ご覧ください!こちら「めとさま」でございます。ふわっと透明な風をまとい、久しぶりに我が家にお出でくださいました。
なんと、美しいんでしょう。ほおっと見惚れてしまいました。たおやかで、芯が強くて、前向きで。写真から伝わってくるではないですか。道をみつけ、しっかり歩きはじめた、そんな感じします。
お召しいただいているのは、only only「colored wind」。その制作行程は、こちらにまとまってます。
そして、巻いていただいている鮮やかなオレンジ色のショールは!そうです。先の「清正公の陣羽織展」で制作した陣羽織ショールです。めとさま、似合うなあ。
着物の着方も独特で、襦袢無しで、シャツの上に着物を着て、下はサルエルパンツだそうです。カッコいいなあ。なにより、めとさまの独自のおしゃれを完結してらっしゃるのに、感服です。
透明な風は、季節により場所により、いろんな色を含んで、吹いている。周りはその風に吹かれ、日々暮らしてる。そんな感じしました。
めとさま、ご来訪、ありがとうございました。
去年のいまごろ、私は、「めとさま」のお着物に取り組んでいた。長い間、暗中模索というか、ほふく前進というか、、、手探り状態ではいまわって、作っていった。
人生をかけてっていうと、大げさに聞こえるかもしれないけど、創作はそんな感じだ。
同時期、めとさまもまた、人生をかけて、手探りの暗中模索をはじめられた。
その道程を振り返りながら、ブログに綴りはじめたとの連絡をいただいた。タイトルは「住宅街の中心で和紙をつくる」。
めとさま、和紙に取り組んでいらっしゃるのだ。私との出会いややり取りも、取り上げてくださってる。ありがたいやら、恥ずかしいやらです。
めとさまの歩みをかいま見せていただきながら、生きる姿勢を正して、私も歩き続けよう。
*写真は、「colored wind」をお召しで、我が家にお越しくださったとき撮ったもの。この写真、好き。ピンぼけだから今まで掲載しなかったけど。前に!前に!一歩!一歩!
他にも、いい写真いっぱいあります。めとさまのonly only のページと、作品ギャラリー2014の上から3番目に載ってます。
めとさまが、やってきた!仕立て上がった colored wind をお召しくださって!
ひゃーー、すてき!匂いたつような。ぼーっとして、感涙しそうになる。
言葉にならない程の感激。よろこんでいただくために仕事しているが、めとさまは、私をこんなにもよろこばせてくれた。
撮らせていただいた写真、「ブログにお顔も載せていいでしょうか?」とお伺いメールを出した。そうしたら、お返事いただき、それがまたすてきなの。紹介させて下さいね。
おかげでいい仕事ができた。本当にどうもありがとうございました。
吉田美保子 様
こちらこそ、昨日は本当にありがとうございました!!
着物を着ているだけでも高揚感はありますが、それ以上の特別な感覚に満たされました。
重ね重ね、自分で言うのも何ですが、本当に、本当に私らしい一枚となったと思います。
纏うことで輝きを引き出してくれるような、そんな気分でした。
これまで色んな着物に目移りして来ましたが、こうしてわたしだけの一枚を手にすることができて、もう何も要らなくなりました。
やり切った感もあるし、これ以上に求めるものなんてあり得ません。
どんな言葉を尽くしても表せないくらい、心よりありがたく思っています。
(声を大にして)本当にありがとうございました!!
写真もたくさん送ってくださってありがとうございます。
掲載につきましては、これ程までに着る者に沿った着物が完成した感激をお伝えするには顔出しで掲載するのが良いかと思いますが、私なんかの写真が出てしまうと、営業妨害になりませんかね?(笑)
私自身はどのようにしていただいても結構ですので、美保子さんの判断にお任せします。
美保子さんも、ますますご活躍されることをお祈りしております。
またきっと、お会いしましょうね。
めと 拝
*めとさまストーリーは、こちらから一気読みできます。ぜひ。
めとさまのお着物、無事にお手元に届いたとのこと、とてもうれしい、しみじみじんわりするメールいただきました。がんばってよかったなあ。
早速、だるまに目玉を入れましたよ。このだるまさん、以前めとさまにいただいたの、取っておいたのです。お菓子のパッケージです。下に敷いたのは、colored wind の端布。織りはじめは安定しませんし、それを見越して少々長く織りますので、その分だけが手元に残ります。私の宝物です。
めとさまのブログへの連載はひとまず完結。colored wind は、このサイトの作品ギャラリー2014にも載せました。感動のお手紙も掲載させていただいてます。どうかそちらもご覧下さい。
めとさま、ここを読んでくださっていた方、本当にどうもありがとうございました。
めとさまのお着物、いよいよ船出です。お手紙を書いて、糸見本を作る。
あ、出荷って言った方がいいな。Real Artists Ship. 世に出してこそ。
Colored Wind に使った糸の全て。これらの、思いの詰まった長い長い絹糸の一本一本、経と緯の出会いだけで、めとさまの着物は出来ている。
今回ね、反物の箱も調達したの〜。お送りのお納めが増えてきたので、必要なのですわ。
