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第1回ミーティングでは、デザイン的なことは具体的には決まらなかった。決まっていることは、「碧い色を生かすこと」と「袷(あわせ)のお着物にする」ってことのみ。
もうちょっとすりあわせたいなあ。話しは分かるし、創作意欲はわくのだけど、ピントが全く絞れない。
あおさまとは、飛び飛びでメールのやり取りがつづいた。
あおさまからは、私の旧作をもしも、碧い色に変えたとするとどうなるかって質問がきた。だから、それぞれの作品の糸や染料や、どういうシチュエーションでお召しいただいているかなどお伝えする。
あと、参考になりそうなお着物姿の写真を貼付で送ったり。「ああ、これこれ、こういうの」ってのを見つけたかったのだけど、見つからず。
そうこうしているうちに、あおさまからイブ・クラインの碧い粉と、碧い牛革の端布が郵送されてきた。(上の写真)
ドキッとするほど、鮮やかなクライン・ブルー。これは自然の色ではないな。いや、もしかしたら、岩石など自然由来の色なのかもしれないが、普通は自然にはない色だ。それすなわち、着物の色にしにくいってことだ。
牛革のほうは、クライン・ブルーよりは落ち着いているけれど、単体で見るとそうとう強い。もしこのままだったら、仲居さんのお着物のケありだね。または、外国の学校の制服の色という感じもする。
それから、あおさまが碧いスーツをお召しになったところの写メもいただいた。ほら、海外派遣スポーツ選手団のようだという話しが出てた分です。たしかにそう言えなくないが、さすが、碧、お似合いね。でもこのままでは着物にならないし、あおさまもそれを求めていらっしゃる訳ではないのも了解済み。
さあ、どうする?
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昨年の8月1日は、とても暑い日でした。午後2時、あおさまとご友人のSさま、我が家にお出で下さいました。
はじめまして!
あおさまは、すらっと背が高い、カッコいい、出来るタイプのお方でした。暑い休日だから、ラフな恰好で、それが何気ない感じでおしゃれです。
エアコン入れようとしたら、入れない方がお好きとのこと。では季節を楽しみましょう。
今日は、どんなお着物にするか、具体的には決まらないと思います。大まかなお話になるでしょう。
あおさまが、思い描いているのは、碧い海。ベリーズのブルーホール。
新しくでてきたキーワードは、イヴ・クライン。クラインブルー。
うっわー、ますます着物と縁遠い感じだなあ。。。こりゃ、大変。どうしよう。接点、みつけるぞ。
あおさまとご友人Sさま、いろいろ考えて下さってまして、碧い着物は下手すれば、「売れない演歌歌手」みたいになりそうって危惧されてました。おー、言い得て妙。
それから、あおさま、このクラインブルーの色の、パンツスーツをお持ちだそうで、それをお召しになると、「スポーツ選手団の海外派遣の制服」みたいだそう。そっか、そうかもね。あおさま、スポーツウーマンタイプでもあるからね。
私としての心配は、濃い色の着物で、無地っぽくすると、「旅館の仲居さん」みたいになりはしないかってこと。せっかくonly only なのに、それではもったいない。
個性的なのはオッケーで、絣や飛び柄もオッケー。では、ブラッシングカラーズも範疇ね。
あおさま、次の年のお誕生日で、生誕半世紀だそうです。では、それを目標に作りましょう。2016年の10月です。
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あおさまとSさまは、これから花火に行かれるそう。花火も大好きとのこと。好きがしっかり確立しているあおさま、とってもカッコイイのです。
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あおさまとメールのやり取りを何回かした。私は、過去の自作を紹介して、この部分がもし碧だったらこんな風になりますなど、説明した。お互いピンとはきていない状態だと思う。
そんな中、あおさまが、「これから一枚目を買おうとしている初心者なのに生意気かと思いましたが、こだわりの選りすぐりの着物を持ちたいので、相談をはじめさせていただけないでしょうか?」とメールをくださった。
生意気なんて、そんなそんな。そんなこと全くありません。私としては、ご注文の早い時期に一度お会いできるのは、大変にありがたいこと。意思疎通の一助になります。
それで、去年の8月1日土曜日の午後、ご来訪いただくということになりました。あおさまは、我が家と同じ沿線上にお住まいなので、お越しいただくこと自体は、そんなにハードル高くありません。
この日はちょうど、関西在住のあおさまのご友人が上京中ということで、ご一緒なさることになりました。このご友人、すばらしいんです。着物好き、着物通、知識もあって、あおさまの親身にアドバイスされたり、着物一式を貸されていたり、、、いやあ、こういう方がいて下さると、これから着物を着たいって方のハードル、ぐぐっと下がりますよね。
ご友人も、あおさまが着物に目覚められたのをとてもよろこんで、心から応援してらっしゃるようです。うらやましいなあ、あおさま。
*写真は、ブルーホールの画像検索。スクショです。
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「すてきだと思いますよ。」
あおさまからのメールに、まずはそうお返事した。ブルーホールの画像を見ていたら、こんな色の着物を着たいって気持ち、分かる気がした。
たしかに、ウルトラマリンの着物ってみない。特に織りの着物では全く記憶にない。どこに着ていくのとか、格はどうなのとか、ウザいことは考え出したら、きりがない。
