった。

それに、さとさまの表情がキリリとしてとても素敵です。

さとさま、この春、満を持して、ご自分の着付け教室「華園(かえん)」をオープンなさったのです。ずっと丁寧に着実に準備されていたのを知ってますので、私もすごく嬉しいです。

そして、本日、50歳の誕生日を迎えられました。おめでとうございます。帯の制作は、50歳の記念にということと、着付け教室を始められることの心の支えにということでのご注文でした。

だから、このお写真を今日、こうやって見せていただくことは、私にとってもとても嬉しく、ありがたいことなのです。

さとさまからのラインをお許しを得て、一部抜粋でご紹介します。

「依頼させていただく際に、手持ちの大島紬(身内から譲り受けた)にも合わせやすく、今っぽく、上品になる帯をリクエストさせていただきました。
正にその通りに!!!

糸や色選びはもちろん、織りにもこだわっていただき、唯一無二の素敵な帯。
吉澤先生のアドバイスもあり、お太鼓部分に芯を入れていただいたので適度なハリがあって、しなやかで締めやすい。
緻密に計算されたデザインで、本人は柄行きをあまり考えずに結んでも、決まってくれるとても賢い子(帯)です。
当日はいろいろな方に褒めていただき、ハッピーな一日になりました。

4月19日で50歳を迎えます。
それまでに着付け教室を開業したいという思いがあり、ハッピーちゃんに(吉田さん)に随分と背中を押していただきました。
4月1日に、何とか着付け屋「華園」を開業することができました。
まだまだ未熟者ですが、ハッピーちゃんと共に頑張って参ります。
またいつの日か、リアルハッピーちゃんで、吉田さんとお会いできる日を楽しみにしています。
ありがとうございました。」

着付け屋「華園」

125通目のメルマガ【ワイルドシルクミュージアム号】

2024.04.15

 

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おはようございます。

昨日は暖かい春の日でした。お住まいのあたりはいかがでしたか?

急に暑くなって、樹木や生き物が、一気に勢いを増したように感じます。

気配が濃くなったというか、、、、、
自然はすごいなあ。

それに引き換え、ダメ人間の私は、「あちー」と陽を避けて、タジタジとなっております。

今日のメルマガは、まだ暑さもそれほどでもなかった先週の月曜(桜満開の日)のお出かけのことを書いてます。

お付き合いください。

《 目次 》

1.   ワイルドシルクミュージアム

2.   館長さん

3.   深川蚕(ふかがわさん)

4.   イモムシ

1.   ワイルドシルクミュージアム

東京の深川に、ワイルドシルクミュージアムという私設のミュージアムがあります。

存在はずっと知ってましたが、一体どんなミュージアムなのかも知らなかったし、開館日が週に二日のみなのもあって、未知の場所のままになっていました。

誘っていただいて初めて訪れたそこは、小さなビルの一階で、ミュージアム自体も可愛い感じで、小洒落た路面店の様相。

が、一歩踏み入れるとと、その小さな空間に、目一杯の展示物とともに、蚕への愛、豊富な知識、実行力、なんでもチャレンジしてみる精神が、ぎゅっと詰まっていました。

2.   館長さん

ワイルドシルクミュージアムの館長さんは、坪川佳子さんとおっしゃる、素敵な雰囲気の今どきのスマートな女性なのですが、淡々としていらっしゃる印象なのに、実は、濃くて、熱くて、広くて、大きく、深かった。

世の中にはすごい人がいるものだ。

3.   深川蚕(ふかがわさん)

野蚕(やさん・家蚕以外の蚕)の名前は、「@@蚕(さん)」とつけられていることが多いです。例えば「天蚕」「柞蚕」「ムガ蚕」「与那国蚕」「タサール蚕」「エリ蚕」「神樹蚕」など。

それらは、野生か、または人間が繭を利用するために、餌になる樹木に網などを張り飼育しているのがほとんどと思うのですが、なんと、坪川さんは自宅マンションの部屋で飼っていらっしゃるのです。

そして、なななんと、別種の野蚕同士を自分で交配して、何代も育て続け、新たな品種を作り、地名にちなみ「深川蚕」と名付けられたのです。

「エリ蚕」と「神樹蚕」のハイブリッドだそうで、彼らが吐く糸はきれいなオレンジ色。オレンジ色のふわふわした繭も見せていただきました。(エリ蚕は白、神樹蚕は薄茶の糸を吐きます。オレンジ色ではありません)

びっくり!すごすぎです。

4.   イモムシ

坪川館長は、この日、ご自宅マンションから、深川蚕のイモムシ2頭を自転車に乗せて、連れてきてくださいました。

家蚕とは全く違って、ツンツンしているし、緑色をおびた白色です。

餌のネズミモチの葉をたくさん食べてるのか、ムチムチと健康そう。

ネズミモチの葉は、ご友人の造園家さんから分けてもらうほか、マンションの屋上で育てていらっしゃるとのこと。

深川蚕を育てているのはマンション室内だそうで、繭から蛾が出てきて飛びだすと、部屋に鱗粉が舞うそうです。

へーーーー!

私は家蚕のことはほんの少々の机上の知見はあるのですが、蚕の種(卵のことを種と言います)の取ることは、とても難しく、専門の業者が厳しく管理して行なっていると聞いているものですから、野蚕とはいえ、個人が交配させて、種を取って、孵化させて、幼虫を育て、繭にして、蛾にして、交配させて、、、を繰り返していることに心底驚きました。

人間てすごいなあ。蚕の可能性を広げているのは人間だな。思い込みを外さねばなあと思いました。

*ワイルドシルクミュージアムのサイト
https://wildsilk.jp/index.html

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ご感想、ご意見ございましたら、このメールに返信する形でお送りください。

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どうかよろしくお願いします。

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きものと帯の注文制作

染織吉田 吉田美保子

メルマガ

たたさま物語 6

2024.04.03

完全注文制作ONLY ONLY、たたさまの帯、とうとう織りに辿り着きました。

今回は経糸と緯糸を、あえて同じにしました。今回は糸がとっても面白いので、その良さを出すには、同じにしようという判断です。バランスを見て変える時もあるのですが、今回は全てが同じです。直球勝負なのも、吉澤さんとたたさまのイメージです。

その糸を、小管に巻いて、杼にセットして、準備万端。姿勢をただし、同じ力で打ち込みを重ねていきます。

ただただ、淡々と。

 

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