たたさまから嬉しい写真が届きました!「たたさまの吉澤暁子先生を想う帯 吉澤先生と一緒」を締められたとのこと。
全身「吉澤暁子先生を想うコーディネート」で、惚れ惚れ。凛とした美しさ、さすが吉澤門下です。
合わせていらっしゃるお着物は、たたさまが吉澤さんに弟子入りの挨拶に伺った時にお召しだったものですって。その時、「きちんとした装いで来てくれて嬉しい」っておっしゃっられたのですって。
そういえば、帯の打ち合わせをZOOMでしたときも、たたさま、きちんとお着物で臨んでくださって、私も感激したものです。
帯、たたさまと吉澤さんをつなぐ、ロイヤルブルーが映えてますね。よかった、思ったとおり。
たたさまと旦那さま。とーっても素敵!!そういえば、もともとは「真珠婚式」を祝う帯としてのお話だったのです。
吉澤さんも、ニコニコと祝ってくれてますね。
さて、そろそろ休眠していた「ななさま物語」をリスタートさせましょう。
この夏は、ななさまの浴衣とそれに合わせて織った半幅帯の着姿を拝見するのが楽しみでした。これ、元々はご自宅に飾るタブローを注文くださっていたのに待ったを入れて、割り込ませて取り組んだのでした。
ご注文は、期限があるものから取り掛かってしまうのがつねで、かつ、ななさまが急がないとのことで、タブロー作りは表立ってはお休みしてました。
でも実は、水面下では使いたいピースを新しく織ったり、ななさまの希望に添ったピースを揃えたり、ゴソゴソと動いておりました。
10月初旬には、トシさんが来てくれてななさまのタブロー制作の経緯や気持ちをインタビューしてくれ、写真も撮ってくれました。(1,2,6枚目)
10月中旬には、制作途中の一式を風呂敷包みにして抱えて、ななさまのお宅へ現場合わせに行ってきました。
今回のななさまのタブロー制作、私にとって大きいのは、これは単なる「インテリアとしてのアート」ではないというところ。伝えたい思いが交差した織物であるということ。
参加しているコミュニティを通して、ななさまの人生の片鱗を知っています。そして、ななさまのテーマが「変化上等!」だということも。
ご了解いただきましたので、ななさまがトシさんへ、タブロー制作の経緯などに書かれていた文章を抜粋でご紹介させていただきます。この思いに応えるということが、私の存在理由の全てです。
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ヨシダさんとの初対面は今年3月。出逢ってまだ7ヶ月です。
それでも、ヨシダさんのブログや、直接会って感じるお人柄、 60年近く生きてきた私の直感で、 「あ、この人、信頼できる人だ。 想いを託せる人だ。」 とピピっとアンテナが反応したのです。
頼むなら今だよ。
この機会を逃すな。
物事、タイミング!
単なる「額に入った織物」なら他にも依頼先はあるでしょう。
これまでの私に拍手を送り、これからの私にエールを贈る。 そんな作品は、私が心を許す人に作ってもらいたい。
はい、ヨシダさんの出番です。
相手あってのこと、引き受けて下さったことに感謝してます。
ななさま物語の7話目です。(ラッキーナンバー「7」!)
半幅帯の完成と時を同じくして、新調した浴衣も仕立て上がってきました。
ONLY ONLYはお召しいただいた時が完成ですので、まさにこの時です。ほら、こんなにかっこいい!
ジャーン、この日、私もご一緒に、東京湾クルーズに繰り出しました。
実は、クルーズが先に決まっていて、急遽、浴衣を作り、帯を作ることになったのです。
それで、大急ぎで、浴衣地を選び、仕立てに出し、その生地とななさまの希望や生き方に合う帯を作ったのです。
ななさま、後も見せて!
帯結び、色々やってみられている写真、いただきました。
こんなのも可愛いですね。
帯締めと帯留め、大人の浴衣にとっても合いますね。さすがです。
半幅帯「変化上等!」、これからもずっと、変わり続けるななさまに寄り添っていくことでしょう。
そして、なんと過分なご褒美までいただいてしまった!
さて、ななさまのONLY ONLY、織り上がって、仕上げの段階まで来ました。
蒸しと水元と湯のしは専門業者さんにやっていただいて、その後の最終の検反と仕上げを自分でやります。
あれこれ振り返り検証する大事な時間。
今回、ななさまからのリクエストで追い求めたのは、以下の5つ。
・変化上等
・静と動
・寒色と暖色
・浴衣生地の茄子紺色に映える
・ラッキーナンバー7
できることは全てやり尽くし、新しいチャレンジも各所に取り込んで、おかげさまで私にとっても変化上等ができました。
今回は、半幅帯だから、特にしっかりした布であるように、経糸も詰め、緯糸も渾身の力をこめて織りました。それが締めやすさにつながると思っています。
ルーペで覗いてみましょう。
最後の最後は、拡大鏡で細かくチェックして、ピンセットや針で、糸の乱れなどもただします。
ななさまの茄子紺の浴衣地と合わせてみる。いいのではないか!
「変化上等!」、これからも変化し続けるななさまに寄り添う帯です。
ONLY ONLY、ななさまの半幅帯、上の動画は、トシさん撮影の織っているところです。7分くらいあります。心地よい音を採取してくれましたので、BGMにどうぞ。この後の写真も全て、トシさんの撮影です。
さて、前回、ブラッシングカラーズまで終わりました。その後、今回のONLY ONLYのキモとも言える「ずらし」を施しました。「ずらし」の工程は写真がないので、文字だけで説明します。
経糸を7つの束に分けて、それぞれの頭と尻尾を結びつけ、大きな輪にして、ピンと張ります。7つに分けたのは、もちろんななさまの「7」。
その7つの輪をずらしていくのです。
ななさま、「動と静」を望んでいらっしゃったので、沸々とたぎるマグマのように、大胆にずらします。狙ってはいるけど、偶然の力も大きく、これは冒険でもあります。
ずらし具合が決まったら固定させて、かっちり巻き取って、織り機に掛けて、機拵え(はたごしらえ)。順番通りに綜絖に通して、筬に通して、テンション揃えて、結びつけて。
それから、ようやく織りです。
織り機にかかってしまえば、後は淡々と遂行していくだけ。力を込めて、締めやすいしっかりした帯になるよう、きっちり織って行きます。
経糸が7色のところは、緯糸も7色。
緯糸を入れている道具は杼(ひ)というのですが、杼も7丁、持ち替えながら使います。
さて、先が見えてきました。
ONLY ONLY ななさまの半幅帯、経糸の準備ができたら、ブラッシングカラーに向けて、染料を調合します。これが、大事。納得いくまで何度も。
ななさまの好きな茄子の色。静と動。寒色と暖色。変化上等。ラッキーセブン。白も含め7色。柄は7回繰り返す。
緯糸の準備も並行して。その時点で試し織りをして、得心がいったら、経糸をもう一度、伸ばします。そして、あたりをつけて、いよいよ、本番のブラッシングカラーズです。
その時点で、ななさまと記録の伴奏をしてくださってるトシさんがお越しくださいました。レフ板持って、撮影助手もしてくださるななさま。
試し織り部分をあててみるななさま。
ここに挙げている写真は全てトシさん撮影です。(一枚だけ例外) 創作に寄り添ってくださって、今回は3人で作っている気がします。それはとても幸せなこと。
ななさまとトシさん、お越しくださったのブラッシングカラーズをしている日に合わせてですので、工程全てを細かに追ったわけではないのですが、おおらかに全体を分かってくださって、私一人の作業部分も理解してくださって、いつも一緒に作ったような気がしています。
下の写真、ジャーン、ななさま撮影の撮影中のトシさん。
ななさまの半幅帯、全体像をつかんだら、糸の準備です。
ななさまは、光沢感のあるキラキラしたものも似合われるので、その路線上にある糸を選ぶことにしました。浴衣に合わせるのが目的なので、ドレッシーすぎない、綺麗めカジュアル。締めやすく、ツヤがあり、花がある。そして、合言葉は「変化上等!」。
さあ、それを実現するためには、糸をどう選び、どう組み合わせれば最適なのか?そのために私ができることは何なのか?
経糸に使う糸は、長野県岡谷市の宮坂製糸さんに特別に引いてもらった銀河シルクと、ぐんま200というお蚕さんの繭から引いた甘よりの糸にしました。どちらも貴重で希少な、国産の絹です。
緯糸は、太めのやはり光沢のある絹にしました。
半幅帯は、両面を使うことができるので、表は経糸が見えて、裏は緯糸が見えるしずはた織りという綾織にして、表情の違いを楽しめるようにしよう。
大きな綛は、まず、扱いやすくするために、回数をそろえて、巻き直します。
そして、染めます。白に見えるけど、ごくごく少量の染料で染めています。絹は、そのまま使うことはしません。
染まったら、ブラッシングカラーズに備えて地入れ液と糊をつけて、整経に備えて計算して、その通りに大管に巻いていきます。
整経と巻取りは、今回は自宅工房ではなくて、特にお願いして、やらせていただきに上がりました。今までと違った方法でチャレンジしたくて。
受け入れていただけることに感謝。可能性を広げていけることに感謝。ものづくりは一人でできるものではないのだなあ。
ななさまの半幅帯とタブローを制作する今回のONLY ONLY。
ななさまが求めていらっしゃるのは、以下の5つ。
・変化上等
・静と動
・寒色と暖色
・浴衣生地の茄子紺色に映える
・ラッキーナンバー7
なるほど、これを同時に表現するのが私のミッションなのだな。承知。それぞれじっくり考える。
「変化上等」ななさまのキャッチフレーズ。変化って望んでなくても、ある日突然あらわれる。押し寄せる。人はそれを拒否することはできない。流される。しかし、それを「変化上等」と捉えるななさま。受け入れるのも、流されるのも強さなのだ。
「静と動」これは、ななさまそのものと思う。ななさま、静謐な面影を持った品の良い方なのだ。同時に情熱的でもある。フラメンコを踊るとおっしゃってたな。両方持っている方。
普段のオシャレは、どちらかというとコンサバティブなエレガント系と拝察したが、どっこいその反対も似合われると踏んだ。しかし、いつもと違いすぎるのを作ると、似合っても落ち着かないということになりかねない。その静と動を両方取り入れ、ギリギリのラインを狙わねば。ずらし技法を入れるか?
「寒色と暖色」これは、そうしておいた方が、帯としての使い勝手も増す。浴衣には涼しげな寒色が素敵だし、凛としたななさまに合う。暖色でチャーミングさを出したい。
「浴衣生地の茄子紺色に映える」浴衣は、おあつらえになるとのことだったので、一緒に懇意のギャラリー「イトノサキ」さんに行って選んだ。茄子紺のおしゃれな生地がとても似合われた。その端切れをいただいて来た。着る人と長着が決まっている状態なので、私としては一点集中して臨めて大変ありがたい。
「ラッキーナンバー7 」ななさまのななは数字の「7」。7を織り込もう。そのやり方はいくらでもある。7つにずらす。7色に染め分ける。柄を7回繰り返す。
出来上がってしまえば「7」は目立たなくなるだろう。しかし、そこに「7」がある。そのことはとても大事なのだ。
普段は、私一人で粛々と進める作業だが、ななさまが打ち合わせに来てくれた。伴奏してくださるトシさんと一緒に。それで、一挙に楽しくなった。
*写真提供はトシさん(1,2枚目)、ななさま(5,7枚目)、私(3,4,6枚目)
今日は夏至、梅雨入り直前のしっとり雨の1日です。新しい物語を語り出すのにうってつけの日のように思います。
今回のヒロインは「ななさま」。
ななさまと私は、とあるコミュニティで知り合いました。そのコミュニティ上のブログで、美しくも悲しい、そして強い日記を書き連ねていらっしゃったのがななさまで、私は目が離せず、惹きつけられて毎回読んでいました。圧倒され、コメントはできませんでしたが。
私の方にも色々あって、理不尽なことが起こっても、それを飲み込みつつ、自分らしさを探しつつ、誠実に、一生懸命生きていらっしゃるななさまの姿に憧れのようなものを覚えていました。
程なく、ななさま、そのコミュニティで知り合った方と我が家に見学にお越しくださり、ちょっと糸紡ぎの体験もして、だんだんと仲良くなっていきました。
そして、ご自分のマンションに飾るタブローを私に注文してくださったのです。
これは大変。思いがたくさん詰まった「変化上等」というななさまのキャッチフレーズにいかに応えるか、、、。
連休明けには、ななさまのマンションに伺って、ななさまが大切にされている空間に身を置かせていただきました。
時を同じくして、そのコミュニティ内のグループで、この夏、浴衣でクルーズしようという企画が持ち上がり(幹事は私です)、ななさまも申し込まれ、、、
若い頃にお茶をされていて、着物には馴染みがあるとのことですが、浴衣ははじめて。帯もないということで、浴衣用の帯も注文いただきました。
*写真は全て、このコミュニティで知り合った「トシさん」が撮ってくださったもの。今回、ななさまとの物語に伴走していただけることになりました。トシさんは音楽の方なので、伴走でなくて伴奏かな?このトシさんの物語も、深くて面白いのです。
「たたさまの吉澤暁子先生を想う帯 吉澤先生と一緒!」の全景を載せておきます。
吉澤暁子さんを表すロイヤルブルー、まわりをたたさまや着物仲間の方々を表すイエローやグリーンが楽しげに囲みます。吉澤さんのロイヤルブルーはおタイコから前帯までスクッと貫き、みんなと楽しく語らったり、励ましたりしてくださったり。きっと守ってもくださるでしょう。
たたさま、早速ご自身のインスタグラムに、この帯のことを書いてくださっています。吉澤暁子先生との思い出など、ほろりとします。このような大事な帯を織らせていただき、感謝しかありません。
たたさまのご了解を得て、一部抜粋でご紹介させていただきます。
「この帯は何だか私一人だけのものじゃない気がしていて、ずっと一緒に頑張って来た岡山教室のみんなの前で受け取りたいと大久保先生にお願いをしていました。」
「ずっと以前に美しいキモノに掲載されていた吉田さんの帯に心を撃ち抜かれ、いつの日かご縁がいただけたらいいなと、心の中でそっと願っていました。」
「2022年に吉澤先生の主宰されるサロン・ド・ラソワで吉田さんの個展をされるとお聞きし、地区の婦人会の会合と同じ日で行きたいけど行けないとお伝えすると、吉澤先生が、高田さんこんな機会は無いからzoomで参加したら?と言って下さり、(中略)
楽しくお話しさせていただき、思い切って一番最後でいいのでと帯をお願いすることにしました。ちょうど結婚30年になる年が少し先に控えていて、その記念にしようと思って。」
「先生は本当に繊細な方でした。すごくパワフルな方でしたが、それとは裏腹に私達生徒に駅まで迎えに来させてしまう事、送らせる事にも、ものすごく気を遣う方で、(後略)」
「帰りのホームに入られるといつも、たたさんは遠いんだから早よ帰り!!とおっしゃって、私ははーいと返事をして、いつも先生から見えない場所で、先生が駅員さんに車椅子を押して行かれるのを見ていました。」
「最後にレッスンに来られた日も、車椅子でじっと駅員さんを待たれていました。そしてやっと駅員さんに車椅子を押してもらって見えなくなった背中が、今も目に焼きついて離れません。」
「本当に最後の方のレッスンは、いつもニコニコと笑って女神様の様でした。」
「強くて美しくて繊細な、とても素敵な師匠でした。いつも矢面に立つ、そう決められていた人でした。」
「今日は、その素敵な師匠からご縁をいただいた、ずっと続く素敵な帯が届いた日でした。本当にありがとうございました。」
たたさまの帯、ずいぶん前に仕上げっていたのですが、本日、お手元に届けることができました。
たたさまにいの一番にご覧入れたくて、仕上げの様子などもここにアップするのを控えていました。
帯のタイトルは「吉澤先生と一緒!」。この帯は、まさにそういう帯なのです。
感激していただけたようで、よかった。
上にあげたのは、織り上がって、蒸しと湯のしに出し、戻ってきて、最終の検反をしているところの動画です。
この作業は祈りの時間としか言いようがありません。丁寧に気持ちを鎮めて、心を込めて、小さい糸屑も見逃さず、少しずつ少しずつ進んでいきます。全てが終わりましたら、反物を固くしっかりと巻いて、紙に包み、箱に収めます。そして、帯の仕様書と心を込めてお手紙を書きます。
これが、私のできる全てです。この後はもうたたさまにお任せするしかありません。どうかよろしくお願いしますと願いを込めながら淡々と作業していきます。
うれしいLINEが届きました。素敵な写真が三枚、添付されてます。
昨年のONLY ONLY「さとさま」から、お納めした八寸帯「ハッピーセレブレーション」(愛称・ハッピーちゃん)をお締めいただいたという、お知らせでした。
師匠の吉澤暁子さんのお教室の集まりで、吉澤さんを想うものを身に付けてというドレスコードの日の装いだそうです。
写真拝見して、深く感じ入りました。いやはや、素晴らしい。さとさま、すでにこの帯をしっかり我がものとして使いこなしていただいてます。
帯も、この方がご主人様だと信頼し、喜び、懐いているようです。良かった。
それに、さとさまの表情がキリリとしてとても素敵です。
さとさま、この春、満を持して、ご自分の着付け教室「華園(かえん)」をオープンなさったのです。ずっと丁寧に着実に準備されていたのを知ってますので、私もすごく嬉しいです。
そして、本日、50歳の誕生日を迎えられました。おめでとうございます。帯の制作は、50歳の記念にということと、着付け教室を始められることの心の支えにということでのご注文でした。
だから、このお写真を今日、こうやって見せていただくことは、私にとってもとても嬉しく、ありがたいことなのです。
さとさまからのラインをお許しを得て、一部抜粋でご紹介します。
「依頼させていただく際に、手持ちの大島紬(身内から譲り受けた)にも合わせやすく、今っぽく、上品になる帯をリクエストさせていただきました。
正にその通りに!!!
糸や色選びはもちろん、織りにもこだわっていただき、唯一無二の素敵な帯。
吉澤先生のアドバイスもあり、お太鼓部分に芯を入れていただいたので適度なハリがあって、しなやかで締めやすい。
緻密に計算されたデザインで、本人は柄行きをあまり考えずに結んでも、決まってくれるとても賢い子(帯)です。
当日はいろいろな方に褒めていただき、ハッピーな一日になりました。
4月19日で50歳を迎えます。
それまでに着付け教室を開業したいという思いがあり、ハッピーちゃんに(吉田さん)に随分と背中を押していただきました。
4月1日に、何とか着付け屋「華園」を開業することができました。
まだまだ未熟者ですが、ハッピーちゃんと共に頑張って参ります。
またいつの日か、リアルハッピーちゃんで、吉田さんとお会いできる日を楽しみにしています。
ありがとうございました。」
完全注文制作ONLY ONLY、たたさまの帯、とうとう織りに辿り着きました。
今回は経糸と緯糸を、あえて同じにしました。今回は糸がとっても面白いので、その良さを出すには、同じにしようという判断です。バランスを見て変える時もあるのですが、今回は全てが同じです。直球勝負なのも、吉澤さんとたたさまのイメージです。
その糸を、小管に巻いて、杼にセットして、準備万端。姿勢をただし、同じ力で打ち込みを重ねていきます。
ただただ、淡々と。
完全注文制作ONLY ONLY、たたさまの八寸帯、デザインが決まりましたので、実物大の図面に落とし込んでいきます。織り縮み率を何%で計算するのかが考え所です。
染料も本番用に整えます。今回は悩みに悩んで、結局、ロイヤルブルー、レモンイエロー、エメラルドグリーン、イエローグリーン、ビリジアン、ライトグレーの6色にしました。全てがキリッと冴え渡るような、吉澤カラーです。
ここまできたら、後はもうやるしかない。いよいよ本番。計算して出た場所の経糸に、染料を含ませた筆や刷毛を下ろして染めていきます。
まずは、キーカラーのロイヤルブルーから。
たたさまが吉澤さんのお別れ会でもらわれたリボンの色です。この色が、おタイコから前帯部分までスックと貫きます。
そしてロイヤルブルーの周りを、吟味した色たちが楽しげに囲みます。
ブラッシングカラーズが終わって、しっかり乾いたら、巻き取ります。テンションを揃えてしっかり固く巻いていくのがミソです。
完全注文制作ONLY ONLY、たたさまの帯、そろそろデザインを詰める時となりました。
まずはスケッチ。
今までに色々お話ししたことを反芻しながら、自由に描いていきます。私の過去作品で一番お好きだとおっしゃってくださったのの発展系や、吉澤さんをイメージしたカラーでまとめたもの、太子間道がお好きとおっしゃっていたのでそのイメージのもの。
なんでも自由に。可能性はどんどん広げようと思って。
それをたたさまにお見せしたら、速攻でお返事が来て、「吉澤先生のイメージのもので」とおっしゃいました。
では、吉澤さんが求めてくださった帯の色を再現してみよう。(吉澤さん、この帯を求めてくださいました。→⭐︎)
パソコン上で、吉澤カラー、白地ベース、たたさまがお好きなデザインで、色々やってみます。プリントアウトして、帯の形にしてみます。
うーん、もう一歩なんだよなあ、吉澤さんに辿り着かない。
ふと、我が家の壁に目が行きました。青い細めのリボンをひと結びして留めて飾っています。
これ、吉澤さんのお別れ会の時に、参加者に色別で配られてみんなが身につけていたのです。吉澤さんのお好きな色ばかり。リボンを身につけると言うのも着付けの先生らしく。吉澤さんを支えてこられた近しい方々のお心配りにもジーンとしたのでした。
私は濃い青色をいただき、お別れ会が終わっても手首に結んだまま新幹線に乗って、帰り着いてうちの壁に飾ったのでした。
たたさまはどうしていらっしゃるかな?
早速お尋ねすると、車のミラーに結んでいるとのこと。やはり身近に、大事にされてたんですね。お色は紫がかった青だそう。ロイヤルブルーといってもいいかも。吉澤さんドンピシャのお色です。
これだな、吉澤さんを想う帯にふさわしいモチーフは。このリボンをデザインの核にしよう。
今も吉澤さんと繋がっている。吉澤さんが作らせてくださる。
さらに色の調合を重ねて、試し織りをしてみました。
たたさまのONLY ONLY、経糸(たていと)の準備をしています。
整経から機(はた)に掛けるまでは、地道な作業の積み重ねです。
今回使った糸は、節や毛羽が多い面白みのある暴れん坊の糸です。こんな糸、手織りでもなかなか扱えないぞ。
無謀と思えることでも、一つ一つを丁寧にこなすことで、想定を超えた織物ができると思っています。
今回使っている糸は一種類なのですが、重さを測って太さに分けて木枠に巻き、整経の時は、太い糸同士、細い糸同士が並ばないように配置しています。全体的に整った印象になるし、小さなリズムになる。
こんなことは布になってしまえば分からないのですが、きっと、たたさまと吉澤さんは感じてくれるのではないかなって思っています。
「ヨシダさんが思う、吉澤先生を織ってほしい。」
難題ですが、たたさまのお気持ち、シカと受け止めます。
吉澤さんは抜群のセンスで、なんでもカッコよく着こなす方でした。「吉澤カラー」というのもお有りでした。
初めは、色から考えこんなものもいいなと、突っ走って試し織りまで行きましたが、ちょっと違ったみたい。
3人でズームで話したことをひとつひとつ反芻して、そうだ、今回、白地にしようと思いました。白地のものはあまり持っていないとおっしゃっていたので。
「なんで、白地を避けてきたかというと、着物や帯は、綺麗に着て、次の方に受け継いでもらうものと思っているから、白は汚れてそれができなくなる。でも、最近、大事にすれば白もいいなと思うようになってきた。やっと白を締める責任感を持てたように感じるというか、、、」と。
さすが、着物を広める立場の方です。
たたさまもすごいけど、たたさまが師匠と仰ぐ吉澤さんもすごい。愛情が受け継がれているなあ。
よし、今回、たたさまに、白地に吉澤さんカラーが飛ぶ帯をお作りしたい。糸の準備とデザインを並行して進めよう。
今回は群馬県の碓氷製糸さんから低張力で引き出した糸を取り寄せることにしました。使い辛く一筋縄ではいかない糸ですが、味があって面白みがあります。
動画で、糸の下準備をしているところ、ご覧ください。
さて、新しい物語のスタートさせるといたしましょう。
今回のヒロインはたたさまです。
たたさまと初めてお会いしたのは、2022年に京都のラソワさんで開催していただいた「吉田美保子展 ボンジュール」の会場で繋がったズームの画面越しでした。
ラソワ主宰の吉澤暁子さんと3人で、楽しく、ONLY ONLYのご相談をさせていただいたのです。
たたさまは、着物歴も長く、知識も経験も豊富で、あふれる着物愛が伝わってきました。
吉澤さんの着付けのお弟子さんですが、ご自身でも着付け教室を主宰され(この時は準備中でしたが)、たくさんの人に愛されるお人柄が伝わってきました。
吉澤さんもたたさまのことを「軸がしっかりしていて正くて強い人。」と評されてました。
基本的に任せていただけるとのことで、「ヨシダさんが思う、私に似合う帯を作ってほしい」とのこと、それは、自分で好みを言うと似た感じばかりになるからという理由でした。
急がないという言葉にゆっくり目に計画させていただくことにしました。
それからたった一年と数ヶ月後、、、、
なんたることか、、、、、青天の霹靂とでもいうのでしょうか、吉澤さんが逝去されてしまうという、まさに青空が落っこちてきてしまうようなことが起こりました。
たたさまも大変なお悲しみようで、すぐに連絡をくださり、このONLY ONLYを、
「ヨシダさんが思う吉澤先生を表現する帯に変更してほしい。そして私はこの帯を吉澤先生と思って、着物を着れる限り大切に大切に締め続けたい」とおっしゃいました。
それで、計画を変更して、私にとっての吉澤さんを探る旅に出ることになりました。
完全注文制作ONLY ONLYで承りましたさえさまの着物と帯、お仕立て上がってお納めしました。そして、さえさまと、ゆき和さんと私とで、蚕のふるさとである熊本県山鹿市の養蚕農家花井雅美さんを訪ねてきました。
その様子を3分の動画にまとめましたので、上のYouTube、ぜひご覧ください。
さえさまのひと揃い。トータルコーディネートのゆき和さん、冴えてます。
横から。
後ろ姿もいい感じ。 花井さんの桑畑、本当に気持ち良かった!
蚕室にて。
秋蚕さんたちが、ちょうど蔟(まぶし)に上がって、繭を作り終えたところでした。この前日まで、チリチリチリと糸を吐く音がしていたそうです。(私がこの夏、蚕を飼って、3頭が繭になった時は、そんな音全く気づきませんでした。さすが農家さんは違います)
回転蔟(かいてんまぶし)は、一台で約1000頭弱のお蚕さんが入るそうですので、ここに写っている分だけで約6000粒ということです。この分で約10kg、今回譲っていただいた全量となります。
そして、そのほとんど全てを使って、着物一枚、帯一本になりました。お蚕さん、育ててくれた花井さん、ありがとうございます。
熊本日日新聞の取材を受けました。
記者さんと私たち。
さえさまの完全注文制作ONLY ONLYですが、今回、着物と帯の両方を承っております。まずは着物を作りましたので、それに合わせて、最高の一本を作ります。
制作工程は上の動画をご覧ください。下には、織り上がってから撮った写真を載せます。
どんな帯にするかは、さえさまとゆき和さんが我が家にいらっしゃって、織り上がった着物の実物や、私の過去の作品を参考にああでもない、こうでもないと。
私の「パーテーションシリーズ」がお好みであることは、以前から聞いていましたが、色味もよくよく話をして。カラーコーディネートの専門家であるゆき和さんのアドバイス、大いに参考になりました。
糸は、全て山鹿の蚕からいただいたもの。銀河シルクと節糸です。
さえさまは光沢が強すぎない方がお好みなので、製糸の段階で節糸も作ってもらってました。この節糸、木枠に巻く段階で、細い太いに分けておいてました。細めの部分は着尺用。太めの部分は帯用と使い分けるためです。
これが結構手間だったのだけど、やった甲斐あった。着物の方も適度なマット感出たし、帯の方も光はあるけど、フォーマルとは違う感じの、さえさま好みになったと思います。よかった。
節糸は経糸にも緯糸にも入っています。軽さにも繋がったと思います。
山鹿のきれいな空気と水で育った桑を、たくさん食べて大きくなった蚕の糸のみで作りました。メインの糸の区切りに入れた黄色の糸は、銀河シルクを精練したもの。織り方もそこだけ変えて。
この精練した銀河シルクを優しい黄色に染めたもの、さえさまがとても気に入ってくださったので、試し織の時より、太くして、かつ、地のブラッシングカラーズに白場を作っておいて、目立つようにしました。
お太鼓と前柄部分のパーテーション部分は、織り方と染料の濃さや色味を変えて、市松模様にしています。ここが緯糸二丁杼です。
いい感じの艶感。着物がマットな感じですので、きっといい相性と思います。
組み合わせるのが楽しみです。
完全注文制作ONLY ONLYさえさまのお着物、織り上がりました。
織り上がってからやることも結構たくさんあります。
まずしっかり検反。糸が飛び出ているところなどをチェックしてから、酵素で糊抜きをします。35℃のお湯で5時間。終わったら、何度もふり洗いして、しっかりと酵素と糊を洗い落とします。
そして、伸子で張って乾かします。
むむむ、乾いてチェックするも、どうも糊成分が残っている。山鹿の繭、100粒からひいてもらった節糸、思ったより暴れん坊だったので、糊を強めにつけたので、落ち切らなかったようです。
それで、酵素糊抜きを繰り返しました。
2度やって、さっぱりと糊が落ちましたので、次は湯のしに出して、蒸気をあててもらいます。湯のしに出すと、絹が喜んで気持ちよさそうにするように私には見えるのです。
そして、砧打ちをして、糸同士を馴染ませ、穏やかにします。
以上が私のできる全てです。
この段階でお納めなのですが、今回さえさまがお仕立ても望まれ、「ふじ佐」さんにお世話になることになりました。
採寸は我が家でということになったのですが、この日、カラー診断のゆき和さんも同席してくださり、着物談義に花を咲かせながら和気あいあいと楽しい時間を過ごしました。
ふじ佐さん、ゆき和さん、お二人とも布愛、着物愛半端なく、知識経験とも豊富でツワモノって感じでタジタジでしたが、とても勉強になりました。
完成が本当に楽しみです。
織り終わった着物の写真は、116通目のメルマガ【さえさま物語号】にもう少々載ってます。
完全注文制作ONLY ONLY、さえさまのお着物、いよいよ大詰めです。織りの作業は、お蚕さんから始まって、糸にし、色にし、形にしの集大成です。
さえさまの4つのご希望を叶えるために、多くの方の力を結集しました。一人の力では到底できなかったことが、おかげで実現できます。
織っている時は、私一人の孤独な作業ですけれど、さえさまや、関わってくれた多くの方々がまるで一緒にいてくれるような気がしています。
完全注文制作ONLY ONLY、さえさまのお着物、整経が終わった経糸を機に乗せて、織の準備をします。
綜絖という上下に動く装置の穴に糸を入れることによって経糸(たていと)が上下に動くようになります。
それによってできた空間に緯糸(よこいと)を通し、その緯糸を筬で打ち付けることで糸が布に変身するのです。
この綜絖と筬の通し方でどんな布になるかが決まります。複雑な通し方にすればそれはそれで面白い布になるのですが、今回はあえて、一番スタンダードな平織で。
平織は糸の表情が生きるし、経糸と緯糸が直角にぶつかり、しっかりした布になります。さえさまのお望みで、今回お単衣の着物にするので、丈夫さも大事なのです。
この作業をしていると、まるで魔法の種を仕込んでいるような気持ちになります。どんな魔法にも仕込みがあって、それをきちんとこなすことが重要なのだなあ。
完全注文制作ONLY ONLY で承っているさえさまのお着物、糸の準備が出来ましたので、整経作業にかかります。
ここに来るまでに、何度も計算を入れて、よくよく考えます。どんな着物になるかはここで決まってしまいます。合わせて、効率よく、無駄なく作業できるように計画します。
キモは、宮坂製糸さんに作ってもらった100粒の節糸をどのように混ぜ込むか?
少なすぎると「ツルツルした着物でなくて、風合いのある着物を」とおっしゃるさえさまの希望に添えません。
多すぎると、ざっくりしすぎて着心地が悪くなりかねません。それに織りにくくなりすぎます。
ギリギリのラインを狙います。
完全注文制作ONLY ONLYで承っているさえさまの着物と帯のうち、着物がいよいよ始まりました。
デザインは、さえさまのご希望により、遠目には無地、近くでみるとたくさんの色が入っている細い縞。緯糸(よこいと)にもたくさんの色が入っている。
それで10色に染め分けます。糸の種類も考慮して、どの色をどう配置するか、試行錯誤を重ねます。
経糸にも緯糸にも、上州式のスーッとした糸と100粒でひいた節のある糸を混ぜて使うのだけど、どう混ぜるか。それが問題。100粒の節糸が、想定以上に暴れん坊で冷や汗です。使いこなしてこその特注糸。受けて立ちます。
ここでどんな着物になるかが決定します。ですので、慎重に、大胆に。
さえさまの着物と帯になる山鹿の繭、宮坂さんで製糸してもらって、次は撚糸にまわします。
製糸も大事だけど、撚糸もものすごく大事。絹が織れるのは、製糸された糸に撚りがかかっているからです。撚り次第で、糸はガラリと変身します。どんな布になるかも、撚りで変わります。
今回、さえさまのご希望に応えるべく、通常だったら遠慮するような細かい頼み事あり、電話じゃ無理だと糸を抱いて、八王子の森田撚糸さんへ足を運びました。
おそるおそるしどろもどろで話す私に、「ヨシダさん、仕事は情熱だよ」とおっしゃっる森田さん。
そうか、そうだよな。勇気づけられ、もとい、衿を正して、熱を込めてお願いしなおしましたら、あっさりと、「いいですよ」と受けてくださった。
言ってみるものだ。仕事は情熱ということを改めて教えてくださる森田さん、本当にありがとうございます。熱を受け止めてくださるプロがいてくれてうれしい。
以下の写真が、森田さんから戻ってきた、さえさまのための糸。情熱のかたまり。
7種類の細かいロット。
以上が着物用にメインに使うスーッとした糸。上州式。合わせた本数と撚り回数を変えて3種類。
以上がざっくり太めに特別にひいてもらった糸。着物の風合い出しに使う。一部帯にも織り込む予定。甘撚りにしたものと、カバーリングしてもらったもの。
銀河シルク。帯の経糸にも緯糸にも使います。今回2種類に分けて撚ってもらいました。
森田さんから戻ってきた糸たち、着物に使う糸はさっそく精練します。
アルカリで炊いて、ゆっくり糸のベールを脱がせていく。その変化に毎度おどろく。
こうやって、さえさまの糸は揃ったのでした。
精練した糸たち。セリシンの膜を脱いでさっぱり、ぷりぷりしています。
さえさま物語の2話目です。
さえさまのご希望は、熊本の山鹿で育った蚕で、着物と帯を作ること。布の風合いは、ツルツルピカピカではなくて、ざっくりとした手触りがあること。
繭のことは、さえさまからお話もらってすぐに養蚕農家の花井雅美さんにお願いして、2022年の春蚕を特別にキープしてもらってました。
同時に、糸づくりについては、長野県岡谷市の宮坂製糸の社長、高橋耕一さんに電話して、相談に乗ってもらいました。
そしていよいよ製糸していただく日に、花井さんと二人で糸くりの様子を、宮坂製糸さんに見せていただきに出かけました。
織物は糸で決まります。糸は繭で決まります。
花井さんの愛情たっぷりで育った山鹿の繭を、さえさまのご希望にそうように、高橋さんの指示で、糸のひき方を変えて着物用に2種類、帯用に1種類にしてもらいました。
10kgの繭は乾燥させて約4.7kgになり、その繭を製糸すると約2kgになり、撚糸をへて、精練というタンパク質を取り除く作業をすると1.6kgくらいになります。
10kgってたくさんのような感じがしますが、着物と帯になる部分はたった1.6kgなのです。一層大事に余すところなく織らねばと思いました。
新しいONLY ONLYをはじめます。今回のヒロインは「さえさま」です。
「いつか、着物と帯を、山鹿の蚕で、ヨシダに織ってもらうのが夢」とずっとおっしゃっていただいてました。
さえさまと私は古い友人で、一昨年、私が熊本の山鹿の蚕で着物を作った時、いつか自分もと思われたのです。
それが満を持して、いよいよ動き出しました。今回のストーリーは、その夢を実現させるまでの物語です。
まずはじっくりお話を聞きます。ちょうど一年位前、水天宮のホテルのラウンジでお会いしました。
さえさま、夢に描くイメージは、ふるさとの阿蘇に広がるススキ野原とおっしゃいます。同郷ですからよく分かります。あの清々しさ、雄大な大地に吹き渡るそよ風。
が、、、ふむ〜、ススキ野原、、、着物のイメージとしては大変難しいです。つかみどころが無さすぎる、、、この日はお話を聞くだけでお開きとなりました。
その後さえさま、ご自分でネット検索されて、カラー診断を申し込まれました。人伝の紹介などではなく直感的に。行動力に感服です。
当日は私もお付き合いすることに。
お願いしたのは、ゆき和さん。
こんな言い方は適切ではないと思いますが、これが大当たり。色のこと、着物のこと、着方や素材のことまで熟知していらっしゃって、惜しげもなく湧き出るように伝えてくださいます。知っているからこその自由さや、臨機応変さがあります。
我々との相性もバッチリで、和気藹々と濃密な時間を過ごし、すっかり仲間になりました。
ゆき和さんによる、最終的な診断結果は「苅安色」。
か、か、苅安!!苅安はススキの仲間、見かけはススキそっくりです。ここで、阿蘇のススキ野原と繋がるとは心底驚きました!
