吉田美保子の some ori ノート

ウルトラマリン

2020.05.14

「白からはじめる染しごと」展のことをブログに書き留めておきたいと思います。

まずはそのときに作ったテーマ帯の話。

「白からはじめる染しごと」とは、われわれ作り手は、何もないまっさらな、白い糸や白生地に、さまざまな仕事を重ねて、帯や着物を作るのよって、工程ごとお伝えしようという展示会です。

今回のテーマは「海」。

9名の染色家、染織家が、それぞれの「海」にいどみます。

私は、荒ぶる海と静寂の海。両方を表現したいと思いました。

新しいチャレンジもたくさん入れたい。グレーの部分は、ぼかし染めにしました。

ヨコ糸は、カベ糸です。

カベ糸とは、撚りが特別な絹糸です。芯にした細い絹糸に、強めの撚りをかけた絹糸をそわせて、上撚りをかけます。普通の絹糸とは風合いがガラッと変わります。今回、糸を撚糸屋さんに持ち込み、回転数など相談し、特別に作ってもらいました。

その糸を巻いて、試し織りして感触を確かめます。糸を生かさねば。

結果、カベ糸だけでは重くなるし、ツヤもでないなと、いわゆる絹糸らしい絹糸と交互に入れることにしました。

ふう、間に合った。上の写真は織りあがって、蒸したあと、水元して、伸子を張って、仕上げているところです。

こちらが、本番。「白からはじめる染しごと」展のメイン会場です。

私、この帯を「ウルトラマリン」と名付けました。

海の深い青がよく表現できたと思ったからです。

青い部分は、波がうねり、激しくぶつかり合い、

グレーの部分は、打って変わって、ピタリと凪ぐ。

そんな、嵐と凪。動と静。

ブルーのところと、グレーのところは、織り方も違えました。

ブルーのところは、綾の方向をジグザクで変えています。糸もほんのちょっとだけ変えてます。グレーはずーっと同じ方向。糸も変えずに静寂を表現。

染めと織り方と糸とで、動と静を表現しました。

ブルーのところ、ジグザグな織り方、お分かりいただけると思います。糸も違うの分かっていただけると思います。

 ミソは、境目です。真っ白が3越だけ入ってます。

グレーの方はだんだん白くなり、ブルーの方はいきなり変わります。

 この帯のことは、制作中の時から、SNSに載せてました。感じのよいコメントくださる方がいらしてうれしいなあと思っていましたら、、、

メッセージをやりとりするようになり、詳しくご説明したり、いくつかのご質問に答えたり、奇遇なつながりによろこんだりし。。。。

ご縁がつながり、なんと締めていただけることになりました!

お仕立てもご希望をうけたまわり、宅配便でお届け。

そういたしましたら、さっそく締めてくださり、写真も送ってくださいました!

ありがとうございます。お似合いでうれしいです。こんな方に締めて欲しいなってイメージにぴったりです。

このコーディネートですと、春の穏やかな海ですね。そよそよと海風ふいてきそうです。

いいなあ。うれしいなあ。実は、この方と私、SNS上だけのお付き合いで、お会いしたことはありません。でもなんだかとっても近しく感じます。

「ウルトラマリン」、よかったね。ここでしっかりがんばるんだよ。

あ、濃い色のお着物にもいいですね。

私が作ったウルトラマリンが、こうやってご縁いただき、大事にしてもらって、このお方をますます輝かせていく。これこそが作り手冥利です。本当にどうもありがとうございました。

「白からはじめる染めしごと」展のことは、もうちょっと書きたいので、また読んでくださいね。

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