(上の写真は、左から宮坂製糸所の高橋社長、私、安達さん、花井さん)
*こちらは、メルマガ《 some ori 通信 》の配信記録です。
↑(宮坂製糸所を見学。これは銀河シルクを引く機械)
染織吉田のメルマガ、《 some ori 通信 》にご登録いただき、ありがとうございます。
108通目のメルマガ【GO TO 岡谷号】をお届けいたします。
先日、約20年ぶりに長野県の岡谷市に行ってきました。目的地は宮坂製糸所さんです。
この旅のそもそもは、一昨年に「山鹿の蚕で着物と帯を作ってほしい」というONLY ONLYをいただいたことが始まりです。養蚕農家の花井雅美さんにお願いして、春繭をキープしてもらっていました。
その後、どんな着物と帯にするかをお客様と話し合い(都合3回お会いしました)、そのご希望を叶えるためには、どんな糸にしたらいいのか見えてきたので、いよいよ繭を宮坂さんに送って糸にすることになり、その様子を見学させていただきに行ったというわけです。
初めは一人でと思ってましたが、花井さんが一緒に行きたいと申し出られ、着物ライターの安達絵里子さんにお声がけするとすぐ調整されました。
現地在住の佐々木千玲さんに大変お世話になり、濃密な日程をスムーズに楽しく過ごすことができました。
↑(左端、佐々木さん)
《 目次 》
1. 蚕糸博物館と宮坂製糸さん
2. 花井さんの繭
3. 一部変更
4. 岡谷という町
↑(真ん中が宮坂会長)
↑(高林館長を囲んで)
1. 蚕糸博物館と宮坂製糸さん
宮坂製糸さんは、今は蚕糸博物館に併設されていて、入館者は誰でも見学できます。公の博物館に、民間の株式会社が併設されているなんてすごい。生きた展示とはこのことですね。
蚕糸博物館では高林館長さんが詳しく説明と実演をしてくださって、製糸の仕組みがやっと飲み込めた感じします。とてもありがたかったです。
私が宮坂さんを見学させていただくのは実は2回目です。
前回はまだ今の形態ではない頃で、古い木造の工場で、床をミシミシ言わせながら歩いた記憶があります。繭が糸になる現場をすぐ間近で見せてくださり本当に感動しました。
まだ独立して間がない頃で、知識も浅く無知同然だったのですが、その時受けた「これだ!」っていう感動が私の染織人生を支えてくれたように思います。
移転され、博物館とくっついて規模も大きくなられましたが、今も、絹糸を織る者にとってとても頼りになる存在であることは全く変わりありません。
今回、20年前にお世話になった現会長の宮坂前社長さんが、お元気そうなお姿で現役でいらっしゃったのも嬉しかったです。
2. 花井さんの繭
花井さんは今回、自分が育てた繭が、宮坂製糸さんでどう思われたかと、緊張の思いもあったといいます。
宮坂製糸所の皆さんは、長年に渡り、品種も多様な多くの繭を見て、触って、糸にしてきた方々ですから。
社長の高橋耕一さんは、花井さんの繭は白くて大きくて、繰りやすいと太鼓判を押されました。新鮮な桑葉をお腹いっぱい食べて元気に育ったのがわかると。
私の目から見ても、花井さんの繭は、ピカピカツヤツヤプリプリしていて、抜群に輝いてました。
これを、生かすのは私の責任。今度は私が緊張する番です。
↑(花井さんの繭を上州式で60中に製糸してもらう)
↑(製糸された糸。これから綛にします)
↑(花井さんの繭の銀河シルクが綛になった。左端は引いてくれた高橋栄子さん。2番目は綛にしてくれた方)
3. 一部変更
今回の製糸は、着物には上州式(という引き方)で60中(という太さ)、帯には銀河シルク(という引き方)で行くことは、お客さまとの打ち合わせで決まってました。
しかし私としては、お客様のご希望の、ふっくらした節や少々の凹凸が入った表情のある反物にするために、もう一捻りいると感じてました。
そこで、持参したサンプル布で説明しながら高橋さんに相談すると、いろいろと可能性を探ってくださり、繭の一部を300中くらいの太さで引いてみようとなりました。そして、なんとその場で早速それをやってくださいました。
同じ上州式の繰り方ですが、繭の粒数を増やし、接緒(せっちょ)のやり方を変えます。こうやって引いた糸を所々に織り込めば、お客様のお望みの、100%山鹿の蚕であることと、糸の表情のある織物であることという二つの希望を叶えることができます。
↑(節多めの太めの糸を引いてくださってます)
4. 岡谷という町
今回、大変お世話になった佐々木千玲さんは、元は、東京でバリバリ第一線で働いていた方です。
それが、地域おこし協力隊で岡谷に引っ越し、その後現地で起業され、地域の方々に頼りにされ活躍していらっしゃいます。
岡谷絹工房のみなさんと一緒に、絹製品を企画製造して、世に出していく。手織りは生産性は低く、世の中の流れは早く、なかなかハードル高いです。いろんなことを飲み込みながらコツコツ頑張っておられる姿に感動しました。
岡谷には、製糸の歴史と今も作り続けている現場あり、佐々木さんのように外から吹き込んでかき混ぜて新たなものを作り出すセンスとエンジンがあり、すごい可能性を感じるところでした。
ご苦労も多いでしょうが、きっと大丈夫と思いました。
↑(佐々木さんプロデュースのノート。表紙に宮坂製糸所さんで手引きした生糸を使っています)
〈今回お世話になった方々〉
TINTt(佐々木千玲さんの会社)
蚕糸博物館の高林館長(佐々木さんが取材執筆した記事でとても読み応えがありました)
花井雅美さんのお蚕ファーム
安達絵里子さんの婦人画報Web版での連載(会員登録が必要です・有料)
↑(諏訪湖のほとりで)
染織吉田のメルマガ、《 some ori 通信 》108通目のメルマガ【GO TO 岡谷号】をお読みいただき、どうもありがとうございました。
ご感想、ご意見ございましたら、このメールに返信する形でお送りください。
配信停止をご希望の方は、タイトルを「配信停止」として、このメールをそのまま返信してください。
これからも、some ori や、きものや、モノ作りを通して、あなたさまとご縁を育んでいきたいと思っております。
どうかよろしくお願いします。
きものと帯の注文制作
染織吉田 吉田美保子