さえさまとゆき和さんと私、ススキの野原の大草原を三人で冒険するように、物語を紡いで行くことになるのです。
さとさまのONLY ONLY、「50歳のハッピーセレブレーション」の八寸帯、お手元に届きました!
お写真をいただき、満ち足りた感じのお顔を拝見でき、とても安心しました。
帯とのご対面は京都のラソワさんで、師匠の吉澤暁子さんもご同席の上のハッピーな時間だったとのこと。
さとさまからは、丁寧なラインをいただきました。うれしかった!苦労も吹き飛びました。
一部抜粋でご紹介させていただきます。
ピカピカツヤツヤの可愛いこ、上品な銀河シルクの綺麗さに見惚れてしまいました。
写真や動画では、地色はもう少し白っぽく見えていましたが、薄い大人ピンク〜赤紫でとても私好みでした!
私の知らない(うちに秘めた)部分を上手く引き出していただいたのだと、とても有り難く思っています。
経斜文織り(たてしゃもんおり)の柄の出方がとても独特でより魅力的に見せてくれますね。
丁寧に仕様書を付けていただいたので、糸見本を眺めては、うっとりニヤニヤしています。
着物は手持ちのものに大体合う気がしていて、帯揚げや帯締めはどんなものが合うのか、手持ちのものではどうか…など、妄想コーデをしています。 いつ、どこに着て行ってあげようか、楽しみで仕方ありません。
仕立てに関しては、吉澤先生にもご相談しましたが、仕立て屋さんにも帯を見ていただいてから、決めることになりました。
一生モノの素敵な帯、綺麗に永く使いたいので、慎重に決めたいと思います。
ふう、よかった。 仕立て上がって、コーディネートして、実際にお出かけして、、、 その日が私もすごく楽しみです。
次のお誕生日で50歳になられるということで、人生の節目、ご自分を鼓舞する意味もあり注文くださいましたが、お写真の表情を見てると、もうすっかり次のステージに上がられている印象で、さすがだなあと思いました。
大切な帯を織らせていただくことで、私の方こそ鼓舞されました。 本当にどうもありがとうございました。
完全注文制作ONLY ONLY、さとさまの帯、蒸し、水元、湯のしから、戻ってきました。
染料が発色し、糊が落とされ、蒸気にあたって艶が出て、ますますべっぴんさんです。一度手を離れたこが可愛さ倍増で帰ってくると、愛しさが増しますね。
これでどこに出しても恥ずかしくない姿になりました。どこに出してもって、行く先はさとさまと初めから決まっているのですけどね。
「さとさまのこれからを、しっかりお守りするんだよ。長く可愛がってもらって、どこにでも連れて行ってもらいなさいね。」
そんな思いで送り出しました。
(完成画像は、さとさまのもとに届いてから、御了承を得られたら、載せたいと思います。)
さとさまの八寸帯、織り上がりました。
ふう、走り切った。それなりに長かった。
山や谷や、見晴らしの良い草原や、街中の雑踏や、ありとあらゆるところを、さとさまと一緒に二人で走った気分です。
さて、機から下ろした帯は、早速仕上げ作業に入ります。
机に広げ、隅から隅まで、目を皿のようにして詳細にチェックしていきます。絹は自然のものだから、毛羽だったり、切れて結び目があったりするのだけど、それらを見た目につかないように、処理していきます。
この後、高温の蒸しを2回(染料を繊維に定着させる)、水元(みずもと・流水で洗って、余分な染料と糊を落とす)、湯のし(絹糸につやを出す)を専門業者さんに外注して、いよいよ完成です。
織り終わったことをいの一番にさとさまにお知らせすると、さとさまらしい、じんわりうれしい返事が来ました。うわー、まさに〜〜。ちょっと引用させていただきます。
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マラソン大会ではゴール後、フィニッシャータオルを肩に掛けてもらい、メダルも掛けてもらいます。
それから、スポーツドリンクやパンなどの捕食をもらい、預けた手荷物をもらいに行きます。
荷物をもらった後、更衣スペースに移動して、着替えます。
更衣スペースまで、結構な道のりでフラフラ状態で歩きます。
着替えて、ようやく応援に来てくれていた家族や仲間と再会します。
吉田さんは、今、そんな感じなのかなぁと想像したりしています。
さとさまの八寸帯、いよいよ織りです。織りは、計画通りに、淡々と進めていきます。
繰り返し、繰り返し、同じように。
無事故で当然なのですが、、、、、なんと途中で糸が一本抜けてしまいました。20センチほどそのまま織り進んで発見しました。
見つけた瞬間、サーっと血の気が引いていきます。
ガーーーン、、、ショック。
一瞬だけ、どうしようかと思ったけど、次の瞬間、「戻ろう」と心を決めて織った糸を解いていきます。半日くらいその作業に没頭です。
戻るのは織るのより100倍くらい時間もかかるし気も使うけど、時間をかけて丁寧に作業すれば、布が糸に戻り、また織り直すことによって完全な布にすることができます。
これはさとさまの大事な帯だから、できることは全部して少しでもいいものにするのです。
さ、仕切り直しで淡々と織り進めます。
ONLY ONLY、さとさまの帯、緯糸(よこいと)を準備します。
経斜文織り(たてしゃもんおり)で織りますので、実は緯糸はほとんど見えなくなります。
それでも色は命。命を吹き込む9色をしっかりと力を込めて染めるのだ。
続いて、染めた糸にごく薄く糊をつけて、乾かして、小管(こくだ)に巻きます。糸を巻いていると、万感の思いが込み上げてきます。蚕を育ててくれた人や、糸を作ってくれた人や、これを織る機会を下さったさとさまや。
そんな思いにつき動かせれながら黙々と巻きます。
さあ、これで準備万端。あとは織りです。
ブラッシングカラーズが終わった、さとさまの経糸(たていと)、上の写真は、機から外して鎖あみにしたところです。
この糸と道具一式ををかかえて、静岡県富士宮市の影山工房へ伺いました。
さとさまのご希望の「曲線」、これを表現するために、どうしてもこちらで仕事させていただきたく、特別にお願いしました。我が家では、帯の長さで糸をしっかりと張る道具だてが設置できないのです。
仕事はなんでも、段取り八分とはよく言いますが、織りこそまさにその通りで、段取りがそのまま仕事に現れます。
影山さんが実践しておられる方法は、その極みだと思っています。
その高度な技術と完璧な道具立てと工房を惜しげもなく提供してくださる影山さんには、本当に感謝しています。
ほら、ずらしで曲線が出てきましたよ。
影山工房では巻き取りまでやらせていただき、再び我が家で仕事再開。
綜絖通し。
筬通し。
これで、ほぼほぼ織るための段取りは終わりです。いよいよ織りにかかります。
ONLY ONLYで取り組んでいるさとさまの帯、デザインが決まりましたので、早速本番に取り掛かります。
これまで試しで小さなピースを、染めて、織って、蒸して、仕上げてを繰り返しておりましたので、本番をやりたくてうずうずします。やはりバーンとした緊張感は特別です。
大事なのは、まずは糸。
糸は、さとさまのご希望の、「きれいめ、上品、シャイニー」を実現するために吟味します。色については冒険要素も入れるので、ここは、ご希望通りに手堅く押えます。
張りのある銀河シルクと、絹らしく光り輝く糸を選びました。(上の写真、右が銀河シルク)
(その後の幾多の作業の記載は長くなりますので割愛します。)
それから、色。ここが勝負どころ。試しでOKとなった染料から慎重に選び取り、たっぷり用意します。
(染料の調合にかかる幾多の作業も記載割愛です。)
そして、デザイン画をもとに織り縮み率を割り出して、あたりをつけて、ブラッシング開始です。
筆で何度も何度も何度も何度も、ブラッシングしていきます。
染料の濃淡は色々です。ごくごく薄いものから、パキッとしたものまで。メリハリをつけて。
タレとか手先とか、ちょっとしか見えないところは、ごく薄い色ながら、しっかり手をかけて。一本の帯の全体が、さとさまのこれからを守るように。
ここがおタイコ。この後ずらしを施して、真っ直ぐな線を曲線にしていきます。
さとさまの帯、どんなふうにしようか、、、、。どうすれば、さとさまの望みを叶えられるのだろう?
50歳の記念の帯、これまで頑張ってきた自分をねぎらい、これからの人生を鼓舞するような。
実はとっても悩みました。
織の仕事は、デザインを決めるまでが第一の山場です。こここそが産みの苦しみで、粘って粘って粘り抜いて、突破口を見つける。光を見つけたら、そこを目指して突き進む。
この一本、私を出し尽くして、さとさまの人生のこれからを応援する帯にしたいと思った。
希望や好みを伺ったとき、幾何学模様の小さい柄が使いやすいなどとおっしゃっていたが、、、、
私はさとさま、案外大胆なのも似合わせるのではないかと踏んでいた。LINEでのやり取りで、柚木沙弥郎の、好きな数点の写真を送ってくれた。透明で躍動感がある。ほら大胆なのお好きなんだ。
直線は苦手、曲線が好きというのも外せないご要望。って織は基本、タテとヨコなんです。カーブをどう表現しようか。
好きな色は、ピンクと茶色。洋服はベージュを着るとのこと。暖色系がお好きとのことだが、インスタを拝見してたら、洋服でお出かけ時に、爽やかな青い布を肩に掛け、真っ青な紐のようなものを手に持って写っている写真発見。わ!すっごく似合う!
この色を提案してみようか?
いや、ブルーのみだと居心地悪いだろうから、ピンクベースで、アイキャッチに茶色。で、ブルーをその上にしっかり目に。
経糸にずらしを入れれば、カーブを描ける。それを大胆に入れたら?
こんな感じでどうだろう?
最終確認ににさとさまとLINEビデオで繋がった。お久しぶりです!同じ時間を共有できるの、いいですね。何より笑顔がうれしい。
ご提案を話すと、お任せしますとの一言。信頼していただけたのだなあ。ますます頑張らないと。
さあ、実作業だ!
春ですね。新しいONLY ONLYがはじまります。
今回のヒロインは「さとさま」。さとさまとのお出会いは、ちょうど一年前、京都のラソワさんででした。
ラソワさんでの個展にお越し下さったのですが、その3ヶ月ほど前にラソワさん主宰のオンラインセミナーで私が講師をした時に、受講してくださっていたそうなのです。その時「この人に頼みたい」って思ってくださって、実際に個展に会いに来てくださったとは、とてもうれしく胸が震える思いでした。
その場で、ONLY ONLY のお話しになり、ご希望をお聞きしました。お好きな色やデザインの方向性はしっかり持っていらっしゃるけど、具体的なことは未知数で、一緒に考えていくことなりました。
ラソワの吉澤さんによると、さとさまは、「気骨がある」「迷わない」「ちゃんと歩いている人」とのこと。なるほど。さすが吉澤さん、見えている方です。客観的で冴えたご意見はとても参考になります。
さとさま、その後、お手持ちの着物の端切れを郵送してくださいました。綺麗な手書きのお手紙を添えて。ご自分のこともいろいろ教えてくださったけど、私は、おっしゃっていること以上の可能性を感じました。
50歳の記念の一本にしたいともあり、それならばこそ、今までとは違うものでもいいのかもしれないなどとも思いました。
それから、時は流れ、、、、。昨秋から、試し織を始めました。いくつもいくつも。さとさまとはLINEで繋がって、試作を写真に撮って、どんどんお送りしました。
そうすることによって、私も頭の整理、方向性の整理しつつなのですが、、、実は結構悩んでしまいました。
動画も撮りました。約3分です。よかったらご覧ください。
さて、なずさま物語の最終章です。
上の動画は、完成してすぐの時に撮りました。一仕事終わった安堵感が出てますね。3分です。ぜひご覧ください。
なずさまには、つい先日お会いして、お納めいたしました。
ドキドキのご対面。なずさまのお顔がパッと明るくなって、ホッとしました。よかった。
なずさまの地球がここに完成したと思うと感無量です。
あ、完成はしてないね。これから仕立てたり、取り合わせをして、なずさまが完成されていくんだね。
八掛どうしようかなって話題になりました。楽しい悩みですね。
なずさまとの対話、糸との対話、織や染という具体的な作業との対話、一つ一つ取り組んで、やっと形になりました。
着物を作るのは、やはり長い道のりですので、無事にお渡しして、喜んでいただけ、肩の荷がおりました。心底安堵しています。
これから、このこが、なずさまと共にどんなに成長していくだろうと思うと、ジーン。がんばれよ〜
いい人生(着物生)をな。なずさまと一緒なら大丈夫。太鼓判です。
さてさて、なずさま物語も終盤です。
本日は、織っている時に起こってしまう数々のミスのうちから「目とび」についてお話しします。動画をご覧くださいね。約6分です。
手織り紬の最大の特徴は、風合いと布の表情だと考えます。
その風合いがどこから来るかというと、それは糸なんですね。座繰り糸や真綿紬糸を使い、さらに柔らかさとほっこり感を出すために撚りは甘く、、、、
そういう糸って実は大変、織りにくいんです。
毛羽が立つし、節が多いから。
それを織りやすくするのが糊。今回の糊付けが最適だったかどうかは、毎回データを取って検証します。
それと、織り手の糸に対する世話とたゆまぬ努力です。
ひゅー。今回もいい糸すぎて織りにくいよ。その分、風合いはプリプリ最高です!
なずさま物語第6話、いよいよ織りです。
なずさまの壮大な希望は、苔色をメインにした緑豊かな「地球のような着物」。
さあ、織りますよ。
苔色は、濃淡、鮮やかめ、渋め、など取り混ぜ、5種類。それに、山吹色、赤みの茶色、焦茶色と白の網代などを織り込みます。
糸は、ほっこりした真綿紬糸と座繰りの節糸を混ぜて使います。全部で16種類です。
エネルギーに満ちる、地球のような着物を目指します。
さて、なずさま物語の5話目です。
今回は、緯糸(よこいと)の話。
経糸(たていと)が背骨としたら、緯糸は筋肉(?)。丈夫でしなやかで美しい体のために、どちらもとても大事。バランスよく、しっかり噛み合うように。
上の写真が、今回の使った糸です。ねじってあるのが、ぐんま200(繭の種類)の座繰り節糸。色が白くて艶があって、プリプリです。
その下に広げてあるのが、秘蔵の手びきの真綿紬糸。ふっわふっわで弾力があります。これがシワになりにくい着物の秘密なんだよね。一旦シワになっても戻るのです。こっちは、もうひける人がいませんので、幻です。
私も久しぶりに使いました。糸の感触を味わいながら、ありがたく楽しく、織らせていただいています。
さて、なずさま物語の4話目です。
前回、なずさまが我が家にお越しくださって、デザインと色が決定した話までしましたので、その続きです。
その決まったデザインをどう具体化していくか?それには、まず経糸(たていと)の作り方を決めます。
いろいろやり方はあります。今回はどの方法が最適でしょうか?
私は、40本ずつのパターンを6つ作り、その組み合わせで、整経することにしました。
図面をバチっと作り、本数を割り出し、長さを決め、必要糸量を計算し、確認を繰り返し、自分を納得させながら進めます。丁寧に確実にこなしていくことが大事です。
糸が機に上がると、大きな山を越えた気分がします。
ふー。
なずさまのONLY ONLY 物語の3話目です。
前回は、5月の連休中に、なずさまが我が家にお越しくださって、色を決めたところまででした。
その後、デザインを整理して図面を作り直し、本数を割り出し、メインとなる色をごく一部だけ染めました。全部染めてしまう前の段階で、なずさまにお見せし、お互いに合意の上、次に進みたかったからです。
なずさま、2度目の来訪。満を持してのお出迎え。7月初旬のことでした。
私は、苔のこともにわか勉強。なずさまが求める苔色とは、若草色とどう違うか分かりたくて。多分、湿度や重さが違うのだろうな。
2ヶ月ぶりのなずさま、そよ風のように登場。暑い頃だったけど、その日はそれほどでもなく、お迎えする方としては安堵でした。
世間話もそこそこに、なずさまによって、準備していた糸は、どんどん選別され決定されていきました。
やっぱ、実物を目の前にすると進みますね。概念論や抽象論でなく、これから織られ、着物となる、実物の糸が目の前にあるので進みます。
この時のこと、動画でしゃべってます。4分30秒です。よかったら見てね。
なずさま物語の2回目です。前回からの続きの動画を撮りました。3分58秒、よかったら見てくださいね。(4分以下に編集、がんばりました☆)
なずさまが、5月4日の緑の日に、我が家にお越しくださったこと話しています。
どんな着物が欲しいかって話で、「地球みたいな着物」っていうパワーワードが出ました!いいですね〜、地球みたいな着物。おおらかに大地と一緒に呼吸するみたいな、そんな着物、目指したいですね。
それから、私が作っていたデザイン画を見て、感想やご希望を伺って、その場で修正して、プリントアウトして。色見本からベストな色を見つけて切り取ったり。
新しいデザイン画をボディに着せたり、ご自分の体にあててもらって鏡で見てみたり。
やっぱ、直接お会いすると進みます!ありがたい、なずなの日でした。
さあ、新しいONLY ONLY 物語をはじめましょう。今回のヒロインは「なずさま」です。
今回から、物語をひとり語り形式で、お伝えしていきますね。動画を撮りましたので、ぜひご覧ください。3分45秒です。
動画で話している「清正公の陣羽織」展のについての過去ログです。なずさまも写ってます!
今回の製作は、6年越しのご注文です。長いようですが、ONLY ONLYでは、よくあります。お互いにとって、機が熟するのをのんびりと待つみたいな。
物語の続きをどうか楽しみになさってください。
うれしいうれしいメールが届きました。もゆさまが帯を結んでくださったのです。
いやはや、ぽぅーっと見惚れてしまいます。帯も出番だぞとよろこんで、はりきってますね。
帯がもゆさまにぴたりと寄り添い、凛としたお人柄を際立たせているようです。よかった。これぞ本望です。
おタイコには瑠璃色だけでなく、色めを変えたブルーを重ねたのもよかったように思います。
織ったものが持ち主の方に愛され、活躍の場を与えられる。作り手として、こんなにうれしいことはありません。
もゆさま、この度は本当にどうもありがとうございました。末長く、この子をどうかよろしくお願いします。
もゆさまのONLY ONLY、さあ、織り上がりました。
仕上げの蒸し、水元、湯のしは外注に出します。
蒸すと発色がよくなって、渾身の瑠璃色が冴えます。湯のしをすると絹がもっとツヤツヤになります。戻りましたら、最終の検反。
緯糸にこっそり入れた銀糸もチラリ。よしよし。いい感じ。
それからお仕立てへ。
仕立て上がりを届けてくれた仕立て師さんに「いい帯ですね」って褒められました。普段、余計なこと言わない業者さんに褒められると、心の中で「やった!」と思います。
さてさて、箱に収めてもゆさまの元へ。
「瑠璃のギザギザ」と命名しよう。パキッとした瑠璃色に想いを寄せて。
行ってらっしゃい。可愛がってもらうんだよ。
まもなく、もゆさまからメールが届きました。うれしい、うれしいメールでした。ひと仕事が無事に終わった、喜んでいただけたという満足感。ふぅ。
もゆさま、本当にどうもありがとうございました。おかげでいい仕事ができました。下に、もゆさまからのメール、感謝をこめてご紹介させていただきます。
帯が手元に届きました。
送っていただいた写真以上に素敵で、爽やかな瑠璃色は思い描いていた色の通りでした。
銀糸が上品に輝きを添えていて、これから初夏に向かう陽光にきらめくさまが頭に浮かびました。
この帯を締めて出かけるのが楽しみです。素敵な帯をありがとうございました!
さて、もゆさまの帯、ブラッシングカラーズが終わりました。
そういたしましたら、仮織をほどいて、経糸を緒巻きに巻き直します。緯糸を染めて、小管に巻いて、、、
ひたすら織ります。
もゆさまにメールいたしましたら、以下のようなお返事が!疲れが吹っ飛びます。
今回、緯糸は3種類を持ち替えながら織り込みます。艶のある絹糸とハリのある壁糸、キラリと光る銀糸。
織り方は「しずはた織」です。今のところ、八寸帯に最適と思っています。
もゆさま、もうすぐです。
さてさて、もゆさまとデザインの合意が取れましたので、いよいよ本番です。
上の写真は、染料の一色目を染めているところです。
この前に、経糸を準備して、機にかけて、仮織して、伸ばして、地入れして、染料を最終的に調整して、デザインを青花で写してっていう工程があります。
さあ、染めが進んできました。
上の写真は、白場に地染めをしたところです。柔らかくきれいな軽めのグレーです。
ここにも、もゆさまのお望みの「透明感、澄んだ色、春から初夏の陽の光」のイメージを込めました。
動画、インスタライブした時ので、タテ位置ですが、よかったらご覧ください。(1分45秒)
もゆさまからのご希望メールを受け、瑠璃色にさらにフォーカスすることにしました。エメラルドやターコイズはやめといて、ラピスラズリ一択です。
透明感、澄んだ色、春から初夏の陽の光。うん、あまりごちゃごちゃしない方がいいな。
さらにメールのやりとりは続きます。
「黄味がかった、緑のように見える青が、自分では選ばない色で、このままで良いような、何か他の色の方がいいようなと少し悩んでいるところです。でも自分では選ばない色だからこそ面白いということもあり。なんとも決められなくてすみません。」
いえいえ、了解です。なんでもおっしゃっていただくと、私としても緒(いとぐち)が見つけやすいです。
それで私が考えた案は、お太鼓の柄には、一部に緑の青も渋めに入れて、前帯には、瑠璃色の濃淡でスッキリとさせること。
そうすれば、お太鼓の方は、色の幅がでて面白みがあり、前帯側は、お好きな色だけでお顔写りいいように、かつ、帯締め、帯揚げ、などで遊べるように。
私の提案は、すんなり取り入れられ、GOサイン。
さてさて、手を動かす段階です。
試し染めを、織って、蒸して、仕上げて、着物の上に乗せてみます。緯糸は、途中で使い方を少々、変えてます。銀糸も織り込んだりして。何が最適かを探るのです。
ふむ。瑠璃色が効いている。ターコイズもきれい。
もゆさま、宝石のような帯、似合いそう。エメラルドもいいな。妄想が広がります。
図面にも落とし込み、もゆさまにメールでお見せします。
しばらくして、もゆさまからのお返事。
よっしゃ!その方向で参りましょう!矛盾とか考えなくていいですよ。「瑠璃色の透明感や澄んだ感じ」「春から初夏の陽の光」、両方、感じる帯にしましょう。
もゆさまストーリーのつづきです。
もゆさまとお会いできた興奮も冷めやらないうちに展示会も無事終わり、少し落ち着いたころから、私はじょじょに制作へシフトし始めました。
もゆさま、華やかなイメージですので、絹らしい艶めきが欲しいね。すごいいい糸、買っちゃおう。
あと、デザインは前回のをだいたい踏襲するけど、色はいろいろ試したいね。試しに染料を作って、試し織りをしよう。
もゆさまにご提案するにも、その材料がいるのです。雲をつかむような話でなく、目の前に実物をお見せして、もゆさまと私、二人で旅し、好きな世界を模索する感じ。ナビゲーターを務めます。
まずは、柔軟に。なんでもやってみよう。前回のコピーにならないように。新しく切り拓くために。もゆさまに一番似合う一本を作るために。
昨年の10月31日から11月3日、私は、神楽坂で「あわせ」という二人展をやりました。今思えば、感染症がちょっと収まってて、外出もそんなに臆することもなくという、ありがたい時期でした。
3日目の昼過ぎ、 会場に、急にきらきらした光の粒がふってきて、ふわっと心地よい風が吹いたような気がしたら、、、、小柄でおしゃれな方が、現れました。
それが、初めて会う、もゆさまでした。
まあ、なんと。はじめまして。もゆさま、東京でのお仕事の合間にお越しくださったのでした。
ゆっくり会場で作品を見ていただいて、、、、
もゆさま、この展示会のメイン作品「バンブーフェンス」を気に入ってくださったのですが、そこに使われていた一色に、とても惹かれると。これがメインならもっとよかったと。
まあそれでしたら、この「瑠璃色」をメインにONLY ONLYでお作りしますよ、と相成りました。
新しいONLYONLYのストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは「もゆさま」です。
お出会いのきっかけは、昨年2020年の2月に、私のサイトのお問い合わせからいただいたメッセージでした。
メッセージの内容は、オリジナルで、着物や帯を作りたいとのこと。華やかなパーティーやお集まりでお着物をお召しになることが多いとのことで、そこで、ご自分の個性を生かしてくれる着物や帯をまといたいと。
なるほど、それ、ぜひ作らせていただきたいです。詳しくお話を伺いましょう。できれば会いたい。無理ならメールで詳しく。
もゆさまのお住まいは、関東からは遠く離れていますが、出張が多いそうで、東京にもしょっちゅうお越しとのこと。お会いするのはそう難しくないように思われたのですが、、、、、、
みなさまご存知の通り、この後、世界中が大騒ぎになって、お会いする計画は一時頓挫しました。
しかし、もゆさま、この間に、お着物をお召しの写真をたくさん送ってくださって、イメージを膨らますのにたいへん役に立ちました。いただいたメールに「今までの好みや古典的な合わせに引きずられ、、、」と書かれてましたが、なるほど、このままですごくきれいだけど、それを越えて新しいご自分を発見したいのかなと思いました。
*上の画像は、その後、私はもゆさまのイメージを膨らますのに使った画像検索のスクショ。
みりさまから、メールをいただきました。
仕立て上がった半襦袢をお召しでお出かけしたと。写真も添えてくださいました。
いいですねえ、春ですねえ。みりさまらしいあわせで、軽やかで素敵です。見ていると、私も幸せな気持ちになります。
振りからちらり。これぞ、着物の醍醐味ですね。そそられます。みりさま、「ふたたび沼にはまっています」だそうです。わかるー。
ネットへの掲載をお願いすると、「美保子さんの活動の役に立つなら」とおっしゃっていただきました。どうもありがとうございます。皆様にご紹介させていただきます。
仕立て上がりを置きでも撮ってくださいました。
お袖、ふた組、あわせをいろいろ楽しめます。もっともっと沼にはまりそうですね。あぶないです。笑
みりさまのお襦袢地、京都の蒸し屋さんから、べっぴんさんになって戻ってきました。大人の可愛らしさ満載って感じです。みりさまを彷彿とさせます。
プリプリツヤツヤ、ふっくらぷくぷくです。さすが、特厚地、しっかりしています。
柔らかく、ドレープが効いて、硬いとか重いとかいう感じはしません。
このくらい地厚さ、お襦袢地としていいかもしれません。私自身もとても勉強になりました。
さてさて、最終の検反をして、撮影をして、さあ、みりさまの元へ旅立ちます。
今回、お仕立ては、みりさまがご自分で頼んでいるところがあるそうで、こちらでお世話はせず、反物のままでのお納めとなりました。
受け取ったみりさまから、「パワーアップしそう!早く仕立てたいですねー。」とメールいただきました。
うふふ、よかった。仕立てあがりが楽しみです。
みりさまのお襦袢、色が決定しましたら、白生地を張って、地入れをして、さあ、いよいよ本番!
上の動画で、一部を早送りでご覧ください(44秒です)。
息を止めて、同じ調子で、たんたんと。たんたんと。ただただ染めます。
染め上げました。
地紋がきれいですね。
下から見るとこんな風です。
乾いたら、染料の定着のため蒸します。その後の、水元、湯のしも合わせ、専門業者さんに頼んでいます。
丹後よりみりさまの白生地が届きました。特注中の特注、特厚地の白生地です。絹ならではの持ち重りがします。
さあ、目指す色に向け、染料を調合しましょう。染料は、狙いを定めて調合し、小さな布にちょっと付けてみて、大体よしと思うレベルに持っていきます。
自分なりに納得したら、大きめの面積に試し染めをやってみます。
染めた布は、実際の仕上げと同じように、蒸して、水元して、伸子(しんし)で張って乾かし、アイロン仕上げ。
写真を撮ってみりさまに送ります。
「赤がもっと鮮やかでもいいかも?」というお返事。
了解。ご希望を踏まえ、染料の調整をします。そして二度目のトライ。
またまた写真に撮って、みりさまに送付。
「いい感じです!けど、もう少し、可能?」「美保子さんの感覚で、楽しく、テンションを上げてください^ ^」
こういう言葉のキャチボールを重ねながら、目指すお襦袢に近づいていきます。
さて、みりさまのお襦袢、生地の厚さと色が決まりました。次は、必要な布の量を出して、発注です。丹後の機屋さん、短尺にも対応してくださるというすばらしさなんです。
みりさま、着物の袖丈は普通だそうですので、お袖の計算は簡単です。1尺3寸の5分ひかえで、折り込むのが1寸5分とすると必要布量は1尺4寸。今回はお単衣仕立てですので、片袖は単純にその倍で2尺8寸。ペアにして5尺6寸。これ、2メートルくらいです。袖をひと組作るのに、布、2メートル。案外長いでしょ。もし無双袖というダブル仕様だったらその倍で、4メートル強。長いわ〜
それで、裾よけの方はと、、、
ここで私は自分が持っている裾よけの大きさを測りました。広幅の生地で作った簡易的なものです。新モスの下の部分、タテは2尺(75cm)、ヨコは3尺4寸(1m38cm)。襦袢地の布の幅は1尺ですから、3.4÷1=3.4 尺。縫い代こみでも4枚はぎで十分足りるわ♪と見積もったのですが、、、、
うーん、なんだか気になる。数字では足りてるけど、、、いいのかな???
それで、おそるおそる仕立て師さんにお聞きすると、、、、
「立て衿は?」
「立て衿!」
初めて聞く単語!裾よけは、普通の襦袢のように身頃が4枚、それに「立て衿」がつくと。
それで自分の襦袢を見てみると、確かに、長着の衽(おくみ)と衿がドッキングしたような部分があります。なるほど、ここが立て衿か。そして、この襦袢の立て衿部分を、裾よけでもわざわざ作るんだ。
へー。
お袖と裾よけの仕立て代をお聞きしたとき、案外お高いなあと思ったのだけど、ここで急に納得しました。下着にまでたっぷりと手間と布がかかっているのだなあ。
着物は贅沢品と言われるけど、私は今までそんなことないよ、単なるよそ行きのおしゃれ着の一種だよって思ってましたが、この見えないところの布の量。それを作る手間、仕立てる手間。
着物は、本当に贅沢品であるかもしれません。それは同時に、文化の結晶であり、継承であり、心の栄養であり、それぞれの美意識、おしゃれ感覚、考え方や生き方、アイデンティティ、心意気。なるほどなあとジーンとしました。簡略の傾向もあると思うけど、それはそれでよし。これはこれでよし。
みりさまのお襦袢、必要布量は、お袖二組と、裾よけで、少々の余分を込みで、2丈3尺。では、余った分は、吉田の研鑽用として使うことにして、丹後には普通に一反、発注しました。
特厚お襦袢地のサンプルが送られてきてから程なく、みりさまが我が家にお越しくださいました。(これ、緊急事態宣言の前の話です。)
あいかわらず、ニコニコ笑顔で、こっちまでニコニコしてしまいます。
三種類の厚さ違いのサンプル地をお見せすると、特厚を即決のみりさま。
そしてお話を詰めていくと、今回のお襦袢のONLY ONLY、普通の襦袢を作るのではなく、替え袖と裾よけを作りたいと。それに、お袖は単衣仕立てで色を変えて二組と。
ほお〜。なるほど。さすが、着物つうのみりさま。襦袢を着ないで、肌襦袢に袖と衿をつけ、下は裾よけという、いわゆるウソツキスタイルですね。お袖は、チラッと必ず見えるので二組作って、着物によって使い分ける。裾よけはめったに見えないので、一つでオッケー。
なるほど、なるほど。
では色を決めましょう。
裾よけと一組のお袖は、山吹、空色、橙色とすんなり決まりました。
そして、お袖のもう一組は、赤を入れたいと。みりさま、お着物や帯は、アースカラーなど、地味目が多いそう。そこにチラッと赤。うーん、ニクいわ。悩んだ末に、赤、山吹、灰と決まりました。山吹色は、裾よけとの共通の色ですので、一体感がでます。
みりさま、こっくりした赤がお似合いになるのですが、赤の染料は濃すぎると染料が不安定になるので、できる限りこっくりさせるということで、合意しました。
みりさまからお預かりしたお襦袢を、早速丹後の機屋さんに送ってみていただいて、電話で詳しくお話を聞きます。
それによると、、、
みりさまのお気に入りの古い襦袢は、パレスという八掛などによく使われる生地であり、今回の生地の綸子(りんず)とは違うから、単純比較はできない。
送ってこられた襦袢の重さを測ると490gであったから、反物の時は500gくらいであったのではないか。しっかりした生地をお望みでしたら、反物で530~550g 程度に仕上げるのがいいと思われる。染織吉田用の襦袢地は、すでにほぼほぼそのくらいの重さで上がっている。
しかし、すでにあるのは薄いと感じられたようだから、比較のために、もう一段地厚にしたものをサンプルとして織るので、触ってみてください。
というわけで、みりさま用に特厚地のサンプルを織ってくださることになりました。これには私もびっくり!
すごいなあ。一反の襦袢地のために、機屋さん、ここまでしてくださるんだ。じーん。私もみりさまのONLY ONLYを叶えるためにもっとがんばろう。
さてさて。しばらくしてサンプルとして送られてきたのが、上の写真の反物にちょこんと乗ってる可愛いのです。
*ヨシダが理解している範囲での今回の襦袢地の説明(機屋さんに教えてもらいました)。
綸子(りんず)というのは生地の名前で、繻子織(しゅすおり)で織ってます。地紋があります。表と裏で光沢が違います。襦袢地の場合、光沢がない方を着た時の外側にするのが通例ですが、好みで逆にしても支障ないです。作り方は、撚りが強い生糸で織って、布になってからセリシンを落とします。その工程で、布が縮み、独特の表情になります。(この精練の仕方が、門外不出のマル秘なんですよ〜〜。)
「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」のサンプル展示をご覧になってるみりさまに、
あら、ご興味ありますか?
と話しかけると、、、うなずかれて、、、、
私、お襦袢何枚も作ってるのだけど、20代の時、一番初めに作ったのが一番よくて、いまだにそればかり着ているの。さすがにもうボロボロだし、色もピンクで今の気分じゃないのだけど、他のはどうしても落ち着かなくて。。。違いは多分、厚さだと思う。このサンプルより、もうちょっと厚いのはできないのかしら?
なんともっと厚くとは!
私はびっくりしました。目から鱗がポロリンコロコロです。着物や帯を作っていると、「もっと薄く、もっと軽く」とは言われること結構あります。時代的にも、薄くて軽いは必須のように思ってました。
それで襦袢に関しても、実はもう一段薄い物はご提案用にすでに作っていたのです。が、もっと厚くとは。。。
生地に関しては、私はどうにもできません。それで、会場からお世話になっている丹後ちりめんの機屋さんに電話をして相談しました。
そうしましたら、機屋さん、
布の厚さというのは織り方も関係してるし、実物を見てみないときちんとしたことは言えないので、送ってくれたら、アドバイスしますよ
と、頼もしいことおっしゃっていただきました!
それで、みりさまから、その理想的な厚さのお襦袢をお借りし、丹後へ送って見てもらうことになりました。
さあ、新しいONLY ONLYストーリー をスタートいたしましょう。
今回のヒロインは「みりさま」。みりさまと私の出会いは、2015年の夏です。みりさま、編集のお仕事をされていて、この年、出版された本に、ONLY ONLYを「世界に一本、私だけの帯を作ってみたら、、、」と題してご紹介くださったのです。とても好評で、重版もされたんですよ。
ちなみにブログではここに載せてます。→☆
着物好きなみりさま、その後も私の展示会を、たびたび覗いてくださいました。お着物の時もあり、お洋服の時もあり、どちらでも自分らしいファッションで、いい雰囲気で、とても素敵な方なんです。ふんわり、カジュアル、ナチュラルな感じ。個性的だけど、行き過ぎない感じ。ご自分に似合うものをよくご存じで、みりワールドを確立されている。いいな〜。
それで、昨年秋の「あわせ」展にも、お越しいただき、再会を喜んでおりましたら、みりさま、どうも「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」に興味があるご様子です。
まるさまのお襦袢、蒸しと水元、湯のしをしてもらって、すっかりべっぴんさんになって戻ってきました。
発色がよくなり、ツヤも出て、触った感触もしっとり柔らかです。
しましまのお袖部分と、レモン色の身頃部分、相性もよさそう。よかった。
さて、最終の検反で、しっかりチェック。
丹後ちりめんのネームのところ。
検反終わったら、お納めのためにきっちり巻きます。今回のお仕立ては、まるさまの方でなさるので、反物のままお納めです。
さあ、行っておいで。まるさまを優しく守る、襦袢になるのだよ。
お受け取りになったまるさま、さっそくメールくださいました。お喜びのようでほっとしました。仕立て上がって、お召しになったら、またメールくださるとのこと。それをとっても楽しみにしています。
地入れも乾いて、色も納得いったら、さあいよいよ、染めの本番です。仕事場をいっぱいいっぱい使って、のびのび染めます。
下の動画は、はじめにお袖を染めてます。キャンディ・キャンディの様子をタイムラプスで。あっという間ですが、実際は、じっくりゆっくり全集中の呼吸で染めてます。
その後、無地場をリアルタイムで。そっちには音も入ってます。
袖の出来上がりはこんな感じ。(下の画像)
これらが乾いたら、蒸しと水元と湯のしは、専門業者さんに頼んでますので、発送です。ふぅ。
アートなお襦袢キャンディ・キャンディ、まるさまのONLY ONLY、お話しの続きです。
白生地を発注している間に、まるさまとメールでやりとりを何回か。
そこで、まるさまより、びっくりのご提案が!
