感激!けむさま から、お写真いただきました。
10月に織り上げた、のしめ のお着物、お仕立ての平山さんからけむさま に直接お納めとなったので、久しぶりの再会です。
布だったものが、着物になり、お召しいただくという、我々の仕事のクライマックスであり、ハイライト。
じゃーん。
わー、お似合い!さすが、けむさま の雰囲気にピタリと合ってる。。。。感動もひとしおです。うるうるきます。
そうそう、このお着物は、「Lemon Turquoise(レモン ターコイズ)」と名付けさせていただきましたよ。
衿もとの、グラデーションの切り替えポイント、バッチリ合ってますね。ホッとした。ここ、ほんと、注力しました。
裾の切り替えの高さもよかったと思います。けむさま の背の高さからバランスを考えました。
けむさま から、いただいたメールを、すこし紹介させていただきますね。
「着ると絹の光沢が美しくてほれぼれしました。北村武資さんの袋帯もしっかりうけとめてくれ、自信をもって着られます。」
やった!
そして、こちらは、歌舞伎座へお出かけになった時の写真です。
メール、抜粋で、紹介させていただきますね。
「歌舞伎座では、圧倒的な布の輝きと冴えた色にうきうきしました。友人4人で行きましたが評判もよくてうれしいです。着心地もよく、平山さんをご紹介いただいて正解でした。帯は平山さんのところでもとめたシャレ袋帯で、すこし軽やかに。4時間くらい座っていてもしわにならず、肩もこらず、でした。」
いやはや、うれしいの一言です。ああ、よかった。全てがむくわれました。
けむさま 、私が心配していると分かってくださっていて、こうやってお写真やメールくださるのだと思います。つくづくお優しい方です。おかげさまで、作り手はがんばることができます。ありがとうございます。
けむさま のONLY ONLY、熨斗目のおきもの、湯通しのあと、湯のしに出してました。
湯のしってのは、反物に蒸気をあててもらって、ツヤを出すのです。
それで、ふんわりツヤツヤになって帰ってきました。
今回のけむさま のお着物は、絵羽なので、身頃2枚、袖2枚、衽(おくみ)、衿の6パーツに分かれてます。
見て!このツヤ!!柔らかくて、適度なコシがあって、これぞ、絹。
これ、糸がいいんだよなー。特別な絹なのです。「ぐんま200」っていうブランド繭からとった座繰り糸をふんだんに使って織りました。希少で貴重な国産繭です。
座繰り糸、適度に節もありますよ。グラデーションの切り替えのアイキャッチポイントに、意識して使います。
いい風情だねえ。
部屋中に広げて、最終検反。サイズを測ったり、よーく検証します。
昨日、これらを抱えて、仕立ての平山さんのところに行ってきました。キモのところ、調べてもらってオッケーもらいましたよ。よかった、よかった。
今回のONLY ONLY、仕立て師の平山さんと組めて本当によかったです。絵羽ものは、仕立てでキチっと計画通りに組み立てられないと意味ないのだけど、それが織り手だけじゃ把握できないところあるのです。
自分だけじゃどうしようもない時は、人と組んでクリアする。今回は、けむさま が要になって、組ませてくださいました。本当にありがたいことでした。
というわけで、けむさま のONLY ONLYは、私の手元から羽ばたいていきました。このあと平山さんに仕立てていただいて、けむさま の元に着地します。
達者でな〜。
この子は、けむさま の元で、羽ばたき続けると思います。おしゃれで社交的なけむさま を大切にくるんで、きっといろいろにお供させせていただけるでしょう。私もとても楽しみです。
けむさま 、どうか、よろしくお願いします。
さあ、けむさま のONLY ONLY、のしめ のお着物、織り上がりましたよ。長かったーー。
きものは、帯やショールに比べ、だんぜん長尺ですので、織ってる時間も長いです。心の中で、けむさま と対話しながら織っています。
くじけそうになると、けむさま が送ってくれてる応援エールをキャッチしますよ。
