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それから5ヶ月後のこの前のお正月、私は和の國さんでの「熊本ゆかりの染織家展」のために帰省した。会期二日目に、ギャラリートークをしたのだけど、そのとき、いずさま、お着物お召しで、トークを聞きにお出で下さった。
お久しぶりです!
お着物姿のいずさまは、洋服の時より、可憐な感じがした。前回は、お仕事帰りってこともあったのだろうけど、何か、着物を着ることで、大人の部分と、女学生くらい娘さんの部分が融合されて、ふんわり可憐な感じ、、、
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その日、お昼をご一緒できた。
熊本名物馬刺のランチコース(♡)をいただきながら、only only 2回目のミーティングとあいなった。
いろいろお話するうちに、泉鏡花の話しになった。私が、「飛行機の中で読むつもりで文庫を買ったけど、文語体に苦戦して、進んでないんです」なんてことを話したのがきっかけだったと思う。
泉鏡花は、いずさまとのメッセージのやり取りで、いっとうはじめに出て来たキーワード。なのに、ちっとも解けてない。なぜいずさまが、そうお望みなのか、泉鏡花のどこにひかれるのか。
豪華ランチをぱくぱくといただいていた箸がとまる。
いずさまは、泉鏡花の世界観がいいとおっしゃる。それは、誠実で、正義感があって、控えめだけど強い。たとえ不遇な目にあっても、正義を貫く。そこが好きだと。
ああ、私、今、とっても大事なことを伺ってる。これこそ、私が今回織るもの正体だ。
何を織ればいいのかは分かったが、それは余りにもハードルが高い。とにかくがんばろう。私にあるのは、根拠のない自信だけだ。
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昨年の8月、いずさまとお会いすることができた。私が熊本に帰省したおりに、スケジュールを調整していただいたのだ。その日、いずさまは、お仕事の後で、きれいな色の車を運転して、私の親の家まで来て下さった。
はじめまして!
思っていた通り、すらっとした、知的美人のいずさま、お洋服も、すっきり系。自分の似合うものをよくご存知の方だ。
資料一式、持って帰っておいた。それを元に、いろいろとお話を。
それで新しく出て来たキーワードは、オブラート。オブラートかかった白、ピンク。あの感じ。ふむ。
大事なのは、淡く、はかなげで、芯があること。泉鏡花の世界。
遠目には無地。完全に無地でなくとも、無地っぽい。粗密があった方がよい。ランダムがよい。ランダムだけど、統一感があること。ペタッとしないこと。ふむ。
単衣だけど、つるっとするより、ホッコリした方がよい。春の単衣より、秋の単衣を念頭に。
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過去に織ったものも、ファイルと実物と両方もって帰った。その中で、いずさまが、一番、ピンとこられたのは、なんと、九寸帯「レッド・モンドリアン」の無地場だった。上の写真の、白いところ。黒線なしの。
ふむーー、いずさま、このくらいの無地さ加減をお望みなのか、、、、私にとってはこれ、完全無地の範疇。いや、いろいろ仕事はしてあるのだけど、仕事の後を残さないようにしたからさ。よかった、伺って。
すぐには取りかかれないので、その秋には間に合わないことをご了解いただき、一年後の納品を目標に進めて行くことにあいなったのである。
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昨日は着物でお出かけしました。まずは築城則子さんの個展のギャラリートークに、銀座もとじさんへ。築城則子さんは、小倉織りを復元させ、縞の可能性を大きく大きく広げたすごい方です。
お話しで、心に残っていることのひとつは、織りの制約、縞の制約の中で、クリエイティブの自由度があるのは、色である。色で、自由に羽ばたくってこと。確かに、築城さんの作品は、すっごく自由で洗練されてて、美しい。
それから、2300本の経糸を織るのに、ひと越ひと越に、地響きのような音をさせているってこと。それを3回打ちで打ち込んでいるそうだ。そっか、、、地響きか、、小倉織りは元々は武士の袴で、戦いの装いであるという。地響きを立てて、敵地に切り込む勝負の服なのだなあ。
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その後、お友達とランチしました。中華の点心とビール。お友達と言っても、なんとこの日初対面!着物の仕事をしていることと、同じ年であることが共通点。フェイスブックでつながって、なんか、この人、気が合いそうとは思っていた。が、これほど合うとは!不思議なものだ。
狭くなりがちの私の世界をふわっと膨張させてくれた。ありがとう!
