ここは私の仕事場、
せまいマンションの一室ですが、
染織のすべてを
ここで行なっています。
インスピレーションと
創作意欲が渦巻く部屋です。
さあ何をどう作りましょう。
私の染織は、ご注文いただいたお客様と話し合いながらつくる「ONLY ONLY(完全注文制作)」と、私が独自で作る「some ori crossing(オリジナル制作)」があります。
「ONLY ONLY」はお客様の夢をダイレクトにかなえるのが目的です。詳しくはONLY ONLYのページをご覧下さい。
「some ori crossing」は、私が私と対話しながら作るONLY ONLYの一つです。私が感じた色、風、湿度などのテロワールを染めと織りで表現します。
何をどう表現するか、
アイデアを湧き立たせ、
それを具体化するのにどの方法をとるか、
毎回七転八倒します。
フォーカスをあてるのは、
色、音楽、絵、花、感触、香りなどなど。
私のすべてを総動員して挑みます。
設計図を作ります。
何度も何度もスケッチし、イメージを練り、
アップデートしていきます。
きものも帯も仕立て上がりをシュミレートし、
具体的に設計図に、反映させます。
写真はきものの設計図。仕立て上がった感じをつかむために、立体的に作ります。1寸が1cmの縮尺です。
糸にはとてもこだわります。
糸によって織りが大きく左右されます。
私が、どれだけ糸の声を聞け、
開花させられるかです。
私は糸屋さんとよく話し、
風合いのよい絹糸を、
吟味して入手するようにしています。
染めは、植物染料と酸性染料、
両方を使います。
植物だと欲しい色が出ないとか、
堅牢度が低いとか、
とてつもなく高価などであれば、
酸性染料を使うことを考えます。
こちらが酸性染料を調合しているところ。何種類かの染料をまぜて微妙な中間色を作ります。どんな色でもできる反面、
何をどう表現したいのかってことを厳しく問いただされます。
キッチンの床にブロックを置いて、
大きな五徳を乗せ、
大きなタンクで染めます。
ちょっと給食室みたい。
糸をゆったりとタンクの中で泳がせて、
染料の成分を糸にしっかり
吸い付かせます。
植物染料の時は媒染剤で
発色させ定着します。
酸性染料の時は、酢酸を使います。
色がビシッと決まるまで
何回も微調整します。
ひびろ糸を手がかりに綛の綾を整えます。
この後、糸を木枠に巻きます。
きちんとたたけていると、
巻くのが格段に楽です。
整経は、糸の順番と長さを
決定する重要な作業です。
慎重に、慎重に。
風が吹いてもダメなので窓を閉めて、
電話が鳴っても出られません。
このときばかりは、神経質な私です。
整経のとき、
糸を∞(無限大)の形にして取るのが「綾」。
綾は織りの命です。
someori yoshida のロゴは、
無限大の綾を表しています。
デザインによりますが、経糸(たていと)に染料を刷り込む、ブラッシングカラーズという技法も使います。仕上げの時に蒸すことで、染料と繊維ががっちり結合します。ブラッシングカラーズによって、織りの制約を飛び越え、違う表現ができます。
制約なんて誰が決めたの、私の織りは私が決める。
経糸の準備ができたら、
綜絖通し、筬通しなどの機仕掛けと、
緯糸(よこいと)の準備です。
やっと織りです。
ここまでくればしめたものです。
設計図をもとに織っていきます。織りながらインスピレーションで変化を加えることも多いです。
機に座り、織り進みます。
たんたんともくもくと。
どれだけ機に座ったかが、染織家のひとつの矜持だと思います。たくさん織らねば見えないこともあります。まだまだですが、これからも日々向かい合っていきます。
織り終わったら、ドキドキしながら、機からおろし、畳の上に広げます。切れた糸の処理やチェックをします。ブラッシンングカラーズをしていれば、蒸します。それから、お風呂で湯通しをして、糊や余分な染料を洗い流します。仕事場の端から端を使って、伸子で張って、干します。私の仕事場は、1丈3尺(約5m)の帯ならそのまま、3丈4尺(約13m)の着尺でも一度折り返せば、張れる長さがあるのです。湯のしに出して、完了です。
さあ、お納めします。仕立てて、お召しになって下さいね。