おかげでどうにか乗り切りました。
織り終わって、早速、湯通しして、伸子張り(しんしばり)してます。織る時にできるちょっとしたゆがみは、この段階で調整します。
けむさま のONLY ONLY、のしめのお着物、織ってますよ。
織ってる時は、たんたんと。気持ちにも動作にも起伏なく、、、平坦に。
けむさま は、ヨシダさんの色の感覚が好きだとおっしゃってくださったので、そこのところ、自信を持って。
きちんと法に従って。でも遊び心をときどきひょっこりのぞかせて。
姿勢を正しく。それがいい織物にもつながるし、体が疲れず、仕上がりも早い。坐骨、骨盤、背骨、首の角度。意識して。姿勢が乱れたら、ちょっと休んで立て直す。
楽しい気持ちで。心を楽に。そういう着物を織りたいし、けむさま がこれをお召しの時も、そうであって欲しいし。私もそうありたいし。
織ってるところの動画です。17秒。メルマガ読んでくださってる方にはすでに配信ずみのものです。
もう一息。たんたんと励みます。
さてさて〜、けむさま ののしめのお着物、織り始めておりますよ。
今回は、19種類の糸を駆使して織り進めます。上の写真はターコイズの糸。9種類。
杼が10丁写ってますが、メインの色は2丁杼で織りまして、左の二つは同じ糸が入っています。この糸、けむさま のご要望で、試し織りの時より、一段濃い色を染め足した分です。よりメリハリの効いた、のしめらしいのしめになりますね。レモン色との相性もよさそうですな。
白は4種類。微妙に、ターコイズ系の白と、ど真ん中の真っ白と、レモンぽい白に染め分けました。グラデーションのキモです。
レモン色は8種類。身頃にどーんと入りますので、分量は多いです。出過ぎないような感じで。でもあっさりしすぎず、表情豊かを目指します。
巻いてるところ〜〜。
こんな感じで種類別に立てておきます。
さて、けむさま と一緒に「着物仕立てひらやま」さんをお訪ねした時のお話です。
けむさまは、大の着物好きで、着付けの先生もされていらっしゃり、長年、ありとあらゆる着物を着てこられた通の方ですが、仕立て師さんに直接お会いして、着方や好みを相談し、採寸して、仕立ててもらうのは初めてだそうです。普通は、呉服屋さんを介しますので、スタンダードでいらしゃいます。
いつもお願いしている寸法を一旦リセットするいい機会だと喜んでくださっています。
一方の平山さんも、仕立て師としての長いキャリアの前半は、呉服屋さんなどから頼まれる反物を、渡された寸法表どおりに仕立てて納めるのが仕事の仕方だったそう。この当時は、自分が仕立てた着物がどこの誰に、どんな風に着られるかなど、全く知らなかったと。
そしてそれを、ある日、ガラッと変えたのだそう。お客様と直に会い、相談を受けて採寸し、仕立てるスタイルに。
けむさま と平山さんの話を聞いている私は、その細かさに驚かされました。着るときに腰紐をどこに締めるか(ウエストか、または腰骨の上か)というのはよく聞きますが、地衿の先をどこに持ってくるかといういことも話題にされています。それによって、寸法もちょっと変わるみたい。私、そんなこと気にしたこともなかったよ!
私にとっても、素晴らしい恵みがありました。
なんと平山さん、新モスで作った、着物の実物大のひな型を作っておいてくださったのです!それも、繰越などは、けむさま サイズで!(名称は「ひな型」でいいのかな?着物の世界でも「トワル」って言う?まさに洋裁のトワルみたいなものですわ。)
それをけむさま に、美容衿をつけた上に着装していただいて、衿合わせのポイントにフリクションペンで印をつけました。そのポイントの6分下で色を変えたいわけです。ここが一番のアイキャッチですから狙います。
そして衿につけた印を伸ばして、身頃と袖につけ、そしてトワルを解体して、反物にしたときにどこが柄かを確認します。そうすると、ピシッと段があった熨斗目(のしめ)になるという計画。
すごーい!画期的!まさにこれがほしかった!平山さん、どうもありがとうございます!
