人生の節目を迎えられる記念にとご注文をいただいた。銀座の呉服屋さんを通してのご注文だ。どんな着物にするか、担当の方も交え、考えた。そして、澄み切ったきれいな空気みたいな清々しい着物にしようと。これをお召しで、新しい日々、楽しんでいただきたいな。そうだ、込めるメッセージは、「おめでとうございます!」Congratulations!
裾模様や上前、上衽などの柄付けは、その方の寸法に合わせて考えてます。注文制作ならではです。注文を受けるようになってから、身丈も身幅も内揚げも衿のつけ方も繰越もよくよく考えるようになりました。
お納めするとき、この方に、コンセプト入の着姿スケッチ(下段真ん中の写真)と作品に使った糸一覧(下段左の写真)とお手紙を書いて差し上げました。以下は、私がこの方に向けて書いた手紙です。
◯◯◯◯さま
こんにちは。春になりましたね。
2月10日に呉服屋さんでお会いしたころは、寒い寒い冬でしたね。
その後、いかがお過ごしでいらっしゃいましたか?
さて、お待たせいたしました、◯◯さまの還暦を寿ぐお着物、出来ましたよ。
清々しく透明感に満ち、ほんのりとお祝いのピンクが入っています。
澄んだ美しさというのは、◯◯さまのイメージです。
◯◯さまの暦がひとめぐりして、新しいスタートをきられるこのタイミングに、お祝いの気持ちをいっぱい込めて染め織りました。
このお着物を織っているとき、◯◯さまの今までの人生や、これからのますますピカピカの人生に思いを巡らせました。60年の積み重ね、すごいなって。楽しいことや大変なことの繰り返しだったのかなって。そしてこれからもって。
このお祝いのお着物を私に織らせていただいたこと、とてもうれしく、この上なく光栄でした。ありがとうございました。
◯◯さま、還暦、おめでとうございます。
英語にさせていただいて、Congratulations! コングラッチュレーションズ!!!!
お祝いの気持ち、お着物にこめさせていただきました。
吉田美保子
ブッラッシングカラーズの可能性を広げた一本。
帯をお求めいただいた時もうれしかったけど、締めてらっしゃるとこを見て飛び上がりそうでした。お言葉、一部引用させていただきます。
「いままでは吉田さんの作品に心魅かれても、私には似合いそうもないと思って手を出しませんでした。でもこの帯はビビッドで、色の組み合わせが斬新、それに一緒に着れる着物候補が沢山あり、結構お似合いだと喜んでいます。
それに帯とても締めやすく、私好みで大満足です。
○○さんも吉田さんは良い作品を作れるようになったなぁ~~と感心していましたよ。」
高級誌「和樂」2014年3月号に載せていただきました。あの森田空美先生のページにです。光栄のあまりクラクラになりました。
こちらのページにあります写真をクリックしていただきますと、大きくご覧いただけます。
ラブ・ロスコシリーズの八寸帯です。
深いパープルと、それを支える黄金色を出会わせる。刷毛目をいかして、出会ったその場所を大切に。ドキッとする感じを表現する。モダンであり、落ち着いた感じもあり。でも、ただのモダンでも、ただの落ち着きでもないよ。
お納めしたとき、うれしいメールをいただいた。
「ヨシダさんの染めについてのコンセプトを伺って、とてもすばらしいと思いました。
最初から染めの職人として仕事に入った人には、思いつかないアイディアが満載なのではないでしょうか。
それに加えて、水彩画のような色柄と構図は、私の欲しかった帯そのものでした。
感度の良いアンテナをはって、アートを呼吸できる環境で制作されて、十分に表現されているとみえます。」
どうもありがとうございます。
恥ずかしながら私です。着付けが下手っぴーなのは、どうかお見逃しください。
このお着物は、自作ではじめて作った単衣です。実は下に載せております「フィールドオブクリーム」「レモンフィールド」と同じ経糸です。これ、3反目で、長さが足りなくなり、2丈8尺7寸6分しかなかったんです。
どうにもならないって落ち込んでいたのを、仕立ての妙で、立派な着物に作っていただきました。下の衽と下前の一部に別布が仕込んであります。それも自作布の余剰分なのだけど。全く遜色ありません。いやー、仕立てって本当にすごいです。
奈落の底に落ちていた織り手を掬い上げてくれました。肩甲骨に羽が生えた感じします(?)。
仕立てて下さったのは、横浜の山本きもの工房さんです。山本さんとお話していると、先人から受け継いだ技への、誇りと自信と尊敬をひしひし感じます。
「フィールドオブクリーム」(着尺) 澄み色きものってお題で作りました。 きれいな澄んだ色で、すがすがしい高原のイメージを織りました。糸は、手引きの座繰り糸を中心に数種を使っています。石垣島で蚕から育てて取った糸も使ってます。のびのび育った蚕の糸です。染めは、植物染料と酸性染料の併用です。