なんと、今回のお襦袢、お袖はキャンディ・キャンディの縞模様だけど、身頃は無地ではどうだろうと。身頃の部分は見えないのにすべてを縞にするの手間だろうと私をおもんぱかってくださってのご提案。
なるほど。それもそうですし、加えて、身頃の部分の色を淡い単色にしておけば、胴抜きのお着物の時などでも襦袢の映りを気にすることもありません。お袖は印象的な濃いめのしましまで、身頃は淡色一色というのはとても理にかなってます。
それで、お袖に使う三色から一色を選んで、さらにそれを薄めにしたお色で身頃を染めることになり、、、、
さらに、せっかくだから、お手持ちのお襦袢の色にない色にしようということになり、、、、
まるさま、お袖の色の中から、イエローをチョイス。山吹色やカラシ色のお襦袢はお持ちだそうですので、さわやかなレモンイエローを希望とのことになりました。
下の動画は、染料を調合しているところです。この中でも言ってますが、この段階が何より大事。本当に納得できるのか、自分に問いながら、「OK」と言い切れるまで、やります。
自分なりにやり切ったら、まるさまに画像を送ってご確認いただきます。今回、一発OKいただきましたよ。
トップの写真は、染料の調合をして色出しをした布。下部に写っているのはもともとあった色見本。上部に写っているのが今回のために調合した染料の色。右の薄いレモンイエローが身頃用。黄、橙、空がお袖のしましま。
染織吉田の「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」の白生地は、丹後の機屋さんで特別に織っていただいている襦袢地として最適な綸子(りんず)です。
キャンディ・キャンディをやりたくて、このために作っていただきました。私のような小さい規模の作り手に、特別に織っていただけるとは思ってもみませんでした。つないでくれた丹後の師匠と、受けてくださり希望をかなえてくださった機屋さんに大感謝です。
この生地、機屋さんと何回もやりとりをして、地紋のななめ線の角度や幅を話し合い、型を起こしていただいて作ったんです。
布の厚みも選べるようにしてまして、今回まるさまのご希望は、「厚」です。絹特有の持ち重りがして、ぴたりと決まります。無双袖のお襦袢にバッチリです。
上の写真の、右側のちょっと大きめの反物が「厚」ですよ。きれいな、しっとりとしたいい反物です。
さあ、新たなONLY ONLY のストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは「まるさま」。かがやく笑顔が、まわりも明るくするキラキラの美しい方です。
このかたのためにお作りするのは、初の「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」。新しい試みが受け入れられて、とってもうれしいのです。
まるさまには、「八寸帯 イエローフラワー」を、まるさま仕様にしてお作りしまして、この秋の「あわせ」展に締めてお越しいただきました→☆。
あ、アルバム見てたら帯の制作中の写真出てきました。こういう風に、お着物のお写真をプリントアウトして、それにあわせて作って行ったんですよ。
初めてゆっくりお会いしたまるさまに、あわせの会場で、「キャンディ・キャンディ」のお襦袢のお話をいただいたのです。
14種類の襦袢の色サンプルを持って行ってました。
その中からまるさまがお選びになったのは。。。。
なんと、上の写真の右。パッキリ、ハッキリ。黄、橙、空。インパクトある〜〜
こんなお襦袢、特注じゃないとぜったいないと思います。やりがいまんまんです。
ONLY ONLY で作らせていただいたももさまの帯あげ「エヴァ」。デビューさせていただきました。
うふふ。こちらの取あわせで先日の「あわせ」展にお越しくださったのです。感激でした!
ほらっ!右と左の出方がちがう!ハーフハーフでこれがしたかったわけですが、さすがバッチリです。
その秘密はこちら。ほぅ〜技だわ〜。
こちらはももさまの別の日の装いで、帯あげは「大人ピンク」のみを出してくださってます。
「はんなり小紋にもなじんでました。これ万能ですね~♪ 作っていただいてよかったです。」とメッセージいただいて、ふぅーっと心から安堵。私も作らせていただいて本当によかったです。
あわせ展の会場でパチリ。中央は着物ブロガーの神奈川絵美さんです。3人とも帯あげは「キャンディ・キャンディ」。うれし♪
神奈川さんもこの日のことを書いてくださってます。ラストの写真はこちらからお借りしてます。
染織吉田の「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」は、キャンディの包み紙のような、かわいくて、ワクワクするおいしそうなお襦袢です。
きものをお召しになるときのテンションが、爆あがりします。袖口から、チラッと夢がのぞきます。
制作はすべて、お誂え(ONLY ONLY)で相談しながら進めます。あなただけのとびっきりのお襦袢を、私と一緒に作りましょう。
以下に詳しくご紹介しますので、ぜひご検討ください。
二人展「あわせ」でサンプルを展示します。実物を鏡であわせてみてくださいね。
会場ではヨシダ、これを着ております。袖口のみならず、裾もチラッとお見せしますよ、笑!とても着心地いいお襦袢です。これは本当に白生地と仕立てのおかげです。
白生地は、私が丹後の機屋さんに相談に乗ってもらいながら作った、とても上質な丹後ちりめんです。ななめ縞の地紋を織り込んだ、絹の襦袢地として最適な生地です。厚さが微妙に違う2種類をご用意できますので、選んでください。(上の写真は薄地。下の写真は厚地です。)
色は、14種類のサンプルから選んでいただけます。または、あなただけの色の組み合わせを、ヨシダと相談しながら考えるのもいいですね。
実際の染しごとは、ヨシダの仕事場では、一反を三分割して張って染めます。そのため大まかな寸法を前もって教えてください。(袖を長くする場合などは特に)
染め上がったお襦袢は、反物のままお納めしてもいいですし、お仕立てをうけたまわることもできます。お仕立ての寸法は、決まっている方はご提示ください。または、合わせるお着物をお預かりさせていただき、寸法を割り出すこともできます。その際は、ご身長をうかがいます。
(上と下の写真は、サンプルを襦袢風に着せたもの。実際はこんなに色々ではなく、例えば、上前の下半身のブルーとグレーがお好きでしたら、全部その配色になります。)
お襦袢の反物のお値段は、12万円です(税込132,000円)。
お仕立て代は、無双袖で、26,000円です(税込28,600円)。
お仕立て込みですと、146,000円となります(税込160,600円)。
色を決め、白生地を発注する段階で、半金を申し受けます。その後のキャンセルはできません。
お問い合わせはお気軽に→☆
ONLY ONLYでお作りしているももさまの帯あげ、染め上げて、蒸し、水元、柔軟、湯のしを外注に出してましたが、無事、美人さんにしてもらって帰ってきました。
それで、さっそく最終の検品をして、写真を撮って、お納めしました。
お納めはレターパックプラスでしたが、到着予定の本日、在宅時間に着きそうも無いということで、ももさま自ら局留めの手続きをして、郵便局に取りに行ってくださいました。
なんか、うれしいな〜。特に近々の着用予定など無いそうなのだけど、それでも、今日中に受け取りたいって思ってくださったんだなあ〜、じーん。
で、さっそくメールくださった。曰く
「思った通りの色味で大満足です。 初号機のネオンカラーっぽさもちゃんと感じられて。 大人のピンクもすごい大人のピンクで、また初号機と色の強さの感じもそろっててー。 さすがプロだわと。」
やったー!ああよかった。がんばったかいあった。こういうのは、お好みをピンポイントでしっかりねらって、ど真ん中に当てるが大事で、ドキドキ緊張しながらも、ねらってました。本当、よかった。安心しました。
ももさまのブログにも早速書いてくださってます。エヴァ帯あげと命名されたよし。うふっ。
この帯あげで「あわせ展」お越しくださるそうです。わー、楽しみだ〜♪
さあ、ももさまのONLY ONLY、染めの本番です。準備万端ととのってますので、あとはやるだけ。GO!
下に、タイムラプスを貼り付けます。はやっ!
あっという間!
なんだけど、実際は、ゆっくりじっくり、やってます。実際の速さはこのくらいです。
息を止めて引いてますね。
直描きです。染料がじわっとにじんでいくのが面白い。
ほぼ全容があらわれたかな?
ももさまの着物姿をこの一枚の帯あげで完成させる、とっておきの一枚になりますように。
はい、染まりました!
このあと、蒸し、水元、柔軟、湯のしをへて、完成です。
ももさまの帯あげ、色は決まりました。では、本番に使う染料を作って行きます。
調合した染料は、こうやってコンテナに入れてます。
そこから、さらに微妙に調整して、調整して、、、
(余談ですが、上の写真、左に写っている刷毛を実際に使うのですが、、、、これ、馬と鹿と毛でできているんですよ。馬と鹿、、、、私のこと?)
今回は、「大人のピンク」の色味を作るのに、難儀しました。上の写真、私が指さしているピンク、納得いくまで何度も調整を重ねているの、おわかりいただけると思います。
これが帯あげの生地。とても上質の丹後ちりめんです。あえて、地紋はなし。地入れをしたあとに、青花ペンで、あたりをつけます。青花ペンの線は、水分で消えます。
そして、張ります。
さあ、これで準備完了!
第一回の打ち合わせからひと月と少々。私は、ももさまの帯あげのことを思いながら、秋の二人展「あわせ」の準備にいそしんでました。
よし、このタイミングで作っちゃおう。帯あげは、10枚をひと単位で染めることにしています。ももさまのご希望の「半分で色が変わるハーフ・ハーフのキャンディ・キャンディ」もまずは試しに作ってみよう。
途中で色が変わるのが、いい感じでできるのか、やってみるしかない。
で、さっそく他の色合わせでやってみる。お!ハーフ・ハーフ、いい感じだ。では、ももさまのお望みの「エヴェンゲリオン初号機と大人のピンク」の取り合わせも試しでちょっぴり色をつけてみよう。
んー。グリーンパープルの方はいいけど、このピンク、ちょっと物足りない。ももさまのイメージじゃないな。ハーフ・ハーフは両方の色が大事。うーん。
一人で悩んでいても仕方ない。ここはONLY ONLY、ももさまと私が一緒に作り上げるのがミソ。それで、第二回のオンライン打ち合わせをお願いしました。
数日後、私たちは、オンライン越しに再会しました。神奈川絵美さんもご一緒です。
(こちらの写真は、ももさまのブログから拝借)
それで、いろいろお話しし、「大人のピンク」は私が新しく作った「アートなお襦袢キャンディ・キャンディ」に使った色を採用することにしました。
その大写しがこんな感じ。
うん、このくらいぱっきりしている色がももさまらしい。きっとハーフ・ハーフの両方、ヘビーユーズしていただける。
ももさまのこの日のブログ
神奈川絵美さんのこの日のブログ
ももさまとは、5月に「コロナが落ち着いたら、お会いして打ち合わせ」と話していたのですが、時はすでに7月。感染症は止まるところ知らず、、、これはまだまだだなあと思っていたところ、ツイッターからメッセージが来ました。
7月の連休中にスケジュールを合わせ、オンラインで打ち合わせしませんか?と。ももさまとも、私とも仲よくしてくれている着物ブロガーの神奈川絵美さんがご提案くださったとのこと。
まあ、なんと!これはありがたい。それで早速、段取りしていただいて、決行と相成りました。
それに先立ち、私は、ももさまに、「こういう風なのがいいな」というのがあれば教えて欲しいとメッセージしましたら、配色のセットは決めていると。some ori マーケットにあるキャンディ・キャンディの「グリーンパープル」と「大人のピンク」ですとのこと。
よし。では、この2パターンで、上下で分かれる図面を作っておこう。
それで当日。
オンラインって本当に繋がるまではドキドキしますね。繋がったとたん、画面に向かって手を振ってしまいます。
ももさま、浴衣をお召しでした。これ、ありがたい。やっぱ、着物の雰囲気伝わりますものね。
着物ブロガーの神奈川絵美さん、お手製のケーキを焼かれてて「リモートティータイム兼打ち合わせ」と相成りました。すごくおいしそうで、私は指を加えておりましたが、、、、
図面をお見せしたら、なんと、ももさまも似たような図面を作ってくださっていて、以心伝心。よかった。
で、すごーくびっくりしたのは、ご希望の色の一方のグリーンとパープル、これ、「エヴァンゲリオン初号機」の配色なんですって!へー、へー、へーー!って、私。エヴァンゲリオンが何かもよく知らないのですけど。我々世代のガンダムみたいなもんでしょうか?その色を、帯あげに。心底、へーーーーー。
こういうの大事です。何か心に大切に思っているものを反芻するようにして楽しむ。繰りかえし。思い出し。いいな〜。好きだな〜。
あと、私としてはお聞きしたいのは、白地をどのくらい残すか?ぼかしがいいのか?パッキリがいいのか?などなど。お顔を見て話せるので伝わりますね。
あと、納期。着物は季節のものなので、せっかくのお召しの機会には間に合わせたい。しかし、秋口には間に合わないかも。
急ぎますかとの問いに、「 着物はあと4、50年着られることを考えたら、何か月かくらい全然問題ないですよ 。全く急ぎません。」ありがたい。
それで、もう少し先が見えて、色を合わせる段階になったら、また連絡させてくださいとお願いしてお開きになりました。
新しいONLY ONLY のストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは「ももさま」。
今回は、初めての帯あげのONLY ONLY、そして初のオンラインでの打ち合わせのONLY ONLYです(コラボ鞄では以前に経験ありますが)。さあ、それでは、ももさまストーリーのはじまり、はじまり〜。
ももさまは、着物も生き方も、ご自分のスタイルがある素敵な方です。もう10年も前の私の個展にお越しくださっていたり、ツイッターをお互いにフォローしているのでなんとなく動向を知っている間柄。方向性がはっきりしたかっこいい方だなあと思っていました。
あ、いま、思い出しましたが、着物好きさんたちのお集まりに一度ご一緒しました。私、ももさまに電車の中で声をかけられたのです。この時のことよく覚えてます。検索したら、あった!
そして、この3月の「白からはじめる染しごと」展にもお越しくださっていて、、、私の「アートな帯あげ、キャンディ・キャンディ」をお気に召していただいたのですが、お買い上げには至らず、、、、
その後、この5月のこと、ツイッターからメッセージをくださいました。「ダメ元で質問させてください」と。
あの時の帯あげが激カワで忘れられないと。ただ、性格上、ものを増やしたくないので、帯あげは2色使いのぼかしのものを厳選しまくって愛用していると。もしも可能だったら、「キャンディ・キャンディ」を上下色ちがいで作ってもらえないかと。
「貧乏くさいこと言って本当にすみません」とお書きでしたが、これは「貧乏くさい」と言うより、生き方の問題だと思うのです。ものを厳選して持ちたい。むやみに増やしたくない。
大変よくわかります。
それで、それはやったことないけど、チャレンジしてみたいです、とお返事しました。私自身は、帯あげを結ぶのちょー下手なので、半分にして上だけ見せるとかできないので尊敬の念もあり。
それで、感染症が落ち着いたら、一度うちにお越しいただいて打ち合わせをしようと言うことになりました。
お互いにその日を楽しみにしていたのですが、、、、、
というわけで、肩をゴリゴリ言わせながら、わださまのフンゾウエ、どうにか形にしました。
上の写真は、ひっくり返したところ。こっちの方がスッキリしてよいかもなあ。裏ってエゴが出ないからいいのです。
さっそく、宅配便でお納めすると、次の次の日には、お代の現金書留がつきました。ありがたや。
丁寧なお手紙も添えてくださいました。気に入っていただいた様子で、まずは安堵。そこに書いてくださった文章。ちょっとだけ引用します。最後の一文、しびれました。
—私が望んでいた感じの敷き布に出来上がっていて、とても良いです。袈裟とか袱紗とか書いてしまったので、ヨシダさんが必要以上に律儀に作られたらと不安に想っていたのですが、フンゾウエ寄りに作ってあったので、安心しました。言端でなくても意が通じている、わかってもらえると云うのはまことにありがたいことです。—
—それにしても、フンゾウエのこの抽象的な表現の仕立て具合い、良いと思いませんか!面白いでしょう。ヨシダさんに勝手気儘に作ってもらえればと単純に考えていたのですが結構調べられた様子が伺え、唯々お気遣いに感謝いたします。出来具合が私の思い通りでしたので、満足致しております。—
—この数日梅雨のはしりのような天気にコロナ籠りの気持ちが寄りいっそう滅入ってしまいます。それでも何となく明日が見えてきたような具合なので、もう少しだと信じて耐えましょう。何といっても、「明るい楕円の中に」私たちは生きているのですからね。では又。—
(先日のつづきの投稿です)
それで、ためこんでいる山盛りの端裂をああでもない、こうでもないと組み合わせていく。
「とらわれずに、好き勝手にヨシダさんのセンスにまかせ作ってください」とのご希望だけど、やはり、方向性というものはいる。それも、確固たるものとして。それさえあればという感じで。特にそのことに触れられてはいないので、わださまのことを想って、考えをめぐらす。
で、今回の方向性は。。。。
このご依頼は、供物敷。仏さまにおそなえする、お花やお菓子などを受けとめるもの。きよらかで、柔らかい光に包まれているようなそんな感じでいきたいな。
仏さまには性別はないのかもしれないけど、私はちょっと女性的なものにしたかった。わださま、ずーっと前にお会いしたとき、大往生されたお母さまの話をされてたから。
そんなことを思いながら、布を決めていく。やっぱ、白ベースよね。あとピンク。その補色で緑系。
ミシンもあるけど、ここは手縫いで。糸もカタン糸とかではなく、織りに使う絹糸の残りでチクチク行こう。糞掃衣だもんね。残糸でなきゃ。(当工房、残糸もたっくさんあります、上の写真の何百倍あります)
使う布を吟味、配置を吟味。大きさのご指定は、35cm×15cm 。これがけっこうクセもの。案外小さいのです。せっかくだから好みの布をあれもこれもとたくさん使いたいと思うと、すぐはみ出す。大きい方がつくりやすいなあ。ここはぐっとがまん。小さく、小さく。
暴露)私は縫い物は大の苦手。織るのと縫うのは大違い!案の定、肩と首がガチガチです。
糞掃衣(ふんぞうえ)というお袈裟と、カンディンスキー の「明るい楕円の中に」という絵を胸に、一枚の供物敷(くもつじき)を作ったお話をします。お付き合いいただければ幸いです。
先日のこと、旧知の「わださま」からお手紙をいただきました。わださまは、以前、合切袋を、善林英恵さんとのコラボONLY ONLYでお作りした方です。その時の経緯はこちらに。(力作です。ぜひ見てね)
さて、お手紙。何かしら?古呂奈お見舞いを出したので、そのお返事かな?とじこもっている時に、手書きの文字を読むのはうれしいものです。
読みすすめて、あら、ご依頼だわ。
カンディンスキー の「明るい楕円の中に」という絵を見ていたら、ひらめきました、と。
その絵の左にモンドリアン風の四角い図形が配置されてますが、こういう感じで仏壇の供物敷きを作れないものか、と。
フンゾウエ(わださまはカタカナで書かれます)のように、ヨシダさんの端裂を縫い合わせて。囚われず、勝手に縫い合わせて作ってください。と。
ひゃー。カンディンスキー 、糞掃衣、モンドリアン風。なんだか、クラクラくる取り合わせです。
カンディンスキー の「明るい楕円の中に」がぱっと浮かばず検索。あー、この絵か。なんか、不思議な絵だ。(スクショさせていただきました)
で、そのモンドリアン風の図形って?左側?
こ、こ、これかー。なかなかいいなあ。さすが、わださまの目だなあ。
糞掃衣は、私の解釈では、塵芥(ちりあくた)にまみれた端裂を洗い清め、チクチク縫い合わせれ作ったお袈裟。一切のエゴを手放した高僧が身につけた究極の布。
有名なのを失礼してスクショ。東京国立博物館にある分です。
そりゃー、そういうものが作れたら最高だけどね。
たいそうイレギュラーなご依頼ではありますが、やりがい充分。いわんや、わださまからの依頼です。受けてたたねば。
まあ、エゴにまみれた私ですのでどうなることやらですが、とりあえず織り布の端裂が入っている引き出しを、机にぶちまけました。
ONLY ONLY、コラボでお受けしております、みおさまの鞄、完成しました!
先だって、善林さんから送られてきまして、本日、みおさまが受け取りにお越しくださいました。
みおさま、にこにこして鞄を手にして、「いい意味で裏切られたわー」っておっしゃってました。想像を越えた感じで、とっても気に入ったとのこと。よかったわ。
織り布をメール添付でお見せした時のイメージと、だいぶ違っていたみたいです。それ、実は私も思いました。大変身。善林マジックですね。立体になるって、すごいなあ。
鞄を持ち替えて、反対側を見せて〜。
こっち面は、初夏を意識し、すっきり爽やかな色味です。
手に持ったときのバランスも絶妙ですね。それなりにモノも入り、実用もバッチリ。
ではちょっと、置き撮りの写真を。こっちが春バージョン。
ひっくり返して、初夏バージョン。
口の縁取りと、持ち手のところ。
アップ。
底と側面は、革がくるっと周ります。自立させたいというみおさまのご希望で、こうなりました。
あと、丈夫さと、汚れ防止の意味合いもあります。
内側。ナチュラルな綿麻の裏地もよいですね。
底板も写ってます。これは取り外し可能です。
底板をはずして。
ポケットのつき方も、みおさまのご希望通り。携帯電話とパスケースと鏡を入れるというご要望に合わせました。
布のアップ。春バーション。
裏を返して、夏バージョン。
今日はみおさま、お昼時にお越し下さり、一緒にランチを食べながら、おしゃべりしました。もう長いお付き合いだから(15年くらいかな?)、いろいろ昔話もしたり。楽しかった。気づきもあった。ありがたいことです。
みおさま、善林さんへの感謝もおっしゃってました。お伝えしますね♪
たくさまと、再会してきました!うれしい!うれしい!
昨年の初夏のころ取り組んでおりました、「たくさまの八寸帯」、締めてきてくださったんですよ。
ほぉ〜。さすがカッコいい〜〜。
帯のご希望を伺ったとき、「こんなに地味でいいの?」って思ったくらいでしたが、やはり、お好きなものはお似合いですね。刺しゅうのお着物もお誂えだそうです。トータルでカッコいいです。
糸の表情ゆたかでしょ。いろいろ考えてやったかいありました。
たくさまのご希望をかなえられたことがうれしいです。たくさまらしい、一本になったと自負(えへん)。
いえいえ、(えへん)は間違いです。染織吉田のONLY ONLY は、私一人ではできません。おきゃくさまと二人三脚で作っていく完全注文制作です。
百人百様のご希望をかなえていきます。。
たくさまのメイキングストーリーは、こちらにまとまってます。スクロールして、ご覧ください。
おお!立ち上がった!
ONLY ONLY、みおさまの鞄、平面だったものが、立体になりました!善林さんのインスタより写真拝借。なんか、新鮮だわー。平面ばっか見てる私からすると、息を吹き込まれた感じするね。
みおさまのご希望の、春から初夏用の着物にも持つメイン用バッグというの、クリアしてますね。写真は初夏用の面ですね。
これから、口周りをまとめて持ち手を考える局面ですが、それ一番の難所とのことです。私は遠くから祈るばかり。善林さんのことだから、うまく乗り越えてくれることでしょう。
この分だと春爛漫になる前には、お届けできるかな?みおさま、「できればゴールデンウィークに使えるとうれしいな」とおっしゃってましたが、それもクリアできそうです。ご希望を叶えられそうで、ホッとしてます。
完全注文制作ONLY ONLYにてうけたまわっております、みおさまの鞄。布を織り上げ、善林さんのところにお送りしたというところまで書いてましたが、、、、、
さてさて、その後は?
善林さんから、みおさま宛に送られたメールを、CCで拝見させていただいたところによると、裁断作業がはじまっているようです。
柄からサイズを割り出して、逆算でもう一度、本体紙トワル(実物大サンプル)を作成したとのこと。写真も添付されてます。
それから、もろもろの確認事項も。
・革の持ち手は、本体のボリューム感をみて、mm単位調整して現物の型紙を切るってこと。
・内側に使う予定の布地が足りるってこと。
・ポケットは、みおさまのご要望どおり、片側に二つポケット、反対に一つポケットつけるってこと。
・はりつけ芯は、鞄自立しつつ、重すぎないギリギリのところを探りつつ進めていくってこと。
みおさまからも早速お返事。なんか、なごむなあ。信頼してくれてるの伝わってきます。
「のんびり、楽しく待っています。」
感激!けむさま から、お写真いただきました。
10月に織り上げた、のしめ のお着物、お仕立ての平山さんからけむさま に直接お納めとなったので、久しぶりの再会です。
布だったものが、着物になり、お召しいただくという、我々の仕事のクライマックスであり、ハイライト。
じゃーん。
わー、お似合い!さすが、けむさま の雰囲気にピタリと合ってる。。。。感動もひとしおです。うるうるきます。
そうそう、このお着物は、「Lemon Turquoise(レモン ターコイズ)」と名付けさせていただきましたよ。
衿もとの、グラデーションの切り替えポイント、バッチリ合ってますね。ホッとした。ここ、ほんと、注力しました。
裾の切り替えの高さもよかったと思います。けむさま の背の高さからバランスを考えました。
けむさま から、いただいたメールを、すこし紹介させていただきますね。
「着ると絹の光沢が美しくてほれぼれしました。北村武資さんの袋帯もしっかりうけとめてくれ、自信をもって着られます。」
やった!
そして、こちらは、歌舞伎座へお出かけになった時の写真です。
メール、抜粋で、紹介させていただきますね。
「歌舞伎座では、圧倒的な布の輝きと冴えた色にうきうきしました。友人4人で行きましたが評判もよくてうれしいです。着心地もよく、平山さんをご紹介いただいて正解でした。帯は平山さんのところでもとめたシャレ袋帯で、すこし軽やかに。4時間くらい座っていてもしわにならず、肩もこらず、でした。」
いやはや、うれしいの一言です。ああ、よかった。全てがむくわれました。
けむさま 、私が心配していると分かってくださっていて、こうやってお写真やメールくださるのだと思います。つくづくお優しい方です。おかげさまで、作り手はがんばることができます。ありがとうございます。
ONLY ONLY、コラボでお受けしているみおさまのバッグ。進みましたよ!
デザインが決まったところまで書きましたが、その後、糸を染めて、巻いて、もろもろの機ごしらえをして、タテ糸をブラッシングカラーズで染めて、織って、蒸して、水元して、、、、
そして、伸子張しているところが上の写真ね。
下から見上げるとこんな感じ。
バッグにする布って、帯のおタイコをずーっと織るようなものですね。
みおさまにメールしたら、「もうできたの!」と。心拍が上がったと。まだまだ楽しみは続きますね、と書いてくださいました。
さあ、善林さんにバトンタッチ。平面が立体になっていきますよ。
ONLY ONLY、みおさまの鞄、手描きのデザイン画をパソコンで作り直して、微調整していきます。色と配置をちょっとずつ変えて、何枚もプリントアウトします。紙を実物大に折ると、ぐっと現実味が増しますね。
ふむふむ。こんな感じね。よしよし。
同時に糸の準備を始めます。まずは糸を選んで、、、、、長ーい実作業の工程、毎度のことですが、工夫を重ねてちょっとでも効率的に。失敗しないように。
はい、これが、鞄の片面「春バージョン」の方の、最終稿。みおさまにメール添付したら、「うふふ、楽しみです」とのお返事。「織物になったらまた変わるもの」ってこともご理解いただいていて、おおらかに取り組めます。
ONLY ONLY みおさまの鞄、大きさと革の色について合意が取れました。さあ、私の出番です。まずは布のデザインです。何枚もラフスケッチをします。
うん、これかな。
それを実物大の高さ27cm、横35cmの紙を作って、描いてみます。
横の長さがこうなったのは、みおさまがお持ちの37cmの鞄を、椅子に座って、ひざに乗せた時、少し大きすぎると感じたとのことからです。なるほど、ひざからはみ出ると電車などで気になりますものね。
体に合わせて、大きさを決められるのもONLY ONLY のいいところ。仕立ての善林さんと組んでいるからできることです。
みおさまにメール添付でお見せしましたところ、以下のようなうれしいお返事いただきました。
「ラフに関しては私のほうからは、ほぼ言うことはありません。ヨシダさんがもってらっしゃる私のイメージは正しいと思いますし、『みかん』の着物の時もある時点からはすっかりおまかせで成功したと思っています。」
「それと、ヨシダさんが描いた『私ができあがった鞄を持っているイメージ画』、あまりのかわいらしさに笑ってしまいましたとさ。」
えっ!私は、このイメージ画、みおさまにそっくりだと思います!よく描けたとほくそ笑んでおります。
ONLY ONLY でお作りする鞄の、持ち手やマチに使う革の候補を、メールで見たみおさま、2枚目の写真の「中茶薄手アドバン調」が「しっくりきた」とのことでした。(前回のブログの2番目の写真)
それにお答えして善林さん、「薄めの色でプレーンな単色のものを好まれるということ分かりました」「実際にこの革を使うか、または新たに購入するかどうかは、布ができてから決めたい」とのことでした。
おっと、それでは私の出番ですね。
革の分量が多いので、布地との色のバランスもよく考えなければ。例えば、布のデザインに、少々革の色を入れてはどうだろう?その方が、なじむのでは?
みおさまに提案すると、「茶色は春夏に向かないように思う」と。それに「革は2番目のがいいと言ったが、実は、もっと薄くてもいいのではないかと思った」とのこと。
そっか、ここ、合意までたどり着いてなかったですね。強固にしとかないと。
で、ネットの色見本の出番です。モニターによって違いがあるにせよ、抽象論からは抜け出せます。
上のスクショの「カフェオレ」が、革の色として、まず私が思った色。それが、どうも違うようだと探したのが、中と下の「バフ」と「肥後煤竹」。
これをみおさまに提示すると、「バフ」と「肥後煤竹」は、結構違う色見ながら、どちらも納得できる色だとのご返信いただいた。
よし、フォーカスが定まってきたぞ。では、振り幅もちつつも、布をデザインしていこう。
完全注文制作ONLY ONLY、みおさまの着物にも合う春から初夏向きの鞄、みおさまと、善林さんと、私とで、CC:メールのやりとりがすすみます。
大きさと並行して、革についてのお話になってきました。
みおさまは、もともと、手垢が目立たないように、こげ茶の持ち手をお望みでした。
私も、春夏用とはいえ、持ち手のみだったら分量も少ないし、こげ茶でいいのではないかと思っていました。
しかしその後、善林さんをまじえ話が進み、まず、底を全面革張りにすることになりました。これは、補強のためと、汚れ防止のためです。布地は白ベースですし、九寸帯地でいくので布自体の強度はさほどないので。
その後、鞄を自立させたいというみおさまのご希望が出たので、側面も底に張った革がそのまま立ち上がる「通しマチ」にすることになりました。
とすると、革の分量がぐっと増します。季節のこともですし、白っぽい布とのバランス考えると、こげ茶でない方がいいのではと話がすすみ、、、、
みおさまも、おしゃれのことを考えると、汚れがめだたないなど考えない方がいいだろうという気になられたようです。この辺、ジレンマですね。
早速、善林さんが、手元にある数種類の革に、私が送っている布を仮りで載せて写真を撮り、投げかけてくれました。
*載せてる写真は、このとき送られてきたものをトリミングしたものです。
ONLY ONLY、みおさまの鞄、ご希望をあらかた聞き取って、さっそく服飾作家の善林さんに連絡しました。
二人の間でバンバンとメールが行き交いまして、善林さん、ご希望が出てる分だけの情報で、「こんな感じ?」と紙でささっとラフを作ってくれました。
速いわー。目に見える形になると、想像しやすいし、問題点も気付きやすいし助かります。
それで、みおさまに、この紙ラフの写真を送り、底の作り方とか、芯のこととか、具体的に相談です。このあたりから、メールのやり取りを、「みおさま、善林さん、私」の CC:にして、透明化して進めていくことになりました。
みおさま、自立する鞄をお望みだということが、出てきました。それなら、底を革にして、そのままマチの部分まで、革にすればいいと善林さん。通しマチというらしい。鞄のONLY ONLY、細かいところまで、ご希望をお聞きして進めます。
というわけで、みおさまとのONLY ONLY、本格スタートすることになりました。
おつくりするものは、きものにも合うメイン使いの鞄。
その用途の鞄は、ふたつお持ちで、ひとつは秋冬用の濃い茶色のもの。もうひとつが真夏用の麻素材のもの。その間の春先から初夏まで使う、明るい色の鞄が欲しいなと思っていたと。
お好きな色は、薄いクリーム色、若草色、みかん色、夏みかんの色、はっさくの色。
あら、おつくりしたお着物と同じね。うふ。
それで、これまでの織ったものの資料などをどんどん出してみていただきましたら、目に留まったのが上の写真の布。以前織った九寸帯の試し織り部分です。
色がちょっと、お好みよりはシャープになるけど、これもいいですね。鞄の片面をこういう感じにして初夏ぽくし、もう片面を春っぽくして、使い分けるのもありかも。
みおさま、いわゆるブラッシングカラーズ はあまりタイプではないとのことでしたが、これは好きだと。なるほど、刷毛目が出るものより、こうやって、色をはめ込んでいく感じですね。
大きさは、展覧会に行ったときカタログを買って楽に入るくらい。あとお土産の瓶詰めが入るくらい。
それから、持ち手の革は、汚れが目立たないように、こげ茶にしたいと。
はい、では、その旨、善林さんと相談して、またご連絡いたしますね。
横浜でみおさまにお会いしてから約10ヶ月後のこの10月、みおさま、メールをくださいました。久しぶりに我が家にお越しになりたいと。私がメルマガに書いた断捨離について聞きたいってことだったので、たんに遊びに来るのかなと思っていました。
その日、10月だけど暑い日で、みおさま、単衣のお着物、お召しでした。拙作「みかん」です。わあ、うれしいなあ。
お話はいろいろに及びました。ご家族のこととか、サイクリングのこととか、カレー味のメカジキが美味しいとか、、、。断捨離は、私の中でのブームが去ってますので、それほど熱弁できず。
お召しの拙作「みかん」のことを、『これは本当に「私の」って感じがする』って愛しそうにおっしゃってくださって、ああ作ってよかったなあとしみじみうれしかったです。
そんな話をしていたら、みおさま、鞄の話を振られました。
あら、あの横浜の時の話、トントンとお話が進まなかったので、まだ時期じゃないのかなと思っていました。こちらから振らずに失礼しました。
それで、急に資料をひっくり返したりして、鞄のONLY ONLYのお話が始まりました。
*写真はネットからの拝借です。みおさま、こういうのやってられるらしい。趣味はきものとサイクリング。カッコいいなあ。
さあ、新たなるONLY ONLY をはじめましょう。今回のヒロインは、「みおさま」。善林英恵さんとコラボで、春から初夏用の、メインユーズの鞄をつくります。
みおさまと私の出会いは、ずーっとさかのぼって、私が染織で独立開業したころです。ということは、今から、15年ほど前?そんなにたってる???
右も左もわからないまま見切り発車で独立した私は、幸運なことに、一衣舎さんの展示会にお世話になり、本当にいろいろ学ばせていただいていました。みおさまは、その一衣舎展のお客様でした。
みおさまと私、なんか、気があって、一度、自由が丘の喫茶店で、お話ししたこともあったなあ。なんか、信頼してくださってる感じでうれしかった。
2011年には、ONLY ONLY でおきもの作らせていただきました。この時は、まだONLY ONLYってネーミングはなかったのだけど。
その「みかん」と名付けたお着物については、このページの中盤で詳しく書いてますので、よかったら。
そんなみおさまと、昨年の12月、横浜で池田重子展をご一緒しました。その時に愛用している鞄、色が濃い目で秋冬はいいけど、春夏にはちょっと、、とおっしゃっていたのですが、、、。
ただいま取り組んでいる、完全注文制作ONLY ONLYは、お客様のご希望で、こちらのブログには公開しませんね。
注文制作の動機ってさまざまですよね。記念だったり華々しかったりもあるけど、あまり大きな声で話したいことではない、でも、自分にとってはとても大事。その気持ちを形にしたいとかあると思います。
その気持ちを受け止めて、そのお方にとって、大切なこと、心の奥深いところを形にできるとしたら、それもまた私にとっても喜びです。
ブログに書くことは、染織吉田の広報にもなるので、協力しようって思ってくださってる方も多いと思います。それでつながって、次のご注文いただけることもあるので、とてもありがたいです。
が、そうでなくてももちろんオッケー!
