*こちらは、メルマガ《 some ori 通信 》の配信記録です。
*上の写真は、対談の会場で撮影したもの。下の写真は、戸田吉三郎の画集と回顧展のフライヤー。
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おはようございます。
先日、銀座に、戸田吉三郎 回顧展 特別対談に行ってきました。
戸田吉三郎氏とは、2016年に88歳で亡くなった画家で、今ちょうど「画布と裸婦:戸田吉三郎が遺したもの」というタイトルで回顧展が企画されているのです。
対談の冒頭で、「戸田吉三郎という画家を知っている人はおそらく誰もいないでしょう」と切り出されてましたが、実は私、小学生の頃から知っているのです。
今日のメルマガでは、そのことを書きたいと思います。また染織から話が逸れてしまいますが、よかったらお付き合いください。
《 目次 》
1. 戸田吉三郎と画廊梵と私
2. 絵をめぐる話
3. ただいま
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1. 戸田吉三郎と画廊梵と私
戸田吉三郎のことをなぜ私が知っていたかというと、叔父ちゃんと叔母とがやっていた画廊で、長年作品を扱っていたからです。特に、35~45年くらい前は、イチオシ作家だったと思います。
当時私は、熊本の田舎に住む小学生~高校生で、年に一度長い休みに梵に遊びに行くのを、何より楽しみにしていました。
夏などは画廊は比較的のんびりした時期で常設展をやっていて、おすすめの絵を10~15点くらい飾ってました。
そこに必ず戸田吉三郎の絵はありました。
先日の対談では、戸田吉三郎は、裸婦の画家と紹介されてましたが、梵では、母子や子どもを描いた絵も多かったです。
the 油絵って感じで、描きたいものだけを画面いっぱいにストレートに描いてあって、伝わってくるものがありました。
叔父ちゃんがポツポツと、アトリエを訪問した時のことなど話してくれました。その話を聞くのが好きでした。
戸田氏のアトリエは逗子で、東京に仕入れに行った帰りによく寄っていたようです。画家と話をして、作品を数点選ばせていただいていたのでしょう。
戸田家で大きなアイリッシュセッターを飼っているのに憧れて、その仔を譲っていただいてもいるです。アミーゴという名前で、長く画廊で可愛がられておりました。
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2. 絵をめぐる話
先日の対談は、森岡書店 店主の森岡督行さんと、 キュレーターの宮本武典さんによるものでした。
戸田吉三郎は自作の絵について何も語らなかったそうで、制作意図などはわからないのだけど、画家が亡くなって数年経った今、残された絵を囲み、それぞれが思ったことを自由に話をしている不思議。面白さ。解説などしなくても、それでいいんじゃないかというような話が出ました。
私は思った。それは、岐阜でも起こっているぞ。
叔父ちゃんが、40年前に惚れた戸田吉三郎の絵は、きっと今も、画廊梵からそう遠くない東海地方のどこかのお宅のリビングか、会社の応接室か、病院の待合室かに掛けられているに違いない。
買った人は、掛けっぱなしかもしれないし、時々掛け替えて、しばらくぶりにその絵を見たかもしれない。
そして、ああ、これ、あの時梵さんで、あんな話を聞かせれて、それにほだされて買っちゃったよな、10回目の結婚記念日だったな、月賦で払って結構大変だったっけ。この絵を見た小さかった息子があんなこと言ったな、、、、とか、、、、
そんな思いがふと頭をよぎるかもしれない。
今はもう、画家も叔父ちゃんも叔母も亡く、画廊も閉まったけれど、絵はあるし、思い出もあるし、絵を見ながら新しい話もできる。
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3. ただいま
昨年末、急に叔母が亡くなって、私が画廊を閉めざるを得なくなり、ストックルームいっぱいの絵や陶器をどうしたらいいのだろうと頭を抱えることになりました。
作家さんに戻すのが一番いいだろうということになって、叔母の手書きの古い住所録から、電話番号を見つけて片っ端から電話をかけて行きました。
引っ越されたのか、亡くなったのか、繋がらない番号も結構ありました。お出になっても返却がスムーズにいかなかったり、、、
その中で、戸田吉三郎さん宅は、お電話かけたらすぐ奥様が出てくださり、叔母の逝去と梵の閉廊をいたんでくださり、かつ、作品の返却の申し出を喜んでくださり。。。
そして、なんと、遠いのに取りに来てくださったのです。夏の暑い日、ご子息と甥御さんと一緒に。車で、日帰りで。私はその時はもう関東に戻っていて、お会いできなかったのだけど。
後日、メールでお礼をいただき、「絵を並べてみますと、子どもが帰ったような不思議な思いです。」と書かれてました。
そうか、、、奥様は我が子を迎えに来てくれたのか。40年ぶりの「ただいま」だね。
*戸田吉三郎回顧展は、以下の2会場で開催されます。
東京銀座・森岡書店 11月15日(火)~20日(日)
神田神保町・文房堂ギャラリー 11月24日(木)~29日(火)
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染織吉田 吉田美保子