朋百香さまのONLY ONLY、1回目の試しに取り掛かってすぐに、この路線でいいのかどうか、早めにクリアにしたいと思いました。もしも、私の読みが違っていて大幅変更なら、すぐに対処したい。
それで、急ではありましたが、朋百香さまにお時間を作っていただき、長平庵(朋百香さま所有のお屋敷)に、原画と試し織と原画のコピーなどなど、一式かかえて出かけました。
おじゃまします。
朋百香さま、きものをお召しで、迎えてくださり、うれしかったなあ。朝のお約束だったから、お忙しかったと思うんだ。それなのに、これから作る帯の打ち合わせのために、きものをお召しになって、待っていてくださった。
試し織り見ていただくと、第一声が、明るく、
「まあ、きれい」と。
おっ、ほぼほぼオッケーか?路線的には間違ってなかったか。そっか、それならよかった。変更の可能性もあると思ってた。
それでまずはほっとしながらも、もっとよくするための変更点はどこなのか、細かく探っていく。私としては、どこまで均整を取らせるかも、分かりたい。原画が和紙だから、マットな感じも出したいのよね。どうしますかね。
朋百香さま、こだわり所はしっかり突き詰めるけど、小さい所にはこだわらない感が、いいなと思った。多分、私、細かすぎるところまで、言及してたんだろうな。要所をおさえることが大事。
デザインの変更点は、柄のメインとなる鱗紋、中央の三段を、少々拡大させること。メリハリにもなるし、目線を持っていく意味でも、おすすめした。
ONLY ONLY 朋百香さまの帯、原画とタテ糸がそろいました。さ、それではいよいよ試し織です。
それに先立ち、、、、画家である朋百香さまが描かれた原画を、コピー(カラーもモノクロも)させていただきました。原画だと、ものさし当てるのも、はばかられますものね。
コピーの許可をいただくのに朋百香さまにメールしたとき、ご返信にすてきな言葉いただきました。
「織りには織りの良さがあると思っています。例えば原画と全く同じにならなくてもいいですので、あまり窮屈に考えずに原画のニュアンスを踏まえつつヨシダさんの感性で織ってください。」
ありがたいなあ。通じ合えるなあ。さすが画家さんだなあ。
それで、試し織りに取り組み始めたのですが、すぐに気づいたことは、「できるだけ、原画に忠実になるようにやってみよう」というものでした。原画の完成度が高いのです。それは、絵としても、帯としても。だから、変更を入れないほうが、いいものになるのではないか。
朋百香さまへは、原画を描かれる前に、帯の寸法とか、デザインのコツ(タイコは中央の少々上に目線がくるようにポイントを持っていくといいなど)はお伝えしていました。それもあってか、帯としてのバランスもいいのです。
よし。では、まずは可能な限り、忠実ラインをねらって1回目の試し織をしてみよう。その上で、織の特性で変えたほうがいいところがあれば、変えていこうと決心しました。
大変に、大変に、大変に恥ずかしいですが、これ、私が20年くらい前に織ったのれんです。
まだ、染織家として独立する前に注文いただいて、織ったものです。勤め人をしながら、機織りしていた頃の話。指定されたサイズも大きくて、そんなデッカいの織ったことなくて、でもうれしくて、ドキドキしながら、織ったのおぼろげに覚えてます。
のれん、なんとなんと、20年間、ずっとご愛用いただいたとのこと。
20年間、お仕事場の屋根はあるけど、半分外のようなところで使っていて、それを今度、うちの中で使いたいから、ほつれの修理はできますかとの問い合わせいただいたのです。
送ってもらって見せてもらうことにしましたが、内心ドキドキです。20年も前の自分が、今、こちらに向かっている。クロネコさんはタイムマシンか?
で、ヒヤヒヤで待っていたところ、荷物がついて、オープンして、「うううわああ。。。あわわわ、、、、」
想像以上に恥ずかしい!!!穴を掘って、ビバークしたい。勢いだけで恐ろしいほど強引に織ってる。ぎゃー!
お客様にお電話し、織物として再生することは難しい旨、お話しする。タテ糸とヨコ糸を拾って、合わせていくことは無理ですわ。
すると、電話の向こうで、がっかりして、「それでもこれは捨てたくないから、修理できないなら、額にでも入れて飾るかなあ」とおっしゃいます。
えっ!額!!