公開するかしないか、また、一部公開(出来上がったものは載せていいけど行程は不可とか、その逆とか、注文の動機は載せないでとか、)など、なんでも、ご希望に添います。
完全注文制作ONLY ONLYで、あなたの何かを作りませんか?お問い合わせはこちらから。お気軽にどうぞ!→☆
2016年に、ONLY ONLYで絵羽のお着物を作らせていただいた「あおさま」、鞄を作られたのですよ。
お写真、いただきました。すっごくすてきなので、紹介させていただきますね。
細身でシュッとしててかっこいい!あおさまそのもの。バッチリお似合いだね、こりゃ。
なんと側面、ヘビ皮!着物地とバッチリあってる!
内側は銀色の革!これも着物地とあってる!
デザイン、縫製は、善林英恵さん。いつも組んでる方ですが、今回はコラボというより、あおさまに善林さんを紹介した形です。
あおさまのONLY ONLYをやってる時、お揃いで何か作りたいから、布地を多めに欲しいとのご依頼を受けて、余分に織ってました。
その布が、こんなにカッコよくなった。すごいな〜。
キルティング、さざなみのようで、きれいですね。
あと、何やら持ち手は、すごい手間だったらしい。
ポケットの付き方も片側に余裕があって、使いやすそう〜。いい鞄だなあ〜。
あおさまのお着物のメイキングは、こちらにまとまってます。トップページにはこの記事が来ますので、スクロールしてご覧ください。
けむさま のONLY ONLY、熨斗目のおきもの、湯通しのあと、湯のしに出してました。
湯のしってのは、反物に蒸気をあててもらって、ツヤを出すのです。
それで、ふんわりツヤツヤになって帰ってきました。
今回のけむさま のお着物は、絵羽なので、身頃2枚、袖2枚、衽(おくみ)、衿の6パーツに分かれてます。
見て!このツヤ!!柔らかくて、適度なコシがあって、これぞ、絹。
これ、糸がいいんだよなー。特別な絹なのです。「ぐんま200」っていうブランド繭からとった座繰り糸をふんだんに使って織りました。希少で貴重な国産繭です。
座繰り糸、適度に節もありますよ。グラデーションの切り替えのアイキャッチポイントに、意識して使います。
いい風情だねえ。
部屋中に広げて、最終検反。サイズを測ったり、よーく検証します。
昨日、これらを抱えて、仕立ての平山さんのところに行ってきました。キモのところ、調べてもらってオッケーもらいましたよ。よかった、よかった。
今回のONLY ONLY、仕立て師の平山さんと組めて本当によかったです。絵羽ものは、仕立てでキチっと計画通りに組み立てられないと意味ないのだけど、それが織り手だけじゃ把握できないところあるのです。
自分だけじゃどうしようもない時は、人と組んでクリアする。今回は、けむさま が要になって、組ませてくださいました。本当にありがたいことでした。
というわけで、けむさま のONLY ONLYは、私の手元から羽ばたいていきました。このあと平山さんに仕立てていただいて、けむさま の元に着地します。
達者でな〜。
この子は、けむさま の元で、羽ばたき続けると思います。おしゃれで社交的なけむさま を大切にくるんで、きっといろいろにお供させせていただけるでしょう。私もとても楽しみです。
けむさま 、どうか、よろしくお願いします。
さあ、けむさま のONLY ONLY、のしめ のお着物、織り上がりましたよ。長かったーー。
きものは、帯やショールに比べ、だんぜん長尺ですので、織ってる時間も長いです。心の中で、けむさま と対話しながら織っています。
くじけそうになると、けむさま が送ってくれてる応援エールをキャッチしますよ。
おかげでどうにか乗り切りました。
織り終わって、早速、湯通しして、伸子張り(しんしばり)してます。織る時にできるちょっとしたゆがみは、この段階で調整します。
けむさま のONLY ONLY、のしめのお着物、織ってますよ。
織ってる時は、たんたんと。気持ちにも動作にも起伏なく、、、平坦に。
けむさま は、ヨシダさんの色の感覚が好きだとおっしゃってくださったので、そこのところ、自信を持って。
きちんと法に従って。でも遊び心をときどきひょっこりのぞかせて。
姿勢を正しく。それがいい織物にもつながるし、体が疲れず、仕上がりも早い。坐骨、骨盤、背骨、首の角度。意識して。姿勢が乱れたら、ちょっと休んで立て直す。
楽しい気持ちで。心を楽に。そういう着物を織りたいし、けむさま がこれをお召しの時も、そうであって欲しいし。私もそうありたいし。
織ってるところの動画です。17秒。メルマガ読んでくださってる方にはすでに配信ずみのものです。
もう一息。たんたんと励みます。
さてさて〜、けむさま ののしめのお着物、織り始めておりますよ。
今回は、19種類の糸を駆使して織り進めます。上の写真はターコイズの糸。9種類。
杼が10丁写ってますが、メインの色は2丁杼で織りまして、左の二つは同じ糸が入っています。この糸、けむさま のご要望で、試し織りの時より、一段濃い色を染め足した分です。よりメリハリの効いた、のしめらしいのしめになりますね。レモン色との相性もよさそうですな。
白は4種類。微妙に、ターコイズ系の白と、ど真ん中の真っ白と、レモンぽい白に染め分けました。グラデーションのキモです。
レモン色は8種類。身頃にどーんと入りますので、分量は多いです。出過ぎないような感じで。でもあっさりしすぎず、表情豊かを目指します。
巻いてるところ〜〜。
こんな感じで種類別に立てておきます。
さて、けむさま と一緒に「着物仕立てひらやま」さんをお訪ねした時のお話です。
けむさまは、大の着物好きで、着付けの先生もされていらっしゃり、長年、ありとあらゆる着物を着てこられた通の方ですが、仕立て師さんに直接お会いして、着方や好みを相談し、採寸して、仕立ててもらうのは初めてだそうです。普通は、呉服屋さんを介しますので、スタンダードでいらしゃいます。
いつもお願いしている寸法を一旦リセットするいい機会だと喜んでくださっています。
一方の平山さんも、仕立て師としての長いキャリアの前半は、呉服屋さんなどから頼まれる反物を、渡された寸法表どおりに仕立てて納めるのが仕事の仕方だったそう。この当時は、自分が仕立てた着物がどこの誰に、どんな風に着られるかなど、全く知らなかったと。
そしてそれを、ある日、ガラッと変えたのだそう。お客様と直に会い、相談を受けて採寸し、仕立てるスタイルに。
けむさま と平山さんの話を聞いている私は、その細かさに驚かされました。着るときに腰紐をどこに締めるか(ウエストか、または腰骨の上か)というのはよく聞きますが、地衿の先をどこに持ってくるかといういことも話題にされています。それによって、寸法もちょっと変わるみたい。私、そんなこと気にしたこともなかったよ!
私にとっても、素晴らしい恵みがありました。
なんと平山さん、新モスで作った、着物の実物大のひな型を作っておいてくださったのです!それも、繰越などは、けむさま サイズで!(名称は「ひな型」でいいのかな?着物の世界でも「トワル」って言う?まさに洋裁のトワルみたいなものですわ。)
それをけむさま に、美容衿をつけた上に着装していただいて、衿合わせのポイントにフリクションペンで印をつけました。そのポイントの6分下で色を変えたいわけです。ここが一番のアイキャッチですから狙います。
そして衿につけた印を伸ばして、身頃と袖につけ、そしてトワルを解体して、反物にしたときにどこが柄かを確認します。そうすると、ピシッと段があった熨斗目(のしめ)になるという計画。
すごーい!画期的!まさにこれがほしかった!平山さん、どうもありがとうございます!
説明が下手で伝わってないかもしれませんが、これぞ、ONLY ONLY。お召しになる方と、仕立てる方と、布を織る私が一緒に作るONLY ONLYです
*今回は写真は取らなかったので、一番上の写真は、以前に私が一人で平山さんをお訪ねしたときのもの。いまとはメガネが違うわ〜。下の2枚の写真は、うちに帰って、トワルをトルソに着せて、最終確認しているところです。
ONLY ONLY、けむさまの熨斗目(のしめ)のお着物、準備が進むにつれ、私は、仕立て師さんに事前にお会いできればなあって思うようになりました。熨斗目(のしめ)は柄合わせが、何より大事ですので、寸法を細かく確認したかったのです。
けむさまには「いつもの和裁師さん」がいらっしゃるとのことでしたので、その方に私が直接コンタクト取れないものだろうかとお聞きしてみました。
そうしましたら、その和裁師さんは遠方にお住まいで、懇意の呉服屋さんを通してのやり取りでいらっしゃるとのこと。
なるほど、そしたら、お会いするのはちょっと無理かなとメールを読み進めますと、な、なんと!
「もし 、ヨシダさんがやりやすいのだったら、今回のお仕立ては、いつもの和裁師さんじゃなくて、ヨシダさんが信頼している方のところに頼んでいい」とおっしゃってくださったのです。
私の仕事のしやすさや、ちょっとした不安をおもんぱかってくださったのです。うっわーーなんとありがたいこと!けむさま 、本当にお優しい。
それで、信頼度100%のいくつかの仕立屋さんにご都合をお聞きし、けむさまとご相談した上で、「着物仕立てひらやま」の平山留美さんにお願いすることになりました!
それで、早速、昨日、けむさまと二人で、元住吉の平山さんのアトリエにお伺いしてきましたよ。
いやー、本当に有意義だった!とても面白く盛り上がった三者会談の様子は次回書きますね。
*写真は、持っていった資料の山。2回目の試し織りは結局2尺(76cm)も織ってしまった!
ささ、けむさまのONLY ONLY、のしめのお着物、デザインを調整していきます。グラデーションのところがキモですので、念入りに。微調整に役立つのは、やっぱコンピューターだね。可視化できるし。だいたいこんな感じかなっていうの作って、ばんばんプリントアウトします。
やってみて、見てみないと分からないから、これはどんどんやります。
そして、トルソに着せてみます。トルソは高さを調整して、けむさまの身長150cm に合わせてますよ。
裾は切り替えポイントはこのくらいかな?いや、ちょっと間延びするな。もうちょっとメリハリつけよう。
衿は大事ねー。もうちょっとゆったりでもいいかもね。
お袖もつけてと。
うーむ。このくらいか?
この5月にONLY ONLY で取り組んでおりました、きよさま の八寸帯「Yellow triangle(イエロートライアングル)」、締めたお姿の写真を送っていただきました!
遠く鹿児島で、この帯がきよさま に可愛がっていただけてると思うと、ほっこりうれしいです。
「やっぱりいいですね〜」って!ご満足いただけているようで、ますますうれしいです。
柄の出方も、ちょうどよかったかな。ひと安心です。
メイキングは、こちらにまとまっています。トップにはこのエントリーが来ますので、スクロールして、ご覧ください。→ONLY ONLY きよさま
けむさまの、のしめのお着物、2回目の試し織りです。こんな感じ?
写真を撮って、けむさまにメールします。
ご返信、だいたいオッケーでホッとする。ご希望も少々。
「ターコイズの一番濃い色を少し薄めに」、「水色を感じながら白に向かっていく感じに」、「黄色はさえた薄いレモン色」で「避けたいのは着物によくあるウコン色と、くすんだ感じ。」
了解しました。
その後、お仕立てのことやデザインのことなどで、メールをやり取りしておりましたら、けむさま、「どこかに薄いピンクを忍ばせられないか」とのご質問くださいました。
ああ、ピンク。
思えば、けむさま、いっとう最初は、「黄色とピンク」ののしめをご希望だったのだ。ピンク、お好きなのだ。うーん、それは入れたいなあ。ちょっと難しいが、とりあえず可能性を探ろう。
ごく少量、ピンクを染めることにした。レモンとターコイズと相性がいいように、パープル系のピンクを染めた。
はい、もいっちょ。太さと濃さを変えて、計4種、染めました。
早速、織り込んでみます。うーむ。可能性を探れないこともないが、紬調になる。訪問着調にしたいのだがな。
けむさまに写真をメールすると、
「ピンクが入ると、米沢の紬みたいになり、面白みより、あたり前になるのですね。よくばらない方がいいのだと思いました。」
とお返事くださった。なるほど、「あたり前」は却下ね。
でも、ピンクをご提案いただいたということは、何かちょっと物足りないってことなんだろうな。
けむさまは、今、人生の大輪の華を咲かせていらっしゃるのだ。お年的にも、社会の役割的にも。だから、控えめな着物にする必要はない。むしろ、大胆な思い切った着物を求めておられる、、、、
じゃあどうする?
「水色を感じながら白に向かっていく感じに」を、精一杯やりきることが、それに充当するのではないか?
けむさまのONLY ONLY、本番用の糸もそろいました。デザインの方も、最終調整に向かっています。ひな型で計画してて、一番いいと思ったのを、着姿のデザイン画に移してみます。
お召しになった時に、どこにポイントを持ってくるか、ねらいます。これは、絶対はずせない。最重要ポイントと言っていいです。
けむさまらしさを出したいし、人の目線がどこにくるのかも念頭に入れて、それから、デザイン的な着心地もあるよね、落ち着くとか、着てて楽とか、自信につながるとかっていうような。
けむさまに、糸が染まりましたよーとメールいたしましたら、最高にうれしいご返信くださいました!本当に、くずれ落ちそうになるくらいうれしかったです。見ていてくださる方はいるんだなあと、ジーンとしました。
ちょっとだけ、ご紹介させていただきます!
「酷暑のなか、すごいですね。はればれと美しいです。
だいぶ前ですが、〇〇さんのサイトで、ヨシダさんの作品をみました。ちょっと不思議な空気感が印象的でした。自由なのに、抑制も効いてて、気難しさがなくて、ほかの有名な作家さんや機屋さんとは、ちがう匂いがしました。〇〇さんにしては、めずらしいとも思いました。
あれから何年もたちましたが、直接にご注文できたことは、とても幸運です。ヨシダさんの創作の過程を共有させていただけるのも、新しいスタイルで、きもの好きにはたまらない贅沢。
とても楽しみです。」
さてさて、けむさま、大まかなデザインが決まりました。詳細はまだだけど、大体の計算はできますので、本番の糸量を出して準備スタート!
ヨコ糸、座繰り糸を使います。弾力があって、ツヤがあって、プリプリと生きがいい。
けむさま、普段着ではなく、パーティー着を望まれているので、ほこほこした真綿糸ではなく、ツルッとしていて光沢もあるこの糸を選びました。
さあ、下準備して、染めましょう。メインのレモン色。これを真ん中に、薄めと濃いめのそれぞれ2色ずつ染めます。
ターコイズ。これも、ぐっと薄めと濃いめも染めます。
ほら、こんな感じ。
これに、糊をつけます。上の写真、布海苔(ふのり)ですよ。これを煮溶かして、糸につけるのです。糊をつけると、糸はぐっと扱いやすくなります。最終的にはとってしまうのですが、糊付けはとても大事な作業です。
糊がついたよ!
けむさまとの第2回打ち合わせで、ふんわりした「のしめ」のお着物にすることと、お色味はレモン色とターコイズにすることが決まりました。
それで早速、デザインをすすめます。「のしめ」は色の切り替え部分が命と心得ます。さあ、どうしましょう。
色の配分を変えて、いくつも描いてみるしかありません。
このデザイン画をけむさまに、メール添付で送ったら、
「信頼してお任せします。自由に羽ばたいてください。次のお知らせ楽しみにしています。」というありがたいお返事がきました。
任せられたら、さらにさらに、ベストオブベストを探るしかありません。もっと深くデザインを詰めていきます。
今年の5月で設立15周年を迎えた染織吉田は、昨年9月から今年5月1日までに、帯かお着物をご注文かお買い上げくださった方へ、「15周年感謝、お好きな色に帯揚げ染めますプレゼント」を開催していました。
先日お納めした、たくさま のONLY ONLYも対象でしたので、染めましたよ。
どんな色味がご希望かお聞きしましたところ、グレー系だと。さすが、お地味好きなたくさま !
帯揚げはきものや帯に近い色でなじませて、帯締めでシメるというのがお好きだと。ほぉー、なるほど。おしゃれ上級者ですな。
でもグレーは難しいね。百鼠(ひゃくねずみ)って言われるくらいだもんね。どこを目指して染めようか?
それで、極端に違うグレーを選んで、3色提案いたしました。上のスクショの、利休色、紫ねず、褐色です。そういたしましたら、たくさま 、利休色は近いお色目を持っていらっしゃるそうで却下。他の2色はどちらでもとのこと。
よっしゃ、では、たくさま の優しい感じが出そうな、ふんわり紫を含んだグレーを目指して染めましょう。
染めてます。じょじょに色調整します。
さあ、染め上がりました。使い勝手がよい感じねと自負。
アイロンかけて、発送です。
たくさま 、お喜びのメールくださいました。きれいな渋いグレーで、手持ちともダブってないと。袷の季節がまち遠しいと。
よかったです。
15周年のプレゼント企画は終わっておりますが、もしも帯揚げをお好きな色に染めたいって方おられましたら、メッセージくださいね。ご相談に応じます。
さて、けむさまと2回目の打ち合わせが決まりました。
図面を郵送したあと、メールでやり取りし、話し合った末、色は「薄い黄色」「白」「薄いブルーまたはターコイズ」に決まりました。ささ、それでは、その色味で図面を作り直しましょ。のしめと、その他の可能性も探るため、4パターンご用意。
試し織りの第一弾も織ってお見せしよう。ブルーかターコイズのどちらがお似合いになるか、会えるチャンスがある時に見極めたい。染めて、機仕度して、織ります。話せば長いですので、詳細は省略します。
その2点をそろえて、第2回目の打ち合わせにのぞみました。時は、7月の下旬。ありがたいことに、その日は暑さのちょっとやわらいだ日でした。場所は日本橋の三越の特別食堂。ランチミーティングです。
約3ヶ月ぶりのけむさま、夏着物がきまっていらっしゃいます。
精がつくものいただきながら、なごやかにおしゃべり。けむさまは、着物のことについて、また人生についても、大先輩ですので、お聞きしたいことばかりです。
図面をお見せするとすぐに、のしめを指さされました。可能性を探ったけど、やはり、はじめに欲しいっておっしゃったものに戻りますね。
お色味については、試し織りをふっと肩にかけていただきましたら、わあ!ターコイズが近くにきた時、パッとお顔の色が輝かれました。薄いブルーだとちょっと物足りないような、、、、
けむさま、上品な奥様でありながら、個性的なもの、大胆なものがお似合いになるタイプですね。ここは思い切って行きたいです。
試し織りを直に見ていただけて、その場に私もいられたことは、大変ありがたいことでした。
けむさまは、着付けの先生でいらっしゃるので、着付けのコツや仕立てるときの工夫などもお話しくださり、興味津々。なるほど、かっこいい人は全てが半端じゃないね。さすが。すてきなものには理由があるし、かげの努力もある。とても勉強になりました。
けむさまと1回目の打ち合わせを経て、さあ、シンキングタイム。どうしましょう。
けむさまは私からの提案も柔軟に受けてくださるタイプの方でありがたい。が、これは実は難しくもある。
どうして難しいかというと、「お客様のいうとおりに作ること」は難しくない。でも、「私はこんなタイプの着物が好き。こういうとき着たい。一緒に考えてね。ある程度まかせるね。」と言うご注文は難しく、やりがいがある。
で、燃えております。
ご注文としては、黄色とピンクと白の熨斗目(のしめ)とのことだけど、打ち合わせ中に、まず、タテ絣はしないことになった。主に、奇抜すぎて、着ていくところがなくなるという理由から。そしてのしめ自体にもそれほどこだわらないという話にもなった。色についてもこれも提案次第では変更可とのことに。
よーし、ではどうしましょう。というわけで、自由な発想で、ひな型、たくさん、描きました。(上の写真の図のような着物を広げた形の図をひな型といいます)
私からのご提案としては、お色味のピンクと黄色と白をまず考え直してみたらどうだろう。理由として、
・黄色とピンクと白の組み合わせだと、一般論として、可愛らしくなりすぎる。これを回避するために、こげ茶などを組み合わせるといいかもだけど、けむさまにそれは似合わなさそう。
・きれいなピンクと黄色でなく、ちょっとくすませて、ピンクベージュとクリーム色なら、大人っぽくなるが、けむさまは澄んだ色の方がお似合いになりそう。かつ、その組み合わせだと下手するとお襦袢ぽくなりがち。
だとしたら、ピンクか黄色のどちらかを地色にして、寒色系の水色かターコイズを組み合わせたら?
などなど思い、ひな型に説明書を添えて、けむさまの元に郵送しました。
さてさて、さるゴールデンウィーク中の平日に、けむさま、我が仕事場までお越しくださいました。都心に住まわれるけむさまからしたら、最果ての地のような我が家なのに、本当によくお越しくださいました。
けむさま、この日は洋装でした。洋服姿もさすがおしゃれです。ふんわり華やかで、効かせるところはキリッと効いてて、颯爽とした素敵な方です。
なんと、ご自分で描いた着物のひな型(展開図)や、のしめのきものの雑誌の切り抜きをご持参くださってます。
きもののひな型をお描きになれるとは、相当のきもの通でいらっしゃるなと踏み、お話うかがうと、なんと着付けの先生でいらっしゃいました。さらに、ご先祖さまに呉服屋さんもいらっしゃり、お母様もきもの大好きな方でいらしたと。
うっわーー、それはそれは、、、。身が引き締まります。
着物や帯のお誂えの経験も大変豊富で、それを踏まえてのお話は、示唆に富み、教養あふれ、かつ率直で、本当にありがたかったです。
印象的だったのは、「今、呉服屋さんで買うことのできるのしめの着物は、力作すぎて着づらいなって思う」っておしゃったこと。
これ、すごく分かります。のしめはタテ糸を絣にすることが多いのだけど、色がパキッと出て、大胆で印象的なものになります。それ「やりすぎ」と紙一重です。下手すると着物ばっかり目立ちます。こうなっちゃうと着づらいし、着て行くところがなくなる。
こうもおっしゃいました。「高名な作家さんのものは、一目で〇〇さんのものだって分かって、まるでブランドのロゴをつけて歩いているみたいになるわね。」
うなずきすぎて、首がもげそうです。
もう一つとどめ。「平凡なものも案外いいなあって思うこともあるのよ。」
作り手のエゴがない、普遍的なもの。ああ、目指すべきはここだなあ、、、、
私は着物の文化の真髄をレクチャーしていただいてる気分になりました。一人で聞くのもったいない。全ての作り手に聞かせたい内容です。
(追記)昨日、投稿した時には、写真のアップができませんでしたが、今やってみたら(8月23日)できました!なんの努力もしてないのに!やっぱり一回電源落とすとか、一晩おくが最善策なのかなあ。。。。つか、それしかできんし、、、写真は打ち合わせ後の様子です。
「きものも考えているのよ」おっしゃって下さったけむさま、それからしばらくして、メールをくださいました。
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「のしめ」の着物が欲しくて、ずいぶん探しているのだけれど見つかりません。
それで、「そうだわ、吉田さんに織っていただこう」と思うようになりました。
森康次先生ご注文のお着物、すてきですね。これにとても惹かれました。
でもヨコのずれがない、いさぎよい「のしめ」、色はうすいピンクと黄色と白。
座繰り糸も大好きですし、さらりと薄くすこし光沢のある紬も。
こんな訪問着に負けない着尺。ご相談を進めさせていただきたいです。
——————
なんと、うれしいメールでしょう!それこそ「生きててよかった」って思うくらいうれしいメールです。
「のしめ」って、「熨斗目」と書きます。ずいぶん難しい漢字ですよね。元々は、武士が裃(かみしも)の下に着る礼装用の着物です。室町時代に始まって、江戸時代に多く着られたみたい。お能や狂言でも、着ますね。
いずれにせよ男性のものでした。それが、いまは、おしゃれに敏感な女性に着られています。
ちなみに上の写真が、のしめといわれてすぐに頭に浮かぶもの。こういう風に、きものの上下が無地で、中央部分は別の色で格子などになっています。現代ののしめは、これに限らないのですけどね。
さあ、けむさま、どうしましょう。
文中にある、森康次先生からのご注文というのは、こちらの着物です。これは、森先生からじきじきにご注文いただき、制作中には電話やメールでやり取りさせていただき、ずいぶん勉強させていただきました。
「この着物はね、白を美しく見せたいんよ。」とおっしゃる森先生の口調をいまもはっきり覚えてます。それで、自分がやるべきことが、パキッと分かりました。
今回、森先生から教えていただいたこと、総動員して挑みます。
けむさまとは、何度かのメールのやり取りし、打ち合わせのため我が家にお越し下さることになりました。
さあ、夏の終わりも見えてきました。秋は着物の季節です。新しいONLY ONLY をスタートしましょう。
今回のヒロインは「けむさま」。かわいい愛称でしょ。このお名前の由来は、けむちゃんという猫さんです。もう16年も前に保護された、おばあちゃん猫なのですって。今回のヒロインの「けむさま」に寄り添って、いい人生(猫生)ですね。
ところで、ところで、けむさまと私の出会いは、この春の伊勢丹での展示会の初日のことでした。とても気品のある奥様がふらっと現れたと思ったら、帯を即決でお求めくださいました。こういう時、腰が抜けるほど驚きますね。何年やっても慣れません。なんとびっくり、ありがたい。
驚いて、少しお話しすると、もう何年も前の銀座もとじさんでの個展も見て下さっているとのこと。その時から気にかけて見てくださっているとのことで、なんと、なんと、本当に、本当に、ありがたい。じーんとしました。
お話ししてたら、お着物も考えてるのよっておっしゃってくださって、まあ、ではメールでご連絡をと申し上げたら、なんとメルマガも取ってくださっているとことで、メール上でもすでに繋がっている方だと判明しました。
あとで住所録を探すと、ずっと前にお名前いただいてました。いやはや、失礼しました。
そして、またメールで連絡取りましょうということで、このありがたいお出会いは余韻を残しながら、一旦終了したのでした。
たくさま のONLY ONLY、無事、高松のたくさま のお手元に届きました。
「とても素敵に仕上げていただきありがとうございます。」とメールいただき、ひと安心。お締めいただくには、季節の巡りを待たなくては。それも楽しみのひとつですね。
こちらでもお披露目しますね。
「Gently White(ジェントリーホワイト)」と名前をつけさせていただきました。やさしい、穏やかな、落ち着いた白です。
「地味なのが好き」とずっとおっしゃってたたくさま 、抑えるところは、ぐっと抑えて作りました。
でも、地味なだけじゃないよ。華やかでもある。濃い地のお着物に乗せるとほらこんなに。
こちらは、前帯部分。前帯もおタイコ同様、いろんな色の真綿を、撚り混んで入れてます。太めのキビソ糸もね。
前帯を、筒状するとこんな感じ。けっこういろんな色が入って、表情ゆたかなの、お分りいただけると思います。
手前がおタイコ、奥が前帯。
こんな帯です。
おタイコ部分のアップ。前帯も同様。
こちらはタレ先と手先のアップ。こんな感じで、表情はあるけど、差し色はなし。
ベースのヨコ糸はこれ。真綿紬糸を合わせて作ったもの。濃いオリーブ色と薄いグレーで杢糸(もくいと)にしています。
ルーペで見てみましょう。紺色の真綿。
レモン色とオリーブ色を混ぜた色の真綿。
紅色の真綿。
太いキビソ糸を入れたところ。
早く秋になって、たくさま から、「締めましたよ〜」ってお便りが届かないかな〜〜。待ち遠しいわ〜〜〜。
さあ、完成しましたよ。たくさま のONLY ONLY。ちらっとだけ、お見せしますね。こんな感じで仕上がりました。
お手紙書いて、糸見本を作って、お仕立ての説明をつけて、たくさま のことを考えつつ、発送準備です。
こんな感じで、たくさま の御許、遠く高松にお届けします。
うふふ。帯の全容は、次回のブログで載せさせていただきますね。乞うご期待。
さてさて〜、たくさま のONLY ONLY、順調に織り進んでいます。いい感じ!ねらったように織れると、心から楽しいね!
織り機の横から写真を撮るとこんな感じ。
そのまま、目線を下げるとこんな感じ。左下のロールが、織った帯の布ですよ。
今、織りたてほやほやのところはこんな感じ。
これが、地糸。自分で合わせて作った杢糸(もくいと)です。
おタイコ部分や、前帯部分には、真綿を自分で紡いだ糸も、入れます。上の写真の4種類に染め分けてから紡ぎました。奥に写っているのは、極太のキビソ糸。これで、でこぼこの表情をつけます。
さらに、これらの真綿をほんの少量ちぎって、糸に撚りつけて、ネップにしています。
ほら、自然にネップ、入っているでしょう。
たくさま 好みの、地味シブ帯になりますよ。もうすぐ完成!
5月に取り組んでおりました、きよさま の八寸帯、ブログ掲載オッケーが出ましたので、お披露目させていただきます。
じゃーん!今、全貌があきらかに!
作品名は、ズバリそのまま、「Yellow triangle(イエロートライアングル)」です。
イエローは、どストライクの黄色。しっかりした鮮やかな黄色です。よく発色しました。明るくはっきりされたきよさま に似合いそう!
上の写真は前帯部分。地色は薄いクリーム色なんですよ。
この写真だと分かりやすいかな?左側がおタイコで地色はホワイト。右側が前帯で地色はクリームです。
こっちの写真の方が分かりやすい?手前が前帯。奥がおタイコです。ちょっとした違いだけど、きっとお顔映りが違ってくると思います。きよさま のご希望を叶えられてよかったです。
タテ糸とヨコ糸のバランスもよかったみたい。しっかり打ち込みました。
耳もまあまあ揃いました。糸を変えて筋を入れたところは織り縮み率が違いますので、ビクビクなのですが、これはいい感じの表情のうちで収まったと思います。
耳はこの写真が分かりやすいかな。糸を変えるときは、余計な糸が出ないよう、端を前の段に織り込みながら、進みました。
おタイコと前帯。
おタイコと前帯と手先。
手先には黄色い三角柄は入らないけど、色糸の筋は入ります。これはまり子さんのアドバイス。端々まで仕事がしてあっていい感じになったと思います。
今回は、本当に三人で意見を出し合い、力を合わせて作りました。ご意見を取り入れることで、もうひとランク出番の多い、使いやすい帯になったと思います。ありがたいことです。
細部をのぞいてみましょう。
地の部分。タテもヨコもさすがの光沢。光るね。絹の持ち味だね。
三角のとこ。イエローの染料がしっかり繊維に食い込んでます。
銀糸のところ。細く控えめに光ります。
帯は、すでに仕立て上がって、納品を待つばかりという状況みたい。きよさま も、ワクワクして待たれていると、まり子さんから伺ってます。
こちら、夏物向けではないので、着用はもうちょっと先かな。今回は、ブログで楽しみにされてる方もおいでだろうから、載せてオッケーとなりました。ご配慮、ありがとうございます。
こちらは、きよさま にお渡しした糸見本。
きっと遠くない将来、締めていただいたお姿を拝見できることでしょう。その日を心から楽しみにしています。
たくさま のONLY ONLY、本番に使う糸が出揃いました。
早速織ってみます。3回目の試し織りということになるけど、これは、たくさま と話し合うためというより、調子を見て、自分の指針を測り直すため。
(上の写真がそれです。半分より下のおとなしい部分は違いますよ。ネップが入っているところね。あと、ネップの入り方は本番とは違います。念のため。)
ふむ。よかろう。いいんじゃないか。やるだけやった。あとは、行くのみだ!
上の写真、左上が1回目の試し織り。右上が2回目。右下が3回目。これらをもう一度、よく見て、頭にしっかりインプットして、さあ本番、行きますよ。
たくさま のONLY ONLY、ヨコ糸は染まりましたが、実は、試しを織っている時から、悩んでた。それは、糊付けをどうするかったことが。もうちょっとだけ硬くしたいし、その硬さをキープしたいのだ。
たくさま 、重くて、硬いのが、苦手になってきたと書いてられた。が、柔らかすぎては八寸帯にならない。いつも使っている糊は、いい具合に硬いのだが、それは落ちるものなのだ。
それで、以前から、取れない糊にチャレンジしてみたかった。今こそ、そのとき。「こんにゃく糊」だ。
上の写真は、糊を溶かしているところ。
さあ、糊ができましたが、粘りが強くて、綛のままでは、糊つけ無理だな。一本糊つけ、するしかないな。
はい、これが一本糊つけ。木枠に巻いた糸を、糊液をくぐらせて、別の木枠に巻き直すのです。
別角度から。下の動画も見てね。
*メルマガとって下さってる方へ。
先日配信の、《 some ori 通信 》16通目のメルマガ【こんにゃく号】に、私、こんにゃく粉を「5%」の糊液にしたと書きましたが、正しくは、「0.5%」の間違いでした。お詫びして訂正します。
付け加えますと、0.5%の水溶液ということで「owf」ではありませんので、そこんとこよろしく。
メルマガ、丁寧に読んで下さっている方が、いてくださって、身が引き締まります。ありがたいことです。
もし読んでみたい方は、こちらから。→☆
たくさま のONLY ONLY、本番用のヨコ糸の準備もちゃくちゃくです。色は、たくさま から送られてきた色見本を目標に染めましたよ。
ネップに入れた真綿も、こうやって、たくさま の色見本の上に、いろんな色糸を乗せてみて、色を吟味して、その決めた色を目標に染めたんですよ。
上の写真は、地にまぜる濃い色の糸。濃い色と薄い色を両方使って、杢糸を作ります。
染まったら、どんどん巻きます。
巻けました〜。
たくさま のONLY ONLY、ご注文内容は、実はとてもシンプルです。しかし、シンプルなのが一番むずかしい。これ本当です。ただシンプルに織っただけじゃ、つまらないものになる。
たくさま は、糸味とか、風合いとか、凸凹とか、そういうの大事にされる方。それは、いっとう始めから伺ってる。どう応えるか?
うーむ、では、糸を作ろうかな。ネップとして差し色で入れるために真綿を入手し、12色に染めた。そのうち、4色はごく薄い色だ。それらを紡いで、タイコと前帯部分に、地の絹糸に添わせて織り込もう。
で、早速つむぎます。よかったら、上の動画ごらんください。
ほら、こんな風になるのです。これが表情になる。
ヨシダ、全身を使って、糸を作ります。
ちなみに、染める前の真綿はこれです。→☆
12色に染めたのはこれ。→☆ 赤や青や紺などの真綿は糸でなくネップになる。
2回目の試し織りをたくさま にお送りしたら、到着してすぐ「かなりいい感じ」とのメールが。ちょっとだけ安堵。
しばらくしてメールしてみると、「帯地は素敵に仕上げていただいているので大満足してます。差し色でちょっと悩み中。」との返信が。
お、お悩み中ですね。急がなくていいですよ、焦らずたくさまのペースでお願いしますと返信。しかし、帯地自体は気に入ってくださっているようで、ホッとしました。屋台骨がオッケーということだから、ひとつクリアと言ってもいい。
それからもうしばらくして、たくさま から、お手紙を添えた試し織りが、返信用のレターパックでやって来ました。
ふむふむ。たくさま から提起された問題点は3点。
1、ネップで入れた真綿糸の差し色のうち、青だけが目立って見える。
2、タレには差し色いらない。
3、試し織りに作っていた、「濃いところ」「中間」「白っぽいところ」は、「中間」で行きたい。
まず1は、、、うーむ。そうですね。試し織りでは、確かに青、目立ちますね。それに、登場回数も多かった。無くすのもありか?青のところを伏せてみます。うーむ。ちょっと寂しいなあ。個性的な青だから、入れると、山椒が効くみたいに、締まると思う。それに、たくさま 、「効かせた感じ」とか「にくい感じ」のカッコイイ系が似合われると思うのよね。この青、目立たないように、ごく少量、回数も少なく、例えば、タイコに3箇所、前帯に2箇所くらい入れることにしてはどうでしょう?
2は了解。色は入れないけど、凸凹は作りましょう。手先も同じでいいですか?
3も了解。濃淡を作るのではなく、全体的に統一感を出しましょう。
上記のように、メールすると、ご賛同いただけました。よっしゃ、それではいよいよ本番!
*写真は、試し織りの上に、差し色にした真綿を乗せたところ。この真綿をごくごく少量とって、ヨコ糸に撚り込んでから織るのです。右が出番を減らすことになった青。
たくさま のONLY ONLY、1回目の改善点を踏まえて、糸や真綿を染め直して、2回目の試し織りをします。
上の写真は、新しく染めた真綿。これをフツフツと織り込んで行く予定。洋服地でいうならツイードがお好みのたくさま 、ツイードチックな感じをこれらの真綿で出していきます。
糸も新たに染めて、糊をつけましたよ。巻いているのは、手伝いに来てくれたmoyu さん。この後、合糸して、小管に巻きます。
さあ、織れた。2回目の試し織りです。
全体像はこんな感じ。あれこれ説明を書き込みます。
ヨコ糸、けっこう色々入れてます。どこまで違いが出てるか分からないけど、そこはかとなく感じられると思います。
図面を書いて、お手紙を書いて、比較のために一回目の試し織りも入れて、今回もレターパックで、高松のたくさま に向け、発送します。
1回目の試し織りを高松のたくさま にお送りして程なく、レターパックが送り返されてきました。
たくさま 、感想やご希望を付箋に書いて貼ってくださってて、わかりやすい。ありがとうございます!