さあ、めとさまの元へ、東風に乗せて。いってらっしゃい。愛されて幸せにね。
*Real Artists Ship は、スティーヴ・ジョブズの言葉。茂木健一郎氏のツイートで教えてもらった。
めとさまの、colored wind, 湯のし屋さんで、蒸気をあててもらって、ふっくらツヤツヤになって帰ってきました。広げて、我ながら、わーーーっ!糸一本一本が、光り輝く感じです。やっぱり湯のしってすごいなあ。自分で出来ないことは、人に頼むのが吉ですな。
さあ、最終の検反です。長さ、幅、重さ、密度、などなどチェックです。重さは約600g、軽い着やすいお着物になると思います。
写真撮影。めとさまとのいろいろを思い出しつつ。いい時間だったなあ。
しっかり巻き直して、箱に入れて、船出の準備。
めとさまのお着物、織り上がりました。ああ、終わった。終わりはいつか来るのだけど、その日がきてしまうと、やっぱ感慨深いなあ。
織り上がったら、湯通しをします。糊がつるんと抜けて行きます。余計なものがすべて落ちて、布は気持ち良さそうに呼吸をはじめます。水生なのかな?(違うね。蚕は、水には弱いはず。)
湯通し。水を換えて、屏風だたみして、もう一度。
そして、伸子ばりをして、乾かします。
私は、張るのは、室内派です。室内だと、天候に左右されず、安定して、安心して、広げられます。
めとさまの、colored wind、さあ、どんな風を吹かせてくれるでしょう。
一仕事終えて外に出ると、東に満月。思えば、めとさまのお着物と取り組みながら、月や風や匂いなど、とっても身近に感じてました。ありがたいことです。
めとさまのお着物、佳境を迎えております。まあ、順調と言っていいでしょう。日々、たんたんと進んでおります。
目の前の織りに没頭してますが、めとさまとのやり取りを思い出したり。その集大成ですものね。気を緩めず、かつ心は開放してがんばろう。
しかーし、いろいろあったのよーー。織りはじめてすぐの頃、まだ調子を整えてる頃に、うるさいとのお叱りが、上の上の上の階の方から、大家さん経由で。ひぃー。すぐに対処。織機の下に、もう一枚消音材を敷き、カーテンを閉めて織ることにする。(写真は休憩時です。カーテン開けて、一呼吸)
ずっと同じ機織りってものをしてますが、ごくごくたまに、苦情が来ます。その都度、誠実に対処です。ちょっと前に織機の部屋に、畳を敷いたのが最大の奥の手だったのだけどね。今回はそれでもダメだった〜。
同じことやってるのに、苦情が来る時と来ない時があるのは、おかしいんだけど、実は自分では勘付いてます。夢中になりすぎて、視野が狭く、織ることにのめり込みすぎると、ダメなのです。気持ちを楽に、リラックスして、悠々と織るといいみたいなのよね。一生懸命すぎるとダメって変なのだけど、そういうものか。
その後は苦情もなく、肩の力をなるべく抜いて、りきみも抜いて、淡々と織ってます。優しく丁寧に。りきまないと、力を込めても大丈夫みたいなのよね。
めとさまのお着物、ゆっくり、じっくり、一歩一歩進んでます。織っている所、動画に撮ってみました。
やっと人心地つきましたので、めとさまのお着物の緯糸のご紹介。13種類の糸を使い分け、また絵の具を混色させる感じでまぜながら織ってます。
この4つが、メインの極薄ピンクの糸です。まだ寒いけど、春風を感じる色。右の3つはほっこり真綿紬糸。左はつるっとした糸です。一番右を多用してますが、そこにふんわりした風が吹き込みます。
これらは、橙色。秋の色づき。右のふたつは真綿系。左は座繰り。
これらが朱。紅葉の色です。紅葉に風が吹いてサラサラサラと音がする。太細の紬糸で表現しています。
そして、紅と素です。これがね、要なのですよ。うふ。
大晦日と言えど、みっちり、めとさま織りました。どうにかこうにか、今年の目標を織り切りました。少々遅れ気味だったのですが、やっと追いついきました。よかった。
デザイン、染めと織りと、どれも大変だけど、やっぱ体を使うのは織りだ。
頭も体もいっぱいいっぱいで、何も考えられなくなった時、頭によぎるのが、めとさまとの対話だ。
普段着であり、年代長く、季節も長く着られること。自分を表す着物であること。紅葉、紅。匂い立つ、色。透明。風。
めとさまの来し方行く末。幸多かれ。
そんなことを思いながらの、2013の大晦日でした。
織り終えて、それから掃除。この一年のお浄めだ。機や糸や道具に感謝です。いろいろ反省しきり。
Today is “oomisoka” the last day of this year. All over japan, people say thanks being well to family and friends and others. And Japan close all operation.
Different from regular japan, I worked as usual from morning to evening as usual.
At the last minute, I cleaned the weaving machines and tools with special gratitude.
“Good Job!” this year, welcome coming year 2014.
