「濃く深く、明るくさわやかで、きちんとしていながらもパンキッシュでバロック」これがテーマでした。
ご注文くださったこの方も、私も、着物で育った世代ではなく、大人になってから、着物に興味を持った口。
この方は、「着物を特注するのは初めてで、注文の仕方が分からない」と正直におっしゃって下さって、私もまだこの時はうまくイニシアチブが取れなかったから、二人で手探りで進んだ感じだ。洋服の好みなどから、お召しになってて落ちつく色や柄ゆきを決めていった。
完成して、着姿を見てと誘って下さった。「ものすごく気に入ってる」「八掛け取り替えてずっと着るわ」っておっしゃっていただけて、うれしかった。
何年も後にいただいたメールで、「秋冬シーズンには何度も袖を通す、私の定番となっています」とのうれしい言葉。
これは経糸を二反掛けにし、緯糸の表情を変えてもう一反作った。そちらもまた別のタイプの方にお召しいただいている。それぞれ活躍しているようでとても光栄だ。
夏のまっすぐな太陽、その強烈な光をさえぎるブラインド。影が濃い。
空調の利いた室内から、まぶしい外の光を感じてる。そんなイメージの帯。
しっかりとした存在感があるのに、重力が無いかのように感じるものを織りたい。
同じコンセプトで、夏の日差しの傾きに合わせて何本も織りました。
面白くて止まらなかった。
上の写真は赤城の節糸。植物染料。
下段左の写真は、西の日差し。暖かい色だけど、軽い印象、軽快な八寸帯。染料は、アカネ、ヤシャブシなど。
下段右は朝。東の光。赤城の節糸と、インドのタッサーシルクを九色に染め分けてます。八色は植物染料。一色だけ酸性染料。
これはオリジナル制作なんだけど、宮城県七ヶ浜町の呉服屋さんが気に入ってくださり、色やデザインを展開し、何本もお納めした。独立間もないこの時期に、呉服屋さんと取引できたことは、大きな自信につながった。このお店、東日本大震災をくぐり抜け、がんばっておられます。震災後、携帯電話が繋がった時、飛び上がるほどうれしかった。またお取り引きが出来るよう、お互いがんばろうと誓い合いました。
「藍染め」(着尺) これは特別に頼まれて織った着尺です。この方の知人がご自分で真綿をとったそうで(これはとてもスペシャルなこと!)、それを益子の紺屋さんで染めてもらって着尺にしたいと。経糸はその真綿紡ぎに合わせて玉糸を選び、紺屋さんでいっしょに染めてもらいました。糸のよさ、染めのよさをストレートに生かそうと奮闘しました。ご注文主さま、自分の生き方があるカッコイイ女性ですので、とてもお似合いになると思います。
「ユニ」(着尺) これも経糸は藍染めです。(左の着尺と二反立て)緯糸は、植物染料です(ロッグウッド、ヤマモモ)。経糸の玉糸は、節が多くて、織りづらかったけどいい糸でした。藍染めもやはりいいなあと思ったものでした。こちら、幅1尺4寸、長さ3丈4尺あるので男物にも女物にもなります。
「ポルカ・ドット」(九寸帯) この帯を求めてくださったときのこと、とてもよく覚えています。一衣舎展の会場で、パッとこの帯を目に留めて下さり、なんだか目が離せないようなご様子で、その場にいた私は軽く素材や技法のご説明などして、それでも正統から大きく逸脱しているこの帯を本当に求めて下さろうとは!
「ポルカ・ドット、タイコ」(左の帯のタイコ部分) この帯を締めると、明るく浮き立つような気持ちになるとおっしゃってたなあ。本当にありがたい。星のようであり、花のようであり、静かに降る雪のようである。
「まるまる」(九寸帯) ポルカドットを発展させて和に近づけた。それでも洋も内在しているのが面白い。和すぎない和というか。現代の和というか。生きている和というか。
「しかく」(九寸帯) 今度は四角に発展。深く落ち着いた藤の色。ぐっと紫に傾いたグレー。その中に忍ばせる種々の色。墨と金。動きがあるのに静か。植物染料。ブラッシングカラーズ。
「星座」(九寸帯) 夜空を見上げる。星が輝く。植物染料。ブラッシングカラーズ。
「月の坊や」(ショール) ご注文いただいて織りました。テーマは「どこかスカンと抜ける色あわせ」「グレーを帯びた空色を効かせる」「北欧テイスト」。テーマを受けて立つって面白い。糸は、タッサーシルクや真綿紬糸など。植物染料。
「房」極薄ショールは、房も細い。
「あったまってね」ふんわりショール風にも、くるくるマフラー風にも使えます。絹はあたたかいよ。