私が染めた色にはなかった希望の色も、ご自分で見本を探して、貼り付けてくださってます。こういう時、ものづくりは共同作業って思います。
お手持ちのお着物に合わせてご覧いただいたみたいで、「(数種に織り分けている試し織りの中で)〜〜あたりがしっくりなじんで見えました」などともお書きいただいてます。
こうやって、試し織り段階で、お客様と直接やりとりできるのが、ONLY ONLY の最大のいいところかも。
一般的には、お誂えと言っても、はじめに一度ご希望を伺うのみがほとんどだと思う。だって、そうしないと効率悪いから。
でも私はそれじゃ、本当にお望みのものって作れないと思うのよね。お望みって複雑だし、いっぺんには表現できないと思うのです。お客様もご自分が欲しい着物や帯の詳細を伝えるなんて、慣れてないのも当たり前だし。
こっちだって、お聞きしたことが体現できるのか、できたとしてモノとしてカッコいいのか、それをお客様が本当に望んでいるのか、、、「やってみないとわからない」ってのが、本音です。やってみないとわからないのだったら、やってみればいいじゃん。ねえ。だから、試し織りをして観ていただきます。
たくさま は、そのほかにも、
「この色はちょっと苦手です」
「この2色をこちらくらいにすると暗くなりすぎますか?」
「グレーっぽい、紺のような色はおかしいですか?」
「(真綿が織り込まれた)フツフツとした感じ好きです」
「(手持ちの帯に似てくるので)今回は黄みよりの地色は無しでお願いします」
などなどお書きくださってます。オッケーっす!だいたいの雰囲気的なものは大丈夫ですね。では、糸と真綿をお好みに染めましょう。黄みを入れないようにね。
*写真は染めの途中。
たくさま のONLY ONLY、よっしゃ、いよいよ本番を視野に入れた、試し織りだ!
タテ糸、ヨコ糸、ネップに入れる真綿を、染めたり、巻いたり、いろいろ話は長くなるので説明は大幅に端折りますが、多々の準備段階をへて、織ってみます。
はい、織れました。さあこれをたくさま に見ていただくのだ。
詳しく説明を書いて、(でも、書きすぎないようにして。どうしてかと言うと、私が自分の思いを書きすぎると、たくさま の判断をじゃましてしまうかもしれないから。)
使った糸と、真綿は実物を貼り付けて、(真綿、可愛いでしょ。たくさま にどんな色を入れたいか、お聞きしたら、黄色系、紺系、赤系とのことだったので、それを中心に、地味系の色も入れて、合計8色染めたのですよ。)
お手紙を書いて、(達筆のお手紙をくださったたくさま に対して、パソコンの字で申し訳ない、、、、)
返送用のレターパックを添えて、高松のたくさま の元へお送りします!
さあ、どのような反応が返ってくるかな?
この春のある日、たくさま がお手紙くださいました。
美しく、丁寧な優しい筆跡で、悪筆の私は見とれるばかりです。色見本も貼り付けて下さってるぞ。どれどれ。
おー、たくさま らしい、お地味な色だなあ。笑。
色のイメージはこんな感じと。生成りの糸と重なって、織り上がりはもう一段薄い仕上がりかなと思ってらっしゃると。淡い色目が良いなあ〜と、書いて下さってます。
これはまさに「たくさま ワールド」だなあ。ふむふむ、これをもっと薄くした色ね。よし、了解しました。
その後、たくさま 、お持ちのお着物の写メを送ってくださいました。
メールも行き交います。
たくさま 、毎回メールに、「思ったままを伝えておりますが、、、、」「あれこれと無理難題を好き勝手に申し上げますが、、、」などと少々恐縮した感じで添えて下さいますが、それは全く構いません。むしろウェルカムです。その方が、ご希望がダイレクトに伝わります。なんでも書いてください。
次のメールにまたまた大事なキーワードが!
「着物を始めたころから約20年がたち、手持ちの着物も帯も濃い色目が多く、今は『淡い優しい色目が欲しい』と思っております。(でも『パステル調ではない』です。笑)」(カギ括弧、ヨシダ)
む、これは、思ったより、ぐっと薄めで行っていいかもしれません。
前回のブログの続きです。(よかったら、前回の写真ご覧になってくださいね)
たくさまに3枚の写真を送って、どれがイメージに近いですかとお聞きすると、、、
「1番が好きです!」
と即答される 。
「色の感じはもっと薄いのがいいですが、糸の感じは好きです!」と。
「差し色の糸の感じも好きです。もう少し短くてもいいかもです。」と。
そっか、、、、なるほど。1番か〜。それ、もっともシンプルなのだ。
うーむ。
1番の黒糸の代わりにグレーを染めてそれ一色で織ることにして、ところどころ差し色でネップを挟むのだったら、簡単といえば簡単なのだけど、たくさま が求めているのはそれではない気がするんだよな。もう一つ、何か見つけたい、、、
うーーむ。悩むなあ。考えても埒あかんから、では、まず外堀から埋めよう。
たくさまが気に入られているネップにする真綿を用意しよう。
真綿ってご存知ですか?綿っていうと木綿を想像される方いらっしゃいますけど、真綿は絹です。繭を煮て、拡げたものです。ふわふわしています。
ロットの関係で、たくさま の分だけを買うのは無理なので困っていたら、上の写真のような上等な真綿を、染織仲間が、譲ってくれました。なんとありがたい。
たくさま のONLY ONLY、ご希望は地味めなのはよく分かりましたが、イマイチ、私、つかめてません。こういう時は、体、動かしたいな。ちょっと織ってみよう。たくさま のの試し織りというより、やってみたいという好奇心から。ちょうど、一本織り終わって、機が空いたのもあり。いろいろ実験をして模索をしてみよう。
まず、上の写真。タテ糸は白っぽく。ヨコに黒を。たくさま のお好みはもっと淡いとわかってるのだけど、杢っぽくするにはある程度色の違いがあったほうがいいのよね。ちょうど黒のキビソがあるから、それで織ってみた。画面上のストライプになっているところは違います。また別の実験。
上の写真だとピンクしか見えないけど、何色か真綿をネップ状にして織り込んでみた。
むー、こんな感じでいいの?ひねりが足りなくない?
よし、じゃあ、タテ糸にブラッシングカラーズ やってみよう。淡めのグレーにしたつもりが、結構濃いな。
ブラッシングカラーズ を淡いベージュにしてみた。
これらの写メをたくさま に送ってみよう。
こんなことをしていた頃、メルマガ上で、横浜のそごう美術館で開催される「池田重子展」のご案内をさせていただきました。そしたらなんと、たくさま 、高松からお越しくださったのですよ。私は都合つかず、お会いできなかったのが残念でしたが。
この行動力に「ブラボー!」と喝采をあげたくなりました。観たい、行きたいと思えば、少々遠くても、スケジュールをやりくりして体を移動させる。できそうでできません。思い起こせば、たくさま 、熊本にもお越し下さいましたものねえ、、、。行動力というか、瞬発力というか、好奇心というか、、、すばらしい。大好きです。
たくさま とのメールのやりとりは続きます。
写メがもう一枚、送られてきました。こんな感じのベージュ杢(もく)が好きです、って書き添えられている。これはソックスなんですって。こんな感じの帯か〜。お地味ではあるが、すっごくおしゃれなものになるな。
メールを読むと、
「またまたひとりごと。素人が好き勝手言ってると笑い飛ばしてくださいませ。
タテ糸かヨコ糸かわからないですが、どっちかは生成りの無地。糸が太いとこと細いとこがあるような…
もう片方は、グレーのようなベージュのような色がベース。1割くらいの部分にランダムに、赤や紺、茶や黄色、橙、 緑、紫や、、、。色が入るのはお太鼓と前帯あたりで良いかな。」
いやいや、すてきです。何がご自分に似合うか、ちゃんとわかってらっしゃる方です。徹底してらっしゃる。
杢ねえ、、、どうしようかな。
たくさま 、続けてもう一枚、たまたま見つけたと言う、いい感じの写メ送ってくださいました。色はもう一段、薄くて淡いのがご希望とのこと。
ふむふむ。メールのやり取りを続けて、いくつか新たなキーワードも出てきました。曰く、、、
– 単衣の時期にも締めたい。
– 重く、厚く、硬いのは苦手。
– 凸凹好きです!
たくさまと、メールのやりとりがはじまりました。お話を聞くと、たくさま 、相当お地味目の帯をご希望です。
メールのやりとりで出てきたキーワードは、
– 帯地に表情があるのが好き。ツルッとしたのではなく。
– 白っぽいのが欲しいな。鮮やかなパリッとした白でなく。
-(拙作)グレイッシュバンピーが好き。でもいま欲しいのは、グレーじゃない。(帯の画像→☆)
-(拙作)ブラックパープルも好きだけど、今回は白っぽいのが欲しい。(帯の画像は、ここのページの下の方にあります)
– 洋服の生地だと、ツイードも好き。ベースの色にさまざまな色が見え隠れしているところ。きなりベースに赤や茶、紺色、水色、黄色とか、そんなものアリ?
うわーー、これはかえって難しいぞ。さあどうする?
それで、私は、何かピンとくるものがあれば、写メ送ってくださいとお願いしました。洋服地でもなんでも、こんな帯だったらいいなとかあれば。カーペットとか、カーテンとかでもいいですし。布地でなくても、壁でも、何かのパッケージでも。
とお願いしましたら、さっそく上のような写真を送ってくださいました。お手持ちのカーディガンだそうです。ふむー、これをどうやって、帯として昇華させるか。難問です。
2016年11月20日に、熊本で1日だけお会いした、たくさま。ご縁はそれっきりになってました。
そして時はたち、2017年の9月8日、このウェブサイトをリニューアルしたばかりで、まだご挨拶状も出さない時、ふっと固定電話が鳴りました。
「あの、、高松の〇〇です。熊本でお会いした、、、、」
とおっしゃるたくさま。〇〇は苗字です。瞬時にはわからず。でも、声の様子などから、、、
「ああ!!!!熊本でのお食事の時、斜め前に座ってらした方ですね!!!」
うっわー!電話いただけるなんてびっくり。それもサイトリニューアル公開してすぐのドキドキしている時に!
お話を聞くと、たくさま、ちょうど私のサイトを開いて見たら、新しくなっていたので、お祝いをと思って電話してみようって思われた由。なんと、うれしい。感激しました。
で、いつか帯と思いつつ、なかなか依頼できずにいたけど、欲しい気持ちが高まって、、、みたいなお話しもして下さる。
だったら、ゆっくり進めましょう。やりとりはメールがいいですよね?メールアドレス、教えてください。口頭だと間違えるから、よかったら、サイトのお問い合わせから、一度メールくださいよ。
あ、または、メルマガも取ってくださいません?それだったら、メルマガの申し込みからメールいただければいいですよ。
というわけで、たくさまは、最初期からのメルマガ読者です。笑
*写真は、その後のたくさまとのメールのやりとりをプリントアウトしたもの。印刷しておかないと、消えちゃうじゃないかと心配なんですよね。画像、荒くしたから、判読できませんよね?
さあ、新たなるONLY ONLY をはじめましょう。今回のヒロインは、「たくさま」。お作りするのは、八寸帯です。
たくさまとの出会いは、2016年11月20日です。2016年というのは、忘れられない大きな年。そうです、熊本地震があった年です。思いも寄らない大地震が故郷熊本を襲いました。直後はあたふたするばかりで、何もできませんでした。
ちょっと落ち着いた頃、「美保子さん、熊本で個展しないの?みんなで復興応援かねて見にいくのに。」とおっしゃってくださった方があったのです。
「!」
そんなこと、思っても見ませんでしたが、相談して見ましたら、熊本のいけてる呉服店の和の國さんや、着物ライターの安達絵里子さんの全面的な協力をいただき、あれよあれよという間に「清正公の陣羽織」と銘打った個展を開催することができました。
その個展に、「きもの真楽」という着物好きのグループの皆さんが、誘い合ってお越しくださいました。関東、関西からがメインですが、名古屋や香川県の高松からもお越し下さった方があったのです。
たくさまは、その高松から熊本へ、瀬戸内海を渡って、なんと日帰りでお越し下さった方なのです。
*写真は「清正公の陣羽織」展。和の國さんにて、みなさんと。
きよさま の帯、織り上がりましたよ。
早速仕上げをば。
まず蒸します。温度を与えることで、発色と定着するんですよ。その後、たっぷりの水で洗って、余計な染料などを洗い落とします。そして、仕事場いっぱいに張って、乾燥させます。
上の写真、手前がお腹の部分です。地色がクリーム色なのお分りいただけると思います。その先、地色の色がごく薄いグレーになります。三角が三つあるところがおタイコで、その先にちょこんと一個だけある三角がタレです。
こういうおタイコと前帯で、地色が違うのって、ONLY ONLY ならではです。オリジナル制作ではまずしません。きよさま とお話しした時、パッとご希望おっしゃられたのです。きっと、潜在的にこういうのがあればいいなって思ってらしたんじゃないかなあ。ご希望を叶えられてよかったです。
下から覗くとこんな感じです。伸子を張って、織り幅を整えます。
上の写真は手前がおタイコ。
さあ、ここまで行ったら湯のしに出して、検反してお納めです。今回は、まり子さんが、お仕立て、ガード加工などをして下さって、きよさまのところに届けて下さいます。
ですので、完成したお写真は、そのあと、お披露目させていただきますね。仕上がりはやっぱりまずONLY ONLY の主人公であるきよさま にいっとう最初に見ていただきたいものね。
というわけで、きよさま ストーリー、中締めさせていただきまして、完成形はまた後日載せますね。乞うご期待!
ONLY ONLY、きよさま の八寸帯、織ってますよ。もろもろ準備を整えましたので、あとはGO!GO!
しっかり打ち込みながら、織り進めます。
ほら、ここに織った部分が巻かれて行きます。だんだん太くなって行きます。
きよさま のONLY ONLY、もろもろ決定しましたので、あとは実行あるのみです。
まず、糸。
糸は上の写真のものがヨコ糸です。この糸、懇意にしている糸屋さんが、ヨシダ用に作ってくれたのですよ。ちょうどいい太さと質のものが売られてなく困っていたら、作ってくれました。ま、ロットも多いし、お値段もそれなりなのですけどね。
その糸屋さん曰く、「絹糸は、安かろう悪かろうだから、人様に売っていくなら高いの買いな。そうすれば、質がいいものできるし、お客さんにも信用される。」
うぐっ。確かにそうだ。この糸屋さんとは、かれこれ、15年くらいのお付き合い。毎度お高い糸を買って、やりくりにヒーヒー言っております。
染めは、薄いグレーとクリーム色に。グレーの方は、後ろ姿担当で、タイコ、タレ、手先に使います。クリーム色は、前帯部分担当です。グレーの方は銀色、クリーム色の方は金色の印象です。
きよさま のONLY ONLY、ヨコ糸の太さ、まり子さんがすぐ返事くださり、ご自分ももうちょっとしっかりさせた方がいいのではないかと思っていたとのこと。八寸帯は芯を入れない前提で作りますので、大事なのです。よかった、合意した。太くしましょう。
さて、では最終稿を決着させて行きましょう。
タレには、色の筋は入れないつもりですけど、いいですね?あと、手先はどうしよう?スッキリ無地でいいかしら?
これは、完全にお好みなのです。今までの経験からいうと、関東の方はスッキリ系を好まれるので、タレと手先は柄がない方が人気で、関西と中部の方は隅々まで仕事がしてある方がお好みかな。
きよさま とまり子さんに連絡しました。
そうしましたら、手先には色の筋が入っていた方がいいとのこと。華やかな方をお好みなんですね。了解。じゃ、紙で、小型帯を作ってみますね。縮尺は合ってますから、こんな感じの帯になります。
きよさま のONLY ONLY、ご希望が出そろったところで、2回目の試し織りをしましょう。糸づかいは、本番と同じで、、、、染料も本番を見すえた調合で、、、、
まあ、2回目もとにかくやってみるのです。糸を準備して、染料を作って、ブラッシングして、織って、蒸して、水元して、、、、
と、一通り、全部やって見ました。こうすると、本番の帯とほぼ同じ、布になります。ためつすがめつ、ながめます。引っ張ったり、折り曲げたりもします。(上の写真の手前が2回目の試し織り。奥は1回目の試し織り)
ふと思いました。タテヨコ、バランスいまいちだな。ヨコ糸、もうちょっと太いほうがいいのではないか?それで、計算を入れます。今織っている糸の太さは、前回のと比べてどうだろう?糸の種類が違うから一概には言えないけど。精練済みだから、セリシン落ちて練り減りしてるし。
うむ。これは、太くしたほうがいい。よし、きよさま とまり子さんに相談してみよう。
きよさま のONLY ONLY、1回目の試し織りをお送りしましたら、きよさま とまり子さん、お二人でご覧になって、あーでも無い、こーでも無いと、楽しい時間を過ごしてくださったようです。こういう時間が一番楽しいね。
試し織りといっても、布感は本番とほぼ同じですので、実感わかれたことと思います。
それで、きよさま のご要望によると、「ヨコ糸は座繰り糸の太めでいく」「三角の黄色は落ちついたイエローにする」「筋に入る色糸は、黄色、深緑、空色、銀色の4色にする」「タレにも三角の柄を入れる」などでした。
オッケーっす。ではデザインをし直ししますね。
まず、三角の位置と大きさを整えて、次に筋の色糸の入り方を決めましょう。4色のバランスをどうするかな?黄色を多くして黄色の帯の印象にするか(上の画像の左)、深緑を多くして、大人っぽい感じにするかだな(上の画像の右)。イラストレーターでふた通り作って、画像を添付して、メッセージします。
まり子さんがきよさま と相談してくださって、深緑多めの右の画像となりました。落ち着いた感じですね。汎用性ある帯になりそうね。
きよさま の「急がなくていいのよ」という優しいお言葉に甘えて、私はその後、別の仕事にせっせと邁進しておりました。そしてこの春になって、さあいよいよ、きよさまの番 !
私は、まず「やってみる派」です。やってみて、お客様と一緒に「見つける派」です。今回は、きよさま とまり子さんがいてくれるから、三人よれば百人力です。
さあ集中して。長くなるので、説明は端折らせていただきますが、まずタテ糸の準備。ブラッシングの染料の調合、提案できるよう数種類。ヨコ糸の準備数種類。これは本番用とは別に。デザイン起こし。ささ、試し織りをしましょう。
その中で何を見つけるか?きよさま は、拙作「スタイリッシュな三角」をお気に召してくださってるのだけど、私としてはただの色違いではなくて、もっときよさま にぴったりのものを作りたいのだ。
そして、思いの丈を説明したお手紙を添えて、遠く鹿児島に向けて、レターパックで発送します。実物を見ていただくのが一番ですものね。
さて、この日、きよさまとまり子さんと、話したことは、、、、
私がまずお聞きしたかったこととは、、、、
今回の帯、1番のミソは、ブラッシングカラーズで入れる、黄色の三角の色だと思うんです。
黄色と言ってもいろいろあります。レモン色、山吹色、クリーム色、濃い黄色、ペールな黄色、パステルの黄色、濁らせた黄色、、、、いかようにもなるし、ここで、その帯の特徴が決まります。特徴って、いまの言葉でいうと、キャラと言ってもいいかもね。
どんな黄色をお望みですか?
きよさまにお聞きすると、ほとんど偏りのない、どストライクの黄色をお望みです。強くてきれいな黄色です。ちょうど、この日、まり子さん、私の織った帯を締めてきてくださったのですが、その黄色。たんぽぽ色とも言えるかなあ。
筋に入れる糸の色も大事です。どうしましょう?すると、くるっと部屋中を眺めるきよさま。「こんな色がいいわ」とおっしゃったのは、我が家にあったすでに染まってる、空色とダークグリーンの糸。まあ、これがもしそのものズバリだったら、これ使いましょうか?
あと、銀糸をお望みです。銀を入れて華やかさを出しましょう。
そして、もう一つのお望みが、地の色をおタイコと前帯部分で、少々変えることです。こっちは、私が持っている色見本をお見せして選んでいただきました。おタイコは薄いベージュ。前帯は薄いクリーム色。ふむ。面白いね。
よっしゃ、一旦ノートに書いたご要望を、まとめて紙に落とし込みますね(上の写真)。後日、まり子さんにお送りしますので、一緒に確認してくださいね。
昨年の9月22日の午後、きよさまと、まり子さんと、まり子さんの妹のMさんが、我が家を訪ねてくださいました。
きよさまとは、お初にお目にかかります。まり子さんとMさんとは久しぶり。我が家にお越しくださるのは初めてです。女性が4人ですから、話は絶えることなく。とても盛り上がったのを覚えています。
せっかくだからと、私が織ったものを見ていただきました。
きよさま、角帯に興味を持たれました。ご主人様もおきものをお召しになるんですね。まり子さんとなにやら相談なさってます。そしてすぐにこれが欲しいと。
それから、ショールも。5枚ほどあったのですが、「これ」っとすぐ決められます。すごいなあ。決断が早い。それも的確。私はダラダラ悩むタイプなので尊敬です。
そして、「八寸帯 スタイリッシュな三角」をご覧になるやいなや、これが好きだけど、青は私の色じゃないのよ、黄色がいいのよと。だったら作っていただけばとまり子さん。あ、よかったらよろこんでと私。
じゃあお願いします。とそこで話が終わりそうになるので、「ちょっと待ったー!」
あ、いえ、せっかくONLY ONLY でお作りするなら、ただの色違いでなく、きよさまにとって最高に一本になるようにしたいです。ひと口に「黄色」と言ってもいろんな黄色があるわけですし。地の白もこの「スタイリッシュな三角」では、極薄のブルーグレーで染めて、シャープな感じを出しているんですよ。三角の大きさや配置もいかようにでも変えられますよ。
そうしましたら、きよさま、さすが決断力がありますね。バシバシご希望おっしゃいます。お好きなものが明確なのですね。それにまり子さんが、的確なアドバイス。私はしっかりとノートを取ります。
急ぎませんよというありがたいお言葉いただいてホッと安堵。では後日、ご希望をもとに簡単なデザインをお越し、お見積もりと共に郵送しますと申し上げました。
さあ、新しいONLY ONLY ストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは、「きよさま」です。きよさまは、ここから遠く離れた鹿児島の方。さて、どうやって、きよさまと私が巡り合ったか?それも今回の「きよさまストーリー」の大きなポイントです。
さあ、お話のはじまりはじまり〜〜〜。
きよさまストーリーは、今までとちょっとだけ違うのですけど、それが何かと申しますと、きよさまと私の間を取り持って、一緒にもっといいものを作りましょうという、力強いパートナーがいてくださるってことです。
その方は、鹿児島でM’s HEARTという会社をされている林まり子さん。まり子さんは、お母さまの代からきものに大変お詳しく、着付け教室や着物の展示会もされていて、鹿児島の着物好きの方々に、とても頼りにされている方なのです。
大島紬の本場の鹿児島にいて「大島紬もいいけれど、それ以外にもいっぱいいいものがあるよ、もっと着物で楽しもうよ」って、広めていらっしゃる方です。
そのまり子さんが、昨年秋に、ご連絡くださいました。懇意にしている着物好きの方が今度上京されるので、ご自分と妹さんも予定を合わせて上京する。その時、ミホコさんのお仕事場にお邪魔できないか?
まあ、もちろん、ウェルカムです。
で、秋のある日、まり子さんご姉妹と一緒に我が家を訪ねてくださったのが、きよさまというわけです。
*写真はこの春。ちょっと遠出した時。今回のストーリーもこんな感じに進めるぞー。
うわぁ!なんと美しいのでしょう!美しすぎてため息が出そうです。
画家の朋百香さんです。京都で開催されていた個展会場でのお写真を送ってくださいました。個展のレセプションで、ONLY ONLYでお作りした帯、締めてくださったのですよ。
さすが、ぴたりとお似合いですね。朋百香さんの絵を元に織った帯だから、当たり前かもしれないけど、周りの作品や会場の雰囲気と溶けあって、朋百香さんの世界がふんわりと完成しています。
鱗紋の大きさとか、色のバランスとか、よかったよね。締めていただいて完結ですので、お姿の写真いただき、本当に安堵しました。
合わせていただいているお着物は八丈織だそうです。朋百香さん、お忙しい個展会期中、帯と着物に守られていたように感じたって。うふ、うれしいエピソードね。
個展は大成功だったそうです。私は残念ながら出かけられず、画集を拝見したのですが、墨と絵の具の自由なこと。すばらしいです。本物拝見たかったなあ。
朋百香さんのサイト→☆
この帯のメイキングストーリーは、こちらから→☆(スクロールして、時間をさかのぼってご覧ください)
何重もの意味で、じーんとうれしいお写真いただきました。
これは、熊本地震で大きな被害を受けたお宅が、改修工事を終え、地域のみなさまにお披露目しようと、会を持たれたときの写真です。築135年の古民家で、相当なダメージだったらしいのですが、立派に復活したと。外壁にはフレスコ画が描かれ、街並みともよく馴染み、すっごく素敵みたいです。次、帰省したら、絶対観に行くわ!
場所は、熊本市南区川尻。この辺りも、地震の被害、大きかったのだよね。2年たって、やっと改修工事が終わったのですものね。まだのところも多いでしょうね。
さてさて、木槌を振り下ろして鏡開きをしたこちらの男性、どなたかお分かり?お召し物に見覚えは?
そうです!くりさまです!!2014年にONLY ONLY で取り組ませていただきました、お着物、お羽織、角帯をお召しです。見えないけど、羽裏も染めさせていただきました。一式をお召しくださり、晴れの舞台にご登場です。(制作工程はこちら→☆ スクロールしてさかのぼってご覧ください)
お納めして4年、いい感じで育ってくれてますね。うれしいなあ。
そしてそして、鏡を割られたこの樽は、地元川尻のお酒、瑞鷹です。ここも地震の被害が大きく、作れない期間が相当あったのでは。瑞鷹も、しっかりと復興している。うれしい限りです。
みなさま方から着物姿を褒められたくりさま、瑞鷹を勧められるままきこしめし、たいそうご満悦だったと、奥さまからお聞きしました。
あ、奥さまというのは、ここにフレスコ画を描かれたアーティストです。大事な日に、夫婦そろってお着物とは、本当にすばらしい。「着るまでが大変だったけど、着たら皆さんが喜んでくれて、うれしさ2倍でした。」とおっしゃってましたよ。
そしてこちらが、そのフレスコ画です。なんと、テレビでも紹介されたのですよ。こちら→♡
完全注文制作ONLY ONLY、なおさまからのご注文、コラボの手織り鞄。善林さんから仕立て上がってまいりましたよ!早速お納めいたしましたら、たいそう喜んでくださって、美しいお写真、送ってくださいました!
うわあ、なんとお似合いなのでしょう!
鞄のクローズアップ。
背面はこれね。こちらはうちで撮影。
なおさまは、今、展示会でお世話になってる伊勢丹新宿店に長くお勤めで、ずっと呉服売り場を担当なさっている方です。売り場ではもちろん、通勤もおきものだそうで、ほぼ毎日、一日中きもので過ごしてらっしゃいます。
伊勢丹の呉服売り場の方だから、いいものいっぱい扱ってらっしゃいます。そんな方に、ONLY ONLY いただけて、そして心から喜んでいただけて、大変に光栄です。
今回、なおさまのご希望で、鞄の縁や底に革を使っています。仕立ての善林さんは、相当ご苦労したみたい。ブログご覧ください。→☆
メインバッグとして(サブバッグでなく)、長く使い込みたいというなおさまのご希望を、叶えられてよかったです。マチがあるので、お弁当でも日傘でも、なんでも入ります。鞄自体は軽いから、持ち歩くのが苦になりません。
で、ね!
昨日の伊勢丹初日、売り場に、なおさまの上司の方が見えられて、この鞄をしげしげご覧になって、大変感心されてました。このお方、元は婦人靴のバイヤーなども担当させれていたそうで、モノの作りなども、大変わかる方でした。
こりゃー、手が込んでるなあ、細かいところまでよくできてるなあ、、
(縁取りなどをご覧になり)これは大変だったね、
軽さ、抜群だね、
布を切る時が一番勇気がいるねね、
などなど。
お値段の話にもなり、ピタリと言い当てられました。すごい!
こちら、我々の鞄のONLY ONLY の中では、桁が一つ違うのです。高額だけど、それだけの仕事だと自負しておりますが、プロ中のプロに、太鼓判押していただいたようで、うれしかったです。
この伊勢丹の偉い方、私にお名刺くださったけど、すごいのは私じゃなくて、善林さんなんだけどね。お伝えしておきますね。
(上の写真の右に写っているのは、底板です。)
内ポケットの幅なども、なおさまのご指定どおり。
この鞄、ただいま、伊勢丹7階の呉服売り場の私のブースで、参考商品として展示させていただいております。よかったら、見にきて!作りの良さ、軽さ、味わっていただきたい。
以下、展示会の内容です。ぜひお運びください。
「ときめく手わざ 華・粋・遊」
4月4日(水)〜4月10日(火) 会期中無休 10:30〜20:00
伊勢丹新宿店本館7階/特選きものプロモーションスペース
参加メンバーは豪華7組!
久保紀波 絞り染め:帯
松永恵梨子 小紋染:帯、着尺
吉田美保子 染織:着尺、帯、善林英恵さんとのコラボの鞄
峯史仁 組紐:帯締め
大城令子 染色:バッグ、半衿
富沢麻子 木工:バッグ、帯留
アトリエKinami :扇子、日傘
私が会場にいるのは、以下の予定です。
これ以外の日時にご来店予定で、もしヨシダに会いたいなどご希望あれば、よろこんで調整しますので、お気軽におっしゃってくださいね。
お待ちしております。
コラボでお受けしております、もまさまのONLY ONLY、仕上がりましたよ!
私が、伊勢丹準備で明け暮れている間に、善林さん、仕事進めてくれてまして、完成しました。コラボのいいところですね。自分の持ち場をしっかりやれば、任せられるありがたさ。
もまさま、いろんなきものに合うように、地味目であることというのが、ご希望でした。
A4のノートを入れて、着付けやお茶のお稽古に行かれるのが、目的です。
持ち手は、もまさまのご希望でヌメ革です。
善林さん、ご希望通りに仕上げてくれました。丁寧な使いやすいつくりです。(善林さん、帽子のサンプルセールやるらしい。いける人、チャンス!)
いいんじゃない? ぴったりのものができたんじゃない?
よろこんでいただけるとうれしいなあ。
目標としたもランディとともに。
ONLY ONLY 、善林英恵さんとコラボで進めている鞄のご注文。ご注文主は、伊勢丹新宿店の、きもの売り場の最前線を背負って立つ「なおさま」です。
プロ中のプロにご注文いただき、ドキドキしてお待ちする打ち合わせの日。ご要望が可能かどうかは、善林さんに要相談なので、今回、初の試み、ネットを介したテレビ電話(?)の段取りを組みました。こうすれば、遠く京都の善林さんと一緒に打ち合わせができるってもんです。
その日、なおさま、お洋服で我が家にお越しくださいました。プライベートモードです。前回お越しくださったときは、プロの目利きという感じでしたが、今回は、リラックスして個人的なおしゃれを探るモードです。
ようこそ!ようこそ!
しかし、ここで大どんでん返しが待っていました。
挨拶して、椅子にかけ、話し始めた所で、、、、、、、なんと、形を変えたいとのお申し出。サブ的用途のA4タテ型から、メイン持ち大きめヨコ型へ。
うぅ、、、(しまった。善林さん、トワルまで進めてくれてる。間に立つ私の念押しが甘かった、、、申し訳ない、、、)
ONLY ONLYに変更はつきものです。思い描いていたものを、もっと深く考えたときに、少々変更が生じる。それはONLY ONLY の醍醐味です。ですので、要所要所で、確認しつつ進めるのがこちらに課せられた作業なのだけど、今回はその確認が甘かった。コラボということも裏目に出た。一人でやるときは、無意識に「ちょっと待て」サインをキャッチするのに、今回は、早めに善林さんに投げないとと焦った。
(この時のこと、善林さんも書いてますわ〜。ガクッとくるもすぐ態勢立て直す、さすがプロの善林さん。)
なおさまも、善林さんも、私も、テレビ会議みたいなものは初めてで(我々三人、だいたい同世代か?)、みんな初めは、「おぉぉぉーー」って感じで、和気あいあい、かつ、決めるところは決めるぜモードでがんがん進めました。やっぱ、顔を付き合わせるってすごいです。ネット越しであってもね。
なおさまの、デザイン的なご希望を、善林さんが直接お聞きできたことはすごくよかった。微妙なニュアンスってあるもんね。ご希望を的確に押さえるって、個人的なツーカーができたかどうかによりますものね。
さてさて、ご要望は出尽くしましたよ。
*上の写真は私が撮ったもの。画面に大きく写っているのが善林さん。右下のニッコリ笑顔がなおさま。
下の写真は、なおさまが送ってくださいました。「お仕事を本当に楽しんでなさっている、ヨシダさんの笑顔が印象的です(^^)」ですって♡
なおさまから、鞄のONLY ONLY のご注文をいただいて、すぐに善林英恵に連絡。4月の展示会に合わせたいというタイトなスケジュールですが、そこは受けて立ちましょうと。さすがプロだね。で、ご注文の詳細をお伝え。ご注文は、A4タテ型、マチ7cm、細めの持ち手。布の段取りやら、なんやかんや話し合います。
しばらくして段取りがついて、なおさまに、鞄の詳細の確認と、他にご希望がないかってことと、お見積もりの件で、連絡を差し上げました。
なおさま、すぐにご返信下さいました。なんと、もう一度我が家にお越しになりたいとおっしゃるのです。先日はザクッとお願いしてしまったからと。
まあ、びっくり。もちろん、ウェルカムです。ONLY ONLY は、納得いくまでが信条です。
善林さんからは、大急ぎで、トワル(型)の写真がやってきました。それも、平紐バージョンと丸紐バージョンのふた通り。幅28cm、高さ33cmくらいがいいと思うと。
おお、A4がピタッと入るね。いい感じ。
さあ、完成しました。朋百香さまの原画を元にして織った、鱗紋の帯です。
おタイコ。
前帯。
おタイコと前帯。
ズームアップ。
朋百香さまの原画と並べて。
朋百香さまは、「絵と織りは表現方法が違うのだから、そっくりにならなくていいのよ」っておっしゃってくださったけど、原画がとても素晴らしいので、可能な限り、踏襲しようと思いました。
もちろん、そっくりそのままとは行かなかったけど、「朋百香さまの絵の、凛とした美しさ」は写せたと思っています。
そうであれば、目的は果たせたかな。朋百香さま、そのものだしね。
お手紙書いて、糸見本を作ります。
さあ、朋百香さまのところで、しっかりね。
朋百香さまの帯のONLY ONLY、仕上げの様子です。
上の写真は、蒸しと水元をした後、伸子張りしているところ。今回、ヨコ糸を数種類混ぜて使っていることと、平織りと綾織を両方入れていることで、収縮率が違うので、伸子の間隔、狭めです。びっしり張って、布の幅を整えます。
さあ張れたよ。
布の収縮率、気にしていたけど、自然な感じになりました。ああよかった。
裏がこんな感じ。
乾いたら、湯のしに出して、お納めです。
伊勢丹での展示会のお話をしていましたが、ここで、新たなONLY ONLY をスタートいたします。
今回のヒロインは「なおさま」。すらっとした着物美人でいらっしゃいます。お勤め先は、なんと、伊勢丹新宿店本館7階、呉服売り場!
そうです、バリバリの現場最前線の方からのONLY ONLYです。
4月の展示会の打ち合わせのために、我が家にお越し下さった、伊勢丹のご担当の方三人のうちのお一人が、なおさまだったのです。
その時、織り機にかかっている布を見て、これは鞄になる布ですよと紹介すると、「私も欲しい」とおっしゃって下さったのです。
え!
まあ、なんとうれしいことでしょう。新宿の伊勢丹って、今の日本で、一番感度の高いデパートと言っていいのではないでしょうか?その現場でバリバリ働かれ、いいものいっぱい見てこられている方から、直々のご注文いただけるとは。
せっかくだから、4月の展示会に間に合わせられると、面白くなるかも。可能かどうか、善林英恵さんと相談します。
それで、どんな鞄をお望みですか?
なおさま、ちょっと考えられ、
メインのバッグに合わせて持つサブバッグ。お仕事に持つからA4が入るタテ型。お弁当箱を入れたいからマチが7cmくらい欲しい。メインバッグと二個持ちだから、特に持ち手は細めで、握りやすいこと。
とおっしゃいます。お弁当を入れるから、マチが7cmっていうのが、ものすごくいいなって思いました。リアルだわ。どんなにおしゃれでも、実用に不便じゃ元も子もないですものね。
*写真はこの日のなおさま。鞄の持ち手はこのくらいがご希望です。
完全注文制作 ONLY ONLY 、コラボで進めているもまさまの手織り鞄、布は私の手を離れ、デザインと仕立て担当の善林英恵さんの元にあります。さあ、どうなっているかな?