こんな大きな額はないでしょう。だったら、織物として再生させることは無理だけど、テキスタイル作品として、ほつれを縫い止めることはできますよ。それでよければ、喜んでやらせていただきます。
それで、できる限りの補修をしました。縫いながら、20年前の自分と対話します。どうしようもなく稚拙ではありますが、精一杯でぶつかって、ガチで向き合ってる感じ、20年後の私にも伝わってくる。問題は多すぎだけど、なかなかいいじゃないの!愛しさだけはピカイチというのは身内の身びいきね。(身内というか、本人だけど)
修理を終えて送り返しますと、とてもよろこんでくださいました。メールにあった「本当に力作です。」の言葉がうれしい。
*こののれんの話は、先日配信したメルマガ《 some ori 通信 》にも、速報チックに書きました。ブログはどうしても遅れ気味です。メルマガの方には写真は載せられませんがね。
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《 目次 》
1. 資本主義
2. 着飾ること
3. 寂しい生活
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1. 資本主義
先日、東京、京橋のリクシル ギャラリーで開催中の、「織物以前 タパとフェルト」展を拝見してきました。レクチャーにも申し込んでいたので、とても面白い話も聞くことができました。
講師のお一人、福本繁樹先生によると、「資本主義経済の中からは、ものすごいものは出てこない」そうです。
他人よりも抜きん出て、もっと目立って、たくさん稼いで、、、、という資本主義的思想の中からは、本当にいいものは出来ないと。
資本主義の競争の中でもまれた方が、いいものが出来そうと思いがちですが、そうではないんですねえ。
なるほど、確かにそうかもしれません。圧倒的にすごいものというのは、別次元で作ってますよね。例えば、ピラミッドとかがわかりやすい例かと思いますが。ああいうものは、決して競争原理からはできませんよね。
資本主義どっぷりの中に生まれ育った私ですが、どうにかヒントをつかんで、少しだけでもいいから、別次元の何かを取り込んで行きたいです。心身ともに鍛えていけば、いつか近づけるかな?
ブログに、この日のことを書いてます。よかったら。
http://www.someoriyoshida.com/4250
2. 着飾ること
福本先生のお話でもうひとつ心に残ったことは、わが身を着飾る装いのことです。
人類は、原初の頃から着飾ってきました。衣服が発明される前は、肉体に入れ墨をして、自分を飾り立てました。男も女もです。戦いに出るときは、最高に飾り立て、勇敢さを表現し、自分を鼓舞しました。
私はふと、今年、問題になった、成人式の振袖も、その飾り立ての一例だなあなんて思いました。
着飾ることは、本能でしょうか?人類の文化そのものでしょうか?
とかなんとか言いながら、この日私は、ほぼすっぴんの上、寒さと多忙に負け、まったくお洒落でない、防寒第一簡単洋服でした。
講師の福本先生も、グレーの背広姿で、ご自分のスタイルなのでしょうが、着飾ってらしたとは言い難かったなあ。
着飾ることが、人類の根源的な文化なら、現代の文化レベルは、、、、どうなのだろうか?