説明が下手で伝わってないかもしれませんが、これぞ、ONLY ONLY。お召しになる方と、仕立てる方と、布を織る私が一緒に作るONLY ONLYです
*今回は写真は取らなかったので、一番上の写真は、以前に私が一人で平山さんをお訪ねしたときのもの。いまとはメガネが違うわ〜。下の2枚の写真は、うちに帰って、トワルをトルソに着せて、最終確認しているところです。
ONLY ONLY、けむさまの熨斗目(のしめ)のお着物、準備が進むにつれ、私は、仕立て師さんに事前にお会いできればなあって思うようになりました。熨斗目(のしめ)は柄合わせが、何より大事ですので、寸法を細かく確認したかったのです。
けむさまには「いつもの和裁師さん」がいらっしゃるとのことでしたので、その方に私が直接コンタクト取れないものだろうかとお聞きしてみました。
そうしましたら、その和裁師さんは遠方にお住まいで、懇意の呉服屋さんを通してのやり取りでいらっしゃるとのこと。
なるほど、そしたら、お会いするのはちょっと無理かなとメールを読み進めますと、な、なんと!
「もし 、ヨシダさんがやりやすいのだったら、今回のお仕立ては、いつもの和裁師さんじゃなくて、ヨシダさんが信頼している方のところに頼んでいい」とおっしゃってくださったのです。
私の仕事のしやすさや、ちょっとした不安をおもんぱかってくださったのです。うっわーーなんとありがたいこと!けむさま 、本当にお優しい。
それで、信頼度100%のいくつかの仕立屋さんにご都合をお聞きし、けむさまとご相談した上で、「着物仕立てひらやま」の平山留美さんにお願いすることになりました!
それで、早速、昨日、けむさまと二人で、元住吉の平山さんのアトリエにお伺いしてきましたよ。
いやー、本当に有意義だった!とても面白く盛り上がった三者会談の様子は次回書きますね。
*写真は、持っていった資料の山。2回目の試し織りは結局2尺(76cm)も織ってしまった!
ささ、けむさまのONLY ONLY、のしめのお着物、デザインを調整していきます。グラデーションのところがキモですので、念入りに。微調整に役立つのは、やっぱコンピューターだね。可視化できるし。だいたいこんな感じかなっていうの作って、ばんばんプリントアウトします。
やってみて、見てみないと分からないから、これはどんどんやります。
そして、トルソに着せてみます。トルソは高さを調整して、けむさまの身長150cm に合わせてますよ。
裾は切り替えポイントはこのくらいかな?いや、ちょっと間延びするな。もうちょっとメリハリつけよう。
衿は大事ねー。もうちょっとゆったりでもいいかもね。
お袖もつけてと。
うーむ。このくらいか?
けむさまの、のしめのお着物、2回目の試し織りです。こんな感じ?
写真を撮って、けむさまにメールします。
ご返信、だいたいオッケーでホッとする。ご希望も少々。
「ターコイズの一番濃い色を少し薄めに」、「水色を感じながら白に向かっていく感じに」、「黄色はさえた薄いレモン色」で「避けたいのは着物によくあるウコン色と、くすんだ感じ。」
了解しました。
その後、お仕立てのことやデザインのことなどで、メールをやり取りしておりましたら、けむさま、「どこかに薄いピンクを忍ばせられないか」とのご質問くださいました。
ああ、ピンク。
思えば、けむさま、いっとう最初は、「黄色とピンク」ののしめをご希望だったのだ。ピンク、お好きなのだ。うーん、それは入れたいなあ。ちょっと難しいが、とりあえず可能性を探ろう。
ごく少量、ピンクを染めることにした。レモンとターコイズと相性がいいように、パープル系のピンクを染めた。
はい、もいっちょ。太さと濃さを変えて、計4種、染めました。
早速、織り込んでみます。うーむ。可能性を探れないこともないが、紬調になる。訪問着調にしたいのだがな。
けむさまに写真をメールすると、
「ピンクが入ると、米沢の紬みたいになり、面白みより、あたり前になるのですね。よくばらない方がいいのだと思いました。」
とお返事くださった。なるほど、「あたり前」は却下ね。
でも、ピンクをご提案いただいたということは、何かちょっと物足りないってことなんだろうな。
けむさまは、今、人生の大輪の華を咲かせていらっしゃるのだ。お年的にも、社会の役割的にも。だから、控えめな着物にする必要はない。むしろ、大胆な思い切った着物を求めておられる、、、、
じゃあどうする?
