吉田美保子の some ori ノート

白からはじめる染しごと ふりかえり

2020.06.19

「白からはじめる染しごと」展のことを、個人的なふりかえり記録として残しておこうと思います。会としての記録は、フェイスブックにページがありますので、そちらを見てくださいね。

場所は、自由が丘の「大塚文庫」。地下、一階、二階をお借りしての大きな展示会となりました。

会期は、202o年の3月20日(祝・金)の〜22日(日)まで。玄関で出迎えるのは、水橋さおりさん作訪問着と小林知久佐さん作九寸帯。

テーマは「海」。メンバーが一本ずつ、海の帯をつくりました。

「海の巻」なのです。

会場にて。

中央左の帯は、鈴木和美さん作「夏の譜」。右は吉田美保子作「ウルトラマリン」。 

一階の回廊部分には、着尺と帯のコーディネートが並びます。

ずらーっと壮観。見ごたえ充分。

マネキンに着付けてのコーディネート展示も。こちらは、名古屋帯 (小林 知久佐さん作)、帯締 ( 江戸組紐中村正)、付下訪問着「藻の森」(クワバラマキコさん作)。

 人気ブログ「きものカンタービレ」の朝香沙都子さんをかこんで。

朝香さん、2日間もお越しくださり、3回もブログに書いてくださったのですよ!
ぜひ、ご覧ください。

そして、お求めいただいた帯を締めて、4回目も

小林さんがお勧めしてくださっているのは、
八寸名古屋帯「三角のマーチ・かろやかに」吉田美保子作

小林さんは、メンバーに「大将」「師匠」と慕われているのですが、高い技術をみんなに惜しみなく教えてくれるだけでなく、こうやって、みんなの作品をいいところを見つけ、お客様にお勧めもしてくださいます。

さすが大将!こういうところも見習いたいです。

こちらは地下の会場です。

壁一面に、それぞれの仕事の工程のパネル展示。

着物の構成についても、図解と実物を展示しました。着物ってすごく考えられているのね〜ってお分かりいただけたかと思います。

中央のテーブルには、染めと織りの道具とさまざまな種類の絹糸の展示です。

大橋さやかさん。自作とともに。

 左はクワバラマキコさん作名古屋帯「祥の雲」。中が大橋さやかさん作。右の帯が吉田作の八寸帯「イエローフラワー」。

では階段を上がって、お二階へ。こちらは、 坂井三智子さん作、名古屋帯「アンジェラ」。

この方が坂井三智子さん。

二階には、それぞれ染めた、色とりどりの帯あげを展示。選び放題です。  

 
帯締めは、中村正の中村航太さんが、出店協力してくださいました。中村さん、なんと次回からは正式メンバーになってくださるですよ!

           吉田の「アートな帯あげ CANDY CANDY キャンディ・キャンディ」も並びます。

はい、そしてみんなで丹後ポーズ。

「白からはじめる染しごと」展はこれからも続きます。来年に向け、すでに話し合いを重ねてます。どうかお楽しみになさってくださいね。

第二回「白からはじめる染しごと」〜輪 (rin)の巻〜
会期 2021年4月9日(金)〜11日(日)
会場 大塚文庫(東京・自由が丘)

ウルトラマリン

2020.05.14

「白からはじめる染しごと」展のことをブログに書き留めておきたいと思います。

まずはそのときに作ったテーマ帯の話。

「白からはじめる染しごと」とは、われわれ作り手は、何もないまっさらな、白い糸や白生地に、さまざまな仕事を重ねて、帯や着物を作るのよって、工程ごとお伝えしようという展示会です。

今回のテーマは「海」。

9名の染色家、染織家が、それぞれの「海」にいどみます。

私は、荒ぶる海と静寂の海。両方を表現したいと思いました。

新しいチャレンジもたくさん入れたい。グレーの部分は、ぼかし染めにしました。

ヨコ糸は、カベ糸です。

カベ糸とは、撚りが特別な絹糸です。芯にした細い絹糸に、強めの撚りをかけた絹糸をそわせて、上撚りをかけます。普通の絹糸とは風合いがガラッと変わります。今回、糸を撚糸屋さんに持ち込み、回転数など相談し、特別に作ってもらいました。

その糸を巻いて、試し織りして感触を確かめます。糸を生かさねば。

結果、カベ糸だけでは重くなるし、ツヤもでないなと、いわゆる絹糸らしい絹糸と交互に入れることにしました。

ふう、間に合った。上の写真は織りあがって、蒸したあと、水元して、伸子を張って、仕上げているところです。

こちらが、本番。「白からはじめる染しごと」展のメイン会場です。

私、この帯を「ウルトラマリン」と名付けました。

海の深い青がよく表現できたと思ったからです。

青い部分は、波がうねり、激しくぶつかり合い、

グレーの部分は、打って変わって、ピタリと凪ぐ。

そんな、嵐と凪。動と静。

ブルーのところと、グレーのところは、織り方も違えました。

ブルーのところは、綾の方向をジグザクで変えています。糸もほんのちょっとだけ変えてます。グレーはずーっと同じ方向。糸も変えずに静寂を表現。

染めと織り方と糸とで、動と静を表現しました。

ブルーのところ、ジグザグな織り方、お分かりいただけると思います。糸も違うの分かっていただけると思います。

 ミソは、境目です。真っ白が3越だけ入ってます。

グレーの方はだんだん白くなり、ブルーの方はいきなり変わります。

 この帯のことは、制作中の時から、SNSに載せてました。感じのよいコメントくださる方がいらしてうれしいなあと思っていましたら、、、

メッセージをやりとりするようになり、詳しくご説明したり、いくつかのご質問に答えたり、奇遇なつながりによろこんだりし。。。。

ご縁がつながり、なんと締めていただけることになりました!

お仕立てもご希望をうけたまわり、宅配便でお届け。

そういたしましたら、さっそく締めてくださり、写真も送ってくださいました!

ありがとうございます。お似合いでうれしいです。こんな方に締めて欲しいなってイメージにぴったりです。

このコーディネートですと、春の穏やかな海ですね。そよそよと海風ふいてきそうです。

いいなあ。うれしいなあ。実は、この方と私、SNS上だけのお付き合いで、お会いしたことはありません。でもなんだかとっても近しく感じます。

「ウルトラマリン」、よかったね。ここでしっかりがんばるんだよ。

あ、濃い色のお着物にもいいですね。

私が作ったウルトラマリンが、こうやってご縁いただき、大事にしてもらって、このお方をますます輝かせていく。これこそが作り手冥利です。本当にどうもありがとうございました。

「白からはじめる染めしごと」展のことは、もうちょっと書きたいので、また読んでくださいね。

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