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大麻の糸を探している時期、私は何度かこうさまに電話をしました。意思確認というか、、気になってること、クリアにしておきたく。
まず、着にくくてもいいってのは、どの程度までの着にくさまでは、オッケーなのだろう?分厚くてもいいとのことだったけど、そうすると重くなる。重いのもオッケー?重いというのは、着物では大変嫌われるのだけど、、、、それにある程度はしなやかでないと、すべりが悪くて着るものとしては良くないと思うのだけど、、、などなどおずおずと話す私に、こうさま、
「どんなに重くてもいい。ははあ、あんた、そんな作務衣じゃガサゴソして、肌が赤くなるとか心配しているんやろ?それでええねん、むしろそれを望んでるや。野武士のような作務衣がええねん。」
うっわー、野武士かあ、、、、
あまり整ったツルツルした糸より、ラフな感じの糸が希望と、、、。では、今、手元に集まりつつある大麻糸のサンプルをお送りしますね、見てください。でも、ご希望されても織れない糸もありますよ。
それから再確認ですけど、私は反物までしかできませんよ。お仕立てはできませんし、着物だったらご紹介もできるけど、作務衣の仕立てはツテがないのだけど、大丈夫でしょうか?
こうさま、「それは自分が探すから、あんた心配せんでいいよ」とおっしゃる。本当かな?私、心配性なのです。
そして、お話をいただいてからずっと考えてきた、お見積もりを出さねば、、、大麻の作務衣なんて私としてもはじめてのことだから、ずっと悩んでた。布の大きさと糸の仕入れ値が見えてきたので、ここらで決めねばならない。
悩んだ末に、着尺一反と同じ金額を申し上げた。手間を考えれば、ギリギリの線だ。しかし、作務衣としては破格の値段だと思う。こうさまは、一瞬考えるような間を取られたが、
「思っていたより高いけど、欲しくなってしまっているから、お願いします。」とおっしゃった。
*写真は、栃木県鹿沼の大麻栽培家、大森さんの仕事場にて。麻挽きしたあと、乾燥させているところ。
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さあ、こうさま。まずは、糸です。糸を見つけなければ、話しは始まりません。いったい、どうやって、求める糸を探し出しましょう?
いつもお願いしている絹糸屋さんには絹糸しか売ってないよ、当たり前ですが。麻、それも大麻限定。それも、織り糸。(手織りに適しない糸もあります。)それも、柔道着のような作務衣にする生地を織るのに最適な糸。さあどうする?
まずは、やはり大検索大会です。大麻の糸、検索で見つけられるもの、しらみつぶし。何店にかは電話して話しを聞いたり。んで、サンプル請求できるものはしまくり。もしくは最小ロットで買いまくり。
それから、織りをやってる人に会ったら、聞きまくり。オープンで、自分の経験、教えてくれるんだよね。頼りになる織り仲間たち。
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しかし、いまひとつ、ピンとこない日々。ある日、勤め人時代からお付き合いのある、月刊誌「染織情報α」の編集長、佐藤さんからお電話いただきました。
まあ!お久しぶりです!!
お話をお聞きすると、私が、2000年に、栃木県の大麻栽培農家の大森さんを訪ねた時に撮った写真を、次号に使ってもいいかとのこと。どうも私、過去に一度提供したことがあるみたい。
もちろん!!どうぞ、どうぞ。
しかし、佐藤さん、とっても奇遇です。私、今、毎日、大麻のことばかり考えて暮らしています。ところで、お顔の広いところで、大麻の織り糸を扱っている業者さん、ご存知ないですかね?
ああ、知ってますよ。ヨシダさんもご存知と思うけど、〇〇さんか、〇〇さんは?