めとさまのお着物、織ってます。毎日、ジリッジリッと進行中です。ここまで来たら、日々、粘り強く前に進むだけ。
もう変更の余地はない。自分の手で生み出している、目の前の布と対話するだけ。しかし、その向こうには、いつもめとさまがいて、対話が深くなる。
めとさまとのたくさんの対話を思い出しながら織っている。透明な風、色づいた風、colored wind。洒落っ気がある風だなあ。どこにでも飛んで行く、おしゃれな風を織ってます。
めとさまの緯糸(本番用)にふのりをつける。乾いて巻くも、むむ。真綿の糸の、ふわふわ感が抑えられてない。もう少し固くならないと、織りに支障が生ずる。
こんなこと初めてだ。いったいなぜだ。糸はいつもの糸屋さんのものだが、ふんわりふかふか具合が多いように思う。しかし、だからと言って。
皆目見当がつかず、助けを求める。小熊さーーん!染織の大先輩の小熊素子さんに緊急電話。申し訳ない。
こころよく話を聞いてくれ、アドバイスくれる。いろいろ話して下さり深くうなづく。ほんのちょっとのことで、こうまで違うとは。
糊を強くするしか解決策はない。ふのりに加え、しょうふもつけると、安定する。そっか、緯糸にしょうふは、つけてなかったよ。
それで早速、しょうふ登場。
つけてます。
それにしても、小熊さんはすごいです。電話で、糸の様子を聞いてだけで、状況がバババっと分かって、バババっとソリューション下さる。
今回のめとさまのお着物に使っている糸なども説明すると、織り難いけど、面白い布になるんじゃないって言っていただき、ほっとする。織り難くてもがんばろう。
ありがとう、小熊さん!
めとさまの緯糸、出揃ったところで、上の写真を添付してめとさまにメールしました。
「山桜の咲き乱れる吉野山と紅葉の燃え盛る龍田山」
とお返事いただき、うれしかった。めとさまの写真も添付されててうれしかった。自然なこぼれる笑顔だった。人生を大きく舵取りしてらっしゃる時なのだ。「今」だからこその着物、織ろう。
さあさ、糊をつけますよ。これは、ふのり。
糊をつけた緯糸で、少し試運転して、およよ。思ったような色が出ない。染め重ねたのに、試し織りと変わらないくらいだ。これはいったい????
ああ、そうか!経糸が見えてるんだ。筬を入れ替えたから、経糸の密度が上がり糸が見えるのだ。試し織りは、緯糸が見えていたのだ。筬密度、おそるべし。
しかし、密度は今の方がよい。糸のバランンスもよい。しっかりしたいい布味だ。では、緯糸をもう一度、染め直すしかないでしょう。
それで、早速調整の染め。ホンのちょっとだけ。ホンのちょっとだけ。(←やり過ぎるなよ!)
はいよ!
吉野山はより吉野山に、龍田山はより龍田山になったと信じる。
めとさまのお着物、筬通しのやり直しです。やっぱ、51羽はゆるかった。一羽の違いがこんなにもって思い知らされる。どんな布を目指すかってことは、全方位から攻めねばだ。
朱の糸です。メインの朱もホンの少々だけ、染め重ねる。こっくりした感じ、もうちょっとだけ。茜の成分、もうちょっとだけ。紅葉の色だ。
こちらは地のピンク。昨日の段階で「だいたい良し」だったんだけど、ちょっと可愛らしすぎに見えてきて、そうするといても立ってもいられない。地の部分は分量が多いから、全体の印象が決まってくる。ほんの少々大人っぽさを加えよう。それで透明感を保ちつつグレー味を極少加えたピンクにする。
めとさまは、「普段に、出来るだけ長く着られる袷の着物」をとお望みだ。普段着であること、30代になっても、40代になっても、50でも60でも70でも、出来ればオーバーエイティでも着られること、、、、めとさまのオンリーオンリーは、もうすぐ全容を現します。
めとさまのお着物の緯糸、対話を元に染め直します。もうほんのちょっとだけ、深くこっくりした色に振ります。
上の写真は地の糸です。ほんのりしたピンク。薄いピンクなのでだけど、白っぽくならないように。
ピンクって、赤の薄い色ではないよ。黄色や緑やグレーが、たっぷり入ってる。でも、ぱっと見はピンク。
こちらは橙。試し織りに使った糸を、もうちょっとだけこっくりさせる。
これは朱です。試しに使った糸はそのままにして、もうひとつ別に濃いめの朱を染めてます。茜の草木染めです。
実は試し織りでは、メインに添えた濃いめの朱色が目立ちすぎたようで、私は入れるのをやめようと提案したのです。が、めとさま、この濃いめの色はぜひ欲しいとのこと。うぅと思ったが、そっか、紅葉だ。紅葉ははじめから対話にでてたキーワード。そりゃあ入れなきゃ。
で、濃いめが一種類だと唐突な感じがして、なじまないので、濃いめを2種類にして、メインに添わせることにした。かつ、真綿以外の絹糸も使い、深いけど透明で軽やかな、色づいた風を目指します。
Pictures showing the dyeing scene, Only Only (full order system) client requested more deep and tranquil catching up with client’s taste transparent colored wind.
めとさまのお着物、試し織りです。糸の入れ方をいろいろ工夫して、表情を変えて織ります。糸の種類を変えたり、色の濃さを変えると、印象が違ってきます。さあ、どうする?目指すは、「colored wind」。色づいた風。透明だけど、色を感じる。
試しが出来たら対話です。めとさまに観ていただきましょう。めとさまは、今、ご自宅からさらに遠くに滞在中。我が家からは600kmはありましょう。想いをたくさん乗せた郵便は、どこまでも行くのです。
写真は、試しの布と私が書いた説明書と、めとさまからの返信。
めとさまのお着物、筬通しです。
写真は、悩んでいるところ。53羽でいくか、52羽にするか、はたまた51か????