「水色を感じながら白に向かっていく感じに」を、精一杯やりきることが、それに充当するのではないか?
けむさまのONLY ONLY、本番用の糸もそろいました。デザインの方も、最終調整に向かっています。ひな型で計画してて、一番いいと思ったのを、着姿のデザイン画に移してみます。
お召しになった時に、どこにポイントを持ってくるか、ねらいます。これは、絶対はずせない。最重要ポイントと言っていいです。
けむさまらしさを出したいし、人の目線がどこにくるのかも念頭に入れて、それから、デザイン的な着心地もあるよね、落ち着くとか、着てて楽とか、自信につながるとかっていうような。
けむさまに、糸が染まりましたよーとメールいたしましたら、最高にうれしいご返信くださいました!本当に、くずれ落ちそうになるくらいうれしかったです。見ていてくださる方はいるんだなあと、ジーンとしました。
ちょっとだけ、ご紹介させていただきます!
「酷暑のなか、すごいですね。はればれと美しいです。
だいぶ前ですが、〇〇さんのサイトで、ヨシダさんの作品をみました。ちょっと不思議な空気感が印象的でした。自由なのに、抑制も効いてて、気難しさがなくて、ほかの有名な作家さんや機屋さんとは、ちがう匂いがしました。〇〇さんにしては、めずらしいとも思いました。
あれから何年もたちましたが、直接にご注文できたことは、とても幸運です。ヨシダさんの創作の過程を共有させていただけるのも、新しいスタイルで、きもの好きにはたまらない贅沢。
とても楽しみです。」
さてさて、けむさま、大まかなデザインが決まりました。詳細はまだだけど、大体の計算はできますので、本番の糸量を出して準備スタート!
ヨコ糸、座繰り糸を使います。弾力があって、ツヤがあって、プリプリと生きがいい。
けむさま、普段着ではなく、パーティー着を望まれているので、ほこほこした真綿糸ではなく、ツルッとしていて光沢もあるこの糸を選びました。
さあ、下準備して、染めましょう。メインのレモン色。これを真ん中に、薄めと濃いめのそれぞれ2色ずつ染めます。
ターコイズ。これも、ぐっと薄めと濃いめも染めます。
ほら、こんな感じ。
これに、糊をつけます。上の写真、布海苔(ふのり)ですよ。これを煮溶かして、糸につけるのです。糊をつけると、糸はぐっと扱いやすくなります。最終的にはとってしまうのですが、糊付けはとても大事な作業です。
糊がついたよ!
けむさまとの第2回打ち合わせで、ふんわりした「のしめ」のお着物にすることと、お色味はレモン色とターコイズにすることが決まりました。
それで早速、デザインをすすめます。「のしめ」は色の切り替え部分が命と心得ます。さあ、どうしましょう。
色の配分を変えて、いくつも描いてみるしかありません。
このデザイン画をけむさまに、メール添付で送ったら、
「信頼してお任せします。自由に羽ばたいてください。次のお知らせ楽しみにしています。」というありがたいお返事がきました。
任せられたら、さらにさらに、ベストオブベストを探るしかありません。もっと深くデザインを詰めていきます。
さて、けむさまと2回目の打ち合わせが決まりました。
図面を郵送したあと、メールでやり取りし、話し合った末、色は「薄い黄色」「白」「薄いブルーまたはターコイズ」に決まりました。ささ、それでは、その色味で図面を作り直しましょ。のしめと、その他の可能性も探るため、4パターンご用意。
試し織りの第一弾も織ってお見せしよう。ブルーかターコイズのどちらがお似合いになるか、会えるチャンスがある時に見極めたい。染めて、機仕度して、織ります。話せば長いですので、詳細は省略します。
その2点をそろえて、第2回目の打ち合わせにのぞみました。時は、7月の下旬。ありがたいことに、その日は暑さのちょっとやわらいだ日でした。場所は日本橋の三越の特別食堂。ランチミーティングです。
約3ヶ月ぶりのけむさま、夏着物がきまっていらっしゃいます。
精がつくものいただきながら、なごやかにおしゃべり。けむさまは、着物のことについて、また人生についても、大先輩ですので、お聞きしたいことばかりです。