今回のグレージュの布は長さがありますから、どこをどう使うか、善林さんにお任せです。
「えいやっと決めた」と、連絡あり。善林さん、一枚の布にいろんな色相があって迷ったそうですが、少々ピンク味のある優しい感じの所を選んでくれました。
もまさまの以前のご注文の帯など見て、激しくない感じでと思ったと。ちょっとモランディを彷彿とさせますねと。ああ、本当だ。モランディは、グレージュの画家だね。
持ち手は、もまさまのご希望で、ヌメ革です。
と、ここまでは、先日までの話ですが、先ほど善林さんから連絡が。曰く「コバ(革の切り口部分)の部分が気に入らず、やり直してます。じっくり作らせてください。」
おお、さすがこだわりの善林さん。損得掛け値無しで、納得いくまでとことんやってしまう、作り手のサガでもありますね。
朋百香さまのONLY ONLY、織りの本番、水面下で進んでおります。
デザインも、色も、糸も、すべて決まっておりますが、何回も確認して、準備を整え、深呼吸して、いざ。本番を織る日々は緊張の毎日。
ヨコ糸は、16種類。杼に名前をつけて、使い分けます。
柳川千秋さんに撮っていただいた上の写真、朋百香さまの帯のタテ糸です。ぐんま200という繭からひいた糸です。本当にきれいな糸です。
もまさまのONLY ONLY、さあ、私的には本番です。タテ糸の準備、ヨコ糸の準備をへて、ブラッシングカラーズです。ここでほぼ決まると言ってもいい。緊張状態で、乗り切ります。そして、心をほどいて、織ります。
織れたら、整理して、蒸して、水元して、張り手で張って、伸子張りして、乾かして、スチームアイロン。
さあ、準備は整った。善林さんへ、発送します。あとは任せた!
もまさまの鞄のONLY ONLY、ではご希望の色を、実際に作りましょう。こんな感じ?もう少し、薄くしようかな?もっとねらいを定めた方がいいかな?
そして、糸にどんな絵を描くか、まず紙に描いてみます。どんな鞄にするか、私もこっそりねらいます。そのねらいを、善林んさんが、いい方にひっくり返してくれるのも、楽しみなのだけど。
もまさまは、地味目をご希望だから、あまりリキを入れすぎず。力を抜いて、気は抜かず。型にはまらず、目線は高く。
どんどん描いて、その中から、選びます。上の写真は、ボツにした分です。
もまさまの鞄のONLY ONLY、希望の色は「グレージュ」とのこと。
さあ、グレージュってどんな色?はやりのヘアの色っていうのは分かった。もう一歩、腑に落とし込んで考えたいのだ。一度、和に寄せて考えてみるか。もまさま、「いろんなきものに合わせて持ちたい」というのが、ご希望だ。
それで、日本の伝統色の色見本から選んだのが、上のスクリーンショット。この辺りを組み合わせる?
もまさまに伺ってみよう。ご返信いただき、
「今の淡い色合いの中に、もう少し黒に近いグレーや茶色、白に近いグレーなど入れていただけませんか?」
とのこと。
合点承知!メリハリつけるってことですね。
もまさまのONLY ONLY、鞄の色味はいかがしましょうとメールしますと、
「グレーと、グレージュの濃淡ではどうでしょう?」とお返事いただきました。
ん?グレージュ?
もしかして、ベージュの打ち間違えかしら?それで、「グレーとベージュの濃淡ということですか?」と返信しますと、
「グレーの濃淡と、グレージュを何色か組み合わせていただけますか?」とのこと。
これで、やっと、私は、「グレージュ」って色の名前なんだって気づきました。で、早速検索。画像検索の結果が、上のスクリーンショットです。
へええーーー、この色か!。ヘアの世界では、はやりなのだな。もしかして席巻してる?知らなかった〜〜。さすが、もまさま、おしゃれだなあ。
こういう、微妙な中間色で、いろんなきものに合うような鞄にするってことですね。了解!
「バッグ、私も欲しいです。きものの時持てるような、地味目の」
とメールをくださったもまさまにお応えして、やり取りを続けます。
それによると、お望みは、きものをお召しで、お稽古事に行くときに、A4サイズのノートを入れる、そのギリギリサイズの鞄であること。色味はいろんなきものに合うように地味目がいいとのこと。
A4がギリギリ入るサイズなら、すでに作っています。例えばこれです。この型で、地味目の布で作るというのは、どうでしょうか?
ご返信は、「ヨコ長がいいです。」
ここまでのやり取りを善林英恵さんに伝えて相談すると、早速、上の写真のようなプロトタイプを作ってくれました。
完全注文制作ONLY ONLY、新たなストーリーを始めましょう。次なるヒロインは、3回目のご登場の「もまさま」です。
もまさま、1回目のご縁は、八寸帯「Brown Brown」、2回目は「Sky Grey Bumpy (スカイグレイバンピイ)」。いやあ、本当に懐かしいなあ。
実はこれ以外にもオリジナル制作でいくつかご縁をいただいています。昨年秋にも九寸帯をお求めいただきました。その時のメールのやり取りで、感涙の一節、送ってくださったんですよ。
「ヨシダさん、最近、すごく良いですね!○○屋さんのご主人も言ってましたよ。」
このお言葉にどんなに励まされたことか、、、、。
そして、そのメールの最後に、
「バッグ、私も欲しいです。きものの時持てるような、地味目の」とお書き添え下さったのです。
ますます感激!
*写真は、この秋お求めいただいた帯のアップ。
朋百香さまのONLY ONLY、2回目の試し織りができましたので、早速、長平庵にお持ちして観ていただきました。
1回目で問題になったところは対処していたこともあったけど、すぐにほぼほぼオッケーとなり本当にホッとしました。朋百香さまの目指すところ、まずは外すことなく体現できているな。
試しで織ったところは、おタイコ柄なので、前帯の柄は、図面を描いて持って行きましたが(下の写真)、これは少々変更となりました。鱗紋以外の部分を、まんべんなく間延びさせようと思っていたのですが(おタイコ部分は、見えるところは八寸、それに対して、前帯部分は、一尺ほど見えるのです)、中央部分は、間延びさせないでとのこと。
そっか、そこまでが、ひとくくりなんだ。そっか、、、、気付かなかった。浅慮でした。今わかってよかった。
私が気にしている、収縮率の違う糸を混ぜることによってできる小じわ、朋百香さまは、「自然でいいんじゃない?」とおっしゃいます。そうなのよね、いいっちゃあいいんです。気にしすぎると、思い切ったことできません。「これこそ、織りでなきゃできないことよね。」とも。おお、なんと言う理解者。よし、全体として、朋百香さまの世界観を表現できる方を取ろう。
もう一回詰めて、立て直しして、本番だ!
朋百香さまとお会いすると、いつもインスピレーションがうずきます。この日も、「朋百香さまのイメージで作った鏡」を見せていただきました。とても美しく、凛としていて、確かに朋百香さまみたいです。はあ、こんな世界があるのねえ。。。
お部屋にあるエミール・ガレのランプも、すっごくなじんでいて、まるで普通のことのようです。
夢のような時間を過ごさせていただきました。
朋百香さま、この日のことをブログに書いて下さっています。→☆
朋百香さまのONLY ONLY 、1回目の打ち合わせを終え、さあ、目標は定まったぞ。あとは、フォーカスを絞っていく。
まず、下図の作り直し。
求める色もクリアになりましたので、ヨコ糸、新たに染め直します。
鱗紋を染めるブラッシングカラーズの染料も、調合し直します。2回目の試しは、このまま本番のつもりで、多めに作ります。
ヨコ糸をチョイスして、本番さながらに織っていきます。原画をしっかり観て、朋百香さまの表現を織り込めるように。
発見したけど、原画に忠実になればなるほど、絵としてのよさのみならず、織としてのよさも出るようだ。
織りあがったら、蒸して、水元。伸子張り。これも、本番とまったく同じで、やってみます。
朋百香さまのONLY ONLY、1回目の試しに取り掛かってすぐに、この路線でいいのかどうか、早めにクリアにしたいと思いました。もしも、私の読みが違っていて大幅変更なら、すぐに対処したい。
それで、急ではありましたが、朋百香さまにお時間を作っていただき、長平庵(朋百香さま所有のお屋敷)に、原画と試し織と原画のコピーなどなど、一式かかえて出かけました。
おじゃまします。
朋百香さま、きものをお召しで、迎えてくださり、うれしかったなあ。朝のお約束だったから、お忙しかったと思うんだ。それなのに、これから作る帯の打ち合わせのために、きものをお召しになって、待っていてくださった。
試し織り見ていただくと、第一声が、明るく、
「まあ、きれい」と。
おっ、ほぼほぼオッケーか?路線的には間違ってなかったか。そっか、それならよかった。変更の可能性もあると思ってた。
それでまずはほっとしながらも、もっとよくするための変更点はどこなのか、細かく探っていく。私としては、どこまで均整を取らせるかも、分かりたい。原画が和紙だから、マットな感じも出したいのよね。どうしますかね。
朋百香さま、こだわり所はしっかり突き詰めるけど、小さい所にはこだわらない感が、いいなと思った。多分、私、細かすぎるところまで、言及してたんだろうな。要所をおさえることが大事。
デザインの変更点は、柄のメインとなる鱗紋、中央の三段を、少々拡大させること。メリハリにもなるし、目線を持っていく意味でも、おすすめした。
ONLY ONLY 朋百香さまの帯、原画とタテ糸がそろいました。さ、それではいよいよ試し織です。
それに先立ち、、、、画家である朋百香さまが描かれた原画を、コピー(カラーもモノクロも)させていただきました。原画だと、ものさし当てるのも、はばかられますものね。
コピーの許可をいただくのに朋百香さまにメールしたとき、ご返信にすてきな言葉いただきました。
「織りには織りの良さがあると思っています。例えば原画と全く同じにならなくてもいいですので、あまり窮屈に考えずに原画のニュアンスを踏まえつつヨシダさんの感性で織ってください。」
ありがたいなあ。通じ合えるなあ。さすが画家さんだなあ。
それで、試し織りに取り組み始めたのですが、すぐに気づいたことは、「できるだけ、原画に忠実になるようにやってみよう」というものでした。原画の完成度が高いのです。それは、絵としても、帯としても。だから、変更を入れないほうが、いいものになるのではないか。
朋百香さまへは、原画を描かれる前に、帯の寸法とか、デザインのコツ(タイコは中央の少々上に目線がくるようにポイントを持っていくといいなど)はお伝えしていました。それもあってか、帯としてのバランスもいいのです。
よし。では、まずは可能な限り、忠実ラインをねらって1回目の試し織をしてみよう。その上で、織の特性で変えたほうがいいところがあれば、変えていこうと決心しました。
朋百香さまのONLY ONLY、タテ糸を作りましたよ。
朋百香さま、きれいな整った九寸帯をお望みです。紬のおきものに合わせるだけでなく、小紋にも合わせたいとのこと。では、思いっきり、きれいな織帯にいたしましょう。
いつもは、タテ糸も数種類の糸を混ぜて使って、表情豊かにするのが、常套手段なのですが、今回は、混ぜないことで、均質で上品な感じをねらいます。
タテ糸はブランド繭の「ぐんま200」にしました。やっぱ、光沢が違います。輝くのですよ。扱っていて、とても気持ちがいいのだ〜。
めとさまから連絡があり、ご上京時に寄って下さることになりました。あら、それはうれしい。もちろん、ウェルカム。しかし、特に用事の内容は書いてない。
ということは、もしや?
そう思ってドキドキお待ちしていたら、やっぱり!!!12月にお納めした「枯風〜Colored Wind part 2」をお召しで登場してくださいました!
なんと、この日が初下ろしだそうです。仕立て上がりを宿に直送していただいたそう。うれしいなあ。
お写真とらせてもらうことになり、一緒に外に出る。ヨシダ、大興奮。
布の状態も確認しながら。糸のチョイス、打ち込み、バランス。作っているときは、これが最高と思って作りました。それが実際はどうであるか確認できます。見せにきてくださって、本当にありがとうございます。
仕立てもこだわっってますよ〜〜。お袖の丸みが、普通のよりもっと丸いのですって。かわいいね。
足取り軽いね。
めとさまと私の二人で作った「枯風〜Colored Wind part 2」、これからはどこで、どう育ててくださるでしょう?それが本当に楽しみです。
めとさま、本当にどうもありがとうございました。この子をよろしくお願いします。
朋百香さまの帯の原画、3枚目の変わり市松で完成かと思いきや、やはり鱗紋をと、新たにもう一枚、描かれました。
うわー、ぐっと完成度が上がりましたね。さすが。それに帯らしくもなりました。バランス取れてますね。
シャープであり、華やかであり、朋百香さまご自身のようです。これで、メイン部分のデザインは決定ですね!
では、次に、テクスチャーの方を絞り込みたいです。過去に織った布地をたくさん持参しまして、その中から、朋百香さまが選ばれたのは、「ぐんま200」という国産繭で織った布。とても綺麗で艶のある、とても上等な絹らしい絹です。
了解しました。原画とも合ってますね。では、この糸でタテ糸をたてて、まずは、試し織をやってみますね。それをたたき台に、話を詰めていきましょう。
タロットの会で、朋百香さまにお会いしたのが6月のこと。そして、7月になると、原画を描いてみたと、早速メールくださいました。は、早い!(添付されていたのが上の写真)
帯の織り上がりは来春予定なので、原画は秋頃までにとお願いしてましたが、バンバンと前倒しされるのは、さすができる女です。
朋百香さま、織りの技術的なことや、デザイン的なことを、ポンポンと小気味好くご質問になります。原画は、帯の大きさに合わせて描いてくださるようお願いしましたので、イメージしやすく助かります。デザインについては、まだ悩まれているご様子もあり。
そして、8月はじめには、試し織りの第二弾の画像を送ってくださいました(上の写真)。おお、シックさが増しました。帯の原画を描くの、乗ってくださってるのが、伝わって来て、うれしくなります。
ご自分の好きな色や、年齢のことなどを考え、変えてみたとのこと。これは、おタイコ部分の図ですが、前帯部分や、たれ先、手先のデザインにも言及して行きます。
その数日後、もしかしたら、三角でなく四角の可能性もあるかもと連絡があり、あっという間に、もう一枚描かれました。変わり市松です。エメラルドとマスタードが効いています。大人しくはあるけれど、これはこれで、ありです。
しかし、この間、2週間足らずです。それで3枚、、、集中力、すごいなあ。
この話、続きます。原画、さらに発展するのですよ!
朋百香さま、タロットの会でお会いして、しばらくのち、メールをくださいました。写真が一枚添付されてます。
「帯、写真のような鱗紋は可能ですか」と。「もしこんな感じの鱗紋が可能なら、頭の中にあるイメージを図案化してお見せしたい」と。
そして、「希望の帯は、荒い感じの八寸帯ではなくて、柔らかい布で帯芯を入れて仕立てる九寸の帯」だと。
ほお、すでにイメージが立ち上ってる感じですね。さすがです。
鱗紋でしたら、三角ですので、3年前の個展「三角・吉田」の記憶がよみがえります。その時は八寸帯がメインでしたが、端正な糸で九寸帯をつくったこともあります。ブラッシングカラーズと綾織りを組み合わせて、柄を強調することもできます。
朋百香さまへのご返信に、私の過去作品の写真を添付して、ご説明しました。
*鱗紋(うろこもん)というのは、上の写真のような、びっしりとした三角の連なりです。魚や龍や蛇の鱗を連想させることから、鱗紋と呼ばれています。厄除けの意味もあるんですよ。この模様、弥生時代にはすでにあったらしい。単調でも、力強い意匠だものね。すごいね。
さあ、新たなONLY ONLY をはじめましょう。次なるヒロインは、画家の朋百香さま。お作りするのは帯です。
まだこのお話がモヤの中にあるときに、コラボ鞄のお話をいただいたので、そちら先にお作りしました。そして、今、満をじしてお顔を覗かせるのが、元々のご注文の帯のお話です。そして、何と言っても今回のご注目は、画家である朋百香さまの原画を帯に発展させようということです。
このお話はいつまでさかのぼればいいのでしょう?「いつか自分の作品を原画にした帯が欲しいわ」とはおっしゃっていただいてましたが、具体化したのは、、、、、?
去年の6月に、朋百香さまのタロットの会にお誘いいただきました。せっかく直にお会いできる機会だからと、私は織り見本を持参しました。朋百香さまは、墨の抽象画の作品を見せてくださいました。さあ、これをどう融合させて行くか。お楽しみです。
写真は、朋百香さまが原画を描かれた和のタロットカード。岩倉ミケさんが占ってくださいました。私が引いたらこんなの出ました。(色気がなくて強そう。。。。)
じゃーーーん!こちら、かのさまです!!
完成したONLY ONLY のお納めに、同じく京都在住ということで、善林さんが、できたてホヤホヤをお持ちしました。
「やわらかく、身体にそった、美しい斜めがけのバッグ」
これが、お望みでした。いかがでしょうか?
お写真、拝見すると、、優しく、さりげなく、バランスよく、かのさまに添っていますよね。思い描いていたイメージにぴったりのように思うのですが。それにかのさま、しっくりとこなれた感じで、すでにご自分のものとされてますね。
大きさもちょうどいいみたいですね。京都の街中に住んでる方は、自転車での移動が多いのですって。ですから、このような、大きすぎず、必要なものはちゃんと入る、手が自由になる肩掛け鞄がいいのですって。でも探しても無いのですって。
寄ってみると、こんな感じ。持ち手は、スペシャルだってよ。善林さんのブログに注目!→☆
ひっくり返すと、こんな感じ。オレンジ色、効いてますね。
小さなマグネットつけてくれてます。可愛いし、便利ね。
私はかのさま、お会いしたことはないのだけど、ご注文をきっかけにやりとりさせていただいて、かのさまと、かのさまの周りの京都の人の、キチンと生きている潔さを思いました。清々しいのです。そんな方に、ご愛用頂けれることになり、とても光栄です。ありがとうございました。
それに、かのさまのおかげで、善吉・手織り鞄は、斜めがけの鞄も作ることができました。おかげさまで創作の幅を広げていけます。本当に活かされてます。どうもありがとうございます。
先日のことですが、とてもうれしい出来事がありました。ある方が、私を訪ねてくださったんです。
その方とは、、、、、「こうさま」です!
2015年から2016年にかけて、私は明けても大麻、暮れても大麻となり、この一作に取り組んでおりました。その「大麻だけで織った作務衣、一式」をご注文くださった、ご本人です! (ブログ連載はこちら→☆ いやあ、これは本当ーーに色々ありました。)
お納めして1年以上たちます。私は反物の状態までですので、とても気になっていました。こうさまのご友人が、仕立ててくださったということは聞いていましたが、果たしてどうなったかと、、、
今回、「あんたが、一生懸命作ってくれたのわかってたさかいな」と、見せに来てくださったわけです。
お越し下さって、まるでサプライズプレゼントをいただいたようでした。大麻の布の織り目が気になってドキドキしたけど、よかったんじゃない?自分で言うのもなんだけど、しっかり織れてるよ。ヨコ糸を濡緯(ぬれぬき)にして、カマチを何回も打ち込んで織ったのもいい思い出。
ご注文は、「野武士のような」布にして欲しいということでしたね。どうでしょう?まさに野武士ですね!ひょーカッコいい!
一緒に写真撮ってくださいという私に、はにかみながら応じてくださるこうさま。
かのさまと善林さんのミーティングを受けて、私は新たに布を織りました。パッチワークに組み込むので、分量は少なめですが、善林さんからこまかいリクエストが来ています。
シルバーのラメが、目立たないけどしっかり入る白っぽい布、優しい緑、優しい黄色、品があって個性的、、、。簡単そうで難しい注文です。
織りあがって、善林さんに送ると、「すごいピッタリな感じで素晴らしいです。」とメッセージが。
よかった〜〜〜。コラボの相方を焚き付けられると、必ずいいものができるもんね。作り手が面白がってないと、ビンビンなものはできないものです。
上の写真は、善林さん撮影、型のラフ。これをかのさまに着用してもらって、調整するそうです。
12月のある日、かのさまと善林さんが、直接お会いして、打ち合わせをすることができました。
ご注文は斜めがけの鞄。手持ちよりももっとバランスが難しそう。善林さん、参考鞄を持っていって、それを掛けてもらって、大きさを考えたとのこと。ご希望はA4がギリギリ入ればいいとのことで、案外、小さいのになりそうだと。
布は、私がすでに送付している中から、イメージにあうものをチョイスしていったそう。お気に召す布が結構あって、それらと新たに織る布を組み合わせて、パッチワークするのも面白いってことになったそうです。
わー!パッチワークになるの!それは楽しみ。私は、以前コラボした「竹手さげ」で、善林さんのパッチワークの腕前に完全にノックアウトされているのです。(竹手さげは、このページの一番下に写真があります。写真が小さくて残念。)
2枚の写真は、かのさまと善林さんで選んだ布たち。
白っぽいきれいな色で、少々の銀糸が入るのがお似合いになるみたい。ギンギンのうるさいような個性ではなくて、上品で、穏やかで、かつ、決めてるところはパシッと決め、自分のスタイルがあるみたいな。うわー、素敵な京女像が目に浮かぶぞー!
みるさまの二つ目の ONLY ONLY 、完成しました!
「My One And Only Bag」という素敵な名前を、みるさま、つけてくれました。
これ、ジャズの名曲 “my one and only love” にちなんでとのこと。さすが、ジャズシンガーのみるさまです。(ちなみに私、今、このyoutube、聴きながらこれ書いてます。)
これから、この「My One And Only Bag」が、楽譜を入れて、あちこちのコンサートなどに連れて言っていただけるかと思うと、とっても楽しみです。
到着してすぐに、素敵なメールもいただきました。ご了解いただきましたので、下にご紹介させていただきますね。
染織吉田
吉田 美保子様
先ほど、My One And Only Bag が到着いたしました。
大きな箱なのに、驚くほど軽いのですね~、感激しました。
ふうわりと空気を含み、バッグの内側に至るまで美意識と神経の行き届いた、これぞプロ中のプロ!と言うしかない丁寧なお仕立てに惚れ惚れします。
取っ手の長さも、下げても肘にかけてもぴったりです。
早速楽譜数冊と小物を入れてみました。ジャストサイズです!!
そして、吉田さんが私のイメージ通りに出してくださった美しい彩り。
アドリア海のような深い紫紺に、大好きなターコイズブルー、履き込んだデニムのような微妙な薄縹。
裏側も、暖かいマロン色に、この時期に心にも体にも元気を注いでくれるビタミンカラーが映えて、、、。
こっくりとしているのに、地味じゃない、若々しいの。
セパレーションと持ち手のステッチのオフホワイトがごくごく小さな面積ながら響き合って、とてもおっしゃれー!です。
私が年を重ねていって、段々白髪になっていくに従って、このバッグも一緒にいてくれるかと思うと、嬉しくて嬉しくて、、、大事に大事に使いますね。
善林さんにも、どうぞよろしくお伝えください。
お二人には本当にお世話になりました。文字通り、一生もののバッグをありがとうございます。
わが家にもサンタさんが来ました。
お礼まで
みるさま、本当にありがとうございました。読ませていただいて、大感激の私です。
この鞄は、両A面と申しますか、表裏で色が違うのが特徴です。どっちを出すかで2倍楽しめます。
みるさま、「清正公の陣羽織展」のとき、みかん色の陣羽織ショールをお求めくださっています。そのみかん色とこのバッグのみかんいろが引き合って、トータルコーディネートができそうです。
お尻も可愛い。マチは10cm。モノがたっぷり入ります。ちなみに、幅は38cm。底の方は32cm。高さは26cmです。
私としましても、織った布が、このような可愛くて、実用にもバッチリの鞄となったことは、なんというか、びっくりなのです。「こんなのが欲しい」とオーダーくださったみるさまと、それに応える善林さんのおかげです。魔法のようです。解けない魔法というのが、これまたびっくり。
善林さんもご自身のブログで、記事にしています。「持ち手」の試行錯誤など、面白い。→☆
かのさまのご注文は「やわらかく身体にそった美しい斜めがけのバッグ」。斜めがけは、我々のコラボ鞄では、これまでやっていません。しかし、善林さんは、守備範囲はとても広く、いろいろ出来る人です。相談すると、もちろんオッケー。
かのさまとメールでやり取りします。色味のご希望は、通販サイトにあげていた、イエローとグリーンの鞄のような、あのような明るい色目がいいと。
なるほど、それでしたら、例えば、隠し色にオレンジ色はどうでしょうね。もう一歩、優しくなりますものね。
かのさま、バッグの本体が3枚はぎにするのはできますか?と。それは、善林さんに聞いてみましょう。
折しも、このやり取りの2週間ほど後に、かのさま、善林さんとお会いになることになっていたそうで、鞄の話もできそうとのこと。もともと知り合いな上に、直接会って話せるのは、強いですね。その時に話が一挙に進みそうです。
*写真は、かのさまが、こんな色味でって希望された鞄です。通販サイトですとここにあります。販売中です。よろしく!
さあ、次なる ONLY ONLY をはじめましょう。今回のヒロインは「かのさま」です。ご注文のお品は、またしても「手織り鞄」。次々とご注文いただいています。ありがたい限りです。
ある日、サイトからメールをいただきました。
「善林さんと知り合いです。とても素敵なバッグで心が揺れております。
善林さんが出来るとおっしゃったらですが、斜めがけのバッグを作っていただけないでしょうか?
やわらかく身体にそった美しい斜めがけのバッグを探していますがなかなか見つからず、作っていただくのが一番良いと思いました。
ご検討よろしくお願いいたします。」
まあ、善林さんのお知り合いとは、話が早い。ありがたい。
それで早速、善林さんに連絡しましたところ、かのさまのことをよく知ってて、自分の着こなしとか、自分のオシャレとかがしっかりある素敵な京女よと。日本画からヒントが得られるかもというので、探したのが、上の2枚の写真です。
さあ、完成しましたよ。
めとさまの2回目のONLY ONLY 、ここに、完成しました。
めとさま、遠いのに、やりくりしてお越しくださったんですよ。
こんにちは!お久しぶりです!
相変わらず、澄み切った空気をまとった方です。そして、周りの空気を、自分の色にする力がある人。
出来上がった反物をお見せすると、「わあ!きれい!」と第一声。
体にあてて、鏡に映して、しばし。めとさまと反物、お互い、引き合っているよう。
このおきものには、まだ名前はありません。それで、二人でタイトルを考えました。
一作目のONY ONLY は、「Colored Wind 」と名付けました。その名前を意訳して、めとさま、ご自分のお仕事の屋号を「枯風庵」と名付けられました。今回、「Colored Wind 」を越える名前があるのか?
うーん、「Colored Wind 」「枯風」は最高だね、それを踏襲しようねということになりました。
それで、このおきものの名前を「枯風〜Colored Wind part 2」と名付けました。
第1作の「 Colored Wind」の時、制作中にめとさまは人生の一大決心をされました。今回もまた、大きな舵を切ることになりそうとのこと。きっと話の続きは、このおきものをお召しの時に、聞かせていただけることでしょう。その日がとても楽しみです。
みるさまの二つ目のONLY ONLY 、コラボの善林さんのインスタを見ていたら!進んでます!どんどん形になっていくのが、魔法のようです。
ブログにも記載がありました。こちら→☆
立体のラフを作ってから、型紙をいちいち作るんだね。なるほど。自由なモノづくりには、きっちりした型紙が不可欠。どの分野も同じような気がします。
これから、持ち手をつけるのが、最大の難関らしい。「柔らかい持ち手」というみるさまのご希望にどう応えるか。作り手は、いつも悩みます。
*写真は2枚とも、善林さんのインスタより拝借。
めとさまのONLY ONLY 、織り終わりまして、仕上げをしています。まず検反。タテ糸をつないだとき織り裏に落とした糸などは、よくよく確認して整えます。
浴槽にお湯をいっぱいに張って、反物を泳がせ、糊などをしっかり落とし、部屋中に張ります。伸子で張っていって、布目を整えます。この時、やっと素の状態になるのだよな、これが。
ほーら、お出ましになりました。やっと出会えたね。まさに、めとさまって感じです。
ONLY ONLY めとさまの2枚目のおきもの、もう少しです。織っても織っても終わらなかったものが、終わり間近です。
きものを織るときは、たんたんと、同じことの繰り返しをするのが、いいのです。同じようになるように、何か起きたら、なかったように対処するのがキモです。糸が切れたら、切れなかったことにして、うまくつなぎ、布が吊れたら、吊れなかったことにするのに、ちょっと戻る。
何にも起こらなかったことにするのに、何かを起こすわけです。
ほら、もうすぐ終わりますよ。このように、タテ糸が割れてきたら、ゴール間近のサインです。
写真の横にどーんと見えるのは、「機草(はたくさ)」と呼ばれる厚紙です。この紙、タテ糸を巻くときに、ずーーっと糸と一緒に巻き込んで行きます。で、織り進むと、この紙が一枚づつ落ちるのです。毎日、3枚、落とすのが目標。上の写真が、最後の一枚。やったぜ。
めとさまのおきもの、進んでいます。この秋、織り機に少々手を入れてからは、初めての着尺を織っていますので、あちこち、調整しつつ、進んでいます。
メルマガには書いたのですが、踏み木の支点の位置を変えたのです。それ以外にも、腰掛の板に角度をつけ、少々、斜めに座るようにしました。板の上には、本邦初(?)ヨガマットを切って、幅を揃えて敷くことにしました。これ、3つ折りか、4つ折りかによって、安定感が全然違うのですね。
どこかを、ほんのちょっと触ると、例えば綜絖の高さを少し変えたりなど、連動して変更する点が出てきます。織りにくいなあって思っていたのを、ちょっと止まって、どこかをいじると抜群に織りやすくなる。その繰り返し。
それ、かえって、集中できていいような気がします。ちょっとだけ感触が変わるのを、身体は味わうけど、布には常に一定であるように意識しているからかな。
踏み木の支点を変えたからか、太腿が筋肉痛です。こんなの初めて。力の入り具合が違うのかな。肩こりは今までより楽。
さあ、ONLY ONLY ストーリー、めとさまに参りましょう。ブログでは、「本番直前」まででしたね。バリバリ本番、行ってますよ。記載はしていませんでしたが、ずーっと、じりっじりっと織り続けています。着尺は長いですのでね。日々たんたんと精進です。
杼は15丁杼。どんどん持ち替えながら織ってます。小格子になりますよ。
みるさまの鞄の ONLY ONLY、善林さんサイドでも、着々と進んでいます。ラフの第一案がでできたと上の画像送ってくれました。しかし、「全体的に気に入らないので、プラン練り直します」と添え書きあり。
しばらくして、「再考した結果」と送られて来たのが、上の画像。型のことはちっともわからない私にすれば、大差はないように見えますが、きっと善林さん的に、納得いく所まで持って来たってことだと思います。
それと、キーチェーンが必要ならお付けするが、、とのことだったので、上の画像を添付してみるさまにメールしました。
みるさま、早速のご返信くださり、本体は問題なしだが、持ち手の間隔を、腕がひじまですっと通るくらいまで、開けて欲しいとのご要望が。キーチェーンは不要とのこと。
善林さんに伝えると、すぐに上のようなラフの修正版が出ました。「これ以上、持ち手を長くするとブラブラして持ちにくくなる」との添え書きあり。
みるさまにご連絡すると、下のような返信が。
「今回オーダーをお願いして思うことですが、下げて持っても、ひじに通してもよい、この大きさのバッグ、市販のものではなかなかありません。サイズ、持ち手についても、オーダーならではの絶妙のバランスです。これで進めてくださいませ。よろしくお願いいたします。」
なんか、お望みにじわっじわっと近づけている感がある。こういう時、我々のやってることは間違ってないぞって思います。
じゃーん!こちら、きいさまです。輝いてらっしゃいます!
今年の春に、ONLY ONLY で作らせていただいた「八寸帯 Let’s go to Opera」を締めてくださってます。お召しになっているのは、笠原博司さん作のお着物。そもそもONLY ONLY のお話いただいたのは、この着物に合わせる帯を作りたいってことが大きな要因でしたので、こちら、完成系です。
強さがあって、曖昧模糊としていて、工芸系で、白場が少しだけある。そんな帯、ご希望でした。
白場の利かせ方は、特に話し合いを重ねて、ご要望をしっかりくみ取って、のぞみました。一筋の金糸もよかったよね。入れる場所とか、二人でよくよく考えた。図面、何回も描き直した。
これは、きいさまと二人だったからできた帯です。一人では決して作れなかった。そんな帯を織れたことは、なによりありがたいです。本当にどうもありがとうございました。
ONLY ONLY はつくづく二人三脚だなあ。織ったのは一人だけど、作ったのは二人。締めるのは一人。見て楽しむ人はたくさん。面白いね。
ONLY ONLY みるさまの手織り鞄、進みましたよ。
何日もかかっているのですが、話が長くなると何ですから、はしょりますと、上の写真は、糸の準備をして、染めて、巻いて、織って、蒸して、水元して、張り手で張ったところです。まだ、濡れてますね。乾くと、色は変わります。
色は、染めているとき、織っているとき、蒸した後、水に入れたとき、乾いたとき、どんどん変わって行きます。
最終的に落ち着く色が、みるさまのご希望に、ぴたっと合いますように。できるだけのことは、精一杯しますが、あとはひたすら祈るのみです。
布は、この後、善林さんのところへ発送です。
みるさまの2回目のONLY ONLY、善吉コラボ鞄、みるさまご希望の色は、カラーチップでいただいております。こっくりした青系と茶系です。鞄の両方の面を、青い方と茶色い方にして、使い分けるという算段です。
さあ、それでは作っていきましょう。染料を測って、混ぜて、試して、、、の繰り返し。上の写真は青系です。
こちらは、茶色系の染料を配合したところ。茶系の方は、ほぼ一発で右横のカラーチップと同じになりました。やったぜ!
本日で、じざいやさんでの展示会を終わりました。お越し下さった皆さま、本当にどうもありがとうございました。昨日も今日も、とっても充実していました。上の写真は、今日のベストショット。帯にご注目。うふふ、きいさまですよ。「Let’s go to Opera」締めてくださってます。
今日はなんと、青森県からのお客様もいらっしゃったんですよ。それも私の織った着物を着て。びっくりしたなあ。お求めくださってたの知らなかったから、心底驚きました。とても似合ってらして、輝いてらして、うれしかったです。
じざいやさんにいらっしゃるお客様がたは、みなさん、本当にきものが好きで、楽しんでらして、いいなあって思いました。じざいやさんは、そういうきもの好きな方々のたまり場なんだな。
作品たちは、引き続き、じざいやさんにてご覧いただけます。まだまだいいのありますからね、ぜひ、見に行ってくださいね。
メールのやり取りのしばらく後、みるさまから、お手紙がきました。達筆で端正で、、、色見本のカラーチップが入ってます。八寸帯「Spirit of Green」を作らせていただいた時とおんなじです。わーー、なつかしい!