3. 寂しい生活
資本主義とアートの関係を考えておりましたら、ふと、以前読んだ、稲垣えみ子さんの「寂しい生活」という本を思い出しました。
稲垣さんて、アフロヘアの元新聞記者さん。この本は、原発事故をきっかけに、稲垣さんが、節電に目覚め、家電をどんどん手放し、電気に頼る生き方に疑問を持つという内容です。
この本に、冷蔵庫ができる前は、食品の保存がほとんどできなかったから、作り置きができず、おかずを作りすぎたら、ご近所におすそ分けしていたと書いてありました。それが冷蔵庫ができ、いくらでも保存ができるようになり、我が家にため込むことになったと。
どんどん買い物をして、どんどんため込み、どうしようもなくなって捨てるのが現代社会だと。ここんとこ読んで、これでは循環がなく発展がないよなって思いました。
外に出して回した方がアートなのに。結合反応起こして何か始まるかもしれないから。
(ま、もしも現実でおすそ分け文化が復活したら、ちょっと面倒くさいかもしれませんけどね)
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きものと帯の注文制作
染織吉田 吉田美保子
http://www.someoriyoshida.com
朋百香さまのONLY ONLY、タテ糸を作りましたよ。
朋百香さま、きれいな整った九寸帯をお望みです。紬のおきものに合わせるだけでなく、小紋にも合わせたいとのこと。では、思いっきり、きれいな織帯にいたしましょう。
いつもは、タテ糸も数種類の糸を混ぜて使って、表情豊かにするのが、常套手段なのですが、今回は、混ぜないことで、均質で上品な感じをねらいます。
タテ糸はブランド繭の「ぐんま200」にしました。やっぱ、光沢が違います。輝くのですよ。扱っていて、とても気持ちがいいのだ〜。
リクシル のギャラリーで開催中の、「織物以前 タパとフェルト」展へ出かけました。私、こういうプリミティブ系、弱いんです。魂にくるのだよな。私の作りたい布の根っこはここにあると思っている。福本繁樹先生と岩立広子先生のレクチャーにも申し込んでましたので、ますますウキウキと出かけました。
レクチャー、とても面白かったです。以下、ノートした走り書きより。備忘のために。
—人はなぜ装うか?もともと、入れ墨、ボディペインティグに大きな意味があった。(部族間の戦いに行くときの化粧など)布はその代わりとなるものである。布は第二の皮膚。それが布の本質。
紐衣(ちゅうい。腰に巻いた紐)が衣服の原点。
布はお金であった。
タパそのものは、物質的な財産であった。
タパに描かれてる文様は、知的財産であった。それも、とても高価な。
文様は、ストーリーがある。ストーリーとセットで受け継がれる。
資本主義が入らないところで、ものすごいものが出来る。文化にすごい高い価値を置く。—
などなど、ビンビンくるレクチャーでした。
資本主義の入らないところで、ものすごいものが出来るってのは、わかる。生まれたときから、どっぷり資本主義に浸かってる私など、どうしても破れない壁があるのだ。思考的にも。もっと根源的にも。しかし、それを無いものにしないと、本当にいいものはできない。便利なもの、流行りなもの、を作りたいんじゃない。心揺さぶるものをこの世の中で作って行くのが使命だなあと思った次第。
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《 目次 》
1. 着姿ギャラリー
2. パソコンを変えたら
3. 思ったこと
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1. 着姿ギャラリー
昨年リニューアルした私のサイト、新たに「着姿ギャラリー」も作ったのですよ。自分でいうのもなんですが、これ、なかなかいいんです。もうご覧いただきましたか?
「着姿ギャラリー」というのは、文字どおり、私が織ったものを身につけてくださっている方々の写真を見ていだただくページです。
プロのモデルさんや女優さんでなく、普通の方々です。ということは、みなさん、仕事で着ているわけでなく、100%着たいから着ているのです!みなさん、とってもいい表情で、生き生きしてくださっています。着ることは喜びなんだなって、伝わってきます。
着姿ギャラリーはこちらです。ぜひご覧ください。
http://www.someoriyoshida.com/style
2. パソコンを変えたら
昨年の夏頃から青色吐息だった、我がパソコン。だましだまし使ってきましたが、いよいよ危ないと、完全に落ちる前に買い替えました。それにともない、ソフトと呼ばれるものもほぼ買い替え(ただの文字列なのになぜこんなに高い!)。
住所録として使っている「ファイルメーカー」はそのまま使えるはずだけど、どうしてもうまくいかないので、カスタマーサービスに電話しました。
そうしたらなんと、新しいパソコンのバージョンが新しすぎて、入らないと。最新版に買い替えてくださいと。
なんと、、、新しいのが理由で使えないとは、、、
仕方ないので泣く泣く買いましたが、4万円近い出費に気が遠くなりました。
3. 思ったこと
最近のことですが、20年くらい前に作ったのれんのことで相談を受けました。20年間、お仕事場の半分外のような場所に掛けっぱなしだったと。(渡り廊下みたいなところかな?)今度、家の中に掛け替えたいが、すり切れたところなど、補修はできないものだろうかと。
実物を送ってもらって見て見ますと、そうとうオンボロになり、一部ヨコ糸が切れていたりして、織物としての寿命はまっとうしてると思いました。
その旨、お伝えすると、とても気に入っているから捨てたくないんだと。
だったら、織物として復活させることは無理でも、雰囲気を楽しむテキスタイル作品ということにしましょうかと提案。ほつれたところを縫い留めました。(織物として補修するには、タテ糸とヨコ糸を組織通りに入れ込んでいく必要ありなのです。今回はそれをせず別の糸で縫ったということ)
お送りすると、「よみがえった!」ととても喜んでくださいました。きっとまた永く、お使いいただけることでしょう。
布は、ずっとずっと楽しみながら、あなたに寄り添いつつ、時には形態を変えて、いつまでもお使いいただけます。アイディアや遊び心も、いかんなく発揮できます。5年で買い替えを求められるコンピューター業界とはえらい違いです!
