青田五良は、私の染織人生に、大きくて熱い石を投げ込んでくれた人です。昭和の初期の染織家でとっくの昔に死んでいるのですが、命がけで染織した、熱い熱い男です。「俺は日本のゴッホや」「俺の織るものはシンフォニーや」などと名言を残しました。私は、放送大学を卒業したのですが、卒業研究に、彼が残した技法書、「上賀茂織の概念」を研究テーマに選び、その本に添付されてた織物を復元しました。青田が書き残した通りの糸を探し求め、指示通りの染料で染め、小さな端布から全体のデザインを予想して計画し、一反の着物を織りました。
このレポートは、放送大学の担当教授方にも高く評価され、なんと人間国宝の志村ふくみさんのもとにも送られ、志村先生から、お葉書をいただくという栄誉もありました。再現した反物は、その後、自分の着物に仕立て、着ております。
もし、このレポートをお読みになりたい方は、下をクリックしていただければ、PDFが開きます。42ページの大作です。実物には、糸見本や織りイメージなど貼付けたのですが、それはありません。
「はじめての絵羽」 この着物は染色家仁平幸春氏との二人展に出品したもの。 太めの真綿紬糸を使った紬らしい紬です。あっさりした大きな格子柄です。 初めて絵羽仕立てにしました。合わせている帯は、仁平さんの作品です。
「やさしい」(着尺) 草木染めの紬といえばこういう着物。織りって固い着物なんだけど、お召しいただくと柔らかくて優しいね。一越一越、ただひたすら。玉糸と真綿紬糸。植物染料(キハダ、ウメ)
「薔薇」(着尺) これはバラの鉄媒染。柔らかいグレーです。目立たないうっすらした経縞。都会的なカッコいい着物です。節が多い玉糸で織るのは大変でしたが、その分、風合いはいいです。
「極細糸の大判ショール」 73×190cmあります。緯糸(よこいと)の太さは27デニール。繭9個分です。ふわっと包まれる感触です。
「ディープピンク」 このショールの緯糸は、極細絹糸(21デニール)を原糸で染めて、3本合わせにして使っています。撚る前に染めているってことです。えもいわれぬ深みが出ると思ってます。
「経(たて)を強調した格子のショール」 こういうゆるい構成は、かえっていさぎよくて好きです。この経にこの緯(よこ)をぶつける。それが全て。
「ごく初期のブッラッシングカラーズ」(ショール)
「展示会にて」 大き目のショールは見る角度で光り方が違います。人を包むとさらにね。布の立体感の醍醐味です。これもお蚕さんの力でしょうか。
「光とショールたち」 佐賀市の今は資料館になっている古い畳敷きの銀行に展示したときのもの。やわらかく澄んだ光が差し込んできました。
「記念碑のショール」 自分としては記念碑的作品です。ほぐし絣です。織がその制約の中で、どこまではじけられるかへの果敢な挑戦。
「ウブいショール」 完成度はなくてウブいけど、好きな一品。ブラッシングカラーズのショール。染めは全て植物染料。
「イランのギャッベに見えませんか?」チベタンラグは無理があるかな?彼の地ではカーペットを川で洗ったり、天日で干したりするらしいんですよね。そんな風景に見えません?ちょっと誘導しすぎですか(笑)。 実は幅7cm、長さ10~25cm、絹100%、染料はスオウの媒染違い、てのひらサイズの小さなマットです。
「つくるぞ!」 これは大麻や苧麻や竹や笹を織り込んだオブジェ。作りたいから作りたいように作った。