「レモンフィールド」(着尺) こちらも澄み色きもの。フィールドオブクリームと同じ経糸です。緯糸は変えて、ぐっと鮮やかさをアップしました。目の覚めるようなレモン色です。糸目も詰めてさらっとした感触ですので、単衣にいいと思う。
「文句あるか」(九寸帯) 私は色を操れる作り手になりたい。この帯は、とにかく作りたかったから作った。全通いっぱいに、自分の好きな透明な色を思いっきりぶちまけた。これが私だ、文句あるかって作った。売れなくても仕方ないと思っていたら、締めてくれる方と出会えた。 糸は450中の玉糸。酸性染料。ブラッシングカラーズ。
「カメラマンの眼」(左と同じ) これはフォトグラファーの女性にお求めいただいた。これを決められる前に、私の他の作品を観て下さっていて、その変様に注目して下さったと。変わっていくミホコさんが面白いってうれしいお言葉。どんどん変わって行くその一瞬をとらえる。カメラマンの眼。
「ディープチャコール」(八寸帯) 一枚の布としての存在感を出したかった。全面に力が漲っているような布を織りたかった。お納めしたあと、「ヨシダさんの魂と気迫がこもった作品だ」ってメールいただいた。やったー!全通のブラッシングカラーズ。植物染料(カテキューの鉄媒染)と酸性染料のダブルブラッシング。緯糸はカンボウジュシルク、玉糸。
「ディープパープル」(八寸帯) ブラッシングカラーによる染め分け。絹100% 使った糸は、カンボウジュ(東南アジアの野蚕に近い家蚕)など。生命力あふれる。
「ディープパープル」(八寸帯) 左の帯をタイコの形にしたところです。
「ブラックパープル」(八寸帯) これは経糸も緯糸も本当にこだわった。ラオスのビエンチャンの市場で買ったカンボウジュとか、日本の繭の手引きの座繰りの太めとか。毛羽立ちがすごかった。整経してるとき、毛羽がふわふわしてるのに怖じ気づく。こういうの普通じゃ織れないのだけど、そこはブラッシングカラーズの真骨頂。下地を含め、糊がついた刷毛が最低6回は走ってます。だから織れる。染料はまず植物染料のカテキューの鉄媒染。これがブラックになります。かさつきのある渋い濃い味わい深いブラックです。その上に、酸性染料でパープルを染めています。こちらは華やぎを求めました。基準のパープルをまず引いて、その上にところどころレッドパープルを隠してます。
「グリーンティー」(八寸帯) 渋いようで、イマドキな感じ。一服のお茶をいただく清涼感を織りたかった。 経糸は、植物染料と酸性染料のダブルブラッシング。ぐっと深みが出ます。まず植物染料のエンジュで染めて、その上に、酸性染料で黄色とグレーに染め分けます。グレーの下に黄色が見え隠れします。黄色の部分は、植物の黄色と化学の黄色が重なって、より深みのある黄色になります。 グレーの部分の緯糸は墨染め糸も使ってます。 糸は、タッサーシルク、カンボウジュ、玉糸など。
「スモールバード」(八寸帯) 小鳥が、ピッピチッチとおしゃべりしている。小鳥のおしゃべりは、とめどなく続きます。 そうなの、この帯、全通です。 *全通(ぜんつう)は帯用語です。帯全体に柄がある。締めたときに見える所だけじゃないのが所有者だけのお楽しみ。
「スモールバードの遠景」 使った糸は、経糸も緯糸も表情が豊かな絹糸です。経糸は玉糸ですが、撚りが甘い上に節がいっぱいあって、そのまま織るには難なので、糊の付け方を工夫しています。緯糸に使ったカンボウジュは、東南アジアのカンボジア周辺にいる野蚕に近い家蚕です。タッサーシルクはインドの野蚕です。染めは酸性染料のブラッシングカラーズ。
「スモールバード・2」(八寸帯) スモールバードシリーズの2本目です。こちらは、タイコには、イエローをホンのちょっぴり。グリーンが効いたなあ〜。連作すると、だんだん洗練されてく感あります。
「スモールバード・2の前帯」こちらは、イエローに働いてもらいました。お顔をひきたて、華やぎますね。
「スモールバード・2のタイコアップ」いろんなお着物に合いそうだなあ。季節も問わない感じですね。活躍しますよ!
「青と黄色」(ショール) 色を思い切り遊ばせた。経糸にブラッシングカラーズなんだけど、実はブラシ(筆)は使わず、ドロッピングです。楽しく自由に使っていただきたい。
「みかんの風」(ショール) けっこう緻密に織りました。アースカラーです。何気なく、首元を守ります。
「イエロー・マンダリン」(ショール) 鮮やかな黄色。目が覚めるよう!
「ふんわか」(座布団) 座布団を作りました。中身は綿です。とじ糸は織りに使ったのと同じ絹糸。布団屋さんで特注で作ってもらいました。