写真に写っている下の筬は、53羽。一寸ほど入れて、考える。ちょっときゅうくつか?息が詰まるかな?男性物だったら、これでいくけど(男性はどうしても布に掛かる力が強いので、丈夫さを最優先せねばなので)、めとさまの場合は、そこを最優先しなくてもいいと思ってる。布の息づかい、糸の息づかい、大切にしたいのです。
じゃあ、51羽は???こっちでやってみるかな。(写真に写ってる上の筬は51羽です)(場合によっては、52にするかな???)
計画の段階では、52羽のつもりで、糸の数や幅など、揃えてます。少々の振れ幅は問題ないので、51でも53でも行けるのです。机上では読み切れなかったこと、今やっとやっと目の前に。自分でやってて、自分で、「おお!」と思う。計画通りで「おお!」、予想外でも「おお!」。織りは常に新鮮です。
とは言っても、よそから見たら、大差ないね。より、めとさまに添える着物であるためにってことだけ考えてます。
*53羽というのは、一寸間に53の羽がある筬ということで、そこに糸が2本ずつ入るので、一寸に106本入ると言うことです。52羽だと104本で、51羽だと102本です。一羽違うと、表情が違います。伝わってくるものが違います。布作りの面白さです。
めとさまのお着物、じりっじりっと進んでいます。これは、経継ぎ(たてつぎ)をしているところ。
物作りは、禅の境地でやるんだってよく言われ、それはそうだと思う。心を無にして没頭する。しかし、それはなかなか難しいのよね。
で、経継ぎ。これは、1144本の糸をただひたすら結ぶのだ。けっこう無になれる。
で、糸と本当にしっかり向き合える。束でなく、一本一本だから。いい表情しててうれしい。真綿の節におののくが。(織り難いかも。でもいい布になるよ)
めとさまのお着物、経糸の入れ方を計算して紙に落とし込んでいます。デザイン、はじめと終わりはやっぱり紙ですね。調整する時はパソコンを使うけど。
めとさまにこれで行きますよってメールしたら、「今は漕ぎいでな」ってタイトルの返信くださった。めとさまらしいご返信。その日、満月じゃなかったかな?潮も満ちた。さあ。
写真は船出を待つ糸たち。
めとさまのお着物の経糸、染めは全て完了したはずでした。いい色が出揃いましたので、納得してました。
ですが、いよいよ落とし込みをしながら、ちょっとだけ、違和感。グラデーションのところ、ちょっと違わないか?もう少し、ふわっと感を出した方がよくないか?ピンク系から、シャンパン色に行くところ、本当にこのままでいいのか???
上の写真はピンクの糸が乾いたところです。糸は完全に乾かないと、色が分からないのですよね。
それで、もう一色染めました。この写真の真ん中に写っている糸(ピンクの手前)。中間色染めて、グラデーションを優しく柔らかくしたかった。シャープなグラデーションの場合は、色数の少ないのもいいのだけど、めとさまの場合は、「colored wind」なのだから、ふんわりといい香り漂う感じ。ここではシャープさは求めてないのよ。
さあ、これが経糸のすべて。いいでしょ、いいでしょ!
めとさまのお着物、いよいよ最終の色調整の染めです。
まずは、紅(くれない)です。この色がやはり、めとさまのお着物を支える色ですものね。お借りした本の見返しの色と、染めながら、何度も何度も見比べる。本の色というより、めとさまが求めている色を染めたい。
こっくりとした紅にするために、隠し色の黒と黄色をしっかり吸わせて、より深い色にしました。
これは朱。緯糸です。染め重ねてます。緯糸の最終調整は、経糸ができてからなのだけど、ほんのちょっとだけこっくり感があった方がいいかもとのことだったので、やってしまいます。できることは何でもすぐにやって、ひとつレベルを上げた状態で、最終の最終の調整に臨まなくっちゃ!
これは新たに染めてるピンクです。ご提案時は、グレーを帯びたピンクだったのだけど、めとさまの「透明感を大切にしたい」というご希望でグレー味は、ほとんど無くなりました。
これも新たに染めてます。めとさまにお借りしたショールの色です。シャンパン色なんです。いい色よー。上のピンクとグラデーションにします。
これで、全ての色が出そろったと思いましたが、すっかり乾いて、さあいよいよとなった時、ちょっと待てのワーニングが心の中に鳴りました。その話はまた。
めとさまと私の間で、ひとつの箱が行き来しました。思いや計画や見本をたくさん詰めて出し、めとさまの元で、揉まれ、磨かれ、新たに息吹をたくさん吹き込んでもらって、意気揚々と帰ってきました。
私の書いた計画書に丁寧に意見を重ねてくださった。それを丹念に読む。耳を傾ける。
色に少々の修正あり。
ご希望の色の見本として、本とショールをお借りしました。
本は先日見せていただいたのだけど、染めるとき、近くに欲しかった。脳内改ざんが怖かった。ほーら、やっぱり!こっくり加減がぐっと深いよ。借りてよかった。
ショールは、シャンパン色の見本として。「色があるようで色がない、あるいは、色がないようで色がある」を目指していますので、微妙な色。風のような色。これもお借りしてよかった。私の思いより、少々黄色みが強かった。
これから、染め重ねたり、新たに染めたりに入ります。
写真は新たに染める糸。湯洗いを終えて、染まる気まんまん。