おお!知っているけど、抜けてた。検索しても出て来なかった。
早速電話し、サンプル糸を取り寄せたのでした。
*ブログにはさらっと書いてますが、この間、ゆうに3ヶ月はたってます。昨夏は個展準備をしながら、大麻を探すアツい日々でした。
*上の写真は私が撮ったもの。下の写真は、月刊「染織情報α 2015年9月号」の当該ページ。左上の写真を提供しました。
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すてきなお写真いただきました!かっこいいねー!こちら、ほんと、かっこいいお方なのだよ。
お締め下さっているのは、昨秋の個展「三角・吉田」でお求めいただいた、八寸帯「Yellow triangles (イエロー・トライアングルズ)」です。いい感じで締めこなしていただいて、本当にうれしいです。
このお方には、独立した当初から、いろんな場面で応援いただいてます。ありがたい限り。八寸帯を織ったらいいよってアドバイスも、ずっと前にいただきました。それがやっと結実したのが、上の写真。感無量。
個展にも、遠くから、オープンニングにも、お食事会にもお越しいただき、最高にうれしかったです。本当にどうもありがとうございました。
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こうさまから、大麻の作務衣を織る話しをいただいて、私が真っ先にしたかったのは、大麻についての勉強し直しでした。
大麻は、なんと言うか、、、、底知れぬ力を持った繊維なのです。麻薬成分があることばかりがクローズアップされがちで、今も取り締まられてるけど、それはたかだか100年くらいの話し。
私、勤め人をしていた頃、大変ありがたいことに、大麻を扱う機会もあり、ずいぶん勉強しました。だから、日本人が、精神的にも大麻を大事にしてきたことを知ってます。例えば、神社のしめ縄やヌサも大麻だし、鈴から下がってる太い縄もそう。あれ、人間が触って鈴を鳴らすでしょ。神との交信になるんだよね。
麻の葉の模様も、昔から赤ちゃんの産着に使われたりしますね。あれも、魔よけの意味もあり。麻のように、まっすぐすくすく育ちますようにって意味もあり。
それに何と言っても私、2000年の7月に、栃木県粟野町で麻の栽培をされている、大森さんを訪ねたことがあるのです。麻糸や麻布を扱っていらっしゃっる京都の青土さんと一緒に、大麻の刈り取りを見せてもらったのだ。すばらしい経験だった。ちなみに、ここ3日間のブログの写真はこのとき撮ったものです。
それで、その頃の資料をひっぱり出したり、新たに本を探したりして、読み込みました。
綿や絹は、あとから外国から入って来たもの。大麻は、もともと日本にありました。縄文時代から、我々とともにあり、生活に利用していました。
こうさまが、なぜ大麻の作務衣が欲しいのか。それ、何となくでいいから、つかんどきたいのよね。
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「大麻の作務衣が欲しいんだけど、あんた、織ってくれんだろうか?」
うっ。
一瞬つまる私。
えっと、、、、、、大麻の糸を織るんですか?それはやってやれないことはないでしょうけど、、、。私、独立してからは、ほとんど絹ばかり織ってます。麻を織る経験値は、まったく延びておりません。
うーーーん。それでも、、、
すぐに頭に浮かんだのは、大麻の糸のみで織るより、絹か木綿を混ぜた方が、軽くて、しなやかで、着やすい生地が織れるってことだった。
素材をまぜることをグンボウっていうんですけどね、両方の長所を生かせるし、おすすめですよと、こうさまに、お伝えすると、、
「いや、大麻だけがいいんだ。着にくくてもかまへん。」
うーーんんん、、、私としては、はい、それじゃそうしましょう、とは言えません。着やすいってのは、身を包む布を織る身としては、至上命題なのだ。麻が大事ってことかな?
だったら、苧麻(ちょま)は?ラミーと言う扱いやすい麻もあります。大麻よりは軽くて、なじんで、着やすいと思うけど?
その提案にも、こうさまは、
「いや、大麻がいいねん。分厚くて、柔道着みたいなのを思っているのだけど。」
そっか、なーるほど。大麻がキーワードね。
しかし、柔道着、、、、はい、織りますとは即答しかねます。ちょっと調べてみます。
ちなみに織らせていただくとしたら、染めはいかがしましょうか?