それから、お友達も一緒に、南青山のイトノサキさんへ、堀口度子さんの上布の展示会を拝見しに。
実は私、堀口さんに、石垣島で、20数年前にお会いしているのです。数ヶ月前、堀口さんのお名前を偶然耳にしたとき、何とも言えない郷愁にかられました。20数年前、まだ織りをはじめてそんなに時間はたってなく、右往左往していたころ、はじめて行った石垣島でよくしていただいた。忘れられない強烈な思い出です。度子さん、お会いできてよかった。ご本人も、織っているものも、相変わらず、一本気が通ってて、気持ちいいです。
堀口さんの個展は、昨日で終了しましたが、一部の作品は引き続きイトノサキさんで拝見できるそうです。
*写真は、昨日の私の恰好。帯が拙作です。締めたところは着付けが下手すぎてNG(ごめん)。ただいま片付け中でパチリ。
これ、実は巻き取りしているときに大失敗してしまって、商品にならなかった分です。仕立てでカバーしてもらい、締められるようになりました。こんなことでもない限り、新作は自分のものになりません。
昨日は着物の業界人ばかりに会いましたが、まあ評判よしだったかな。(←だったら、もっとちゃんと締めろ!)もとじさんで、帯締めの作家さんに、わざわざ声かけてもらって、ほめられた!やった!
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いずさまからいただいたメッセージを必死に読み解く私。いずさま、ご自分の欲しい着物のイメージを、しっかりお持ちなんだなあ。この段階、私にとってはとても重要。暗中模索。一筋の光を、ただただ、求める。
いずさまも、お着物のイメージを、とてもまっすぐ伝えて下さる。曰く、
「桜の花びらに、ちょっと藤色が混ざったような、透明感のある色。」
「でも、無地は寂しい。」
「以前立ち寄った着物屋さんで、薄いピンク紫の紬を見せてもらってから、頭から離れない。ただ、その着物は無地だったので、ちょっと物足りなく感じた。」
「同じような色合いの江戸小紋をデパートの呉服売り場でみました。なかなか良かったです。でも、なぜか江戸小紋は少し息苦しい、、、」
「伊右衛門のCMで宮沢りえが着ているのもいい色だと思います。」
「熊本は暑いので単衣で考えています。」
「泰勝寺の緑に溶け込むような着物がいいなあ。」
「泰勝寺の大茶会は10月ですが、まだまだ緑です。」
ふむーー。さすが、ONLY ONLY をお望みだけあるなあ。どうお応えするか、、、、
(ちなみに泰勝寺というのは、肥後熊本藩、細川家のお寺です。)(りえちゃんも、すぐに検索。わかった、これだ。)
そっかぁーー、うーん、無地は寂しいとなれば、線が目立たない淡ーい、細かーい格子か、、、。お茶をなさるなら、格式も感じられるボカシか熨斗目(のしめ)か、、、、そんなことをご提案しましたら、次のメッセージいただいた。
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曰く、
「やせ形なので、縦も横もラインが入るのは、避けている」
「布の表情はツルツルよりほっこりしてる方が好き。ほっこりしてるのにツヤがある、なんて相反してますか?」
「今、『女優きもの』という本を眺めているが、一番心惹かれるのは、焦茶色の本場結城紬。でも、今度は淡い色の着物が欲しいので、、、一番ピンときたのは、なんと、帯揚げでした。なかなか具体化しませんが、、、」
「淡い、ツヤがある、ほっこり。」
そっか、では、『女優きもの』を取り寄せましょう。
あ、いずさまが一番心ひかれたという帯揚げ、わかった。これだ。
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まだお会いしたことない いずさまが、身近に感じられる。少しだけ、寄り添えたような、、
大丈夫、まだつかめてないけど、どうにかします。根拠のない自信というヤツです。それから、ツヤとほっこりは、同居できまっせ!
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さあ、新しい完全注文制作 ONLY ONLY のストーリーをはじめましょう。今回のヒロインを「いずさま」と呼ばせていただきます。
いずさまと出会わせてくれたのは、同級生のKくんです。去年の6月だったか7月だったか、高校の東京同窓会の打ち上げの席で、Kくんに声をかけられ、お姉様がお着物をお召しで、私の織りに興味を持って下さっていると聞かされました。
まあ!
程なくいずさまと、フェイスブックでつながることができました。熊本在住のいずさまに、夏の帰省時に、お会いできることにもなりました。それに先立ち、ざっくりでいいので、どんな物をお望みなのか伺いました。まだ、ご希望がお着物とも帯とも未知数ですし、せっかくお会いできるのですから、事前にイメージをつかんで、出来るだけの準備をしたかったのです。
早速お返事いただきました。ご希望はお着物。イメージは、「泉鏡花」の世界観で、(でも大正ロマン風ではない)、はかなげな風情なのに、しっかりした感じがするもの、色は淡いピンク紫。
ほう、それはまた、、、、、
「泉鏡花」「淡いピンク紫の着物」、、、むむむ、、、私、それ、知ってるぞ。見たことあるぞ。ずーっと前、映画で見た。確か玉三郎が監督した、、、、うーうー何だっけと、頭を絞り、検索機能を駆使して、見つけました。
やった!これだ!!!イメージさえつかめたらこっちのもんだいっ!!