めとさまのお着物、デザインを詰めて、糸も本番の一部を染めて、ご提案寸前まで行きましたが、ここで少々お時間いただく形になりました。あら、降ってわいたこの時間。これは神様がくださったのね。そこで、私、染め直しをすることにしました。
告白しましょう。
じ、じ、じつは、染めていた糸に、「自分として完全に完璧に納得」まで行ってなかった綛があったのです。
これからめとさまに見ていただいて、変更依頼が来るかもしれないので、あえて染め重ねをぜずに寸止めのところでとめておいたでした。詰めるのは、めとさまのご意見伺ってからと思ってました。
が、これは、私、間違ってました。自分としての、100%までやり切ってなかった。98で止めてました。猛省です。決定の責任を投げてた。とにかく、やるだけやって、やり切って、それで、投げなきゃ。100が来なけりゃ、めとさまだって、打ち返せないよね。
そこそこいい色までは行ってたけど、神様は見ておられる。
上の写真は染め重ねているところ。こっくり感が足りてなかった。染料配合しなおし。よっしゃ、この色だ。
これは、染め重ねた糸たち。酸性染料で染めてた上に、茜を重ねて染めたのです。深くなったよねーー。酸性染料で深くすることもできるのだけど、めとさまのお着物には、一部であっても、日本で昔から愛された、植物染料を使いたかった。めとさまに、歴史に歌い込まれた色をお召しただきたいって気持ちもあり。茜は、日本の女を守る色だという、思いもあり。
染め重ねた糸たち。見てたら、匂い立つような感じがしたよ。いい着物になる。めとさまがお召しになって、ご自宅近くで、散歩されたり、買い物されたり。何気なく、風景にとけ込んで。でもそこだけ、いい風吹いてるみたいな、、、
めとさまのお着物、デザインが詰まってきました。何度も何度もやり直し、自分なりに「良し!」って言い切れるその一枚に持って行きます。
染めも進みました。経糸は、今のところこんな感じ。
緯糸も含むとこんな感じ。
うん、ここらで一度、めとさまに見ていただこう。説明文も書き添える。
と、宅配便を差し上げたい旨をメールすると、めとさま、お出かけとのことで一週間程発送ができない。うぅ。
めとさまのお着物、さらに染めます。これは、緯糸。入る分量は少ないけど、大事な赤系の色です。
最終稿のデザインは、まだ完全には決まっていないのですが、目に見える形にして、具体化し、さらに詰めたい。
これも緯糸。オレンジ系。この段階では、ちょっと黄色が強すぎるか、、、、
めとさまが、うちにいらっしゃっとき、我が家の隠し本棚に「みだれ髪」の文庫本があるのに目を止められた。与謝野晶子が好きなのだそうだ。それで、パラパラと再読。
「みだれ髪」、何とカラフルなんだろう!色がどんどん出てくる。総天然色の歌集なのだなあ。それも赤系、「丹」の字がつくような、、、、うーん。なるほど。
それで、赤系、染め重ねてます。こっくりした晶子の赤。
めとさまのお着物、さらに考えます。
ありがたい気付きがありました。昨日、織楽浅野さんのギャラリートークに、銀座もとじささんに、伺いました。浅野さんのお話は、いつも大変興味深く面白いのです。いただいた資料に「玄(げん)」と「素(そ)」という言葉がありました。玄は黒、素は白とも言えるのだけど、黒とか白の色ではなく、物の本質を示すとのことです。
うーん、めとさま、きっと経糸に望まれてるのは、こんなことなんじゃないかな。
織楽浅野さんの作品は、色味を抑え、深い奥行きがあって素晴らしいです。いつも学ばせていただいています。もとじさんでの個展「日々創造的でありたい」は今日まで。
それからもうひとつ、めとさまのお着物を考えていて、心に浮かんだのは、やはりこれ。
「色は匂へど 散りぬるを 我が世誰そ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず」
有為の奥山の先にあるのは、「玄」なのかな?「素」かな??だからこそ、今、匂い立つ「紅」なのかな、、、うーん、うーん。
よく分からんです。この辺のことは、私などより、めとさま、つかんでらっしゃるので、私は精一杯うつくしいもの、作りたいと思います。
まあ、私レベルの下世話な話になりますが、めとさまに2回お会いして、若くお美しいさまに、感嘆したわけです。資料を手渡しした時の、めとさまの手のツヤツヤなこと!自分のシワシワ加減を改めて自覚したってこともありまして。若くて輝いている方に、きれいなお着物をお召しいただきたいって気持ちもあります。もっともっと花開いていただきたいと。
「素」や「玄」がベースで、そこに美しい「紅」の風が吹く。
写真はあまり関係ないのだけど、自然の中でパチパチ撮ってると、「紅」って色は無いものだなあと。やはり、特別な色なんだなあと思った次第。
めとさまのお着物のデザイン、まだカッチリとは決まってないのですが、もう大化けはしないところまで行きましたので、デザインの詰めと平行して、染めもはじめます。目の前に実物を出現させた方が、わくわく感も増しまして、加速化しますしね。気付きも増えます。
経糸の準備は、テクスチャーが決定していて、本数が決まれば始められます。
まずは何と言っても「紅」から。本数は、20本前後になる見込み。(総本数は1100本くらいね。) 上の写真、「紅」染めてます。
こちらは、白。あたたかい白です。ほっこり優しい白。
