吉田美保子の some ori ノート

きいさま、帯のストーリー

2017.05.11

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2回めの打ち合わせからしばらくたった頃、きいさまからメールをちょうだいしました。
帯について、いろいろイメージが浮かんで、それがまとまってきたから、伝えたいとのこと。
曰く、、
「帯に一つのストーリー性をもたせたらどうかなと思っています。
手先は人の出発点で水のイメージ(まあ、羊水です)。ブルーグレーで静かに始まり、人が成長して活動的になると、緯糸に和紙やカンボウジュを使って変化を持たせ、タレ(人生の終末)に近づくと再び静かになり、最後は水と土のイメージで終わる。それが先日も希望したブルーグレーと茶のグラデーションです。まあ、土に帰るという感じかな。
なので、手先とタレの質感は静かで端正なイメージ。おタイコと前帯は、緯糸の種類や織り方を変えてテイストを変えたり、横線を入れたりして変化を持たせるというのが、今、浮かんでいるイメージです。」
なるほど、なるほど。
では、このきいさまのイメージと、2回めの打ち合わせで決まったことを踏まえて、もう一度整理しましょう。
まずは図面に落とし込もう。タイコや前帯部分の実物大と、全体像の縮小版と2種類。(写真は小さい方の図面です)
作りながら私は思いました。
なんで手先が生まれた方なの?返しの部分から始まって、タレくらいから活動的になって、タイコが大輪で、いろいろあって、前帯でもう一花咲かせて、だんだん静かになるって方が、自然じゃん?
と思ったのだけど、ハッとした。
そっか、作る方からしたら、タレの方から始まって手先がラストだけど、お召しになる方からすれば、まず、手先の方から締め始めるよね。お腹にも近いから、まさに身を守るしね。
手先をちょいと置いといて、一巻き、二巻き、お腹を決めて、ぎゅっと締めて、タイコを背負って、タレを整えて。
そっか。帯の一生は手先からだわな。私、作り手目線に凝り固まってたな。締める方に寄り添おう。着付け下手だけど、着物きててよかったな。じゃなきゃ気づけなかったと思う。
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*今日のブログ、お着物をお召しでない方には分かり難かったかもしれません。ごめんなさい。
何が言いたいかというと、帯というのは、一枚の布でできていまして、それが、それが、織り手は(私はと言った方がいいか)、タレ→タイコ→前帯→手先の順に織り進むのですが、締めるときは逆で、お腹の側から、手先→前帯→タイコ→タレの順に締めていくということです。

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