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「いず先輩、このイメージでしょう!」(いずさまも、同窓です)
メッセージするも、「もうちょっと薄い色かな。」というお返事。どうもまったく違うようだ、、、、がっっくし、、、
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*上の写真は、泉鏡花記念館からお借りしました。コードネーム「いずさま」は、泉鏡花からいただいてます。下のふたつは、ネットサーフィン中に見つけ拝借しました。
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ふふさま、お久しぶりです!
昨年、5年の歳月を経て、only only で作らせていただいた、ふふさまの九寸帯「Breath for Spring」、締めていらっしゃるところのお写真いいただきました。掲載オッケーいただきましたので、こちらでもご紹介させていただきますね。
いい雰囲気でしょう。ふふさまの世界観に、しっとりと溶け込んでますね。織りたかったものは、ふふさまそのものだったなあと思い返しております。もし本当にふふさまの世界が織れたとしたら、感無量です。
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カッコいい着姿だなあ。ほれぼれです。着付けやコーディネートも最高だなあ。何より、ご本人のたたずまいがカッコいいのだけどね。
ふふさまの「九寸帯 Breath for Spring」のメイキングストーリーは、ブログのカテゴリー「ふふさま」にまとまってます。こちら→☆。よかったら時間をさかのぼってお読みください。
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拙サイトの、「作品ギャラリー2014」の写真も差し替えさせていただきました。同じ写真けだけどね、やっぱ、完成形はお召し姿だから。。こちらのページをスクロールしてください。上から5番目に載ってます。
ふふさま、どうもありがとうございました。
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ジャーン!新作できました!これは、ご注文で制作した八寸名古屋帯、「citrus lemon (シトラス・レモン)」。
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ご注文くださったのは、名古屋のウワサの着物サロン、水流(みつる)さんです。
水流さんのおウワサは、愛情あふれる着物屋さんとして、あちこちからお聞きしますので、お伺いしたくてウズウズしているのですが、いまだチャンス作れず、、、、。パソコン越し、電話越しでお付き合いさせていただいてます。アツい水流ファンの気持ち、よく分かります。私もファンです。
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今回織らせていただいた「八寸帯シトラス・レモン」は、以前、水流さんで以前お取り扱いいただいた「九寸帯シトラス」の発展形です。(この帯ね→☆)
こちらをお求めいただいたお客様が、ご姉妹でお揃いで締めたいので、もう一本欲しいとお望み下さったとのこと。
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大変ありがたいお話です。
ですから、出来るだけ、素直に、この九寸帯シトラスを再現してみようと思いました。でも、九寸と八寸の違いもあるし、糸の選択も、ガラッと違ってきます。私もこの数年で、帯や染織に対する考えも、技法も変わってます。(前進してると信じたい、、、)
糸や技法は違えど、「何を織りたいか」ってコンセプトの部分をまったく同じにしようと、原点回帰して、初心に返って、作りました。
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ご姉妹で、一緒に締めて、いい時間をお過ごしいただければうれしいなあ。きっと、微妙な違いがいい味だすと思います。お二人に幸あれ!
*タイコの写真は、中心位置を上下にずらして撮りました。少々ずらして、表情変えるのも楽しい帯です。
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うれしいメールが届きました。うふふ、にこさまからです。
この冬、一番寒い頃に取り組んでいた 完全注文制作 only only、「Rhythmical Niko(リズミカル・ニコ)」、締めていただいたお写真を送ってくださったのです。
いやはやー、すごくすてきじゃないですか!!!!さすが、にこさま、決めて下さってます。布の時より、1000倍いいね!命、吹き込まれました。
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心配していた前帯もよかった。おタイコとは、パッとみ違うのだけど、呼応してるよね。
お顔、トリミングしちゃったけど、すごくいい表情されているのですよ。自然で、チャーミング。にこさまらしい感じで。
にこさま、どうもありがとうございます!