干しています。染まった糸から、デザインを考え直したり。もうしばらく、染めとデザイン、行ったり来たり。
めとさまは風のように帰っていかれた。心地よい余韻を残して。
その晩、無事に帰り着かれたかなあと思っていると、メールが届いた。ああよかった。ご無事でした。
そのメールで、めとさまのお着物制作は、また大きく前進しました。めとさま、お着物に冠を授けてくださいました。いただいたメール、名付けの部分から少し引用させていただきます。
『「colored wind」、この着物に冠したい名前です。
色があるようで色がない、あるいは、色がないようで色がある…抽象的な言葉遊びみたいですが、そういう空気感を出したいんです。』
そっか、よっしゃ、風に色を付けましょう。「透明な風と色付き」がコンセプトだとも書いて下さってます。経糸は透明な風のイメージ。風が吹いて、「葉や花を色付かせたり、咲かせたり」。(カッコ内はめとさまのフレーズ)
メールの内容は、内定していた色を少々変更して欲しい旨に続きます。もちろんオッケー。今なら何でも変えられます。
めとさま起こした風が、私の頭をクリアにしてくれました。写真は、決まったことを早速デザインに落とし込んでプリントアウトした紙たち。まだこれから詰めますけどね。
約束の時間は正午。打ち合わせ開始の時刻にしては、ちょっと中途半端だが、めとさま関東滞在時間を最大限に使うため。めとさまは移動中に、私は早めにお昼を済ませて。さあ、準備万端。
正午ちょうど頃、ピンポンが鳴った。ドアを開けたら、ふんわりとした風。ちょっとはにかんだような笑顔。この人はやっぱり透明な風だなあ。
めとさま、着物本を数冊ご持参。その中の一冊の見返しの色こそが、めとさまの「紅」なのだった。ちなみに「紅」は「くれない」と発音する。「べに」ではなく。ってもちろん、今回のめとさまと私の間だけの話ですがね。
この色を芯のところに偲ばせて「くれないにほふ」着物を目指しましょう。
風がそよいで、いい匂いがして、ふと振り返る。そこにめとさま。どこに行くのか、ふんわり通り過ぎた。
そんなイメージね。その余韻がリフレインするような。
いろいろ話をした。顔を突き合わせて、ああでもない、こうでもない。色鉛筆やたくさんの資料。帰りの電車に乗り遅れないように時計をたまに気にしながら。
最終的に決まったのは、ぐっと経糸の色数を押さえて、それも強い色は入れないのです。ただひとつ、こっそり偲ばせる「紅」をのぞいては。緯糸は段にして、しっかりした色を入れる。
写真は私のおめざ。何を見ても、めとさま色を探してしまいます〜〜。
柄のご提案と「紅」の色見本をお送りしてから数日後、めとさまからメールをいただいた。
書かれていたのは「整理しきれず悩んでいる」などなどと。
それに続けてなんと!!!
「もしよろしければ、再度、工房にお邪魔してもよろしいでしょうか。直接対話できたら…。何より、もう一度吉田さんにお会いしたいという気持ちでおります。」
とのお言葉が!
びっくりマークを何度もつける程のことかとお思いかもですが、何と言っても遠いのです。300km超ですよ。時間もお金もエネルギーも、たっぷり必要な距離なのです。
そっか、この前、お会いしたとき、私が聞き逃したことがあるんだな。もしかしたら、聞けたのに柄に落とし込みきれなかったか。うーむ。色の把握が違ったのか、、、
が、「紅」色については、「ばっちりつかんでいる」と書いて下さってる。
「ただし、着物に入れるべき紅かというと、迷いが生じてしまって。少し主張が強すぎるかと悩んでしまい、これもご相談事項の一つです。お話しする中で見えて来るような気がして、先ほどのお願いに至った次第です。」
なるほど、なるほど。
とにかく、もう一度お会いするのは、私も望むところです。まだ霧は晴れ切ってはないのです。すこし雲の切れ間がのぞけたけど。もうちょっと風が必要だ。
本当は私の方が出向ければいいのですが、それが出来ず心苦しいです。
写真は、めとさま歓迎のための花。台所がそのまま染め場で、打ち合わせルーム(?)です。このバラの色が、めとさまが望まれる「紅」であるとふんだ。本当は和花の方がよかったけど、うちの界隈じゃ手に入らない。
「紅」に向き合った上で、もう一度、パソコンに向かいます。とにかく一度めとさまに見ていただく段階まで持っていこう。
私が思うところの、めとさまの「紅」。これに心を砕く。何枚も何枚もプリントアウトして、微調整して、自分的にオッケーな何枚かを作ります。
さあ、これで見ていただこうかな。プリントアウトの中から選抜した4枚と、それでも紅の色が心配ですから、色見本を何枚かつけて、大きい封筒に入れて、投函したのでした。
行ってらっしゃい!さあ、どんなお返事がくるでしょう!
さあ、ミッションに大きなキーワードが投入されました。「紅」です。
「紅」と言っても、そんじょそこらの紅じゃありません。めとさまが望まれる「紅」です。
いただいたメールに、『赤ではない「紅色」がとても好きなんです。』と書かれている。
そっか。
しかし、「紅」とは、何色か?
染めをしている身から言うと、いわゆる紅花染の色。これはショッキングピンクだから、ちょっとめとさまとは違うな。または「中紅」っていうピンク寄りの赤紫を思い浮かべる。しかし、これも違うんじゃないかな。もっと深い色を望まれているのではないか?