気になるのは、あおさまにとって、一枚目の着物となるってことだ。一枚目なら、もう少し合わせやすくどこにでも来て出掛けられる方が、普通はおすすめだ。淡い色の方が着やすいと思う。
しかし、簡潔なキリッとした文章から、「普通は」とか「一般的には」とか、そういうものを求めていらっしゃるわけではないんだろうなってことも伝わってきた。
それで、
「好き」「この色の着物を着たい」ってことを第一に考えていいと思いますよ。
とお返事した。
もしも絵羽仕立てにするのであれば、白や薄いグレーのベースに、碧を入れるってのも考えられる。そうすると、ちょっと正式っぽくもなる。可能性はいろいろなのだ。
*写真はネットで見つけたファインドトラベルさんのサイトからお借りしました。
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さあ、新しい only only をはじめましょう。今回の主人公は、「あおさま」です。あおさまの「あお」は「碧」。青でも蒼でもありません。深く美しい海の碧です。
あおさまが、はじめてメールをくださったのは、1年とちょっと前の、6月の14日のことでした。
そこには、ご自分が着物の初心者であること。色にこだわりがあること。ご友人のすすめで、紬がいいと思ってらっしゃることなどが、簡潔に書かれてました。
お好きな色は「碧」。「ウルトラマリン、あるいはそれに近い色」。イメージは、「ベリーズのブルーホール」とあります。
ほぉ、ベリーズ、、、、どこだっけ??カリブ海?ブルーホールって、えっと、、、、。早速検索する私。
うわあ!だーっと現れる、碧い画像にひきこまれる。地球上にこんな所があるなんて。
あおさまのメールは、「碧い海のような着物が欲しいのですが、紬の着物で、ウルトラマリンはどうなのでしょう、あり得るのでしょうか」「色を優先した場合、どういう着物が考えられるのでしょうか」とお聞きです。
*写真はブルーホール画像ギャラリーから拝借。これぞ碧だねえ。この目で見てみたいものだ。
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もう一ヶ月も前のことになるのだけど、6月にちょっと京都に行ったので書いておこう。
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母と叔母と。桂離宮と修学院離宮に行こうと、計画した。
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離宮の見学申し込みは3月のこと。ホテルの予約も早々に。
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その後、思いもしない熊本の大地震。世の中ひっくり返ったかと言うくらいの衝撃だった。
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一時はこの京都旅行もキャンセルかとよぎったが、母にとっても、ちょうどいい気分転換になった様子でよかった。
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当日は、京都駅で待ち合わせ。それぞれ新幹線で。熊本からさくら号の母、名古屋経由のひかり号の叔母。新横浜からのぞみ号の私。京都って便利。集まりやすい。ほんと、日本の真ん中なのねえ、、
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京都駅から乗ったタクシーを、修学院離宮で降りるとき、助手席に乗った私がお金を払いながら、「うるさくてすみません」って言ったら、運転手さん、「いえいえ、ウキウキが伝わって来ましたよー」って。
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そうですね。ウキウキしてました。久しぶりに会う、おんな3人、平均年齢66歳。
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京都っていいなーって思いました。見るところいくらでもあるし。桂離宮、めちゃくちゃ、よかった。(写真、上から12枚目まではすべて桂離宮です)
あと、「ギア」ってお芝居がよかったな。三条通の古いビルに専用劇場が出来てて、ロングランやってるのだ。マイムやブレイクダンスなどなど、パフォーマンスがすごいのだ。人間ってすごいなー、若いっていいなーって思った。(あ、おばちゃん発言してしまった)
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あとよかったのは、母と叔母と別行動で、一人でささっと行って来た、一乗寺の恵文社という本屋さんと、木嶋(このしま)神社、別名蚕の社。本屋と神社だからぜんぜん違うけど、どちらも、「うわっ」って感じですごかった。すごいところって、空気が違うんだよね。
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養蚕や織物の神さまである、蚕の社で、おみくじをひいた。「小吉」であった。教えの欄に「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。」とあった。粛々と努力しよう。
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思ったけど、私、もしかして、純粋に観光で京都に行ったの、はじめてだったかもしれない。
高校時代の修学旅行を皮切りに、京都にはずいぶん行ったけど、観光とは言いがたいものばかり。30代前半にやってた仕事では京都でのイベントを担当したから、よく通った。他にも、展示会を観にとか、友人知人をお訪ねして、、、などなど、何回も行ってはいるのだけど、観光客ではなかった気がする。
今回、私、京都観光客デビューしたのだろうか?