*にこさまストーリーをお読みになりたい方は、ブログのカテゴリー「にこさま」を、時間をさかのぼってご覧ください。こちらです→☆
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きおさまの八寸帯、無事にお納めすることが出来ました。こちらにも、晴れて発表させていただきます。
ジャーン!名付けて、「Little Cosmos」(リトル・コスモス)。曜変天目のでっかい宇宙を目標に、きおさまと私で作った、小さな宇宙です。
きおさまに、「打ち合わせた通りの色で仕上がっていて、びっくり!」「おタイコの真ん中にヨシダさんの青がしっかりといる」とおっしゃっていただいて、うれしかったです。
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おタイコをちょっとずらすと、こういう風になります。表情かわるでしょ。遊べる帯です。
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ディテールを撮ったつもりが、ディテールになってませんね。地の部分に、目立ちませんが、細い銀糸が、ずーっと入ってます。きおさま、銀糸、似合われるんです。キビソ糸のワイルド加減も、暴れすぎず、おとなしすぎず、ちょうど良かったかな。
前帯も撮り損ねました。ガクっ、、、基本、タイコと同じです。星がひとまわり小さいです。手先には、タレ先同様に、白の無地場に差し色の糸、入ってます。
この帯、ぜーーったい、締めた方が映えますね。きおさま、ご自分の宇宙を持ってる方なので、Little Cosmos をエクスパンドして、大宇宙にしてくださるかも。
きおさま、すてきなことをおっしゃってくださいました。
「私はこの帯を締めるたびに、ヨシダさんと相談しながら作り上げた事を思い出せるんだなあと考えたら、とても幸せな気持ちになれました。」
感無量です。きおさま、本当にどうもありがとうございました。
このブログの、Only Only きおさまストーリー、これにておしまい。いつか、再会できますように。
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最近のこのブログ、お出かけ記録と化しておりますね。普段は閉じこもりの私、モンモンと悩みつつ、ダーンと壁に激突しながら、モクモクと染織してます。その合間を縫って、「これだけははずせないっ!」とあらば、といそいそと出かけます。
行ってきましたよ、「サイ トゥオンブリー 紙の作品、50年の奇跡」。それも初日に。ものすっごく楽しみにしてました。原美術館も、すごく久しぶりです。(ハラビのサイト→☆、展示会のことはこっちの方が分かりやすい→☆)
サイ トゥオンブリーの本物みるの、いくつ目だろ?過去、2点は見てる。3回目にして、やっとまとまった数見られたわけか。画集は3冊持ってる。
私、サイ トゥオンブリーのこと、知らなかったのだけど、いつだったか、もうずいぶん前、「ヨシダさん、絶対好きだよ」って教えてもらって、日本の美術館では見られないそうだから(のち、数点はあることが判明)、Amazonでカンで画集買った。それが、ものすごーーーく良くて、心酔しまくり。今日にいたる。
で、ドキドキの今回の展示会だったわけです。5つの展示室の、1室目からやられたなあ、、、。1室目は違う年代の作品を組み合わせて展示されてて、2室目からは、年代毎なのだけど、年代、関係ないのです。だんだん構築されてったとかじゃなくて、はじめからいきなりいいのです。独自の自然な世界観。ぜんぶ、いい。いや、天才って言ってしまえばそれまでなんだけどね。
この日は、トークもあり、もちろん申し込んでました。2003年に、エルミタージュでのサイ トゥオンブリー展のキュレーターをした方のお話でして、この方、それ以前にエルミタージュで、ルイーズ ブルジョア展も、開催したのですって。まだ冷戦が終わって、10年くらいの頃だって。すごく受け入れられたらしい。ロシア、すごいな。この展示会も日本巡回してくれ〜〜〜(って、ずーっと昔の話しですね)
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今日は話題をもうひとつ。
原美術館は、私にとって、特別な場所です。今は亡き祖父と二人で来たことがあるのです。
もうずーーーっと前、たぶん、10代終わりの頃の美大受験の頃か、、、、。夏期講習やらなんやらで、上京しては母の実家に居候してました。現代アートカブレのクソガキだった私は(今もほとんど変わりませんが)、こと有る毎にアートスポット巡り。原美術館は、大のお気に入りの場所です。
ある日、祖父が、「ミホコ、今日はどこに行く?」「ハラビ?」「三菱の開東閣の近く?」「おじいちゃんも行こうかな」というのです。どうやって行ったか覚えてません。品川から歩いた?五反田からバス?祖父はその頃、70オーバー?
祖父は現代アートなど、まったくの無関係で生きてきた人ですが、タイトルのプレートをひとつひとつじっくり読み、とても満足げな顔をしてました。
その後、うなぎを食べさせてくれました。どこでだったかは、まったく覚えてませんが、東京で食べたはじめてのうなぎだったと思います。
祖父はその、5,6年後に亡くなりました。もう20年くらいになります。
*上の写真は、展示会のリーフレット。下の写真は、原美術館の通用口の前に立つ私。籠から制作ノートが覗くのがいいでしょ。着付けが下手っぴなのと、いつも同じ着物なのは、お見逃しのほど〜〜。