めとさまが、メールのタイトルに、「紅にほふ」とつけられていたので、その言葉で画像検索。そうしたら、鮮やかなピンク!桃の花がいっぱい。ってこれは、「春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ乙女」という歌から。でも違う。めとさまの色は、もっとこっくりした色なんだ。
その後のメールのやり取りで、めとさまから教えてもらったのだけど、(めとさまはとても博識なお方です)、「にほふ」の「に」は「丹(に)」から来ていて、元々は赤系統の色を表す言葉だったと。だから、「色が」匂い立つ、という意味で使う時には、紅(赤)や紫色の上にしか冠せられることはないとのこと。
今でもイメージ的に、「匂う青」とか「匂う緑」とかは言わない。(へぇ!そう言われりゃそうだ!←ヨシダ心の声)
色の名前がこんなにも細分化されたのは比較的新しいことで、「春の苑」のように、濃くても薄くても、「紅」という表現しかなかったのでしょうとのこと。(へぇ!へぇ!へぇ!←ヨシダ心の声)
そしてめとさま、「私が想定している色は、吉田さんのおっしゃる通り、こっくりとした紅です。」と書かれてる。めとさまだけの「紅」があるってことだね。
『「匂い立つ」という言葉が似合う、深みのある色が好きです。「にほふ」に込められた余韻のようなものを纏う着物になれば…、それにふさわしい人間になれればと…という願いです。』
柄はいくつか考えて、それを元に発展させていきます。
あれもこれも取り入れたくもあり、ああでもない、こうでもないでもある。ちょっとこうして見ようか。こっちの方がしゃれている。切り捨ても大事だし。色を入れ替えたらどうなるかな。
そうこうしているうちに、めとさまからメールが届きました。およ?
「好きな色について、追加事項があり、ご連絡差し上げました。着物にするにはどうかと思ってお伝えしていなかった上、今さらの感もありますが、「一番」好きな色…「紅」です。(中略)
まだ修正の余地があれば、ご検討いただけませんでしょうか。後出しになってしまって、本当にすみません。」
おお!こういうのは大歓迎です。正直、素材にかかってしまうと変更が効かなくなりますが、今はまだ計画段階なので、どうにでもなります。私の方も、一気に照準が定めやすくなります。
染織吉田のサイトの、「ONLY ONLY」のページに、「ONLY ONLY のすすめ方」を書いてますが、その中程に、「もう一度対話しましょう」の項目があります。それ、以下に引用しますが、本当にそうなのよ〜。
めとさまと私の間にあった垣根が取っ払われたようで、うれしかったです。
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デザインや設計図を見て、お客様も私も「やっぱりこうしたい」という気持ちが出てくるものです。ここでもう一度、オープンな対話をさせて下さい。 ご希望をお聞きしている早い段階では、多くのお客様が「吉田さんにお任せです」と言われます。ですが、少しずつお話が始まると、いろんな好きなものが表に現れてくるようです。それを感じとるのも私の喜びです。
めとさまのお着物、柄を考えます。
めとさまとのこれまでの対話を元に、何を望まれているかをよく考えて、ここでしっかり目に見える形にする。
お会いしたときお話したこと、また話せなかったこと、話の向こうにあったものなども。メールで伝えてくださったこと。その行間の思い。私が受けた印象も大事にしたい。こんなお着物、お召しいただきたいって気持ちもある。それもこっそり組み込む。
色や柄を考えるとき、ブラッシングカラーズや絵羽仕立てのお着物だとまた別の話なのですが、縞や格子の場合、私、パソコン使います。ソフトはイラストレーターです。
縞の太さを変えたり、色を変えたり、リピートしたり、「ここに一本別の糸を加えたいのよ」なども、表現できるので、大変に便利。実物大でプリントアウトして、鏡の前で合わせてみたりできるのもまた良し。
思えば、私、織りで独立したごくごく初期からデザインにパソコン使ってます。
しかーし!その時のソフトは、なななんと、エクセルでした。織りは基本、経と緯ですから、行か列を塗りつぶして、幅や高さを微妙に変えていく、、、。やって出来ないことは無い。というか、その当時、それしか出来なかったし。今思えば無謀でございましたなあー。(きっと今も無謀なこと、いろいろしてると思います。)
一週間ほどして、めとさまから返信がきた。一週間、私はわくわくして待っていた。
どきどきして開封。たいへん、たいへん、たいへんに美しい万年筆の手書きのお手紙を添えてくださった。インクの色もすてきです。
ご挨拶の文章から結びまで、意識が行き渡ってるお手紙、心して読みました。
「ほんの数回のやり取りで、ここまで、どんぴしゃに私の好みを察知してくださったことに、驚きと感謝でいっぱいです。」
ありがたいお言葉いただいた。形にするまでがんばります。
めとさまのチョイス。色番号2番と11番をメインに、もう3つほど加える。例えばこんな感じ。
もしくはこんな感じ。これもいいね。
これらの色もお好きとのこと。
トーンを引き締めるために、これらが入っても。
となると、これらは選外ですな。それも重要な情報なのです。削ぎ落して、残ったものを、また削ぎ落す。そんな感じで進めます。
めとさま、今回のお着物のテクスチャーに関しては、ほっこり系をお望みとのこと。うん、それがお似合いになりそう。やっぱ、自分のことをよく分かった方だ。
ほっこり加減は考える余地ありだが、それは糸の太細で決まるので、大きくは決定と言っていいだろう。さあそれでは、色をおさえたい。
先日お会いしたときは、私の過去作品の写真を元に話すことが多かった。写真やモニター越しでは、つかみきれないことや、思い込みですれ違ってしまうこともある。私も舌足らずで説明べたなので、実物を提示して話を進めたいタイプだ。
それで、手持ちの絹糸からめとさまに合いそうなものをピックアップして、台紙に巻いて、郵送して現物を見ていただくことにした。(上の写真)
全部で23種類。可視化は大事やなあ。具体化しやすい。と自分でも思った。
23種類のうちから、めとさまのお着物に合いそうなものをピックアップして、3案に絞った。
上は第一案。もみじのような赤を基調に大きな格子はどうだろう?