「茶色というか、えんじ色というか、、、赤っぽい茶が好きなんだけど、、、」
化学染料でいいですか?その方が、ねらった色を出せますけど。
「いや、せっかくだから、草木染めで。」
ああ、やっぱり、、、、、。
植物繊維は草木染め、大変なんです。染まりにくいので下準備と染め重ねが、、、、、、。
とにかく、調べますから、時間をくださいとお願いし、その日は電話を切りました。
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さあ、新たなonly only のはじまりです。今回の主人公を「こうさま」とお呼びさせていただきましょう。こうさま、男性です。
こうさまとの、出会いというか、再会なのですが、、、正しくはお会いしてはいないのですが、、、それは、今から、ちょうど1年前の、2015年5月31日、日曜日の夕方のことでした。
我が家の固定電話がなりました。
うちの電話がなるというのは、けっこうめずらしいことです。最近は、友だちも、お取り引き先さまも、携帯に電話くださいます。名刺には、固定電話の番号を載せてますが、サイトや年賀状などには載せてないので、商売上もあまり使っているとは言えません。
ですから、うちの固定電話に掛かってくるのは、営業目的か、はたまた間違い電話が多いのです。どうもどこかの工務店さんと番号、酷似しているようなのです。
電話を取った第一声の「もしもし」という声が男性でしたので、私はすっかり工務店さんへの間違い電話と思い込みました。次の言葉を待って、「お掛け間違いですよ」と言う気まんまんでした。それが、
「あー、ヨシダさんですか?私、もう15年ほど前になりますけど、大麻ののれんを織ってもらった、〇〇の〇〇です。」
!!!!!
一瞬声を失います。うっっわーー、心底ビックリです。走馬灯とはこのことか。いろんな思い出が駆け巡ります。15年前ってまだ勤めながら機織りしていた頃のことです。
あの時もビックリしたな。出張中に出会った私にいきなりご注文を下さった。条件は素材が「大麻」ってことと、大きさだけだった。とにかく、誠心誠意、織ったなあ。ビクビクしながらお納めしたら、すぐに、ヒノキのまな板贈ってくださった。そのまな板、いまでも愛用しています。
それから、こうさまとは、年賀状だけのお付き合いとなった。毎年、宛名面に、私の住所氏名をものすごい丁寧な達筆で書いて下さる。裏は印刷で、毎年同じ。他には何も書いてない。
10年くらい前、年末押し詰まってから、喪中ハガキが届いた。私はすでに年賀状を出してしまっていたから、重ねてお悔やみのハガキを書いた。そうしたら、明けてから、そのお礼ハガキを下さった。心が通い合ったような気がしてうれしかった。なんか、よく覚えてる。
そのこうさまが、今回は、こうおっしゃいます。
「大麻の作務衣が欲しいんだけど、あんた、織ってくれんだろうか?」
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今日もオリジナル制作の八寸帯を紹介させてください。
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名前を「Flying small birds(フライングスモールバード)」と申します。上の写真は前帯ね。一番上の写真がおタイコです。
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一連のスモールバードシリーズの、現時点での完成形と思って作りました。この写真は前帯のアップ。
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楽しく軽快、かつ使いやすい帯ですよ。いろんな着物に合いますし、季節もそれほど選びません。
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ブラッシングカラーズは、酸性染料を刷り込んでます。蒸して定着させています。堅牢度(けんろうど)を調べるため、試し染めを数日間、太陽の下に置きっぱなしにしましたが、全く変化なしでした。
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経糸は8種類の絹糸です。緯糸は、キビソという蚕の外側からとれる絹と、和紙の糸です。絹と和紙が交互に入ることにより、しなやかさとシャリ感を両方出しています。
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とても軽い帯ですよ。締めていて疲れません。
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ちょいと締めて、お出かけになりませんか?
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こちらの帯はおかげさまで、ご約定済みとなりました。どうもありがとうございます。もしこちらを気に入って下さいましたら、新たに、色やデザインのご希望を伺って、あなただけの一本をお作りします。業界の方からのお問い合わせも、お待ちしております。
お問い合わせはこちらから→☆
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今日は、オリジナル制作の紹介をさせてください。シリーズ物の新作つくりました。
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バンピーシリーズの3本目、八寸帯「White & Gray Bampy(ホワイト&グレイバンピー)」です。似たような名前ですみません。区別つくかな?
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バンピーシリーズの中では、これが一番シャープな感じよ。
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ホワイトとグレイのめりはりがきいてます。
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白のところは、あえて真っ白。
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前作と同じで、緯糸はすべて国産のキビソ糸(蚕の外側から取れる絹糸)です。
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太いキビソ、細いキビソ、バシバシ入れています。
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締めやすいとご好評いただいています。試行錯誤の、いまのところの、行き着いた地点です。
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ほーら、糸って面白いでしょう。糸味、布味、お楽しみいただける一本です。
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バンピーってのは、でこぼこって意味。なんか、かわいい響きよね。
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使った糸の見本です。渋札に貼ってます。一番下の糸なんて、相当ふといよ。これでも、みんな絹糸です。
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前作と並べて撮りました。奥が、この「White & Gray Bampy(ホワイト&グレイバンピー)」です。
手前は、「Grayish Bampy(グレイッシュバンピー)」。こちらで紹介しています。ぜひ合わせてお読みください。
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この写真も、奥が「White & Gray Bampy(ホワイト&グレイバンピー)」。手前が「Grayish Bampy(グレイッシュバンピー)」。ただいま二作とも手元にございます。お値段など、お気軽にお問い合わせください。業界の方からのお問い合わせも、お待ちしております。ぜひ!