みるさまは、お望みの鞄について、だいたいのイメージラフと、サイズについても、お書きくださいました。色はこっくりと。大きさは、ジャズシンガーでもあるみるさまのこと、楽譜が入る大きさっていうのがキモです。
私は、早速善林さんに連絡し、仕立ての観点から見てもらい、この大きさの鞄を作るにに必要な布の用尺を割り出してもらいました。
みるさまやお集りの皆さまに、鞄の試作を見ていただいてから半年、この10月のこと、みるさま、メールをくださいました。サイトをリニューアルしたお祝いです。うれしいなあ〜。
お祝いに続けて、
「今春の会でバッグのお話をされていたのが、もう実を結んだとは、嬉しく思います。私たちの年代になると、硬いもの、重いものは苦手になり、たっぷり入って、しかも軽く、柔らかいものを求めて彷徨います。お陰で、私も革のバッグ数点を処分しました。」
あ、鞄、よかったら詳しくご説明しますよ。
メールは、行ったり来たりと、何度も往復します。
みるさま、私の過去の作品を、このサイトの作品ギャラリーのページでご覧になり、例も上げて下さいました。わかりやすくて、助かります〜。
「イメージとしては、「九寸帯 Four Colors」シリーズに用いられたような深い色味で、濃紺と焦げ茶を表側と裏側に染め分け、把手は黒で。軽くてたっぷり入って、自立するバッグ、、、ほんと、ないのです。着物は勿論、洋服の時もガンガン持ちたいのです。全く急ぎませんので、、、お時間が出来ましたらゆっくり進めてくださいまし。私も、ちょっとバタバタしておりますので、落ち着きましたら、サイズと色味を記した簡単なスケッチをお送りするかもしれません。追って、ご連絡差し上げます。またまた、楽しみができました!どうぞ、よろしくお願いいたします。」
ああ、このみるさまの、メールの文面が好きです。サッパリ的確。江戸っ子のようですが、私と同じ、九州の女でいらっしゃいます。
*写真は、みるさまが、イメージとして上げられた拙作「九寸帯 Four Colors」です。
さあ、新たなるONLY ONLY のはじまりはじまり〜〜。今回のヒロインは、2度目のご登場の「みるさま」です。
前回は2016年に八寸帯「Spirit of Green(スピリッツオブグリーン)」を作らせていただきました。
今回のご注文は「善吉・手織り鞄」です。これから、このブログで、「みるさま2」としてご紹介していきますね。今日は、まずそのプロローグです。
今年の3月、ランチのお集まりで、みるさまと、ご一緒しました。その時、「Spirit of Green」を締めてきてくださったんですよ。
その席に、私は、すでに善林英恵さんから届いていた、試作の鞄を持っていきました。そしてみなさんにお願いをしました。
「実は今、コラボで鞄のプロジェクトをはじめようとしています。ちょっと見ていただけませんか?そして、厳しい眼でご意見くださいませんか?」
ああでもない、こうでもないと、みなさん、とても率直に意見下さいました。とってものありがたかったです。その時、みるさまは、
「持ち手が固いと使わなくなる。木のハンドルのものには手が伸びなくなった。」
「軽いことはとても大事。」
「タテとヨコの比率は黄金比がある。それは1:ルート2である。」
とおっしゃいました。ふむふむ、なるほどなあ。
睦月さまのONLY ONLY の帯、織り終わりましたよ。さっそく、仕上げます。不織布にくるんで、蒸し器で蒸します。25分蒸したら、上下をひっくり返して、また25分。まんべんなく、蒸気がいきわたるように。
蒸しが終われば、水元です。たっぷりの水に汚染防止剤を入れた浴槽に帯を入れて、糊成分や余分な染料を取り除きます。色がでなくなるまで水を変えてね。今回は3度変えました。愛用の白い長靴履いてやってます。
そして、張り手で張って、伸子をピーンと張っていきます。そのまま8割くらい乾くまで放置。乾いたら伸子を取ってもうちょっと乾かして、湯のしに出します。
写真に写っているのは、手伝ってくれてるmoyuさん。カメラマンが私。なんか、すっごくピンボケよね。いつものちゃんと撮れてるのは、iphone 渡して撮ってもらってます。カメラは同じなのに、私が撮るとピンボケになる。どうして?不思議です。
ONLY ONLY 睦月さまの帯の制作、織りはじめましたよ。ここまで、いくと織るだけですね。
全面を綾織りで、織っていきます。
タテ糸は光沢がある絹糸で、ヨコ糸はマットなキビソ糸です。睦月さまは、ヨコ糸が見える方を表とされますので、光沢がなく、一見すると、絹とは思えないです。おしゃれな睦月さまならではの選択です。絹っていろんな表情が出せて、本当に面白い素材です。
上の写真の、白いテープをつけている方が表です。その下の段に見えているのが裏ですよ。
末長く可愛がっていただけますよう、しっかり織っていきます。
睦月さまのONLY ONLY 、さあいよいよ本番です。すでに何回も色の調合を試してきましたが、ささ、もう一度。これで最終章。今ままでのデータを踏まえて、新たに調合し直します。
で、えいやっと本番。睦月さまは、試し織りより、色がはっきり見えた方がいいとのご希望でしたので、太めの刷毛を選びます。
納得いくまで、ブラッシングを続けます。
ONLY ONLY 睦月さまの帯の制作、1枚目、2枚目、3枚目の試し織りをお送りしたところまで、話は進んでいましたね。
見比べていただき、お返事いただきました。
「色は1枚目が好き」
「1枚目のヨコ糸が見える面をもう少しはっきりした色にする」
「茶系、紺系ももう少しはっきり」
「ヨコ糸は和紙糸でなくキビソ糸に」
了解です!これでクリアになりました。よかった。腑に落ちた。ちょっと回り道したけど、合意できてよかったです。これで、清々しく取り組めます。
それで、早速、染料を調合し直し、4枚目の試し織りをしました。そのアップが上の写真。睦月さまにお見せすると、「好きな色合いです。これでお願いします。」とうれしいお返事が。それでは、いそいそと本番に移ります。
ONLY ONY 睦月さまストーリー、2回目の試し織りをしたところまで話が進んでいましたね。では、その続きを。
はい、その2回目の試し織り、お送りして見ていただきました。
で、メールいただき、試し織りをいろいろお着物に乗せてご覧になったとのこと。これ、ナイスアイディアですね。さすがです。実際の感じがわかりますものね。
で、「もう少し、色が濃くて、色の差があった方がいい」と。そこまでは良かったのだけど、ここで問題発生。写真が添付されていて、「こちらを見ての感想です」と。
えっ?
写真に写っていたのは、タテ糸が見えるツヤがある方。私としては、裏と想定して織った方です。
むむ、、、ちょっと混乱。睦月さまはマットな方をお好みだったはず。どこかで掛け間違ったな。どこだろう???
しかし分かったことは、このままではダメだってこと。核心を掴めてないってこと。では、もう一度試し織りをしましょう。3回目の試し織りをして、具体的な提案をしましょう。一つほどいて、一つ前進さえすればいい。もうちょっとだ。
上の写真、3枚の試し織りが写っています。3枚ともお送りして、見比べていただくことにしました。右に写っているのが新たに織った3回目の試し。1回目と2回目の差をクリアにして、睦月さまのお望みを逃さないように腐心しました。
めとさまと、全ての打ち合わせが終了しました。ささ、あとは、6回目の打ち合わせで決まったことを落とし込んで整理して、しっかりシステムを決めて、織るだけです。
システムって、杼を何丁使って、どういう順番で入れ替えて、ってのを決めていくこと。そのために、一回ぶんのリピートぐらいは、助走って感じで織るのだけど、その助走で、私は、うわあってなった。
めとさまだ、めとさまそのものだ。
自分が織った布に、めとさまを感じた。いやはや。びっくりね。打ち合わせを重ね、ご希望をお聞きして、精度を上げていくにつれ、布はどんどん依頼主に似てきたのだ。
秋も中盤のある日、めとさま、ふわーっと優しい空気と、いい感じにコーディネートされた、ご自分らしさにあふれたファッションに身を包んで、6回目の打ち合わせに、我が家にお越しくださいました。
私は、5回目の打ち合わせで決まったことや、変更したことなどを、落とし込み、染めたり巻いたりして、2枚目の試し織りを織って、お待ちしていました。
お久しぶりのめとさまに、早速、試し織りをご覧に入れると、「わあ、きれい!」。
私は、「わあ、よかった」と安堵しました。
1枚目と2枚目の試し織りの違いは、きっと、めとさまと私以外の人には、ほとんどわからないと思います。「一緒じゃん」って言うと思う。でも違うのよ。1回目の打ち合わせで選ばれた糸と、新しく色合わせして染めた糸で織った2枚目の試し織りは、一挙にめとさまワールドに近づきましたもの。
さらに話し合いで、縞の入り具合など、もう一歩細かく、決めていきます。上の写真、赤丸のシールが貼ってあるところが、採用のところ。貼ってないところは却下のところ。本番では、赤丸シール部分を繰り返し織っていきます。
今回作った2枚目の試し織りの中では、明るいみかん色を単独で使っていたところが却下になって、ベージュの糸とみかん色の糸を、一本交互に入れていくことになりました。
これ、よかったと思う。単独で使うと、色の主張が強すぎるみかん色も、ベージュと交互になることで、目につくうるささが抑えられ、かつ、はっきりした色が持つ、華やかな感じも内包するきものになる。若くてきれいなめとさまには、こっそり、華やか成分を入れときたいのよ。
めとさまの2回目の ONLY ONLY のお話を続けましょう。ブログ上では時間が空きましたが、水面下では順調に進んでます。
5回目の打ち合わせで決まったことを、もう一度整理して、どんどんやっていきます。
筬を入れ替えて、タテ糸の詰まり方をひと目、ゆっくりにする。一寸間のタテ糸が116本から、112本になりました。このくらいの方が、糸の表情が見えますね。丈夫さもセーフです。
ヨコ糸、使う糸使わない糸がはっきりしたので、使う糸だけ集合させて、糸量を、もう一度しっかり計算し直す。使わない糸はバッサリ落とす。せっかく準備したのに、とか思っちゃいけない。そうすると澄んでくるのよね。で、足りない分を新しく染める。糊をつける。小管に巻く。
めとさま、ほっこりした真綿糸がお好きです。メインの3色、ほとんど真綿でいくことになりました。サブの色糸には、つるっとした糸もこっそり入れます。ちょっとだけ光って表情豊かになりますよ。もさもさせずに、足さばきもよくなりますしね。
ささ、話し合ったことを体現すべく、2枚目の試し織りを作りましょう。
昨日お納めした、朋百香さまのONLY ONLY コラボ鞄、仕立ての善林さんもブログに書いてます。そちらもぜひお読みください。いやはや、メイキングって面白いですねえ。だいたいの説明を聞いてた私でさえ、「ほお、なるほどー」と読み入りました。
鞄の口を、ふかっと作った意味、よくわかります。硬い芯を入れて、ミシンで押さえて、パキッと仕立てるのは楽だけど、面白くない。よくある布製の着物バッグみたいになる。口を輪にして、ふかっと作るのは手間だけど、軽いものがお望みの朋百香さまのお望みにも応えられるし、印象的でおしゃれだし、私としては布の良さを上手に引き出してくれていてうれしい。そして何より、もともと帽子作家である善林さんならではなのよね。彼女だからできることです。
この朋百香さまのONLY ONLY、大きさは、朋百香さまのお持ちのトートの中で、一番使い勝手がいいものの大きさを伺って、それを元にしています。だいたいの大きさは、持ち手なしで、底のところの幅32cm、開口部分の幅42cm、高さ28cm、マチ12cmくらいです。
鞄は、みなさまそれぞれ、ご自分の好み、体とのバランス、持ち歩く荷物の量、などなどでお望みが変わってくると思います。持ち手についてのご希望も、それぞれですよね。我々、お応えしますよ。ご興味あれば、何でもお気軽にご相談ください。
*写真は善林さんのブログからお借りしました。
朋百香さまのONLY ONLYの手織り鞄、善林さんから仕立て上がってきましたので、早速お届けに上がってきました。
こちらが、朋百香さま。美しい方なのです。
朋百香さま、バッグをご覧に入れると、まずにっこり。手に持たれて、開口一番、「か、軽いっ!」と。ああよかった。一番のお望みは軽いことでしたし、それを叶えるのは善林さんの真骨頂の一つです。
手に持たれた時のバランスも、バッチリですね。
朋百香さま、早速、ブログに書いてくださいました。一部抜粋させていただきますね。感涙ものです。
「吉田さんと善林さんのコラボ作品、お二人の作家さんの魂が織り込まれ、縫い込まれているバッグ、愛を感じるな〜。
やっぱり私の目に狂いはなかったです。さあ、次は私の番ですね。愛を込めて大切に使わせて頂きますよ〜。」
朋百香さま、本当にどうもありがとうございました。
今回は、サイトリニューアルに合わせ、善林さんとコラボで鞄制作をはじめてから、初のONLY ONLYのご依頼でした。それも、スタート直後のご依頼でしたので、特に感激でした。朋百香さまに、「二人ともがんばってね」って、背中を押していただいたように思います。
ここからは、記録写真です。上で朋百香さまが、手に持ってくださっている反対側です。
布を見ていて思いますが、善林さん、私が送った布を、どう裁断して、どう組み合わせるか、相当、試行錯誤してくれたんだろうな。
持ち手は、ヌメ革をふかっと二つ折りにしています。ヌメ革自体は硬いですが、こうすることで、持ちやすくしています。手に馴染んでいくのが、楽しみですね。
口のところは、ミシンで押さえず、あえてふんわり合わせるデザインです。ピタッとした方が、縫製は楽だそうですが、こっちの方が断然おしゃれですね。
マチのところ。12cmほどあるので、たっぷり入ります。
お尻のところ。かわいいね。
布は無事に京都の善林さんのお宅に到着し、厳しくも優しい目に晒され、吟味され、検証される。
緊張するね。善林さん、愛あるハッキリさを持った人だから、この段階でダメ出し来ないかとビビる。
コラボするときは、相方のやる気を焚き付けるような素材を作って投げかけないと意味がない。それができたら、倍々ゲームで、掛け算以上の勢いででモノのレベルが上がっていく。
お互い、乗った状態をキープして作ったものを、朋百香さまの前に、大事に大事にそっと運んで、そっと差し出し、そこから動き出す感じ。
善林さんの手によって、布は形になっていく。
その経過、彼女のブログに詳しいです。こちら、ご覧ください。
*写真は全て、リンクした善林さんのブログからお借りしました。
さあ、布が織れました。蒸して、水元して、伸子(しんし)張りして仕上げます。うん、いい感じね。
布は、濃くなりすぎて重いイメージにならないようにしました。朋百香さま、明るめの軽快な色、似合われると思うんだ。「洋服はモノトーンや紺、グレーベージュ系の色彩が多い」とのことだったので、それに合うように。
写真は、伸子張りしているところ。鞄の布は短いので、工夫して、部屋の柱から織り機の柱に斜めに張りました。張れる場所があるっていうのが、実は地味に大事なんです。新しいマンションではなかなかないのだ。うちは古くてよかったのだ。
さ、善林さんに発送です。
ブラッシングカラーズが終わった朋百香さまの ONLY ONLY 、タテ糸を巻き直して、さあいよいよ織りです。
織りの工程は、無心になれます。特に、この後仕立ててもらうのだから、完成形を把握する命題が半分で済む。ということは、ますます無心であるのが許される。
のびのびと織ります。
鞄になった時のアクセントになる部分は積極的に入れていきます。うるさくならないように。でも確実に。遊びごごろもふんだんに織り込む。
この後、善林さんが仕立ててくれ、朋百香さまが使ってくれる。それが分かっているのが良い。それが面白い。
布の良さを確実に引き出して、的確な仕事を施してくれる善林さんと、出来上がった鞄を、抜群のコーディネートで使いこなして、息を吹き込んでくれるだろう朋百香さま。お二人を布を織ることで、接着している私。
共同作業は楽しい。
さあ、それでは朋百香さまの鞄のブラッシングカラーズをいたしましょう。
黄色と、ブルー。グレー多め。どこかに墨黒。計画通りに。
都会的な朋百香さまに合うように。
染料は酸性染料。絹との相性、抜群にいいと思っています。鮮やかな色も、渋目の色も自由自在に出ます。って調合にすごく気を使うけど。
筆と刷毛を使い分けて、下図を見ながら、フリーハンドで染めて行きます。
布の大きさは善林さんから連絡もらっているので、ジャストの少々大きめくらいをねらっています。無駄を出さないのも、大事なことだと最近しみじみ。
善林さんからのメールを元に、朋百香さまとさらにメールのやり取りを重ねます。
朋百香さま、重いバッグを持つのが嫌で、軽くてかっこいいものを、ちょうど探していたところだったのですって。きものではもちろんだけど、洋服にも合わせてガンガン持ちたいとおっしゃって下さいました。
大きさについては、お持ちのバッグの中で、一番使いやすいものの大きさを測って下さり、だいたいこのくらいと。実際の大きさを測るっていうのは、何より確かですね。
それで、私が担当する布地のところですが、朋百香さま曰く、
「こちらに載っている大きい方の鞄の黄色とブルーの感じ、好きですよ。裏の色彩もいいし。洋服はモノトーンや紺、グレーベージュ系の色彩が多いので、合うと思います。もちろん今載っているものと全く同じでなくて構いません。もう少しグレーよりになっても、さらに持ちやすいかな。あ、どこかに墨黒が入っているともっと持ちやすいかな。」
なるほど、なるほど。了解です。せっかくのONLY ONLY、朋百香さまのご希望に、しっかり合わせて参ります。
ただ、布地、持ち手、形とも、全体的なバランスをみて現場合わせが必要なことなどから、ある程度お任せいただきたい旨、お願いすると、
「もちろん、お二人のセンス、信頼しておりますのでお任せしますよ!」
という、うれしいお返事が帰って来ました。
その上、
「完成したバッグを持って歩いていたら、知らない人に「そのバッグどちらの?」と声をかけられるイメージが浮かびました(笑)」
きゃー最高!!きっとそれは近い将来現実となることでしょう(笑)!!!
さあ、ではでは、はりきって布を織りましょう。
*写真は、織り計画と色出し。こんな感じで行こうかな。
朋百香さま、私のメールにすぐにご返信くださいまして、もう一歩進んでご希望を伝えてくださいました。
要約すると、
・鞄の持ち手は、もっと柔らかい革がいい。革の色はヌメ革の色がいい。
・持ち手は布より革の方が断然カッコイイと思う。
・大きい方の鞄のサイズをもう少し、小さくすることは可能?
・鞄の生地は八寸帯地がいい。
・一番の希望は重くないこと。布バッグで裏地がシッカリし過ぎていて重くて失敗した経験がある。
いただいたメールを元に、善林さんに相談メールをする私。
善林さんも、まず、公開してからすぐに反応いただけたことに、驚きと感謝の念を隠せず、、。そうなのだよなあ、、一生懸命やったことに、すぐ反応いただけるというのは、何ものにも代えがたい喜びがあるよね。生きてる手応えというか、、。
お返事としては、
・大きさの変更、革持ち手の素材変更、もちろんオッケー。ヌメ革だと薄くしても硬いので、色つきの革になる可能性高い(黒や茶)。
・織布を見て革素材を決めるので、組み合わせは任せていただきたい。
・薄い革を二枚あわせで袋縫いにして、ふかっと作ってもまた面白いかも。
・鞄自体の重さは、多分市販の布トートよりはかなり軽いと思う。
重さについては、善林さん、「荷物を運ぶ為に鞄があるのに、何故市販の鞄は鞄自体が重いのだ?」と疑問に思ってきたそう。善林さんが作られる鞄は持ってみての軽さに、驚かれることが多いのですって。
ちなみに善林さんは、もともと高級婦人帽子の作家さんで、帽子って1gでも軽くが身上なのだそうで、軽さの追求は元から突き詰めてらっしゃるのですね。
「鞄は力学構造上、芯使用を皆無という訳にもいかないので、最低限は入れ、成り立つギリギリを探る感じ。」とも書かれてました。
うーん、同じだわ。きものや帯も「軽く」ってのが求められます。布を織る時も、「軽くて、丈夫で、布が裂けない、ギリギリ成り立つ、かつ、風あいがいい」、糸選び、糸使い、打ち込みが必要です。ものづくりで求められること、共通点ある。
*画像は善林さんのインスタからお借りしました。持ち手の革、いろいろあるなあ。
サイトをリニューアルオープンして一夜明けた朝、メールが飛び込みました。メールの主は、画家の朋百香さん!
メール曰く、
「ヨシダさ~ん、サイトリニューアルしたのね、素敵!素敵!そしてマーケットもいいわ~。
バッグ、欲しくなっちゃった。ただ持ち手のヌメ革が見た目はカッコイイけど、実際に使うとなるとどうかな~と思っているところです。私くらいの歳になるとね、持ちにくいと持たなくなっちゃうのよ。わがままな世代で・・・(笑)また、相談にのってくださ~い。」
私の返信、
「朋百香さん!わー、見つけてくださって、ありがとうございます!!
実は昨晩遅くにリニューアル公開しました。まだどこにも言ってないのです。メール下さったの、朋百香さんが一番乗り!うれしいです。ありがとうございますっ!
はい、バッグ、持ち手は硬いです。そこがカッコいいのですけど。もしも柔らかい持ち手がお望みでしたら、改めて作りますよ。
例えば、帯とお揃いとかもいけますし。または八寸の帯地を朋百香さん好みで織って、柔らかい革の持ち手をつけるなども考えられます。
九寸の帯地でも、裏地と芯をつければいいかもなので、ご希望でしたら、仕立ての善林さんに聞いておきます。なんでもご相談ください。
メールいただき興奮しているヨシダより。」
(*ここで裏話。今、朋百香さまからは、九寸帯のONLY ONLY のご注文もいただいています。上のメールは、その九寸帯と同じ布で鞄を作るのもアリですよっていうご提案です。しかし、鞄の布としては厚めでしっかりしている八寸帯の布がいいかもですね。薄めの九寸帯地でも芯をつければ鞄にいいかもですねって話です。)
興奮冷めやらぬ私のメールログが残っておりますが、サイトのリニューアルってそんなに大げさなことなの?って向きもおられるかもしれないですね。はい、私にとってはとても大きなことでした。オープン直後、まだドキドキしている時にいただいたメールは、「ああ、見ててくれる人がいる」って実感されて、とてもうれしかったのです。
それに加え、目をつけてくださったのが、サイトリニューアルに合わせて始めたコラボレーションの鞄というのも、うれしさ倍増でした。コラボで鞄を作ろうって善林さんと話し合ったのが、一年くらい前でしょうか?なんだかんだと、共に頭を悩ませ、手を動かし、意見を言い合って、準備してきました。モノを作り、流通させ、生きて行くってことを、改めて考えながらの日々でした。
上の写真は、試作品。完成品となった今とは、ずいぶん、変わりました。
このような連絡事項が、善林さんと私の間で、メールでもアナログでも飛び交っております。
*一番上の写真は、持ち手にするヌメ革と牛本革。善林さんの仕事場より。
さあ、新しいONLY ONLY 「朋百香さま2」をはじめます!ヒロインは、画家の朋百香さま。このブログ上でも、朋百香さまとお呼びさせていただきます。墨の抽象画や「京都タロット」の原画などで活躍されています。上の画像は、朋百香さまのサイトのトップページです。
朋百香さまとは、ずっと以前に私が銀座のもとじさんで個展をさせていただいた時に、ふらっと寄ってくださって少々お話させていただいたのが、お出会いだったと思います。すらっと背が高く、細面の目を引く美人さんで、きもの姿もご自分らしい着こなしで、ほお〜なんと素敵な方でしょうと、ほれぼれした記憶があります。その後、自然にご縁がつながって、何度かお目にかかりました。
それでなぜ今回、「朋百香さま2」と書かせていただいているかというと、、、、実は「朋百香さま1」も水面下で進行中なのですよ。すでにもうひとつ別のONLY ONLY を進めてるのです。そちらは画家としての朋百香さまの本領発揮の案件ですので、ブログでのご紹介、楽しみにお待ちくださいね。
で、やっと、今回のお話です。
時は、今年の9月7日の朝。なにを言いたいかというと、、、えへへ、実はこれ、私のサイトのリニューアルオープンから間もない時です。その前の晩、こっそり昔のサイトから乗り換えたのですが、一晩あけても、まだどこにもお知らせをせず、せっせとリンク崩れなど、最終チェックをしておりました。
そんなとき、メールが飛び込みました。新しいサイトのお問い合わせからのメールです。
え?
そのメールの主が朋百香さまだったのです。
さあ、睦月さまのONLY ONLY の八寸帯、2回目の試し織りができましたよ。前回お送りした試し織りでは、私が表と想定して織った方でない、ヨコ糸が見える裏面の方を面白がってくださいました。両面とも表として行けるのでお好みで選べるのです。
今回は、タテ糸のブラッシングカラーズは、前回と同じ染料の配合で染めて、ヨコ糸は、新たに染めたキビソ糸で、織りました。
キビソ、いい感じです。セリシンが程よく落ちたおかげで、打ち込みも入ります。色もよかったね。心配したけどね。幅もぴったり8寸2分です。
上の写真が今回、新たに織った2枚目の試し織りなのですが、左側に来ているのが、ヨコ糸のキビソ糸が「3」見えている面です。タテ糸は「1」見えてます。右側の方は、タテ糸が「3」、ヨコ糸が「1」見えています。
ちなみに平織りだと「2:2」で、タテとヨコの力関係は同等です。
今回は、左に来ている、ヨコが勝ってる方が表のつもりで織ってます。
これも、睦月さまのご自宅にお送りして、みていただくことになりました。早速発送です。
ONLY ONLY でご注文いただいている睦月さまの八寸帯。試し織りを観ていただいてから、ブログ上では時間が空いてしまいました。実作業は水面下で進んでおります。さあ、ブログも再開しますよ。
1回目の試し織りをみていただいて(記事はこちら→☆)、まずは、ヨコ糸を考え直さねば。和紙の糸を想定していましたが、きびそ糸に変更です。手元になかなかいいきびそ糸があるのですよ(上の写真)。これ、使いましょう。
きびそ糸っていうのは、蚕さんがはじめに吐く糸です。蚕さんが、我が身を守るためにシェルターとして吐く糸ですので、硬く丈夫で、紫外線なども寄せ付けない特殊な絹糸です。ツルツルピカピカの絹らしさはありませんが、そこがかえって魅力です。
キビソ糸、私のお気に入りのタイプは大きな綛で流通していますので、まずは小綛に分けます。扱いやすくするのです。
染めました。染める段階で、セリシンがけっこう落ちます。少々落ちるくらいだと、打ち込みが入りやすくなり、ハリも抑えられ、かえっていい感じです。でも落ちすぎると、腰が抜けたように、ふにゃふにゃになってしまいます。これをコントロールするのが、腕の見せどころ。温度と時間が勝負です。
小管に巻いたところ。今回の練り減り率は、9%でした。まあ、いいとこでしょう。本当によかったかどうかは、織ってみて、帯になって締めてみないとわからないのだけど、9%はいい数字と言えましょう。
きおさまのONLY ONLY のお着物、仮絵羽仕立て、出来てきまして、写真撮影をして、本日、きおさまの元にお届けできました。実は、ちょっと前にできていたのだけど、大活躍のきおさま、海外出張中だったため、今日になりました。
お会いしてお納めする予定でしたが、きおさま、次の出張が迫っていて、そのあとのお納めだと、仕立てる時間がもったいないということで、急遽、送りでお納めとなりました。お会いしたかったですが、急いで仕立てて、お召しになりたいというお気持ちは、とってもうれしいものでした。
一昨日、私は発送準備をしながら、あらためて自分が織ったお着物を眺めていたら、きおさまのお顔が浮かびました。これは本当にきおさまにピッタリだ。よかった、お喜びいただけると確信しました。
タイトルを「Shining Green(シャイニンググリーン)」とさせていただきました。きおさまの輝くお姿、そのものだからです。
もともとの目標の、大阪の東洋陶磁美術館の「飛び青磁花生け」に通じるものも見出せますよね。光輝いていて、存在感があるところ。そんな感じを目指して、もがいたなあ〜。
本日お昼過ぎに、きおさまから、ありがたいメールが届きました。
冒頭からうれしいお言葉、
「とても綺麗です。Shining Green ぴったりです。」
きおさま、こう続けられます。
「私は以前紫系の着物を沢山着ていましたがある時しっくり来ない事に気が付きました。どうしてだろうと考えていましたら年齢だと気付きました。年を取り若さが無くなりもっと綺麗な色を身に付けなければいけないと思いました。特に着物は全身を覆ってしまうので色や柄は大切です。とても素敵な今の私に合う物を作って頂きありがとうございます。仕立て上りましたら是非お披露目したいです。」
きおさま、とても若々しい、海外を飛び回って仕事される方なのですが、年齢って考えざるを得ませんよね。きおさまは、まさに、自分にあったオシャレをなさる方です。
その上、きおさま、こう続けられます。
「私はヨシダさんの純粋さが大好きです。一緒にお話ししていると心が洗われるようです。これからもお付き合いを宜しくお願いします。多分、○○さんもヨシダさんの作品だけでなく人柄にも惹かれたのだと思います。素敵なヨシダさんを紹介してくれた○○さんに感謝です。」
ひょー、感涙、、、
きおさま、大感激のメール、どうもありがとうございました。(○○さんとは、きおさまのお友達で、私もとてもお世話になっていた方です。あちらに旅立たれましたがとても素敵な方です。)
きおさまの3回目のONLY ONLY ストーリーはこれにて小休止です。次はきっと、Shining Green をお召しの姿を御披露いただけたことを書けると思います。とても楽しみです。
8月後半のある日、めとさま、5回目の打ち合わせに、我が家にお越しくださいました。今年は関東地方、いつもよりは涼しい夏でしたが、それでも夏のさなかに、おそれいったことでした。
その日までに、私は、1240本のタテ糸を綜絖に通し、筬に通し、織り付けをして、試し織りをしました。
筬はこの時は、鯨寸間58羽を選びました。ちょっときつめだけど、めとさまが、丈夫な布を望まれたので、これくらいで行ってみようと。
めとさま、きもの生活を実践中で、なんと、洋服を気に入ってる数枚を残し、処分されてしまったのですって。毎日お召しとあらば、そりゃあ、丈夫さが特に大事です。
そういえば、1回目の ONLY ONLY の時も、着物を着て、近所のスーパーに買い物に行く生活が夢だとおっしゃっていたなあ。めとさまの、1回目の ONLY ONLY はこちらにまとまってますので、よかったらどうぞ。(長いよ!)
それで、暑い中お越しくださっためとさまに、早速試し織りをご覧に入れました。
ゆっくり丁寧に、ご覧になるめとさま。じっくり考えられて、いくつかの希望をおっしゃいます。それは、私には気づけなかった点でもあり、小さいけど大事な点でもあり、舌を巻きます。
曰く、ヨコに入れている緑をやめて、緑味を持っているベージュに変える。
アクセント的に入る、今のところ座繰り糸の赤茶色を、太めの真綿糸に変えて、表情を出す。
きれいな橙色もつるっとした生糸から、真綿糸に変える。
なるほど、確かにおっしゃる通り。その方が、よりめとさまが目指される「枯風」ですね。了解しました。
試し織り、布目が詰まりすぎと思いましたので、筬目を入れ替えることにも同意いただきまして、いろいろGOサインです。
サイトのリニューアルで、ブログの方がストップしておりましたが、仕事はコツコツ進めてますよ。
めとさまのお着物、ブログでは、6月11日まででしたね。それからずいぶん進みました。タテ糸を290本の管が巻き終わったら、整経です。タテ糸の順番と長さを整える作業です。
これは、整経が終わって、巻き返しているところ。12色の色の束が入ってますよ。
ほら、こんな感じのタテ縞。これにヨコ縞が入りますので、出来上がりの印象はずいぶん違ってきます。
きおさまのお着物、織り上がりました!織ってる日々は、関東地方、涼しい夏で、助かりました。
織りあがったら、とたんに暑くなりましたね。
慎重に糊を抜きます。暑くなったおかげで、水温が下がらず、抜けやすかったです。ありがたい。好都合でした。
しっかり洗って、伸子で張ります。
我が家フル稼働。隅から隅まで使うと、着物も張れます。
すっかり糊が落ちましたよ。
乾いたら、印をつけて、湯のしに出します。そのまま、仮絵羽屋さんに回してもらって、うちに戻ってきます。そうしたら、またブログに書きますね。お楽しみに。
暑さの中にも、どこかに秋を感じるようになりましたね。台風の影響で風が吹いて、空気が一新したこともあるかもです。お住いの地域は、台風、猛暑、水害、大丈夫でしたでしょうか?
私はといえば、、、きおさまざんまいの夏。もうちょっとです!もうゴールが見えました。
ほら、上の写真に写ってる、向こう側の下の方、千切り(ちきり)と言うのですけどね、織り始めは、ここにたっぷり巻かれていた糸が、織り進んで、ほら、もうちょっと。
この写真が分かりやすいですね。
きおさまとは、何度かメールのやり取りをして、順調に進んでいる旨、報告しています。身頃、衿衽と織り進んで、お袖はバランスを考え、萌黄色に加え、青磁色も入れることにしました。きおさま流、「飛び青磁」ですね。
今回のこのブログ、写真の枚数、多いかなと思いましたが、なんか涼やかでしょ。アイシーな感じして。どなたさまも、残りの暑さ、ご自愛ください。
織れてる布はこんな感じ。もうすぐよ。
[:ja]
きおさまのonly only、じわじわ、バリバリ織ってます。いやあ、夏は織りっすね!
only onlyのいいところは、煎じ詰めれば、やっぱり、お召しいただき方のお顔を思い浮かべながら織れるってことに尽きるかも。迷ったら「きおさま、こうした方が、喜んでくれるな」っていうのが、判断基準です。
絵羽だから、今どこを織ってるのか、分かるのもonly onlyだと特にいいと思う。きおさまと何回もお会いして、いろいろお話ししたこと思い出しながら、「お顔の近くだから、思いっきり明るめの色使おう」とか、「うなじのあたりだから、こっそり大人の色っぽさ、加えましょ」「少々大胆がお好みよね」とか、いくらでも加減できます。
きおさまと私の間柄だからできると思う。その辺の遊び心が、only only ならではです。
経糸、きれいです。節が多くて、粘って、粘って、悩まされていますけどね。[:]
[:ja]
勢揃いしたきおさまの糸たち、糸巻きを終えた小管を、織り機に座ったまま手にできる場所に配置します。振り返れば、すべて必要なものに手が届きます。
各色の小管を、それぞれの杼にセットします。今回は24丁杼。
多色の糸で、自由に絵を描くように織るというのは、染織吉田の特徴と言えるかもしれません。パレットに、絵の具をいっぱい用意して、のびのび描くというのは、絵を描いていた時代から、私が好きなやり方です。
すべての準備はととのいました。さあ、旅に出よう。
織り始めましたよ。裾の部分は、糸の番号「1、2、4、11」をまぜながら織っているってことですよ。[:]
[:ja]
きおさま、5回目の打ち合わせで、デザインなどモロモロが決定しました。あとは、それを実現するのに向けて、最終調整です。
まずは、すでに用意した緯糸の確認。必要量は足りてますか?
緯糸の量、一覧表にします。私、けっこう、真面目なんです(笑)。必要量をしっかり計算して、余裕を持って用意しておくことで、「足りなくなったらどうしよう」と言う心配が無用になります。これ、すっごく心臓に悪いですもんね。私は、過去に、足りなくなりそうになって、確実に寿命が3年は縮みました。(図太いので、その後、取り戻し、5年は伸びましたが。)
緯糸は、私にとってはパレットです。色数も、量も、十分用意して、のびのびと自由に織ります。
それから、織っているときのガイドとなる紙テープを作ります。
メインのひとつ、薄い方の萌黄色の量が微妙だったので、もうひと綛、染めることにしました。[:en]
きおさま、5回目の打ち合わせで、デザインなどモロモロが決定しました。あとは、それを実現するのに向けて、最終調整です。
まずは、すでに用意した緯糸の確認。必要量は足りてますか?
緯糸の量、一覧表にします。私、けっこう、真面目なんです(笑)。必要量をしっかり計算して、余裕を持って用意しておくことで、「足りなくなったらどうしよう」と言う心配が無用になります。これ、すっごく心臓に悪いですもんね。私は、過去に、足りなくなりそうになって、確実に寿命が3年は縮みました。(図太いので、その後、取り戻し、5年は伸びましたが。)
緯糸は、私にとってはパレットです。色数も、量も、十分用意して、のびのびと自由に織ります。
それから、織っているときのガイドとなる紙テープを作ります。
メインのひとつ、薄い方の萌黄色の量が微妙だったので、もうひと綛、染めることにしました。
[:]
きおさまの only only、緯糸を新しく染めて、織って見て、デザイン画も描き直したところで、またまたご足労いただき、我が家にお越しいただきました。さあ、これで最終確認です。もれなくお聞きしないとね。
きおさま、お暑い中、ありがとうございます。
きおさま、しばらく涼まれて、試し織りご覧になって、すごくきれいだと喜ばれました。ああよかった。そして、いくつか質問されました。
いくつかの質問って、これはどのあたりに出るのかなど。それで、ここは裾から何尺だから、上前のここのあたりですねなどとお答えする。
それから、お顔の近くの衿や肩のあたりに使う糸を、どこまで白くするかも相談。明るくきれいな色を多用して欲しいとのこと。では、お顔まわりと裾まわりは、薄い萌黄色で行きましょう。白に近いような極薄のレモン色も入れましょう。ちょっと優しさ要素を、プラスするのに極薄クリーム色も入れましょう。
反対に、胴体の部分は、おはしょりや帯で隠れるところも多いけど、そのあたりは、落ち着いた青磁色で行きましょう。衽下がりあたりで切り替えましょうか。
きれいな色にこだわるのなら、いっそ、こげ茶、やめるのもアリですよ、と提案するも、きおさま、やっぱり、焦げ茶色は欲しいと。あまり全面にきれいな薄い色ばかりなのも気が引けると。なるほど。
それに、何と言っても、目指すは「飛び青磁花入」ですものね。「飛び」の部分はこげ茶を飛ばさないとね。
ひとしきりお話し、きおさま、これでお願いしますとおっしゃった。了解しました。では、もう一度、最終的に本番用ひな形を作り直して、緯糸量など計算をして、染め足して、本番、取り掛かりますね。
きおさまのonly only、4回目の打ち合わせ内容を体現すべく、萌黄色以外にも、極薄いレモンイエローから、濃いビリジアンとこげ茶まで、糸を染めて準備していきます。緯糸の色が勝負って感じの一枚になるから、しつこく、しつこく、納得するまでなんども染めます。もうね、次、本番のつもりで。
質感も、きおさま、つるつるした艶やかな絹らしさが欲しいとのことだったので、座繰り糸を多めに。でもエッセンス的に真綿糸のちょっと太めのも用意。印象的な一枚になるよ。
染めたら巻きます。
準備ちゃくちゃく。
まずはこんな感じかな。微調整はこれから。
さあ、緯糸を入れてみよう。
きおさまのonly only のお着物、経糸の準備が完了しましたので、さっそく緯糸を入れてみます。まずは、経糸を安定させるために、何回か張り直します。ふむ。こんな感じ。
よし、もうちょっと薄色にしてみよう。
少々織り進んだところで、きおさまに連絡して、お越しいただきました。6月の半ばの話です。もう暑くて申し訳ないなと思いつつも、久しぶりに我が家までお越しくださいました。4回目打ち合わせです。
きおさま、薄い色の方の試しを気に入ってくださったようです。
もっとツヤがあっていい。
明るい色を使って欲しい。
茶色はグラデーションでは?