これが第二案。これは山桜の印象。めとさまは、きれいなふんわりした色も似合われる。
これが第三案。紅紫のこっくりとしたお着物。
これらを封筒にいれ、切手をはり、さあ、あんたたち、全権大使よ。いってらっしゃい!行って、めとさまと対話してきて。
と、投函したのでした。
(お送りした糸をそのまま今回のお着物に使うってことではありません。これらはあくまで見本で、本番では最適な糸に染め直します)
ふーっと風が吹いたように、300kmの距離を帰って行かれためとさまと、メールのやり取りが続きます。
色のご提案をしようと準備をしていると、メールが届きました。メールに重さは無いにせよ(テキストだけだし)、ずしっと感じた、想いが詰まってるメールでした。そこには、めとさまが、大事にされてるいろんな事柄が書かれてました。好きなモノ・コト・色・花・歌などなどなど。
それを私は興味深く読み、いくつかは画像検索し、プリントアウトしました。(上の写真)
きれいだなあ。なーるほどなあ。そっか、そこにこだわるか。いくつか、「これだ」「ここから発展させよう」ってポイントをみつけました。
その数日後、次なるメールで、お手持ちの、特に気に入っている帯の写真を添付して下さいました。なるほど、なるほど。帯は染めなんだな。めとさまらしい審美眼で選ばれ、大切にされてる帯たち。これら全てに合う着物を求めているわけではないってお書きでしたが、振れ幅を見極めるのに、ありがたかったです。
このやり取りの数日後、中秋でした。私は、めとさまお好みの歌を思いながら、月を見上げました。
「月夜よし 夜よしと人に 告やらば 来てふに似たり 待たずしもあらず」
(読みびと知らず、古今和歌集、めと好み)
それで、何と めとさま 、遠く我が仕事場まで、お越し下さることになったんです!300Kmの距離など、ものともせず!
その日、その時刻、私は精一杯の準備をして、お待ちしておりました。火曜日でしたね。
玄関を開けると、そこにいらした めとさま 、ふんわりと透き通った風と一緒に入ってらっしゃったような。若くてきれいな方でした。
なんだか、お互いにはにかんだような、、、ってそんなもんですよね。私もそれほど社交的とも言えませんし。少しずつ、少しずつ、心がふれあったように思います。
たくさん、お話しました。メモも取ったけど、ハートに刻み込んだ。
この方の、生きることへの真剣さを織り込みたいと思った。ふんわりした洒落っ気がある着物にしたとしても、そこはしっかり織り込もう。
写真はずっと以前の。iPhoneってよく撮れるよね〜。
こうして始まった めとさま との対話。まずはメール。
はじめは納期とか、お値段とか、そういう話だけど、すぐに芯の話になる。芯というか、根っこというか、、、
メールのやり取りで、このお方は、ご自分のことよく分かっておられる方だなあと思った。好みとか、似合うものとか、生き方とか、、、、、
でも私に依頼くださってる着物については、「どんな仕上がりを求めているかは、自分でも全く見えていない」とお書きだ。どういう着物が欲しいってことは、濃霧の向こうにぼぅっとしてるということか。
霧を払うのが少々やっかいかな。霧を吹き飛ばして、整えて、新しく生み出して、名前を付けるのが私の役割かな。ふむーー。
メールの最後に、「もしよろしければ、一度実際にお目にかかれればと思います。」と書いて下さっていた。
もちろん会いたい。でも めとさま のお住まいは、ここから300kmはあるんじゃないの?
続きはまたね。
写真は以前撮ったもの。去年か一昨年の秋。今年も涼しくなりましたねえ。
8月の終わりに、一通のお問い合わせのメールをいただいた。着物の注文についてのお問い合わせだ。多くを語らないメールだったけど、きれいな文章が心に残った。
「約1年悩んで、ようやくご連絡差し上げた次第です。」
こう書いて下さってて、そうだよなあと思った。着物をつくるって、そういうものなんだ。そのお気持ちに応えたいと思った。ああ、思い切ってヨシダにメールしてよかったって思っていただきたい。
と言うわけで、このお方のお着物に取り組んでいます。ブログにつづっていくことオッケーいただきましたので、できる範囲で書いていきます。
このお客様のお名前をこの場かぎりで「めとさま」とさせていただきたいです。ご本名とはかけ離れてしまいましたが、、、架空の名前で、新しい感覚楽しんでいただきたいなあなんて思いもありまして。
これからつくる新しい着物に、新しい名前をつけましょう。ブログに書き綴っていく制作行程は、新しい着物につける名前を探っていく工程になるかもしれません。
ブログをご覧下さっている方も、よろしかったらお付き合いくださいね。