お問い合わせはこちらから→☆
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うれしい画像が届きました!
拙作、八寸帯「おもちゃのチャチャチャ、ちょっと渋め」を締めてくださっているのは、なんと、北海道旭川の人気呉服店「すぎを」さんの店長さん、鈴木さまです!
やったー!
鈴木さまは、勤続30年の大ベテランでいらっしゃいます。きっと、ありとあらゆる着物や帯を、扱って来られたことでしょう。そんな方に、拙作お選びいただいて、大光栄です。
さすがの着姿、かっこいいねー。
「美保子さんの八寸帯の締め心地は、とても気持ちが良く、デザインや色彩は、周りの方に感動与える可愛らしさ!!」
とお書きくださいました。感涙です。
うれしいなあ。これを励みに、がんばらなっきゃねー。
*すぎをさんのサイトはこちら→☆
*あ、この帯も、「すぎを好み」のページに載せてもらってる!→☆
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かずさまの、only only、できました!かずさまには、昨日、無事にお納めしましたので、こちらでもご紹介させてください。
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お着物の名前を「夕方5時の私の空、2016年3月5日」と名付けさせていただきました。ちょっと長いけど、決定打のフレーズなのよね。
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3月5日に、かずさまから、「夕方5時の頃の空をふと見上げて、春の夕暮れの色、あんな感じがいいかな、とか思っています。曖昧すぎるかしら」というメールをいただいて、このお着物に息が吹き込まれました。ピントが合って、動き出した感じです。
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その日から、空を見上げる日々が続きました。空の写真もたくさん撮りました。それはね、すべて終わった今もです。つい見上げちゃうんだよなあ。
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見上げながら、いろんな気付きがありました。春浅い夕方の空は、ごくごく薄いグレーなんだけど、案外青みもあって、薄いピンクもまじっています。暮れ方の優しい色。清々しい感じもする。かずさまらしいなって思いました。
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実はね、昨日、かずさま、我が家までお越しくださって、3丈4尺、だーっと広げて観ていただいた時のひとこと。
「私が見た空の色より、私らしい色だわ」
わ、感激。
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このお着物は、かずさまがご自分で、作って、染められた糸が織り込んであることもキモのひとつ。
上の写真の真ん中辺り、ずり出しでとった糸が入ってます。だいだい色です。桜のアルミ媒染。色のトーンは違うけど、なじんだよね。藍の生葉染めの糸は、細い糸ですので目につきにくいけど、たくさん入ってます。溶けこんでる感じね。
織りはじめのところには、かずさまが、試し織りされた部分もくっついてます。まさに、かずさまと私、二人三脚で作った着物です。
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かずさまにとって、この春は、長年のお勤めを退職されたまさに節目の季節。これから、新しい世界を切り開かれる起点でもあります。その記念のお着物を織らせていただいたことは、私にとってもかけがえのない喜びでした。
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もうひとつ、とても大きなこと、起こりました。このお着物を織りはじめた4月14日、郷里熊本で、大きな地震が発生しました。遠くに住む私も大きな不安におそわれました。
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そんな中、私はこのお着物を織ることに没頭することで、支えられました。心を強く持って、できるだけのことをできたのは、かずさまとこのお着物のおかげと感謝しています。
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このお着物は、春の夕方のように、穏やかで静かなイメージです。かずさまのこれからの人生を、静かに輝かせてくれるものと信じております。
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使った糸の見本です。18種類の緯糸と経糸。指差ししているのが、かずさまが自分で染めた糸のうちでも、特にたくさん使った糸。
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お手紙を添えて、門出です。たっしゃでな。
*かずさまストーリーはこれにて中締めです。ブログを読んでくださっている方、お付き合いありがとうございました。いつか、着姿、拝見したいねー。