淡い茶色から、ほわんとしたこげ茶の?
赤茶はやめましょう。
萌黄色でスッキリした感じがいい。
などなどのご意見が出ました。
よっしゃ、萌黄色を特定しましょう。色はいろいろですので、目で見て確認です。色見本を二人でくりながら、あれでもない、これでもない、、、
結局選ばれたのは、この色。(下の写真に貼り付けてある色見本。)この色が、きおさまと私にとっての萌黄色です。了解しました。緯糸はこの色をベースに、ツルツルした糸を多用して、ツヤを出しましょう。
きおさまがお帰りになってすぐ、私は萌黄色を2色染めて、小管に巻きました。よし、次の試しは、この糸を入れてやってみよう。
きおさまの経糸の色が決まりましたので、さあ、整経に向けて、糸の準備を始めましょう。まずは染め。座繰り糸と真綿紬糸、全部を染めて、糊をつけます。乾いたら、綾を整えて、木枠に巻きます。今回は40枠。
それができたら、いよいよ、整経。これは、小型ドラム整経機。
整経したら、千切り巻きの準備。
向こうに見えるのは、手伝いにきてくれたchiakiさん。別口の小管を巻いてくれています。千切り巻きの準備をしつつ写真を撮ってる私は手前にいるわけですよ。右手にハンドルがあります。
千切りを機にセットして、綜絖通し。
そして、筬通し。
経糸が一色(微妙に2色ですが)で、緯糸で勝負するというのは、私、けっこう好きです。経糸で遊ぶより、おすましな感じになります。特別なお出かけの着物にするのに、イケる思っています。
完全注文制作 only only きおさまのお着物の制作ストーリーを進めましょう。経糸の色が決まりましたので、まず、座繰り糸を一綛と真綿紬糸を一綛、染めてみました。きおさまが選ばれた色見本の色を参考に。
こんな感じか?むむ?鮮やかすぎ?緑すぎ?
きおさまに画像をお送りすると、実物を見てみたいとのことで、早速お会いすることになりました。
きおさま、私の最寄の中央林間駅までお越しくださいました。
「ヨシダさんのうちに行っちゃうと、楽しくてつい長居しちゃうから」というご配慮。あら、まあ、いいのに。すみません。
駅ナカのカフェに行こうかと思ったけど、ふと通りの向こうを見ると、ターリーズのテラス席が気持ちよさそう。そこがいい。今日はぜひとも自然光で見ていただきたい。爽やかないい天気だしね。で、テラスの丸テーブルに陣取り、カフェラテをいただき、糸をお見せしました。
きおさま、すぐに、この色でオッケー、とおっしゃいました。
ひょ?いいの?調整するけど。。もう少し、青磁色にしましょうか?
きおさまは、この色でいいと。前回お見せしたデッサン、気に入ってるので、この色をベースに、きれいな、くすまない、緑、黄緑、黄色、茶色で織って欲しいと。
なるほど、きれいな色ね。
きおさまは、スマートフォンに保存してある、数々の着物姿の画像を見せてくださいました。次々見せていただいて、私は思い至りました。そっか、きおさま、お着物、たくさんお持ちなのだ。もうすでに、おとなし目のや、落ち着いた色のは、たっぷりあるのだ。だから、これから新しく作る一枚は、似たようなものを作っても仕方ない。思い切り、澄んだきれいな色のを作ればいいのだ。
織り見本をお送りした睦月さま、すぐにメッセージを下さいました。
やはり、実物見ていただいて、よかった!いろいろ分かってきました。
まず、織り幅、見本は8寸ちょうど(30.3cm)でしたが、ご希望は8寸2分(31cm)とのこと。八寸帯ですから、これは大事です。
緯糸は、未精練のきびそ糸、精練済みのきびそ糸、和紙の糸でご提案しましたが、そのうち未精錬のきびそ糸が、風合いが好きでご希望とのこと。しかし、張りがあるからおタイコの形がふんわりしてしまうかしら、、、、とも。
それから、実はびっくりしたのですが、何と、裏の色合いがお好きだと。
えっ!
それで、メッセージをやり取りし、
まず、布幅を8寸2分にすること、
緯糸には未精錬のきびそ糸を使うけど、張りが出過ぎないように、できるだけ細めの糸を選ぶなどすることで対処すること、
をお伝えする。
布の裏と表については、実はこれ、表も裏も決まりはなく、私が裏と紹介した方を表にしてくださって、全く構わないこと。実は私自身も、試しの試しをやってる時は、逆のつもりだったのですが、今表としている方が、ツヤがあるし、色も出るので、お好きかと思ってご提案したにすぎないことをお伝えする。
そうしたら、裏となってる方の、ざらっとした光沢のない方の風合いがいいとのこと。
そっかーー。ツヤがある方が好まれるに違いないって、思い込みだったなあ。固定概念、打ち破ってくださって、ありがとうございました。
では未精錬のきびそ糸で、裏表を逆にして、もう一度試し織りをやって見て、またご相談しますね。ちょっとお時間いただきます。乞うご期待!
ちょっとブログ状では時間があいてしまいましたが、睦月さまの帯、バッチリ進行中です。
1回目の打ち合わせで、「黒と青と茶色とベージュ」の、「布の表情」があり、かつ、「きちんと感」がある帯、というご希望は承ってます。
それで、上のようなデザイン画を作り、実際に織ってみました(一番上の写真)。うーん、どうだろうな?
この段階で、一度みていただいた方がいいだろうなと思ったけど、睦月さまの上京のタイミングと私のスケジュールがなかなかあいません。
そうこうしているうちに、ちょっとひらめきましたので、もう一つやってみました。これは、全面にドットをしていく方法で染めています。
睦月さまに、これらの画像をお送りすると、下のいいですね、とのことでした。どう発展させるかは、観ていただいた方がいいなと思いましたし、睦月さまも、実際に厚みや硬さ、柄ゆきを見てみたいとのことでしたので、実物に説明書をつけて、お送りいたしました。
きおさまとの2回目の打ち合わせは、4月の半ばに開催された、きものおたすけくらぶさんの盛装オフ会の会場においてでした。私、パーティーなどには、縁がない生活していますが、この時は、きおさまが誘ってくださり、いそいそと出かけたわけです。
場所は学士会館。会場に着いてすぐに、きおさまとお会いすることができました。きおさま、軽やかな盛装姿です。この方、本当に華がおありだわ。
私も目一杯おしゃれした着物姿ですが、手にした合財袋に、クリアファイルを円筒形にして忍ばせておりました。
クリアファイルには、イメージ画は2パターン、それぞれ、前から見たところと後ろ姿の計4枚。あと、経糸用の染見本を6色。
私としては、青磁色を軸として(なんてったって、飛青磁が目標だもんね)、そこからどのくらいどっちに振るのか、見極めたいところ。
着席前の雑談している時、きおさまに、今、見ていただけないかとお願いしたら快諾くださった。
見るなり、「こっち」と、緑に黄色が入っている方が指さされる。おお、こっちですか。飛青磁の飛びを黄色に変えてみた方です。
色見本は、「これね」と、一番鮮やかな色を選ばれた。青磁色をグッと緑に寄せ彩度をあげた感じですね。きれいな色でとは伺ってたけど、ここれは鮮やかですね。
それにつけても、きおさまの決定の早さよ。すばらしい。見習いたい。
それでは、選ばれた色見本を目標に経糸をまず一綛だけ染めますね。それで見ていただいて、オッケーとあらば、全てを染めるという段取りで行きましょう。
きおさまの「飛青磁花生」を仰ぎ見て作るonly only はお着物と決まりました。桜が咲き始めた3月の終わりに1回目の打ち合わせをしました。
この時は、水天宮の駅で待ち合わせをして、上のレストランで食事をしました。実はその数ヶ月前に、きおさまの仲の良いお友達で、私もとてもお世話になった方が亡くなられ、一緒に偲ぼうとなったのです。思い出話しをすることが供養になるねと。
もし、その方が生きておられたら、きおさまと同じくスペシャルな着物ファンであられますので、今回のonly only についても、面白がって、興味津々いろいろおっしゃったかもしれません。出来上がったら一緒にお出かけできたかもしれません。それがないのが寂しい限りです。
というわけで、しんみりもし、かつ、限りある時間だからこそ精一杯生きましょうと、前向きなお話をしました。
きおさまのご希望は、「飛青磁花生」の色を、もう一段、鮮やかにしたイメージだと。薄い、きれいな色がいいと。それに、こげ茶色が、ほわっと入ると。こげ茶は、決して強くなく、モヤモヤしている。経糸は無地ベースだけど、ペタっとならないように、違う種類の絹糸を混ぜる。柄は緯糸で出すことになりました。
「きれいな色で」と、きおさまは何回も強調されました。
「ね、ヨシダさん、悲しいかな若い頃のような張りはないから、きれいな色を身にまとって、カバーしたいのよ」と。
きおさまは、華やかな美しい人で、今もとてもおきれいだけど、だからこそ「若い頃はさぞ」、って感じはします。きれいな人の宿命ですね。
完全注文制作only only、実はもうひと方、進行してます。「きおさま」です。3回目のご登場です。
きおさまとのご縁は、1回目が、2013年から2015年に取り組んだ、八寸帯「Little Cosmos」(リトル・コスモス)。2回目は、去年の暮れの赤いショールでした。
1回目に取り組むとき、きおさま、ご自分が思い描いているイメージとして、静嘉堂文庫の「曜変天目茶碗」と、大阪の東洋陶磁の「飛青磁花生」とおっしゃいました。それも両方、、、、
おそれおののくほどの大きなお題にガクブル状態でしたが、まずは「曜変天目茶碗」に力をもらって、小さな宇宙を作り、八寸帯「Little Cosmos」と名付けました。
この時のもう一つのお題、「国宝 飛青磁花生」へのチャレンジがまだ残っていて、私は、躊躇しながらも、いつかはやらねばならんと、ずっと心にありました。
きおさまは、優しい方で、決して急かすようなことはおっしゃいませんでしたが、私は受けて立つタイミングをずっと測っておりました。
さあ、機は熟した(のかな?)。行くぜ。
めとさまと4回目の打ち合わせの後、メールのやり取りをして、色やデザインを微調整して、さあ、これでいかがというこちらからのメールに対して、めとさまが応えてくださったメールのタイトルがこれ、
「今は漕ぎ出でな (part2)」
わー!にくいなあ〜。さすがめとさま。part1 を思い出すなあ。前回のめとさまの一枚目のonly only の時も、デザインを詰めて、さあこれでどうでしょうってお伺いメールした時のお返事がこのタイトルだったなあ。
前回、この言葉に支えられて航海しました。
今回はいかに。
船はしっかり作りました。風もいい感じで吹いてます。潮の流れも最高ね。
bon voyage!
*写真は、経糸を巻いているところ。今回、経糸に12色の色を細縞で入れ、緯も縞で小格子にします。1色につき、色の濃淡や糸の種類を生糸と真綿を両方使うなど、2種の糸を用意するとして、24種類の経糸を用意します。それを、整経するために290本に巻き分けます。
5月の半ばの爽やかな日、めとさま、4回目の打ち合わせに、我が家にお越しくださいました。
メールで段取っているとき、「実は沼にはまってしまって、、、」とご自分のことを揶揄しておられましたが、お越しになってしまえば、いつも通り、すっきりとした表情をされています。
二人で図面をにらみ、もう少し黄色に振ることになりました。ピンクの分量が減って、こっくりした黄色を増やします。
今、染まっている糸を見ていただきます。糸を見ているめとさま、本当にこういう色がお好きなんだなあ。ぽーっとされてる感じがいいなあ。
後日連絡がきて、一色染めなおしました。どの色が違うかお分かりですか?
右から二番目の茶色です。鳶色から、ニュートラルな茶色になりました。
図面もご希望で、山吹色の太細を入れ替えて作って見ました。が、これは相談の上、却下となりました。うん、私も、元々の細いバージョンの方がいいと思います。かすみのようで、風が吹いているようで、かっちりした形でなく、めとさまらしいと思います。
めとさま、2枚目のお着物のonly only、ブログ上ではちょっと間があいてしまいました。アップデートいたしましょう。
3回目の打ち合わせのことまで、書きましたね。あれから、ちょこちょこと染めはじめました。完全にデザインが決まったわけではないけど、指針は決まりましたので、できることからやりましょう。
どの糸を使おうかな?
何と言っても、手を動かさないと始まりませんものね。特に今回は多色ですので、少量ずつコツコツ根気よく染めましょう。机上から、ガス台の上にシフトです。
色を調整しながら染めます。
濃い紅色の雨絣、これは本数は少ないけど、大事ですので、やっちゃいましょう。
雨絣って、糸をくくって染めて、色が濃いところと薄いところを作って、それがランダムに出るように、織ることです。そうすると、雨が降ってるように見えるんです。
ではまず、小綛を作って、
くくります。
染めます。この糸ね、経糸1240本の内の、16本の予定です。輝け、渾身の16本!
きいさまのonly only 完成しました。
ちんまりしない。見たこともない帯。のびのびと思い切りよく。ファッションではなく、工芸。
そんなきいさまとの、二人三脚。やっとこやっとこ、走ってきました。二人でゴールを切りましたよ。
名前をね、「Let’s go to Opera」とつけさせていただきました。華やかなきいさまにお供して、いろんな場所に締めていっていただきたい。そんな思いを込めて。
上の3枚の写真を見てくだいね。おタイコの締め方で、表情がこんなに変わります。遊べる帯よ。
きいさまね、先日、完成したこの子に会いに、我が家にお越しくださいました。見るなり、パチパチパチと拍手してくださった!ミホコさん、やったねって!
ブラボー!
私もとても感激しました。うれしかった。ありがとうございます。
きいさま、作り手に精一杯仕事させてくださいます。優しい、度量が深い方です。そうじゃなきゃ、「見たこともない帯」ってご注文されないよね。見かけが穏やかで、きれいな方だから、その肝の座った感じがちょっとギャップで、萌えました(笑)。
この帯は、きいさまのライフでもあります。手先で静かに始まって、だんだん活動的になり、お腹とタイコで賑やかな時間を過ごし、また静かになってきて、タレの部分では静かな時を迎えてる、、、、そんな人生を表現しています。
静かな時に戻るには、まだまだゆっくり時間がありますね、きいさま、ますますいい人生を!
いつも布団に入って寝入りばな、ラジオを聞いています。NHKのラジオ深夜便って老人に人気の番組。妙に好きなのよね。
昨晩聞いていたら、「4時からのインタビューは染織家の笠原博司さん」と言うではないですか! 笠原さんって、今、取り組んでいるきいさまの帯の合わせる着物の作家さんです。まあなんと言うご縁。
これは聞かなくちゃと思うも、午前4時の放送では、とてもとても。。
そう思いながら寝ちゃったのだけど、今は便利なサービスができてて、昨晩のラジオが1週間聞けるのね。今日、仕事しながら繰り返し聞いてました。
笠原博司さん、丁寧な、率直な語り口で、ラジオの向こうの宮城県の自然の中の工房でお話しされてる姿が目に見えるような感じしました。若い頃の本郷さんの工房での修行時代の話も、今、東北で後進の方に道を作ってらっしゃる話も、引き込まれて聞きました。ああ、この人の織ったものは、気持ちのよい、いい織物になるわけだなあと思いました。
今からでも聞けますよ。こちらのページの、一番下の「4時台」ってとこをクリックしてください。6月8日の午後6時まで聞けるそうです。
*写真は、きいさまの only onlyの帯、水元している様子。この帯がね、笠原博司さんのお着物に合わせて、締めていただくんだよ!
さあ、きいさま、本番織ってます。あとはもう決めたことを完遂するだけ。
緯糸の地の部分は和紙の糸です。
メインのところは、「カンボウジュ」。カンボジアにいる野生に近いお蚕さんの吐いた絹です。それから、「キビソ」。繭の外側のシェルターになる硬い部分を糸にしたもの。
染めにはちょっとだけ秘密があります。それは染料に「オペラ」をほんのちょっぴり加えたってこと。色で言うところの「オペラ」って、とても華やかな濃いピンク。ちょっと派手すぎるくらいの色。
きいさま、そそとした華やかさをお持ちになのです。そして、オペラを愛してらっしゃる。だから、「オペラ」の華やかさのエッセンスをこっそり加えました。ごくごくちょっぴり。魔法をかけるつもりでね。
きいさまのonly only、いよいよブラッシングカラーズです。
テーマは、ライフ。
それも生まれる前から、
土に帰った後まで。
静かに始まり、活動し、静かに帰る。
そんな一生を帯に表現する。
きいさまのおのぞみは、「ちんまりしないこと」。
のびのびと、きいさまの一生を表現します。
さあ、きいさま、デザインは決まりましたので、色をつくります。ここは踏ん張りどころです。妥協なく、ある一点を見つける感じで、合わせて行きます。
試し織りの時のデータはあるけど、その通りにはいかないのが泣きどころ。がんばります。
ひとつ、きいさまと話していて面白かったのは、私が「ブルー」のカテゴリーのつもりで染めている部分を、「グリーン」とおっしゃいます。このグリーンがいいと。え?これ、緑に見えます?え?え?
私は舌を巻きました。確かに、その部分、青い染料に、黄色の染料を相当量混ぜています。だから、緑成分はあるのです。しかし、ぱっと見には分からないと思うのだけどな。色に敏感な方だな、きいさま。
私の方に、これは青だって思い込みがあるのもあるだろな。思い込みはいかんぜよ。本番にも黄色成分、こっそりしっかり入れますよ。
*お詫び 申し訳ございません。きいさまストーリー、ページが前後しており、時間軸が狂っておりました。話が通じなくて、読みづらかったと思います。申し訳ありませんでした。理由は、保存しておいた原稿を、時間軸を合わせないまま、アップしたことによります。すでに差し直しましたが、きいさま、お読みくださっている方々、ご迷惑をおかけいたしました。以後気をつけます。ごめんなさい。
では、気を取り直して、青い銀糸に「待った」が掛かったのちの話から再開しましょう。
青い銀糸が却下になった数日後、きいさま、5回目の打ち合わせにお越しくださいました。「お忙しい中、ミホコさんの手を止めて申し訳なかった」と急いでくださったようで、こちらも恐縮。
構いません、構いませんよ。お互いに納得したものを作りましょう。なんでもおっしゃってください。
この日は、デザイン的に大どんでん返しがありました。最後の最後にひっくり返りました。
まず、くだんの青銀はやめて、ブラッシングの入れ方も変えて、タイコに切り替えが2回入ります。タレの茶色のグラデーションもなくし、タレと手先は同じ色にします。お腹の柄もだいたい同じです。
うん、決まったね。
きいさまと、いろいろと腹を割った感じで、お話ができよかったです。
きいさま、「ちまちましないでくれ」と何度もおっしゃいます。「世の中、ちまちましたものばかり。思い切りよくやってほしい」と。
私、「そうは言っても、、、」「話し合ったことを、全部指定された通りに入れるとなると、どうしても狙ってやりますよ。実は狙いすぎになるのを私も警戒しています。ちまちまは私も嫌いだけど、思い切りよくすると外れる可能性も出て来ます」
きいさま、「それは、この帯をミホコさんに頼んだ時点で、責任の半分は私にあると思っている。だから思い切りよくやってほしい。」
わー、そういわれると、ますますがんばります。きいさま、かっこいいなあ。きれいで優しげでふんわりした印象の、いいところの奥様って感じのきいさまですが、漢の部分もお持ちだわ〜〜。ギャップに萌えます。
*写真は何度も描き直している図面たち。
4回目の打ち合わせの2日後、きいさまからメールが入った。恐縮しつつといった感じで、、、、
読んでびっくり。なんと!
「撮ってきた画像を見ていて思ったのですが、おタイコに入れるブルーグレーの横線ですが、色を変更してみたいと思うのですが、間に合いますか?
写メを見ると、すごく沈んだ感じなのです。そこでなぜか三本の金色の横線を入れたらどうかなと思い立ちました。三本の太さは変えるのです。ミホコさんはどう思われますか?」
おー!ペンディングですね。ギリギリですが間に合います。とにかく一旦中止します。セーフです、
しかし、金色の横線となるとどうだろうな。ミホコさんはどう思うかって問いにはどう答えるか、、、、
うーん、そうだなあ。どんな金にもよるけど、案外、変化に乏しくなるかもな。うーむ。あと、まとまりという点ではどうだろうなあ。バラバラすぎないか?
まあとにかく、作業は一旦止めて、きいさまからの次のご連絡を待ちましょう。お互いに納得できる着地点を探りましょう。
*写真は却下になったブルーの銀糸。出番がなくてがっかりという面持ちか。
きいさまとの4回目の打ち合わせは、3回目の3日後。連休初日。私は、くだんの青緑の糸を織り込んだ4枚目の試し織りを間に合わせました。今回の試し織りは、短いのでブラッシングカラーズは大変やりにくく、本番のような刷毛目は出ません。しかし染料や糸は本番と同じですから、色味はわかるはず。
この日、我が家は人の出入りが多い日で、朝からワタワタしておりました。(前の晩にiphoneが壊れるという衝撃を引きずっていたこともあり、、、いつも鳴らない電話がバンバンということもあり)きいさまは、いつもと同じ、にこやかで涼やかな感じで登場されました。
4枚目の試し織りをお見せすると、これは違うとハッキリ。こんなにパッキリさせたいのではなく、音楽で言えば、ちょっと変調したいだけだと。ガラッと違う曲にするのではないのよと。
なるほど、そうか。やりすぎた。
ではどうしましょう。
私はふと、青い銀糸を入れたらどうかと思いついた。おさえた色味の細い青銀なので、紬の織物にも合う。糸棚から出して試し織りの上に置いてみた。お?
きいさまも乗り気なご様子。ほっとされた表情になられます。奏でる音楽の調子、いい感じで変わるかな?これ、普通の絹糸と一本置きに入れましょうか?テンションが合いますしね。
金糸や銀糸をちょっと入れると、表情変わるし、角度によってキラリと光って華やかになる。きいさまは劇場にも締めて出かけたいとのご希望なので、華やかさはウェルカムだ。
よしよし。いいぞ。ではこれで決定ですね。
きいさまは、写メして帰られました。
きいさまのonly only、染め直すことになった色の目標はこの色。打ち合わせの最中に、二人で決めて切り取って貼った。ピンポイントでめざすのだ。青とも緑ともつかないきれいな色。
その日、きいさまお帰りになった後、さっそく染めたよ。うーん、ちょっと鮮やかすぎかな?強すぎたか?タイコや前柄に、一本、目立つ色が入るのはいいと思うのだけど。それに経糸に消される分もあるし。やってみらんと分からんわ。織るっきゃないね。もうそんなに経糸使えないけど、ちょっと織ってみよう。
きいさまとの3回目の打ち合わせに向けて、私は3枚目の試し織りをした。2回目の打ち合わせで決まったことと、先日いただいたメールを鑑みて、本番に使う染料も糸も全て入れ込んで、ぎゅっと圧縮して織って見た。こんな感じだよな。
さあ、準備オッケーだ。
4月後半のゴールデンウィークの直前に、きいさま、3回目の打ち合わせにお越し下さった。この日もお着物で。すっきり美しい着姿で、とてもお似合いです。きいさま、とてもきれいな方です。
さっそく試し織りを見ていただく。タイコの形にして、体にあてて鏡に映すきいさま。タイコを少しずらしたり。だいたいは良いようだが、さらに詳しく検証。
私としては、タレ先からの茶色のグラデーションが気がかり。たった2寸(8cm)のところにグラデーションを入れたいとのことなのだが、これって怖いのよ。織り縮みの計算がちょっとでも狂うとずれるから。
「これ、リスクです〜。」ということは、もちろんお伝えする。その上でやるならやります。
きいさま、タイコのところに入れている、青い緯糸を見て、「この色が違う気がする」とのこと。
おお、そうか!そうですね。この色は2枚目の試し織りの時、きいさま用でない部分に使った糸です。流れでそのまま使ってました。染め直しましょうか?タイコの中心ですものね。要となるので、しっかり納得した色でないとね。
2回めの打ち合わせからしばらくたった頃、きいさまからメールをちょうだいしました。
帯について、いろいろイメージが浮かんで、それがまとまってきたから、伝えたいとのこと。
曰く、、
「帯に一つのストーリー性をもたせたらどうかなと思っています。
手先は人の出発点で水のイメージ(まあ、羊水です)。ブルーグレーで静かに始まり、人が成長して活動的になると、緯糸に和紙やカンボウジュを使って変化を持たせ、タレ(人生の終末)に近づくと再び静かになり、最後は水と土のイメージで終わる。それが先日も希望したブルーグレーと茶のグラデーションです。まあ、土に帰るという感じかな。
なので、手先とタレの質感は静かで端正なイメージ。おタイコと前帯は、緯糸の種類や織り方を変えてテイストを変えたり、横線を入れたりして変化を持たせるというのが、今、浮かんでいるイメージです。」
なるほど、なるほど。
では、このきいさまのイメージと、2回めの打ち合わせで決まったことを踏まえて、もう一度整理しましょう。
まずは図面に落とし込もう。タイコや前帯部分の実物大と、全体像の縮小版と2種類。(写真は小さい方の図面です)
作りながら私は思いました。
なんで手先が生まれた方なの?返しの部分から始まって、タレくらいから活動的になって、タイコが大輪で、いろいろあって、前帯でもう一花咲かせて、だんだん静かになるって方が、自然じゃん?
と思ったのだけど、ハッとした。
そっか、作る方からしたら、タレの方から始まって手先がラストだけど、お召しになる方からすれば、まず、手先の方から締め始めるよね。お腹にも近いから、まさに身を守るしね。
手先をちょいと置いといて、一巻き、二巻き、お腹を決めて、ぎゅっと締めて、タイコを背負って、タレを整えて。
そっか。帯の一生は手先からだわな。私、作り手目線に凝り固まってたな。締める方に寄り添おう。着付け下手だけど、着物きててよかったな。じゃなきゃ気づけなかったと思う。
*今日のブログ、お着物をお召しでない方には分かり難かったかもしれません。ごめんなさい。
何が言いたいかというと、帯というのは、一枚の布でできていまして、それが、それが、織り手は(私はと言った方がいいか)、タレ→タイコ→前帯→手先の順に織り進むのですが、締めるときは逆で、お腹の側から、手先→前帯→タイコ→タレの順に締めていくということです。
4月の半ばのある日、爽やかな青空の日、きいさまと2回目の打ち合わせをしました。第一回目からは2ヶ月以上たっています。この日は、きいさまのご友人で、私も仲良くしていただいている神奈川絵美さまもご一緒くださいました。(こちらに書いてくださってます!→☆)
いらっしゃい!
きいさまも絵美さまも、さすがの着こなしのお着物姿。春まっさかりといった感じで、こちらまでウキウキと明るくなります。一方、私はねずみ色の作業着〜〜。
きいさまは、これから作る帯に合わせるおつもりのお着物をお召しです。とても素敵な、パープルベースの白い花咲く帯を締めて。春にはこの帯があるけど、秋の帯がないというのが、今回のご注文の大きな要因です。
試し織りは、先日ブログに載せた、丸々一本織ったあと、経糸を掛け替えて、またある程度の分量の試し織りをしました。とにかく織ってみたい。織って見ないと自分でも自信を持ってはわからないし、勧められない。
で、実は、きいさま用に織った試しに続けて、他で使えるかなと別の試しも、合体させて織りました。その方が長くなって、帯となった時を想像しやすいから。
お見せしたとたん、きいさまのお顔がパーっと明るく、なったのを見逃しません。素敵素敵と。よかった。ツボだ。
で、驚くことには!
きいさま、きいさま用の試しと、別の試しを合体させたいと。ここがおタイコね。って、二つの試しの境目をさしておっしゃる。
えっ!はぁ?くっつけるの??染料も糸も全く違うんだけど。一本の帯に、両方入れちゃうの???それもど真ん中に?え?え?え?
私、そんなのやったことないけど、オモシローーイ!
only only はいつもエキサイティング。何が起こるか分かりません。
きいさまの帯に取り組みはじめた頃、私は新しい絹糸を仕入れた。これはすぐにでも使ってみたい。やってみたい。織りって糸でぜんぜん違うのだけど、すごくいい予感がする。
八寸帯の糸使いは、毎回、微妙に変えて、調整している。いつも挑戦だ。思い切って仕入れたこの糸、使いたい。しかし、使ったことない糸をいきなりonly only の本番にするのは、チャレンジングすぎる。まず自分の勝手で織って見よう。その上で、きいさまの帯に使えるか検証しよう。
ま、やってみないと分からんというのが本音。ちょっぴりの試し織りだけじゃ、帯としての良し悪しは分からないから。ここは丸っと織って見るか。
で、素材や染料などの条件は違うけど「ブラックパープル」をもう一度作る気持ちでやって見た。
実は、拙作「ブラックパープル」、自分ではその良さがイマイチ分かっていない。織りたいからとにかく織るぞってその気持ちだけで織った。きいさまのお目に留まったのも実は意外。それに、その後すぐに売れてるのよね。あっという間に羽ばたく力があったのに、その力が、作者の私に全然見えてなかった。
んじゃ、また、織って見るっきゃないじゃん。求められるには理由があるんだ。その理由をつかまねば。
それで織ってみたのが、ここで使ってる画像です。ど迫力の帯となりました。上の6枚の写真と、下の6枚の写真、実は同じ帯の裏表です。リバーシブルという訳ではありません。仕立てる時に、どちらを表にするかは決める必要があります。
ブラッシングに使った染料は、「ブラックパープル」と極力似た色味の酸性染料にした。ブラックパープルは、植物染料なのだ。
緯糸は、大麻の草木染め。ブラックパープルはカンボウジュだが、その存在感と強さでは、勝るとも劣らないものがある。
種明かしすると、上の6枚の写真は、経糸が見えていて、下の6枚の写真は緯糸が見えているというわけです。こんな風になるとは自分でも思っていなかった。想定を超えた、大変面白い帯となりました。
きいさまにお目に留めていただいた「ブラックパープル」とは、全く別物になりました。さあ、きいさまの帯は、これをどう発展させましょう。
こちらの帯、もしご興味おありの方、おられましたら、説明させていただきたく思いますので、どうかお気軽にお問い合わせください。
きいさまからメールを受け取って4ヶ月たった今年の2月のはじめ、1回めの打ち合わせをすることになりました。
欲しい帯のイメージは、4、5年前にご覧になった八寸帯「ブラック・パープル」だということだったので、その資料を探しました。あった、あった。日付は2012/08/22だった。使った糸とブラッシングの色見本は取ってあるけど、実際の布は残っていない。きっとギリギリだったんだろう。
いろいろ思い出すなあ。この「ブラック・パープル」、決して狙って織ったんじゃないないんだよな。ちょっとやって見ようかくらいの気持ちで織った。だから、記録も精査した感じではとってない。ふむ、緯糸にはカンボウジュ種を使ってるな。カンボジアとタイの国境あたりにいる、原種に近い蚕だ。最近は手に入らなくなった糸だ。懐かしい。
この日、きいさま、我が家までお越し下さいました。明るい笑顔。お久しぶりです!
きいさま、これからお作りする帯に合わせるお着物の共布を持ってきてくださいました。ああ、以前お会いした時、お召しでしたね。このお着物の作者は、笠原博司さんですって。まあ、あお会いしたことはないけど、国展などで拝見しております。すばらしいお着物に合わせていただけるとは光栄です。帯もがんばります。
この日は、いろいろお話しをしました。きいさまがどんな着物ライフを送ってらっしゃるかなども。お小さい時のことなども。Aラインのコートを着た、可愛い女の子のことを想像して、楽しかった。
キーワードいろいろ。
・立体感が好き
・ピンクとパープルが好き
・白場は少なめに。でも全くないとベタになる。それはNG。
・強さは欲しい。
・曖昧模糊としているものが好き。
・優しい感じ。
・ファッションより工芸が好き。工芸色の強いものが好きだが、強すぎると自分が負ける感じがする。
・赤みの色彩。赤紫。こげ茶。
・グレーのバリエーション。ブルーみ、パープルみ、ピンクみのグレー。
・あれもこれもではなく。盛りだくさんでなく。
・金糸を入れたい。劇場にも着ていくので華やかさは欲しい。
・秋のイメージで。光がだんだん陰っていく感じ。
・件の着物に合う、秋の帯が欲しい。
さて、どうする?
さあ、新しいonly only ストーリーをはじめましょう。今回のヒロインは、「きいさま」です。
きいさまとのお出会いは、いつだったでしょう?もう4、5年前かな?私がオープンハウスをした時に、お友達とご一緒にお越しくださいました。綺麗で、きちんとしていて、朗らかな優しい笑顔。周りをホッとさせてくれるタイプの方です。
お召し物は、素敵な織りのお着物。むむ、作家ものだな。大袈裟な感じは一切ないが確かな個性がある。それを楽に来こなしてらっしゃるのは流石だな。お人柄にもとても合ってる。私の織ったものを、とても熱心にご覧くださった。
二度目は、一昨年の個展「三角・吉田」に、お越し下さった。まあ、お久しぶりです。この時も、とても熱心にご覧くださった。(上の写真は、このとき撮っていただいたもの。左がきいさま、右は着物ブログで有名な神奈川絵美さま。拙作「シスレーがいる風景」をお召しです。おお、この時のこと書いてくださってる→☆)
それが、2回目にお会いしてから一年が経とうとしていた昨年の10月のある日、サイトのお問い合わせページからメールを下さったのです。
そこには、
・4、5年前、我が家にお越し下さった時に見た八寸帯「ブラックパープル」がずっと頭に片隅にあること、
・そのとき着ていた多色の綾織の着物にあう帯をずっと探しているが、なかなか自分のイメージ通りのものに巡り合わないこと、
・「三角・吉田」で見た「パープル・トライアングルズ」も合っているようにも思ったが、何かが違うなという感覚があったこと、
・自分の持つイメージでは、「数色の色(多色ではない)で織られた、ムラのある、無地感覚の帯」。
・「ブラックパープル」はそれに近い感じがした。
・「パープル・トライアングルズ」は、白場の分量が多くて目の粗い感じが自分のイメージとは異なった。もう少し無地に近い感じが良い。
・色味の希望は、パープル、グレー、(黒?)を基調とした、パープルともグレーともつかない曖昧模糊とした色。
・パープルは、赤みが強い方がいいのか、青みが勝つ方がいいのか、わからない。
・時間がある時に相談したい。
などなど書かれていた。
私は、まずもって、きいさまが、私が過去に織った帯のことを、こんなにもつぶさに覚えてくださっていることに、感激した。こうやって、見ててくださる方があるんだなあ。ひとつひとつ一生懸命作ってきてよかったなあ。
私は、今は忙しいが、来年、時間ができたらよろこんで織らせていただきたい旨を返信した。
めとさまとの2回目の打ち合わせが終わって、私はすぐに、話し合ったことを落とし込んで、イメージ画を作り直しました。今度は緯糸も表現。こんな感じかな?
それをPDFにして、メール添付でめとさまに送付。次の打ち合わせまでに見ておいてくださると、話が早いってもんです。
で、それから2ヶ月ほど時は流れ、先日、4月の半ばですが、3回目の打ち合わせに、めとさま、我が家にお越しくださいました。
お送りしていたイメージ画のプリントアウトを元に、話を進めます。イメージ画は、格子の大きさや入り具合など、だいたいオッケーって感じでしたが、色のこっくり感がもう一歩。さあ、どうする?
二人で、「この色をもう一段こっくりさせたら?」「この色を黄色に振って秋のイメージに」、などなど、いくらでも出てきます。
うーん、イマイチ、埒があきません。その場でチャッチャッとイラストレーターを操作できるとカッコいいのだけど、私、パソコン作業はしっかり腰を落ち着けないと、出来ないのだー。
それで、めとさまが自ら、色鉛筆を手にとって、イメージ画に色を乗せていくことに。こりゃいい!早いし、よくわかる。がぜん、方向性が鮮明になりました。私の頭の中もクリアになりました。めとさま、伝えてくださってありがとう。
次の打ち合わせまでに、もう一度整理して、イラストレーターで作り直し、データをお送りすることを約束して、この日は終了となりました。
*only only をお考えの方へ。
打ち合わせをする回数や、それぞれです。めとさまのように、打ち合わせに何回もお出でいただくのもウェルカムですし、メールや電話でやりとりするだけでも、もちろん大丈夫です。意思疎通ができるよう、できるだけ詳しくご説明します。
ご注文時に、希望をつたえてくださって、あとはお任せでもいいですよ。燃えて制作いたします。その場合も、ご希望あれば計画や工程をご報告いたします。