図面をお見せするとすぐに、のしめを指さされました。可能性を探ったけど、やはり、はじめに欲しいっておっしゃったものに戻りますね。
お色味については、試し織りをふっと肩にかけていただきましたら、わあ!ターコイズが近くにきた時、パッとお顔の色が輝かれました。薄いブルーだとちょっと物足りないような、、、、
けむさま、上品な奥様でありながら、個性的なもの、大胆なものがお似合いになるタイプですね。ここは思い切って行きたいです。
試し織りを直に見ていただけて、その場に私もいられたことは、大変ありがたいことでした。
けむさまは、着付けの先生でいらっしゃるので、着付けのコツや仕立てるときの工夫などもお話しくださり、興味津々。なるほど、かっこいい人は全てが半端じゃないね。さすが。すてきなものには理由があるし、かげの努力もある。とても勉強になりました。
けむさまと1回目の打ち合わせを経て、さあ、シンキングタイム。どうしましょう。
けむさまは私からの提案も柔軟に受けてくださるタイプの方でありがたい。が、これは実は難しくもある。
どうして難しいかというと、「お客様のいうとおりに作ること」は難しくない。でも、「私はこんなタイプの着物が好き。こういうとき着たい。一緒に考えてね。ある程度まかせるね。」と言うご注文は難しく、やりがいがある。
で、燃えております。
ご注文としては、黄色とピンクと白の熨斗目(のしめ)とのことだけど、打ち合わせ中に、まず、タテ絣はしないことになった。主に、奇抜すぎて、着ていくところがなくなるという理由から。そしてのしめ自体にもそれほどこだわらないという話にもなった。色についてもこれも提案次第では変更可とのことに。
よーし、ではどうしましょう。というわけで、自由な発想で、ひな型、たくさん、描きました。(上の写真の図のような着物を広げた形の図をひな型といいます)
私からのご提案としては、お色味のピンクと黄色と白をまず考え直してみたらどうだろう。理由として、
・黄色とピンクと白の組み合わせだと、一般論として、可愛らしくなりすぎる。これを回避するために、こげ茶などを組み合わせるといいかもだけど、けむさまにそれは似合わなさそう。
・きれいなピンクと黄色でなく、ちょっとくすませて、ピンクベージュとクリーム色なら、大人っぽくなるが、けむさまは澄んだ色の方がお似合いになりそう。かつ、その組み合わせだと下手するとお襦袢ぽくなりがち。
だとしたら、ピンクか黄色のどちらかを地色にして、寒色系の水色かターコイズを組み合わせたら?
などなど思い、ひな型に説明書を添えて、けむさまの元に郵送しました。
さてさて、さるゴールデンウィーク中の平日に、けむさま、我が仕事場までお越しくださいました。都心に住まわれるけむさまからしたら、最果ての地のような我が家なのに、本当によくお越しくださいました。
けむさま、この日は洋装でした。洋服姿もさすがおしゃれです。ふんわり華やかで、効かせるところはキリッと効いてて、颯爽とした素敵な方です。
なんと、ご自分で描いた着物のひな型(展開図)や、のしめのきものの雑誌の切り抜きをご持参くださってます。
きもののひな型をお描きになれるとは、相当のきもの通でいらっしゃるなと踏み、お話うかがうと、なんと着付けの先生でいらっしゃいました。さらに、ご先祖さまに呉服屋さんもいらっしゃり、お母様もきもの大好きな方でいらしたと。
うっわーー、それはそれは、、、。身が引き締まります。
着物や帯のお誂えの経験も大変豊富で、それを踏まえてのお話は、示唆に富み、教養あふれ、かつ率直で、本当にありがたかったです。
印象的だったのは、「今、呉服屋さんで買うことのできるのしめの着物は、力作すぎて着づらいなって思う」っておしゃったこと。
これ、すごく分かります。のしめはタテ糸を絣にすることが多いのだけど、色がパキッと出て、大胆で印象的なものになります。それ「やりすぎ」と紙一重です。下手すると着物ばっかり目立ちます。こうなっちゃうと着づらいし、着て行くところがなくなる。
こうもおっしゃいました。「高名な作家さんのものは、一目で〇〇さんのものだって分かって、まるでブランドのロゴをつけて歩いているみたいになるわね。」
うなずきすぎて、首がもげそうです。