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この写真は銀閣寺。スリーショット、見えますかー。
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この写真、遠くに大文字が見えますね。老婆二人が登るのは吉田山。
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こうさまの、「大麻だけで織った作務衣、一式」、お手紙を書いて、4枚の布の説明書を書いて、縫い糸にする大麻糸をつけて、ゆうパックにて、お納めしました。
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ほどなく、こうさまから、お礼のお電話いただきました。
「ええのん、作っていただきまして、、、」
「上着の布と、ズボンの布がちょっと違うのがええね。ズボンの方は滑らかで履きやすそうやわ。」
声が明るく感じられてホッとしました。
ずーっと、ずーっと心配していたお仕立ても、ご友人が引き受けてくださるそうで、本当に安堵しました。ああよかった。
今回の布は、経糸も緯糸も、赤茶と藍の、一本交互で織っている。それって、表裏がないようで、微妙にあるのです。藍が強く出る方と、赤茶が強く出る方。そんなお話もしました。お仕立てのとき、ご一考願えれば。
こうさま、お仕事で時々上京されているよし、ぜひぜひ、お会いしたいです。できれば、この大麻だけで織った作務衣をお召しになって!その日を心から楽しみにしています。
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こうさまの only only、完成したよ。
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大麻の布、4枚。
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タイトルも、ずばりそのまま「大麻だけで織った作務衣にする布、一式」です。
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作務衣の上着にする布、遠景。
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作務衣の上着にする布、近景。
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作務衣のズボンにする布。
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ベルトにする布。
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紐と内ポケットにする布。このようにたたんで紐にする。
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こうさまの作務衣、さあ仕上げますよ。上の写真は湯通しです。糊と余分な染料を落とします。
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きれいになったら、次は整えて乾かします。張り手の針の上に、布を置いて行って、、、、
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ギュっと閉じると、針がグサっと刺さります。
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ロープを掛けて、
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張ります。
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さあ、張れた。こんな感じ。梅雨時期は乾かんね。
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こうさまの only only、作務衣の本体、終わった〜。メインは終わったのだけど、もう一枚、織るのだ。それは、紐とポケットの布。
こうさまからのご注文は、作務衣の布とベルトにする布。さらに、縫い糸も大麻にしたいから、糸も分けて欲しいとのお申し出があった。
それは了解したけど、あとで考えて、「見頃を合わせる紐と、ポケットもいるかな?その布はどうするの?」と思い至った。作務衣本体の布じゃ、固すぎるでしょ?
普通は綿布を使うと思うけど、縫い糸さえ大麻をご希望のこうさまだ。大麻がいいに決まってる。
よし、じゃあ織るか。
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用途が紐とポケットだから、あくまで実用。薄くて強い布。
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それで、この布、経糸すべて単糸にしました。経糸が単糸って、織りをやってる人が聞いたら、「ヨシダ、ようやるわ」って言われるんじゃないか?説明が難しいから端折らせていただくけど、植物系の繊維の(綿や麻ね)、単糸の糸って、経糸にするの、難しいんです。糸がね、スーッと抜けるの。溶けてなくなるみたいに。
だから、避けて通りたいんだけど、怖いもの見たさでやってしまう。
まあ、苦労したけどね、織れたぜ!