着姿ギャラリーにも、2003年にお求めいただいた作品をお召しくださっている写真から載ってますよ。織物っていいなあ~。
*染織吉田の通販サイト《 some ori マーケット 》では、あなたの人生を豊かにする一品、売ってます!新作もちょこちょこ載せていきますので、のぞいてくださいね。
http://www.someoriyoshida.com/store
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きものと帯の注文制作
染織吉田 吉田美保子
http://www.someoriyoshida.com
めとさまから連絡があり、ご上京時に寄って下さることになりました。あら、それはうれしい。もちろん、ウェルカム。しかし、特に用事の内容は書いてない。
ということは、もしや?
そう思ってドキドキお待ちしていたら、やっぱり!!!12月にお納めした「枯風〜Colored Wind part 2」をお召しで登場してくださいました!
なんと、この日が初下ろしだそうです。仕立て上がりを宿に直送していただいたそう。うれしいなあ。
お写真とらせてもらうことになり、一緒に外に出る。ヨシダ、大興奮。
布の状態も確認しながら。糸のチョイス、打ち込み、バランス。作っているときは、これが最高と思って作りました。それが実際はどうであるか確認できます。見せにきてくださって、本当にありがとうございます。
仕立てもこだわっってますよ〜〜。お袖の丸みが、普通のよりもっと丸いのですって。かわいいね。
足取り軽いね。
めとさまと私の二人で作った「枯風〜Colored Wind part 2」、これからはどこで、どう育ててくださるでしょう?それが本当に楽しみです。
めとさま、本当にどうもありがとうございました。この子をよろしくお願いします。
朋百香さまの帯の原画、3枚目の変わり市松で完成かと思いきや、やはり鱗紋をと、新たにもう一枚、描かれました。
うわー、ぐっと完成度が上がりましたね。さすが。それに帯らしくもなりました。バランス取れてますね。
シャープであり、華やかであり、朋百香さまご自身のようです。これで、メイン部分のデザインは決定ですね!
では、次に、テクスチャーの方を絞り込みたいです。過去に織った布地をたくさん持参しまして、その中から、朋百香さまが選ばれたのは、「ぐんま200」という国産繭で織った布。とても綺麗で艶のある、とても上等な絹らしい絹です。
了解しました。原画とも合ってますね。では、この糸でタテ糸をたてて、まずは、試し織をやってみますね。それをたたき台に、話を詰めていきましょう。
タロットの会で、朋百香さまにお会いしたのが6月のこと。そして、7月になると、原画を描いてみたと、早速メールくださいました。は、早い!(添付されていたのが上の写真)
帯の織り上がりは来春予定なので、原画は秋頃までにとお願いしてましたが、バンバンと前倒しされるのは、さすができる女です。
朋百香さま、織りの技術的なことや、デザイン的なことを、ポンポンと小気味好くご質問になります。原画は、帯の大きさに合わせて描いてくださるようお願いしましたので、イメージしやすく助かります。デザインについては、まだ悩まれているご様子もあり。
そして、8月はじめには、試し織りの第二弾の画像を送ってくださいました(上の写真)。おお、シックさが増しました。帯の原画を描くの、乗ってくださってるのが、伝わって来て、うれしくなります。
ご自分の好きな色や、年齢のことなどを考え、変えてみたとのこと。これは、おタイコ部分の図ですが、前帯部分や、たれ先、手先のデザインにも言及して行きます。
その数日後、もしかしたら、三角でなく四角の可能性もあるかもと連絡があり、あっという間に、もう一枚描かれました。変わり市松です。エメラルドとマスタードが効いています。大人しくはあるけれど、これはこれで、ありです。
しかし、この間、2週間足らずです。それで3枚、、、集中力、すごいなあ。
この話、続きます。原画、さらに発展するのですよ!