ブラッシングカラーズが終わった、さとさまの経糸(たていと)、上の写真は、機から外して鎖あみにしたところです。
この糸と道具一式ををかかえて、静岡県富士宮市の影山工房へ伺いました。
さとさまのご希望の「曲線」、これを表現するために、どうしてもこちらで仕事させていただきたく、特別にお願いしました。我が家では、帯の長さで糸をしっかりと張る道具だてが設置できないのです。
仕事はなんでも、段取り八分とはよく言いますが、織りこそまさにその通りで、段取りがそのまま仕事に現れます。
影山さんが実践しておられる方法は、その極みだと思っています。
その高度な技術と完璧な道具立てと工房を惜しげもなく提供してくださる影山さんには、本当に感謝しています。
ほら、ずらしで曲線が出てきましたよ。
影山工房では巻き取りまでやらせていただき、再び我が家で仕事再開。
綜絖通し。
筬通し。
これで、ほぼほぼ織るための段取りは終わりです。いよいよ織りにかかります。
ONLY ONLYで取り組んでいるさとさまの帯、デザインが決まりましたので、早速本番に取り掛かります。
これまで試しで小さなピースを、染めて、織って、蒸して、仕上げてを繰り返しておりましたので、本番をやりたくてうずうずします。やはりバーンとした緊張感は特別です。
大事なのは、まずは糸。
糸は、さとさまのご希望の、「きれいめ、上品、シャイニー」を実現するために吟味します。色については冒険要素も入れるので、ここは、ご希望通りに手堅く押えます。
張りのある銀河シルクと、絹らしく光り輝く糸を選びました。(上の写真、右が銀河シルク)
(その後の幾多の作業の記載は長くなりますので割愛します。)
それから、色。ここが勝負どころ。試しでOKとなった染料から慎重に選び取り、たっぷり用意します。
(染料の調合にかかる幾多の作業も記載割愛です。)
そして、デザイン画をもとに織り縮み率を割り出して、あたりをつけて、ブラッシング開始です。
筆で何度も何度も何度も何度も、ブラッシングしていきます。
染料の濃淡は色々です。ごくごく薄いものから、パキッとしたものまで。メリハリをつけて。
タレとか手先とか、ちょっとしか見えないところは、ごく薄い色ながら、しっかり手をかけて。一本の帯の全体が、さとさまのこれからを守るように。
ここがおタイコ。この後ずらしを施して、真っ直ぐな線を曲線にしていきます。
さとさまの帯、どんなふうにしようか、、、、。どうすれば、さとさまの望みを叶えられるのだろう?
50歳の記念の帯、これまで頑張ってきた自分をねぎらい、これからの人生を鼓舞するような。
実はとっても悩みました。
織の仕事は、デザインを決めるまでが第一の山場です。こここそが産みの苦しみで、粘って粘って粘り抜いて、突破口を見つける。光を見つけたら、そこを目指して突き進む。
この一本、私を出し尽くして、さとさまの人生のこれからを応援する帯にしたいと思った。
希望や好みを伺ったとき、幾何学模様の小さい柄が使いやすいなどとおっしゃっていたが、、、、
私はさとさま、案外大胆なのも似合わせるのではないかと踏んでいた。LINEでのやり取りで、柚木沙弥郎の、好きな数点の写真を送ってくれた。透明で躍動感がある。ほら大胆なのお好きなんだ。
直線は苦手、曲線が好きというのも外せないご要望。って織は基本、タテとヨコなんです。カーブをどう表現しようか。
好きな色は、ピンクと茶色。洋服はベージュを着るとのこと。暖色系がお好きとのことだが、インスタを拝見してたら、洋服でお出かけ時に、爽やかな青い布を肩に掛け、真っ青な紐のようなものを手に持って写っている写真発見。わ!すっごく似合う!
この色を提案してみようか?
いや、ブルーのみだと居心地悪いだろうから、ピンクベースで、アイキャッチに茶色。で、ブルーをその上にしっかり目に。
経糸にずらしを入れれば、カーブを描ける。それを大胆に入れたら?
こんな感じでどうだろう?
最終確認ににさとさまとLINEビデオで繋がった。お久しぶりです!同じ時間を共有できるの、いいですね。何より笑顔がうれしい。
ご提案を話すと、お任せしますとの一言。信頼していただけたのだなあ。ますます頑張らないと。
さあ、実作業だ!
春ですね。新しいONLY ONLYがはじまります。
今回のヒロインは「さとさま」。さとさまとのお出会いは、ちょうど一年前、京都のラソワさんででした。
ラソワさんでの個展にお越し下さったのですが、その3ヶ月ほど前にラソワさん主宰のオンラインセミナーで私が講師をした時に、受講してくださっていたそうなのです。その時「この人に頼みたい」って思ってくださって、実際に個展に会いに来てくださったとは、とてもうれしく胸が震える思いでした。
その場で、ONLY ONLY のお話しになり、ご希望をお聞きしました。お好きな色やデザインの方向性はしっかり持っていらっしゃるけど、具体的なことは未知数で、一緒に考えていくことなりました。
ラソワの吉澤さんによると、さとさまは、「気骨がある」「迷わない」「ちゃんと歩いている人」とのこと。なるほど。さすが吉澤さん、見えている方です。客観的で冴えたご意見はとても参考になります。
さとさま、その後、お手持ちの着物の端切れを郵送してくださいました。綺麗な手書きのお手紙を添えて。ご自分のこともいろいろ教えてくださったけど、私は、おっしゃっていること以上の可能性を感じました。
50歳の記念の一本にしたいともあり、それならばこそ、今までとは違うものでもいいのかもしれないなどとも思いました。
それから、時は流れ、、、、。昨秋から、試し織を始めました。いくつもいくつも。さとさまとはLINEで繋がって、試作を写真に撮って、どんどんお送りしました。
そうすることによって、私も頭の整理、方向性の整理しつつなのですが、、、実は結構悩んでしまいました。
動画も撮りました。約3分です。よかったらご覧ください。