吉田美保子の some ori ノート

この帯の話し(実は大反省帯なのだ〜)

2015.10.04

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案内状に載せたこの帯、締めているのは不肖、ワタクシです。顔は見苦しいのでトリミングしましたが、ニッコリ笑ってます。自作を締める晴れがましさに満ちているように見えます、、、、が、しかし、、この帯については、長ーい、辛ーい、苦ーい話しがあるのです。
このストーリー、聞いてくださいますか?
この帯に取り組んでいたのは、この3月です。このころ私は、八寸帯での、ブラッシングカラーの方法を、ああでもない、こうでもないと、試行錯誤を重ねてました。
この時は、ブラッシングで染めたあとの巻き取り方法を変えました。勝負を掛けたウルトラ新技法のつもりでした。技法を文字で説明するの難しすぎますので、放棄しますが、気分としては意気揚々。よしよし、私すごいじゃん、してやったりという気分で巻いてました。
もうちょっとで巻き取れるって時に、ガッと音がしたと思ったら、続けてものすごい音がしました。ガッガッガッ、ガッシャーン!
一瞬何が起きたか分からなかった。一秒くらい、時間が止まった。へ?って感じ。
なんと、糸にテンションを掛けるために置いていた、ブロックが4コが、経糸の上に落下したのです。糸は無惨にもズタズタに切れました。筬も壊れ、織機の歯車も衝撃で欠けた。
茫然自失とはこのことか。目の前、真っ白。頭の中も真っ白白。
その日は、何もできずただただ唖然として過ごしました。新技法が大失敗だったこともショックだし、金銭的にも大損失です。投資した分と、今後払わなければならない分と、入ってくるはずだった幻の「¥」が頭の中で飛び交います。2ヶ月分以上の稼ぎがパアです。染織吉田、存続の危機。深く深く落ち込みました。どうリカバーする?
技法の失敗は解決できてないのだけど、目の前の分の救いは、綾が無事だってこと。じゃあ織ることはできるね。商品にはならないけど。でもとにかく布にしよう。そして再起しよう。
そんなこんなで、織った布がこの帯です。
後日、仕立屋さんに助けてもらい、見えない所ではいでもらって、いっぱしの帯にしていただいたのですよ。よかった。日の目を見れたよ。商品にはならないってことは自分のものだってことだしね。こんなことでもない限り、新作が自分のものになることはありません。
それに私、失敗には慣れてるんです。失敗の数では負けてませんのでね。しかしどうやって切り抜ける?
その後、個展の話しもまとまりました。今回の個展出品作は、その後のはい上がりのストーリーです。私、この帯、連日締めるつもり。ぜひ、観に来てね。

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