吉田美保子の some ori ノート

118通目のメルマガ【我が家のお蚕さん号】

2023.09.13


(こんなに小さかった。我が家に来たての頃のお蚕さん)  

 

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(5頭揃って)

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こんにちは。

いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

朝晩はやっと涼しくなりましたね。

私の夏はお蚕さんと共に来て、共に去って行きました。

116通目のメルマガに桑摘みに行ったこと、お蚕さんが我が家にやってきたことを書きましたが、あれから蚕たちはそれぞれの道を進み、つい先日、蛾になった2頭が死んでしまいました。

幼虫が桑を食み、脱皮し、成長して、糸を吐き、繭を作り、蛹になり、蛾になって、産卵して、死ぬまでのことをの書いておきたいと思います。虫が苦手でなければお付き合いください。

 

《 目次 》

1.   桑を食む

2.   繭になった!

3.   羽化した!

4.   そして

1.   桑を食む

この夏我が家にやってきた、白く、小さく、モゾモゾ動き、桑の葉を足でしっかり押さえ、一心不乱に食べていく、5頭の幼虫たちに、私は右往左往させられっぱなしでした。

と言っても、何か労力が必要だったわけでは全くありません。

餌になる桑の葉は、蚕飼いの師匠、あけみとりんが持ってきてくれたので、私がしたことは、桑の葉を一枚一枚キッチンペーパーで拭き、枯れないように茎のところを湿らせたペーパーでくるみ、ビニールにきっちり包んで冷蔵庫で保管して、蚕の様子を観察しつつ、前にやっていた葉がしなびてきたら、新しいのを与えるという、ただそれだけなのです。

蚕は水を嫌うそうなので、水をあげる必要すらないのです。

それなのに、気持ちはとってもビクビクドキドキしていました。

蚕は眠(みん)と言って眠っているような動かない時期があり、脱皮して大きくなるのですが、蚕が動かないと、それが眠なのか、ただの休息なのか、わからなくて不安で、ただただじーっと見守っていました。

張り付いて観察していた割には、脱皮の瞬間は見逃しました。脱ぎ捨てたストッキングのような抜け殻が桑の葉にへばりついてました。

蚕をのびのびと飼ってあげたいと思ったことと、よく観察できるように大きめのプラスチックケースに入れていたのですが、それは蚕にとって良くなかったのですって。蚕は寂しがり屋だから、うじゃうじゃしたほうが心地よいって、後で師匠に教えてもらいました。生態的にそうらしい。知らなかったよ!

他にも、蚕は食べ過ぎに注意しなくていいのかとか、適度に運動させた方がいいのではないかと言う素人質問に師匠は根気よく教えてくれました。(蚕は小さいし短命だから、食べ過ぎとか運動とかは気にしなくていいとのことです)


(脱皮のあと)

2.   繭になった!

繭になる時の足場を蔟(まぶし)というのですが、これもあけみとりんがおすすめのを100円ショップで買って持ってきてくれました。植物を苗を育てる小さな紙製のプランターです。さすが、蚕飼い歴5年のベテランです。(師匠は10歳だから、なんと人生の半分、蚕を飼っていらっしゃいます!)

そろそろかという頃を見計らって、お蚕さんたちを蔟に移しますが、自分が繭を作る場所を決められず、這いまわります。

ちょっと早かったのかなあ。食べ足りなかったのかと再度、桑を与えます。

でも食べない。糸を吐いても桑を食べてもいいように、蔟の近くに桑を置き直したり。一晩たった頃に見てみたらむしゃむしゃ食べてたり。

もうどっちなのよーー!

思い通りにならない蚕さんたちにイラッときたり。(思い通りになるはずないというか、私はそこまで習性を把握してない。)

一頭がようやくようやく糸を吐き始めました。

ほぉ、本当に不思議。神様からの賜り物としか言いようがない。この白い虫が絹糸を吐く。頭を振って綾を取るように、口から出た糸が繭の形になっていくのです。

もう2頭も一日留守にする日に、蔟に入れて、桑で蓋をして出かけ、帰ってきたら繭になってました。

(2頭は幼虫の時に死んでしまいました。胸の潰れる思いをしました)

(蔟の上を這い回るもなかなか糸を吐かないため、桑を与えられているところ)


(やっと糸を吐き、蔟の隅にかけ始めた。)


(繭になった!)


(もう2頭。こちらはトイレットペーパーの芯が蔟)


(近づいてみましょう)


(繭の周りのは毛羽と言って、蚕がまず吐いて、繭作りの足場とします)


(毛羽も紡げば糸になります)


(この子はこれを撮った次の日、死んでしまいました。途中、桑の食べ方が鈍り大きくなれなかった。)

 

3.   羽化した!

養蚕農家さんは、蚕が糸を吐いて繭になったら数日後に出荷します。その状態の繭だと、製糸した時にスーッと一本の糸になります。

しかし今回は観察が目的ですので、繭になりきり数日待って、蛹を取り出し、羽化する様子を観察することにしました。これもあけみとりんの助言あってのことです。(数日待つのがポイントです。蛹が硬くなるのを待つのですって。)

繭にカッターを斜めに入れるとしっかりした硬さと弾力があります。うわあ、織った布にハサミを入れる時の感触に似てる!

蛹をコロンと取り出します。一緒に黒い塊も出てきました。わ!これ何?

師匠に聞きましたら、中で幼虫が蛹になるとき脱皮した後だそうです。虫というのは脱皮の連続なのだな。

蛹を藁半紙にふんわりキャンディ包みにして、数日放置。しょっちゅう覗いてましたが、羽化する瞬間は見逃しました。

(蛹を取り出した時に一頭は死んでました。真っ黒でした。繭になるのが遅かったひと回り小さな子でした。)


(繭を切りました。右が毛羽。下の繭のお皿に乗っているのが脱皮のあと)


(これが蛹。生きています)


(これが羽化したあとの蛹の殻)

4.   そして

まずは一頭が蛾になりました。

二日ほど遅れてもう一頭が蛾になりました。

その数日後、一頭目が産卵したので、お、二頭目はオスだったのか、交尾を見逃したと思っていたのですが、、、、

時をおかず二頭目も産卵し始めました。

びっくりした私は師匠に聞くと、蚕は鶏と一緒で無精卵を産むとのこと。

へー、へー、へー!知らなかったよ!

一頭は藁半紙の上、もう一頭は紙箱の壁にくっついてましたが、そこを這い回って卵を産みつけていくのです。

数えきれないくらいたくさん。多分、500個くらい。

動きはスローでじっとしているように見えるのだけど、次に見たときは移動している。彼女らなりに動いている。

あまりに動きが少ないから死んでしまったかとじーっと見ると動いている。

そんな日々が10日ほど。

彼女たちは飲まず食わず。飛びもしない。

こりゃ死んでも分からないのではないかなって思っていたけど、分かった。


(上の2枚が蛾になってすぐのころ)

幼虫の時に死んだ2頭はすぐ腐ったので土に埋めたが、蛹のときと蛾になってからの死骸は今もここにある。糸を吐き始めたら、後は飲まず食わずだから、腐りようもないのかもしれない。蚕という生き物は全てを出し切って死ぬのだなあと思った。

 

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116通目のメルマガ【さえさま物語号】(桑の葉摘み)
https://www.someoriyoshida.com/12590


(この2枚は遺影です)

 

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