もう一つとどめ。「平凡なものも案外いいなあって思うこともあるのよ。」
作り手のエゴがない、普遍的なもの。ああ、目指すべきはここだなあ、、、、
私は着物の文化の真髄をレクチャーしていただいてる気分になりました。一人で聞くのもったいない。全ての作り手に聞かせたい内容です。
(追記)昨日、投稿した時には、写真のアップができませんでしたが、今やってみたら(8月23日)できました!なんの努力もしてないのに!やっぱり一回電源落とすとか、一晩おくが最善策なのかなあ。。。。つか、それしかできんし、、、写真は打ち合わせ後の様子です。
「きものも考えているのよ」おっしゃって下さったけむさま、それからしばらくして、メールをくださいました。
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「のしめ」の着物が欲しくて、ずいぶん探しているのだけれど見つかりません。
それで、「そうだわ、吉田さんに織っていただこう」と思うようになりました。
森康次先生ご注文のお着物、すてきですね。これにとても惹かれました。
でもヨコのずれがない、いさぎよい「のしめ」、色はうすいピンクと黄色と白。
座繰り糸も大好きですし、さらりと薄くすこし光沢のある紬も。
こんな訪問着に負けない着尺。ご相談を進めさせていただきたいです。
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なんと、うれしいメールでしょう!それこそ「生きててよかった」って思うくらいうれしいメールです。
「のしめ」って、「熨斗目」と書きます。ずいぶん難しい漢字ですよね。元々は、武士が裃(かみしも)の下に着る礼装用の着物です。室町時代に始まって、江戸時代に多く着られたみたい。お能や狂言でも、着ますね。
いずれにせよ男性のものでした。それが、いまは、おしゃれに敏感な女性に着られています。
ちなみに上の写真が、のしめといわれてすぐに頭に浮かぶもの。こういう風に、きものの上下が無地で、中央部分は別の色で格子などになっています。現代ののしめは、これに限らないのですけどね。
さあ、けむさま、どうしましょう。
文中にある、森康次先生からのご注文というのは、こちらの着物です。これは、森先生からじきじきにご注文いただき、制作中には電話やメールでやり取りさせていただき、ずいぶん勉強させていただきました。
「この着物はね、白を美しく見せたいんよ。」とおっしゃる森先生の口調をいまもはっきり覚えてます。それで、自分がやるべきことが、パキッと分かりました。
今回、森先生から教えていただいたこと、総動員して挑みます。
けむさまとは、何度かのメールのやり取りし、打ち合わせのため我が家にお越し下さることになりました。
さあ、夏の終わりも見えてきました。秋は着物の季節です。新しいONLY ONLY をスタートしましょう。
今回のヒロインは「けむさま」。かわいい愛称でしょ。このお名前の由来は、けむちゃんという猫さんです。もう16年も前に保護された、おばあちゃん猫なのですって。今回のヒロインの「けむさま」に寄り添って、いい人生(猫生)ですね。
ところで、ところで、けむさまと私の出会いは、この春の伊勢丹での展示会の初日のことでした。とても気品のある奥様がふらっと現れたと思ったら、帯を即決でお求めくださいました。こういう時、腰が抜けるほど驚きますね。何年やっても慣れません。なんとびっくり、ありがたい。
驚いて、少しお話しすると、もう何年も前の銀座もとじさんでの個展も見て下さっているとのこと。その時から気にかけて見てくださっているとのことで、なんと、なんと、本当に、本当に、ありがたい。じーんとしました。
お話ししてたら、お着物も考えてるのよっておっしゃってくださって、まあ、ではメールでご連絡をと申し上げたら、なんとメルマガも取ってくださっているとことで、メール上でもすでに繋がっている方だと判明しました。
あとで住所録を探すと、ずっと前にお名前いただいてました。いやはや、失礼しました。
そして、またメールで連絡取りましょうということで、このありがたいお出会いは余韻を残しながら、一旦終了したのでした。